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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

第三幕 戦火の嵐 終幕② セレネ、敵を待つ

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「あ、あれ……ボク達の活躍は?? 敵魔呂部隊は結局どうなったんだ??」
「なんや中途半端な終わり方やなあ。もうちょっと工夫して欲しいわ~~」
「シッお二人とも文句言わないで下さい!?」

 同じ同盟軍でもウェカ王子や瑠璃ィるりぃには為嘉なかアルベルトの戦死は何の感情も湧かなかった。しかし雪乃フルエレはこのナレーションを聞くだけで、心が張り裂けそうな程辛く苦しいのだった。何度もあの時に戻れたらと想像した場面だった。

「私の為に多くの尊い命を失ってしまいました。もはや私には女王を続ける権利はありません。北部海峡列国同盟女王をお受けした時の約定通り、北部中部新同盟の女王には誰か他の相応しい御方を選んで下さい。私はこれで女王を引退致します……」
『フルエレ』
「フルエレさん!」

 フルエレはそう言い残して舞台からスーッと雪の様に消えて行った。

『そして今この時、北部中部新同盟成立のこの日、新たなる女王陛下をお決めするべき投票の日取りとなったので御座います』

 と、イェラのナレーションと共に荘厳なBGMが流れ緞帳はゆっくりと降りて行った。
 パチパチパチ……
一斉に巻き起こる拍手。

「フルエレ女王陛下しか居ない!!」
「そうだそうだっ!」
「なんだか女王陛下お可哀そう……本当に彼女に投票するべきなのかしら?」

 万雷の拍手の中、人々は口々に自分の考えを述べ続けた。砂緒はこの時出演者全員が舞台に再結集して最後のカーテンコールを行うつもりであったが、セレネとフルエレに強く反対されて無しという事になった。

『お客様方、長らくお疲れさまでした。これより一旦小休憩となります』

『皆さんお疲れさまっ! 最高のステージだったわっっ!!』
「わたし……少し部屋で休憩します」
夜宵やよいひ、いや女王陛下、お疲れですか? ご一緒しましょうか?」
「もうコーディエ! 良いです、一人に成りたいの」
『しつこいですぞコーディエの野郎』
「なっ君は一体?? 会った事ある?」

 等と舞台の裏でのフルエレを中心としたやり取りを横目に、セレネは魔ローダーSRV2ルネッサに走った。

「はぁはぁ、メランさん今舞台が終わった所です!」
「あらーお疲れさん、私も観たかったわ~~~」
「そんな呑気な事言ってる場合ですか? 敵が、半透明が来ないか警戒して下さい!!」
「はいはいもー」


 一方その頃まおう軍の地、炎の国。
 サッワは待機が解け、一直線にココナツヒメがクレウと居る施設に向かった。

「ココナツヒメさまっ! 只今戻りましたっ!!」

 ココナの車椅子を押すクレウが怪訝な顔をする。

「サッワ殿ではないですか、抱悶だもんさまの送迎作戦は良いのですか?」
「クレウさんご安心を。どうやら抱悶さまは同盟の地にご宿泊為されるそうで、今晩の待機は解けました」

 サッワの言葉にさらにクレウは眉間にシワを寄せた。

「敵のど真ん中におられて大丈夫なのですか?」
「僕も同盟の連中はシャクシュカ隊の仲間の命を奪った許せない仇敵です。でも抱悶様はその連中と知人らしい。ここは新たな主人に従うより他ありません。貴方元々フルエレの部下でしょう?」
「その事は忘れました……今は抱悶さまが心配です」
猫呼ねここさま、フルエレさま、お元気ですか……)

 クレウは上を向き遠い目をして、しばしサッワも共に無言となった。直接フルエレや砂緒と戦い続けたサッワと、一緒に旅をした抱悶では当然感情が真逆だった。さらにクレウはそれにも増して複雑な境遇だった。

「あ~~??」

 そこへ車椅子上のココナツヒメが上を見上げて二人を見比べた。

「ああココナさまっ! 今日は良い事があったのですフフ」
「サッワ殿何ですか良い事って? 不気味ですぞ」
「ふふ、秘密です」
「ああ~~あー?」
「おお、ココナさまも激しく反応しておられる!!」
「あの……お二人様、そろそろ……」

 小声で侍女が恐る恐る話し掛ける。促されて二人はいつもの様に、悪い噂が立たない様にそのまま夜間の世話をする専門の侍女達にココナツヒメを引き渡すと、それぞれの自宅に戻って行った。


 時間も場所も、舞台終わりのセレネのSRV2に戻る。

「セレネ十五分経ったわよ? 投票に戻らなくて良いの?」

 メランはもはやセレネを呼び捨てだが、彼女は何も言わなかった。むしろ内心嬉しかった。

「……そうそう上手く舞台が終わったタイミングで攻めて来るなんて、そんな出来た話がある訳ありません。あたしは戻りますが、メランさんは引き続き警戒頼みますよ!」
「貴方が言った事でしょ!! 分かってるわよ、警戒は怠らないわよ」

 遂にセレネが待ち構えていた不倶戴天の敵である半透明、ココナツヒメは現れなかった。セレネは無言で派手なオレンジ色のルネッサを降り、フルエレと砂緒が待つ投票会場に戻って行った。しかし彼女の顔は何処か寂しげだった。

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