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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

来ちゃった……Ⅱ 下 反省して落ち込む

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 兎幸うさこは部屋の中心に降り立つと、両手を広げて姉妹の前に立ち塞がった。

「ダメーーーッ!! 愛が無いからダメーーーッ!!」
「なんでじゃーー!! 何でなんじゃーーー! 早過ぎるわっあと五分いや、あとせめて一分待ってくれてたらおっぱいのひと揉みふた揉み出来ていたのに!? そんなメルヘンタイムの一つや二つご褒美としてあっても良いんじゃないんでしょ~~かっ??」

 砂緒は泣きながら床を殴り続けた。

「お姉さま……?」
「見てはいけません、目と耳を塞ぐのです!」

 七華しちかは戸惑う五華いつかを抱き抱えて目を塞いだ。

「ダメだよ~~」

 カチャッガチャッガーーーンッ!
 兎幸がしつこく言った直後、突然シャルのギルティハンドで外側から鍵が開けられると、ドアが蹴り開けられて複数の人間が突入して来た。

「動くなっ!」

 最初に入って来たのは魔銃を構えたイェラと雪乃フルエレであった。

「被害者確保っ!」

 次に入って来たイライザとライラが姉妹にバサッと毛布を掛けた。

「もう大丈夫ですよ、安心して下さい」
「えっえっ」
「あきれたわっ九歳の五華ちゃんにまで手を出そうとするなんて、洒落にならない警備兵案件だわっ」

 フルエレが呟くと、最後にセレネが素早い動きで突入して来て砂緒の腕を捻り上げると床に組み伏せた。

「はい二時二十分淫行の容疑で確保!!」
「痛い痛い痛い、ギブギブギブ、セレネさん淫行の容疑って何ですか未遂ですよ未遂」
「ふーーふーーー」
「ちょっとセレネやり過ぎよ、離してあげて……」

 最後に入って来た猫呼ねここが自分の吹き込んだ情報でえらい騒ぎになったと怖くなってセレネを止めに入った。

「何ですのコレは! リュフミュラン王女として許しません事よ、早く砂緒さまを解放して上げなさい!」

 毛布をバサッと投げ捨てた七華が一番嫌いなイェラに怒鳴りに掛かった。

「ふんっリュフミュラン王女としてチヤホヤされていたお前も、フルエレの同盟が出来て以来誰にも相手にされず、遂には幼い妹をダシに使ってまで砂緒に構ってもらいに来たか? 哀れだな」

 パシィッ
 イェラが言い終わるかどうかの寸前に、光の速さくらいで七華がイェラの頬を叩いた。七華は唯の王女なのに対してイェラはセレネ程では無いが歴戦の戦士である。本気になれば即座に半殺しに出来るが自分の頬を押さえるに留めた。思い切りシーーンとなる部屋の空気。

「何をする?」
「取り消しなさい! 妹をダシに使ったですって?? 構ってもらいに来たですって? そ、そんなのじゃ無いですわっ」

 イェラはにやっと笑った。

「じゃ、何なんだ? 言ってみろよ」
「……愛していますの」

 その声は小声だった。

「ふーん、じゃ何で妹を」
「違います! 私から一緒に行きたいと強く言いました。お姉さまを悪く言う人は許しません!」
「五華」

 今度はリコシェ五華が背の高いイェラの前に立ちはだかった。

(こ、怖い……こんなんやない。私が欲していたハーレムはこんなんやない! もっとエッチで何も考えて無い女の子たちにキャアキャア言われて囲まれてまみれたかったんです。しかし……)

 砂緒はセレネの手をすっとどけるとイェラの前に立った。

「今の言い方は七華に失礼ですぞ、取り消せ……い、いや取り消して下さい……」

 砂緒の言葉にイェラはギロッと睨んでさらに前に近づいた。大き目の胸が触れるか触れないかくらいに近くなり、砂緒は一瞬眼球が胸の谷間に落ちたがすぐに戻した。

「あーー? 貴様こそ七華に酷い事をし続けているとは思わないのか? 何故服を脱がそうとした?」

 砂緒は頭がクラッとなった。

(酷い事?? 何故と言われても……)

 砂緒はチラッと周囲を見回すと七華五華始め皆が固唾を飲んで自分を見ていた。

「……愛でしょうか?」
「うそだーーーー!! 私のレーダーに愛の反応は無かったぞ!」

 即座に兎幸が否定した。本当にそんなラブテスター的なレーダーがあるのかは不明である。

「そんな言い方される方が哀れですわ! 二人の間に割って入って来ないでくれます? イェラこそ砂緒さまに執着してますけど、相手にされて無いんじゃないですの?」
「何ッ?」

 再び二人は睨み合った。

「砂緒、全て貴方がまいた種よ? ひとまず謝った上で、今誰が一番好きか一応発表しておきなさいよ?」
「それは良いな」

 突然雪乃フルエレが謎のまとめを始めた。即座にそれにセレネが同意した。

「砂緒さま……?」

 今度は七華も砂緒を哀願する様な目で見つめて来た。

(なんて意地悪な事を言い出すんだフルエレ! そんなのこの状況で誰が好きとか言えませんよ……でも七華以外、フルエレが好きとか言うと彼女のプライドが破壊される、かと言って嘘は言えない、どうすればーっ)

 砂緒は心の中で頭を抱えた。

「砂緒さま、本当の事を言って下さっていいですのよ、ホンのあそ……」

 七華が自嘲気味に笑ってホンの遊びなのでしょうと言い掛けた瞬間に砂緒は彼女を止めた。

「違いますよ! 私にとって七華も本当に大切な女性なんです。今日は本当に会えて嬉しかった。だけど今すぐに一番好きとは言えません、それだけです」
「うふふ、それで充分ですわ」

 七華は満面の笑顔になって砂緒に抱き着いたが、セレネとイェラは渋い顔になって睨んだ。

(も、もう俺帰りたい……)

 ドアの前でシャルは頭を掻いた。
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