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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
第三幕 戦火の嵐 下 二人の女王、激突① 各国からの貢物
しおりを挟む舞台は今現在、雪乃フルエレ達が本拠とする新ニナルティナ港湾都市の仮女王宮殿をイメージする物に変わった。
『そして雪乃フルエレ女王陛下は拠点を港湾都市に移され、為嘉アルベルト様と有未レナード公の補佐を受け、新しい政治を開始したので御座います。その安定した治世は評判を呼び、広く遠い国々からも祝福を受けたので御座います』
「フルエレ女王陛下、各国から是非に陛下にお会いしたいという人々が続々とやって来ておりますぞ!」
有未レナードが意気揚々とフルエレに告げた。
「そうなのですか……失礼があってはなりません、早速是非にお会いしましょう」
『まずは遥か南のキィーナール諸島からアイイ酋長という方がいらっしゃったわ』
スナコちゃんが紹介すると、舞台上に水着と見紛う露出度の高い若い娘さんが出現して男性王族達の目が色めき立った。もちろん本人では無いがエキゾチックな女酋長の登場で、女王の同盟の支配力の大きさをアピールするつもりだ。
『候補者No.5 アイイ・キィーナール諸島女酋長』
「女王陛下なんくるないさ~~、ゴホウラ貝さぁ~~~」
女酋長は満面の笑顔でゴホウラ貝が大量に入った袋をフルエレの近くに控えるスナコちゃんに手渡した。もちろん方言は極めていい加減な砂緒によるデタラメ考証である。
「おお、遠い南の海から遠路遥々ご苦労さまです。どうぞごゆっくりとニナルティナを見物して下さい」
「めんそーれ、にーへーでーびる、はいさーい!!」
とにかくデタラメにそれっぽい言葉を連発するとアイイ酋長は下がって行った。
『このゴホウラ貝は立派な腕輪に加工致しましょう』
「次はなんと荒涼回廊の同盟の飛び地の館から、王族の伽耶クリソベリル殿が直々にご挨拶にいらっしゃったぞ!!」
客席から、おおーーっという声が上がったが実際には伽耶クリソベリルは今は東の地に居る。希少な金属が入手出来る荒涼回廊の飛び地は、今後はセブンリーフ島と東の地が取りあう最前線となりそうな情勢だった。そうした中で旧来からの深い関係をアピールする演出となっている。
『どうぞこちらへ……』
スナコちゃんに導かれてやって来た伽耶クリソベリル役の女性はやはりエキゾチックさが強調された衣装を着ていた。本来的にはセブンリーフの地の人々と全く同じ言葉を話す同族なのだが、同盟の支配エリアが広いという事を強調する為の演出だった。
「麗しき女王陛下に拝謁する栄誉が叶いまして恐悦至極に存じます。荒涼回廊の飛び地の主、伽耶クリソベリルに御座います。これは特産のオリハルコンとミスリルのインゴットに御座います。どうぞお受け取り願い奉ります」
『候補者No.8 伽耶クリソベリル荒涼回廊飛び地館主』
伽耶クリソベリル役は砂緒の指導を受けた通り、やけに恭しく貢物を差し出した。これにはセブンリーフ島が上位で荒涼回廊の飛び地が下位であるという主従の立場をはっきりする意味があった。実際、荒涼回廊の飛び地の住人は全て遠い過去セブンリーフ島から小舟で渡って行った人々の子孫である。だが荒涼回廊には過去に砂緒の前世の前世、等ウェキ玻璃音大王自身が域外の帝国に渡って行く為に経由したという間違った伝説があるが、実際には彼は部下を派遣したのであり本人が帝国に行った訳では無かった。王自らが危険な海を渡って行く等と言う事は常識的に考えまず無いのである。
「おお伽耶クリソベリル殿、危険な西の海を渡りわざわざ貢物をお持ちしての訪問、有難く思うぞ。希少な金属は有難くお受け取りしよう。どうぞごゆるりとなさって下さい」
フルエレ女王が手を上げると、伽耶クリソベリル役は深々と頭を下げて後ろに下がった。もちろんだが、誰も飛び地の主が女王に適任とは考えていない。まさに賑やかしの候補者である。
『フルエレ女王陛下大変よっ! なんと東の地の姫乃ソラーレという女王からの祝辞を持って、スイートス王国の瑠璃ィキャナリーという方がおいでになったわっ!』
もちろん姫乃ソラーレは女王でも何でも無い、砂緒の誤認である。
「おい瑠璃ィ、なんか名前呼ばれてるゾ!!」
「なななんやて!?」
「瑠璃ィさん凄い目立てるじゃないですかっ!!」
これは当然、貴城乃シューネの横槍に対して急遽砂緒が用意した応酬だった。パパッと瑠璃ィの頭上に魔法スポットライトが当たる。
「ささっ舞台上にどうぞ」
黒い衣装の男が瑠璃ィの耳元で囁く。
「ええい、もうどうにでもなれやっ!!」
「瑠璃ィさんがんばって!」
「誇らしいぞ瑠璃ィー」
等とウェカ王子は言っているが、離席しているシューネがもしこの場に居れば激怒する場面であった。
「ふぅ……雪乃フルエレ女王陛下、内は瑠璃ィキャナリースイートス王女や、ウチの主人姫乃ソラーレ殿下も多分セブンリーフ島と友好を結びたいはずやっ! これからも末なごうよろしゅうになっ!」
(でもホンマに似てるわ~)
『候補者No.10 瑠璃ィキャナリースイートス王女』
『候補者No.11 姫乃ソラーレ神聖連邦帝国女王』
瑠璃ィは軽く頭を下げただけだが、会場中からは大きな拍手が巻き起こった。
「ありがとう……私雪乃フルエレも東の地の人々と友好を育みたいと常に願っております」
フルエレの言葉は真に心からの物だった。
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