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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

エピローグⅠ 指輪消失

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 ―ザ・イ・オサ新城の周囲を夜の静寂が包んでしばらく後……

「う、気持ち悪いのが消えた??」
「主魔法システム復帰させます!」

 頭を抱える猫弐矢ねこにゃの横で、フゥーは急いでシステムを再起動させた。

「ハハハ、私はほったらかしだね」

 状況が良く分からない中、貴城乃たかぎのシューネは自嘲気味に笑った。開けっ放しになった操縦席から目の前でじっと立つ蛇輪と睨み合い夜の景色を眺め続けるしか無かった彼は、不思議な諦めの様な気持ちでもはや攻撃する気は失せていた。

『砂緒さま、急いでお越しを!』
『ライラ?? どうしましたフルエレ?』

 突然ライラの声が響く。
 パッ
 良く分からない状況の中、魔法ランプの灯りが突然復帰して砂緒は急いでシャッターを開け、下の操縦席へ急いだ。

「陛下がお眠りに……」
「魔力を一気に放出するとこうなるのです……何かしたんですか」

 ライラが操縦席で眠りこけるフルエレの横から、操縦桿を握りしめて蛇輪の操縦を復帰させていた。

「叫ばれた後に、大量の魔力を放出された様でした。その後金色も我らも動きを止めました」
「だとすれば敵も?」
「はい、先程までは停止したままですが……こちらと同じ様に復帰する頃かもしれません」

 言いながらスナコちゃんは、ライラの残り僅かな魔力で回復した魔法モニターから両腕を失った金色の姿を確認した。砂緒は何かあれば腕を掲げ雷を撃って金輪を止める覚悟であった。

「先程は血ィ吐くまで酷使して悪かったですね、後日何かでお礼をします」
「いえ、結構です!! 貴方様からその様なお言葉逆に怖いですから」

 ライラは何故か赤面しながら慌てて首を振った。

『動くな!! それ以上動くと容赦無く攻撃する!!』

 と、そこへ二機のSRVが駆け付けて来た。

「そうや! シューネ、あんたはやり過ぎやで! 今夜はもう帰るんや!!」

 SRVの足元で瑠璃ィるりぃキャナリーも大声で叫んだ。当人はなんとかして乗り込もうとする勢いであった。

『私からも勧告します、金色よ雪乃フルエレ女王の御意思通り大人しく退去なさい!』

 さらに護身用サバイバルナイフを構えたメランのル・ツー黒い稲妻Ⅱも金輪こんりんを取り囲んだ。

『わかった、両腕が無いんでね上げる事が出来ないが、こちらももはや攻撃の意思は無い、おとなしく引き下がろう……』

 その言葉通り、金色は無防備にゆっくりと背中を向けると歩き出した。

『ニナルティナを通るのに光の輪を出して飛ぶぞ、いちいち騒ぐなよ……』

 その言葉を最後に本当に大人しく余計な悪さをする事も無く、金輪は魔呂や魔戦車の監視を受けながら湾に停泊する船まで立ち去った。猫弐矢もフゥーも皆に別れを告げる事も出来ないまま無言での退場となった。後日談として事情を良く知らない新ニナルティナでは、金輪の光る輪を未確認飛行物体だと勘違いして通報が相次いだという。


 ―次の日。
 ザ・イ・オサ新城のフルエレの寝室。昨日の騒動が信じられないくらいに爽やかな日差しが窓からさしている。

「ん、んん……」

 雪乃フルエレは朝日が眩しくてようやく目を覚ました。

「女王陛下お目覚めです」

 回復魔導士と侍女達が、スナコちゃんメイクを落とした砂緒とシャルを筆頭に、待ち構える人々に告げた。

「ようやくですか! 心配しましたよ……」
「せめて俺くらい寝室に入れさせろよ」

「いいわ皆、入って頂戴」 

 砂緒とシャルが同時に上げた声を聞いてフルエレが皆を招き入れた。


「……そう、そんな事があったの? 私は全然意識無かったわよ」

 砂緒を筆頭に皆が口々に昨夜の顛末を伝えた。フルエレ自身には大量の魔力を放出して魔ローダーをオーバーヒートさせて止めたという意識は無かった様だ。

「本当にヤツを逃がして良かったんでしょうかねえ、スパッと始末しておけば」
「まだ言ってるの?? しつこいわよ……」

 フルエレはベッドで上半身を上げたまま目を閉じて首を振った。

「おっそうだ、この戦い最大の戦利品のペンダント、誰に渡せばいいんだ?」

 突然シャルが紐で応急修理して首に掛けていた、姫乃ソラーレの露店のペンダントを掲げた。

「それは決闘で勝った砂緒の物よ。シャル大人しく彼に渡してあげてちょうだい」

 シャルは一瞬甚だ不満な顔になったが、大人しく砂緒に渡した。

「べ、別にお前の為に盗った訳じゃねーからな!」
「………………オ、オエーーーッ」

 砂緒はペンダントをしっかり受け取りながらも大袈裟に吐く振りをした。

「ちがーーーう!! 如何にも俺がツンデレみたいに受け取るんじゃねーーーっ!」
「我ながらスナコちゃんの魔性の魅力が恐ろしいです。まさかシャルにまで欲情されるとは」
「だから違う言うてるだろがーーっ! 首絞めるぞオラーギルティハンドッ!!」

 二人のやり取りを見て、周囲の者達はどっと笑った。釣られてフルエレも笑ったのだった。

「はいはい、シャルは初めて戦闘で私の役に立ってくれたわね、後でご褒美を上げなくちゃ、クッキー? ビスケット? 何が良いかしら??」

 フルエレの発言に遠くで見守る侍女達がクスクス笑った。

「コラーガキじゃねーお菓子なんていらねーって言っただろーーがっ!」
「もうシャルったら分かってるわよウフフ」

 もちろんフルエレもシャルがませてて、膝枕などが好きな事は分かっていて言ったのだった。彼女は細く美しい手を口に当てて笑おうとした……

「あれ……無い!? 指輪が無い!! アルベルトさんに貰った私の指輪が無いのよーーー!!」

 明るい和やかな雰囲気から一転、フルエレの泣き声が廊下の外にまで響いた。
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