魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記(工事中2)

佐藤うわ。

文字の大きさ
上 下
480 / 588
Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

洋上の極秘会談 下 猫弐矢の想い

しおりを挟む
「ジグラト?? 何ソレ」

 有未うみレナード公はポカーンとした。

「ジグラトとは石で葺いた人工の丘だ。シューネが言っている物はその中でもかなりデカい奴です。シューネは本当に巨大建造物が好きだなぁ」

 猫弐矢ねこにゃが助け舟を出した。

「スマン、話が見えん。なんでそれが神聖連邦帝国との友好促進になんだよ」

 レナードは眉間にシワを寄せて聞き返した。

「民と王侯が心をいちにして石を運び縄を引く、そうして神聖連邦帝国と同じ手法、形状でジグラトを建設する……つまりそれは神聖連邦帝国の民とも聖帝陛下とも心をいちにする印にて、さらなる友好促進になるのです」

 シューネは両手を広げ目を閉じて陶酔しながら言った。

「……難しいな、なんか宗教っぽいぜ。でも……お高いんでしょう?」
「それなりに費用と年月は掛かります。だがしかし、我らの建築技術をそっくりそのまま伝授いたしますれば、かなり効率的に建設出来る事保障致しますぞ」

 シューネはぐぐいっと身を乗り出してレナードを言葉で洗脳に掛かった。もちろんそれなりの魔法防御を掛けているレナードに対して、速攻でバレる魔法や術は使っていない。

「うーーん、なんかそんなモンで戦争にならないなら割とお得かもな?」
「ええっジグラトを作れば貴方の権威もうなぎ上りですぞ!!」
「ほうほう……」

 なんだかどんどんシューネの言葉に乗せられるレナードを見て、秘書眼鏡も猫弐矢も呆れて汗を流した。

「レナードさんとやら待ってくれ、冷静に考えて下さい。そのジグラトを建ててしまうと、それはもう神聖連邦帝国のフランチャイズに入ってしまう事と同じ、つまりもうセブンリーフの同盟の一員から神聖連邦の一部に組み込まれてしまう事を意味してるんだよ。このシューネという男はやたら高層神殿やジグラトを建てるのが好きなだけじゃない、どこまでも忠実な聖帝陛下の家臣なんだ」
「そ、そうなのか?」

 猫弐矢の警告にレナードは少し冷静さを取り戻したが、シューネは特に怒る事も無く、猫弐矢の言わせたいままにした。

「君も妹の猫呼ねここと親交があるなら少しは聞いているかもしれないけど、僕の国クラウディアももう少し高圧的に神宝の献上を勧められて、祭祀の変更を余儀なくされて高層神殿を建設してくれると約束してくれたは良いが、一向に建設が始まる気配も無い。お陰でクラウディアは我が兄と僕とで二つに分かれる事になってしまった」
「ああ、そうみたいだな」

 レナードは落ち着く為に少し紅茶を飲んだ。

「幸いな事に衰退中のクラウディア王国と違い、セブンリーフ島は大きく強い。それに海に阻まれた地理的有利とまだまだ時間的余裕もある。どうかあの可愛い女王様とセレネくんと砂緒くんと、その他の皆ともじっくり良く話し合って協力して今後の方針を決めた方が良いよ」

 レナード公はごくっとつばを飲み込んでから小さく返事をした。

「そ、だな」
「あっはっはっ、猫弐矢くんはどっちの味方なのかな? やっぱりクラウディア王国の事で我々をまだ恨んでいるのかな」

 突然シューネが大声で笑ったが、不思議と誠実な猫弐矢に対する怒りは無い様に見えた。

「どっちの味方でも無いしどっちも悪とも善とも思えない。大が小を喰う、それはずっと歴史上続いて来た戦国の世の習いだ。けれどセブンリーフ島にも長い歴史と伝統がある以上は、最後までプライドと平和を保つ道を歩んで欲しいと思うだけさ」
「猫弐矢さんかあんたいい人だな、今度猫呼ちゃんに言っとくわ」
「あぁ、それなら心の優しい猫呼が誰かにいじめられていないか見守って欲しいどうか頼みます」

 猫弐矢は頭を下げた。

「……どっちかって言うと、いじめられる方よりいじめる方に近い気がするぜ」
「え?」

 猫呼は猫兄達の前では猫を被っていた。

「何にしても今日どうこう決める事は出来ねーな、俺はもう帰るわ。だがなこれだけは言っておくぜ……お名刺交換出来ますか?」
「はっはっはっもちろんですとも、ドーモドーモ」
「どーもどーも」

 レナードとシューネは腰を折って名刺を交換した。


 ―秘密会談が行われた船室の外。

「貴方達、何たむろしてお喋りしているの? お掃除や洗濯とかする事沢山あるでしょう!」
「ハッ、申し訳ありませんフゥーさま!!」

 油を売っていたメイドさん達は蜘蛛の子を散らす様に消えていった。


「何? フゥーの奴シューネ様の女だからって侍女頭気取りなの??」
「ベッドに裸で猫耳加えて三人で寝てたらしいわよ」
「最悪、不潔よっ!」

 そんな事実はもちろん無い。

「わ、私はもっと掃除を続けて参ります。では……」

 一人の美少女メイドさんが頭を下げるとあらぬ方向に駆け出した。


 ―船底の倉庫。
 メイドさんは大きな樽を叩いてパカッと蓋を外すと、中から紅蓮アルフォードが顔を出した。

「どうだった!? 潜入調査面白かった!?」
「貴方の知り合いだから最終的に見つかっても殺されないって分かっててもドキドキだったわよっ」

 冷や汗を掻く美柑みかノーレンジを見ても紅蓮の笑顔は消えない。

「僕、潜入調査の楽しさに目覚めてしまったんだよ。それで……今度遂にまおう城に潜入しようかと思うんだ……そ、それもメイドさんに女装して、どうかな?」

 紅蓮は目を輝かせて問うた。すると美柑はそっと彼の手を取って天使の様な微笑みになって言った。

「今度……脳の魔法病院行こ?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【掲示板形式】気付いたら貞操逆転世界にいたんだがどうすればいい

やまいし
ファンタジー
掲示板にハマった…… 掲示板形式+αです。※掲示板は元の世界(現代日本)と繋がっています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...