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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
猫弐矢さん友情 中 過去の姫君との約定
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「おいおい……」
一行を目にした貴城乃シューネは思わず声を上げたが、目が合ったフゥーは何も言わず軽く頭を下げた。
「ええい何者だ貴様ら! 此処が姫殿下の聖なる塔であると知っての侵入か!」
先程上着を脱いで肉体美を披露した警備兵の隊長は、よほど自信があるのか上半身裸のまま物見遊山的な場違いな三人に立ちはだかった。
「ひっこれは失礼つかまつった。何を隠そう此処におわす御方はクラウディア元王国の現国主、猫弐矢様にあらせられる」
根猫三世は大袈裟に頭を下げて紹介した。しかし警備兵達は一瞬ポカーンとなった。決して恐れおののいての事では無く、クラウディア王国を良く知らないので、それは凄い人なのかどうなのか困惑しているからだった。
「お、おいクラウディア王国って何処だ?」
「い、いえ確か西の端の方にそんな王国があった様な無かった様な……」
隊長は部下を肘で突いて小声で聞いた。もし地位の高い者ならひれ伏さなければならないからだ。
「それは凄い国なのか?」
「いえーー昔は凄かったらしいですが、最近は衰退しててスンナリ神聖連邦帝国の配下に入ったそうな」
「じゃ、聖都の俺たちの方が偉いんじゃないか??」
こそこそ会話は続いたが、結局大したこたあ無い人物で落ち着いた様だ……
「で、その御方が何の用ですかな? 此処は聖なる場所、聖帝陛下や姫殿下ご自身が許可されたか一部の重臣しか出入り出来ませぬな、さっさとお引き返しを」
猫弐矢は王に相当する自分が、ここ聖都では何の力も無い事を悟った。
「いや、此処におわす御方を誰と心得る! あの根猫三世様であらせられるぞ!!」
今度は紹介されたばかりの猫弐矢が、一転して逆に根猫三世を仰々しく紹介した。フゥーは恥ずかしくて赤面して床を見つめた。
「ヒッ私ですか!?」
「何だ貴様、このクラウディア公の部下では無いのか? 何故部下が王に紹介される??」
上半身裸の隊長は顔を斜めにして白い目で三人を睨んだ。シューネは急いでいるのにヤレヤレという顔で推移を見守った。
「あの隊長、根猫三世さまはそれなりの評判と権勢をお持ちの方にてお気を付けを……」
「何?」
部下の一人がおつむが弱そうな警備隊長に耳打ちした。
「うはははは、ようやくお気付きになられましたな、このお方こそがアノ、根猫三世さまですぞ! さぁ自己紹介と此処に来た理由をっ!」
猫弐矢は調子に乗ってどんどんハードルを上げまくる発言をして、根猫三世は冷や汗を流した。
「ふぅ、此処に来て私に丸投げですか!? 致し方ありませんなご先祖の国の無茶ぶりに応えましょうぞ。数代前の聖帝の御代、旧聖都で謎の疫病が流行り民が逃亡し都が荒廃した事は御知りですか?」
根猫三世は隊長に先生の様に質問した。
「ああっ祖母から聞いた事があるな、大変な事態だったそうな」
「その時に聖帝の夢のお告げで召し出され、颯爽と現れては当時の姫君達と協力して祈りを捧げるや、見事に疫病を退散させたのが我が先祖、根猫一世の事でござる」
根猫三世はそこの部分は御自慢なのか胸を張った。
「おお、それも聞いた事がありますな、有名な話です……」
「そしてそれ以降、何か国に一大事や変事がある時は根猫一族の長は、その時代の姫君に内密に相談をして良いという古の約定が定められたのです」
「ほほう?」
隊長は少し疑いの目で見て来た。
「そしてそれが今! 決して口外出来ませぬがクラウディア王国での異変がその理由。さぁ姫殿下の元に参る我らをこのまま何も言わず通して頂こう!」
内心心臓が飛び出るかと思うほど緊張しているが、表面的には警備兵達を蹴散らす勢いで根猫三世は言った。
「実は……実は私もその事を姫殿下にお伝えする重要な役割を担っておった。君達を動かしている人々はこの重大な用件までも妨害せよと言ったのかね? 急ぐ故、先程までの狼藉は許してやろう。ささっこのまま四人を通しなさい」
攻め時と見たシューネまで加担して来た。平たく言えば唯の門番であり、遥かに立場が上のシューネに意地悪が出来たのは、重臣たちの肩入れとそそのかしがあったからだが、想定外の事態に自分の立場が悪くなる恐怖が出て来て隊長は急に心が折れて来た。
「も、申し訳ありませぬ。ただひたすらに姫殿下の安全を優先していた為に無礼と誤解される部分があったならお詫び申す。ささっお通りを」
隊長は内心歯ぎしりしながらも四人に頭を下げて渋々と通したのだった。こうして四人は無人の部屋の数々を無視して、ひたすらに最上階八階に向けて階段を上がった。
「……君達が助け舟を出してくれるなんて意外だったよ、此処は素直に有難う」
シューネは軽く頭を下げた。
「いや駄目だっそんな程度じゃ許されない。僕は祖国の変事とは言え根猫殿も僕もフゥーちゃんも危険を冒したんだ。これは大きな貸しだよ、何か一回くらいは僕の願いを聞いてもらうぞ」
「本当です。私もあんな大嘘を付いたのは初めてです」
根猫三世の何気ない言葉に皆目が点になった。
「えーーあれ大嘘だったのかい?」
「はい、私如きがこんな至聖所に顔パスで入れる訳ありませんて」
皆無言になった。
「はぁ~~仕方あるまい。では一回くらいは君とお風呂に入るくらいはしてやるか……」
ブーーーーーッ!!
喉を潤す為に水筒の水を飲んでいたフゥーが吹いた。
「おいおい、何で君と入浴せにゃならんのだ。もっと建設的に有益にこの肩叩き券は使わせてもらうよ」
等と無駄口を利いている間に八階、先程まで紅蓮と美柑が居た姫乃ソラーレの自室の前に来た。
一行を目にした貴城乃シューネは思わず声を上げたが、目が合ったフゥーは何も言わず軽く頭を下げた。
「ええい何者だ貴様ら! 此処が姫殿下の聖なる塔であると知っての侵入か!」
先程上着を脱いで肉体美を披露した警備兵の隊長は、よほど自信があるのか上半身裸のまま物見遊山的な場違いな三人に立ちはだかった。
「ひっこれは失礼つかまつった。何を隠そう此処におわす御方はクラウディア元王国の現国主、猫弐矢様にあらせられる」
根猫三世は大袈裟に頭を下げて紹介した。しかし警備兵達は一瞬ポカーンとなった。決して恐れおののいての事では無く、クラウディア王国を良く知らないので、それは凄い人なのかどうなのか困惑しているからだった。
「お、おいクラウディア王国って何処だ?」
「い、いえ確か西の端の方にそんな王国があった様な無かった様な……」
隊長は部下を肘で突いて小声で聞いた。もし地位の高い者ならひれ伏さなければならないからだ。
「それは凄い国なのか?」
「いえーー昔は凄かったらしいですが、最近は衰退しててスンナリ神聖連邦帝国の配下に入ったそうな」
「じゃ、聖都の俺たちの方が偉いんじゃないか??」
こそこそ会話は続いたが、結局大したこたあ無い人物で落ち着いた様だ……
「で、その御方が何の用ですかな? 此処は聖なる場所、聖帝陛下や姫殿下ご自身が許可されたか一部の重臣しか出入り出来ませぬな、さっさとお引き返しを」
猫弐矢は王に相当する自分が、ここ聖都では何の力も無い事を悟った。
「いや、此処におわす御方を誰と心得る! あの根猫三世様であらせられるぞ!!」
今度は紹介されたばかりの猫弐矢が、一転して逆に根猫三世を仰々しく紹介した。フゥーは恥ずかしくて赤面して床を見つめた。
「ヒッ私ですか!?」
「何だ貴様、このクラウディア公の部下では無いのか? 何故部下が王に紹介される??」
上半身裸の隊長は顔を斜めにして白い目で三人を睨んだ。シューネは急いでいるのにヤレヤレという顔で推移を見守った。
「あの隊長、根猫三世さまはそれなりの評判と権勢をお持ちの方にてお気を付けを……」
「何?」
部下の一人がおつむが弱そうな警備隊長に耳打ちした。
「うはははは、ようやくお気付きになられましたな、このお方こそがアノ、根猫三世さまですぞ! さぁ自己紹介と此処に来た理由をっ!」
猫弐矢は調子に乗ってどんどんハードルを上げまくる発言をして、根猫三世は冷や汗を流した。
「ふぅ、此処に来て私に丸投げですか!? 致し方ありませんなご先祖の国の無茶ぶりに応えましょうぞ。数代前の聖帝の御代、旧聖都で謎の疫病が流行り民が逃亡し都が荒廃した事は御知りですか?」
根猫三世は隊長に先生の様に質問した。
「ああっ祖母から聞いた事があるな、大変な事態だったそうな」
「その時に聖帝の夢のお告げで召し出され、颯爽と現れては当時の姫君達と協力して祈りを捧げるや、見事に疫病を退散させたのが我が先祖、根猫一世の事でござる」
根猫三世はそこの部分は御自慢なのか胸を張った。
「おお、それも聞いた事がありますな、有名な話です……」
「そしてそれ以降、何か国に一大事や変事がある時は根猫一族の長は、その時代の姫君に内密に相談をして良いという古の約定が定められたのです」
「ほほう?」
隊長は少し疑いの目で見て来た。
「そしてそれが今! 決して口外出来ませぬがクラウディア王国での異変がその理由。さぁ姫殿下の元に参る我らをこのまま何も言わず通して頂こう!」
内心心臓が飛び出るかと思うほど緊張しているが、表面的には警備兵達を蹴散らす勢いで根猫三世は言った。
「実は……実は私もその事を姫殿下にお伝えする重要な役割を担っておった。君達を動かしている人々はこの重大な用件までも妨害せよと言ったのかね? 急ぐ故、先程までの狼藉は許してやろう。ささっこのまま四人を通しなさい」
攻め時と見たシューネまで加担して来た。平たく言えば唯の門番であり、遥かに立場が上のシューネに意地悪が出来たのは、重臣たちの肩入れとそそのかしがあったからだが、想定外の事態に自分の立場が悪くなる恐怖が出て来て隊長は急に心が折れて来た。
「も、申し訳ありませぬ。ただひたすらに姫殿下の安全を優先していた為に無礼と誤解される部分があったならお詫び申す。ささっお通りを」
隊長は内心歯ぎしりしながらも四人に頭を下げて渋々と通したのだった。こうして四人は無人の部屋の数々を無視して、ひたすらに最上階八階に向けて階段を上がった。
「……君達が助け舟を出してくれるなんて意外だったよ、此処は素直に有難う」
シューネは軽く頭を下げた。
「いや駄目だっそんな程度じゃ許されない。僕は祖国の変事とは言え根猫殿も僕もフゥーちゃんも危険を冒したんだ。これは大きな貸しだよ、何か一回くらいは僕の願いを聞いてもらうぞ」
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「はい、私如きがこんな至聖所に顔パスで入れる訳ありませんて」
皆無言になった。
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ブーーーーーッ!!
喉を潤す為に水筒の水を飲んでいたフゥーが吹いた。
「おいおい、何で君と入浴せにゃならんのだ。もっと建設的に有益にこの肩叩き券は使わせてもらうよ」
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