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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
第三幕 戦火の嵐 上② セレネ出場……
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遂に第三幕の緞帳が上がって行き拍手が巻き起こる。舞台は引き続き冒険者ギルド館の喫茶猫呼だった。
『雪乃フルエレ女王陛下とスナコちゃんが駆る聖魔神騎の活躍により、侵略して来た旧ニナルティナの大軍は壊滅し、リュフミュランには束の間の平和の時が訪れていたので御座います。そんな折館には二人の来客があったのです』
「た、たたた、たの、たのも~~?」
喫茶猫呼の入り口前に立つセレネの声はとても小さく、聞き取り辛い物であった。セレネは激しく緊張している上に確実に誰よりも大根であった。
『あ、フルエレ入り口に誰かいるわよ』
「本当だにゃ~」
「誰かしら? 此処は喫茶店です誰でもどうぞお入りになって」
フルエレが開けたドアから、ガシーンガシーンとロボットの様にぎこちない動きでセレネが店内に入って来る。あからさま過ぎるセレネの大緊張する様子に、一同目を細めてどう扱えば良いか分からないという表情になり目配せし合った。
(ヤバくない?)
(ここまでとは……なんとか乗り切りましょう)
(そ、そうね)
「一体どんな御用かしら? 冒険者の方かしら?」
フルエレは氷水を置きながら聞いた。
「はぁはぁ……あ、あの、実はあたしは、ユティユティトレッドの……」
冷や汗を流しながらぎこちなくしゃべるセレネを見て、スナコちゃんはお主は〇薫か? とツッコミたい気持ちをぐっと堪えて静かに見守った。と、その時雪乃フルエレがセレネの両手指先をそっと握った。もちろんそんな台本は一切無い。
「落ち着いて、私も緊張しぃだから良く分かるのよ。此処に居る人達は全員優しいのよ、何でも言って下さい」
フルエレは言いながらにこっと笑った。セレネは一瞬舞台上を忘れフルエレと初めて会った時の事を思い返していた。
(フルエレさんあの日と同じだ)
「あ、はい……実は雪乃フルエレさんという聖少女を探していてこの辺りに居ると聞き及びまして。あ、申し遅れました私ユティトレッド魔導王国のセレネ王女という者です」
『候補者No.2、セレネ・ユティトレッド王女』
雪乃フルエレは目をパチクリさせた。
「あら雪乃フルエレは私だけど、私聖少女とかじゃないから、あはは」
『うん、聖少女はこのアタ』
続けてスナコが言い掛けて、セレネは恐ろしい形相でキッと睨んだ。フルエレの優しい言葉で気持ちが過去に戻り、さらに砂緒のおふざけでセレネは大分とリラックスし始めたのだった。
「今日は何を隠そうフルエレさんに大切なお願いがあるのです。それにはまず紹介したい方が居ます。旧ニナルティナの有未レナード元将軍です」
「旧ニナルティナの」
『将軍ですって!?』
セレネに紹介されて入り口から男が入って来る。実際の同盟参加時期とは大幅に違うレナード本人の特別出演である。これは新ニナルティナのレナード公の正統性を高める為の改変であった。
『セレネ王女と有未レナード公は旧ニナルティナに多くの有志国が参加して進軍する事を報告し、その先陣に雪乃フルエレ女王の聖魔神騎が立つ事を要請したので御座います』
「そ、そんな……折角平和になったのにこっちから攻めに行くだなんて……」
『フルエレ無理しないでっ! 嫌なら嫌でいいのよ』
躊躇う雪乃フルエレをスナコちゃんが庇った。
「こちらとしては是非にお願いしたい。貴方の聖少女の力が必要なのです!」
「俺からもお願いするよ。俺は旧ニナルティナの非道を質す為にこっちに寝返ったんだ。なんとしても勝ちたい」
二人が必死にお願いするも、雪乃フルエレは迷いに迷った。迷うというよりも正直に言えば参加するつもりは全く無かった。
「ではこれではどうだろうか? 聖少女さまが聖魔神騎を召喚さえして下さればこちらが用意した魔導士が操縦して進軍する、それじゃ駄目だろうか?」
有未レナードが調子の良い提案をした。
『じゃあ貴方達は結局魔ローダーの力が欲しいだけなのね? 何が聖少女さまよっ!』
スナコは腕を組んで頬を膨らませた。
「今のレナード公の言葉は忘れて下さい。あたしからもお詫びします」
セレネは深々と頭を下げた。
「ちょっと頭を上げて。貴方が謝る事無いじゃない!」
「でもあたしからもお願いします。決して聖魔神騎の力が欲しいだけじゃない、聖少女の貴方が先陣に立つ事によって各国バラバラな軍が同盟軍として心を一つにして進軍出来るのです。貴方にはその力があります! その力があるのに使わずして安穏に暮らしていて良いのでしょうか??」
これは台詞でもありセレネの本心でもあった。セレネは政治や軍事が好きだったが、人前に立つ事が苦手という事より以前に、残念だが彼女自身よりも本当にフルエレの方が多くの人々を引き寄せる大いなる力があり、先陣は彼女の方が適任と見込んでいたのだった。
『ちょっとしつこいわねっ! 何なのこの胸の低い子は!』
「るっさいな、胸が低いのは関係ねーだろコラー」
スナコのアドリブであった。これで客席でちょい笑いが発生。
「分かったわ……貴方がそこまで仰るなら、この私で良ければ聖魔神騎に乗って先陣に立ちます。でもこれが最後よ、旧ニナルティナを倒したのちは自由に生きます。それでも良いスナコちゃん?」
『フルエレがそれで良いなら、私も付いて行くよ!』
「おおっ!」
『こうして雪乃フルエレ女王とスナコちゃんは旧ニナルティナを打倒する決意を固めたので御座います。そしてこの有志軍の中、有美レナード公と同じく参軍していた将来フィアンセとなる運命の人為嘉アルベルト様と出逢いを果たしていたので御座います』
そのナレーションで会場の一部がざわついた。
『雪乃フルエレ女王陛下とスナコちゃんが駆る聖魔神騎の活躍により、侵略して来た旧ニナルティナの大軍は壊滅し、リュフミュランには束の間の平和の時が訪れていたので御座います。そんな折館には二人の来客があったのです』
「た、たたた、たの、たのも~~?」
喫茶猫呼の入り口前に立つセレネの声はとても小さく、聞き取り辛い物であった。セレネは激しく緊張している上に確実に誰よりも大根であった。
『あ、フルエレ入り口に誰かいるわよ』
「本当だにゃ~」
「誰かしら? 此処は喫茶店です誰でもどうぞお入りになって」
フルエレが開けたドアから、ガシーンガシーンとロボットの様にぎこちない動きでセレネが店内に入って来る。あからさま過ぎるセレネの大緊張する様子に、一同目を細めてどう扱えば良いか分からないという表情になり目配せし合った。
(ヤバくない?)
(ここまでとは……なんとか乗り切りましょう)
(そ、そうね)
「一体どんな御用かしら? 冒険者の方かしら?」
フルエレは氷水を置きながら聞いた。
「はぁはぁ……あ、あの、実はあたしは、ユティユティトレッドの……」
冷や汗を流しながらぎこちなくしゃべるセレネを見て、スナコちゃんはお主は〇薫か? とツッコミたい気持ちをぐっと堪えて静かに見守った。と、その時雪乃フルエレがセレネの両手指先をそっと握った。もちろんそんな台本は一切無い。
「落ち着いて、私も緊張しぃだから良く分かるのよ。此処に居る人達は全員優しいのよ、何でも言って下さい」
フルエレは言いながらにこっと笑った。セレネは一瞬舞台上を忘れフルエレと初めて会った時の事を思い返していた。
(フルエレさんあの日と同じだ)
「あ、はい……実は雪乃フルエレさんという聖少女を探していてこの辺りに居ると聞き及びまして。あ、申し遅れました私ユティトレッド魔導王国のセレネ王女という者です」
『候補者No.2、セレネ・ユティトレッド王女』
雪乃フルエレは目をパチクリさせた。
「あら雪乃フルエレは私だけど、私聖少女とかじゃないから、あはは」
『うん、聖少女はこのアタ』
続けてスナコが言い掛けて、セレネは恐ろしい形相でキッと睨んだ。フルエレの優しい言葉で気持ちが過去に戻り、さらに砂緒のおふざけでセレネは大分とリラックスし始めたのだった。
「今日は何を隠そうフルエレさんに大切なお願いがあるのです。それにはまず紹介したい方が居ます。旧ニナルティナの有未レナード元将軍です」
「旧ニナルティナの」
『将軍ですって!?』
セレネに紹介されて入り口から男が入って来る。実際の同盟参加時期とは大幅に違うレナード本人の特別出演である。これは新ニナルティナのレナード公の正統性を高める為の改変であった。
『セレネ王女と有未レナード公は旧ニナルティナに多くの有志国が参加して進軍する事を報告し、その先陣に雪乃フルエレ女王の聖魔神騎が立つ事を要請したので御座います』
「そ、そんな……折角平和になったのにこっちから攻めに行くだなんて……」
『フルエレ無理しないでっ! 嫌なら嫌でいいのよ』
躊躇う雪乃フルエレをスナコちゃんが庇った。
「こちらとしては是非にお願いしたい。貴方の聖少女の力が必要なのです!」
「俺からもお願いするよ。俺は旧ニナルティナの非道を質す為にこっちに寝返ったんだ。なんとしても勝ちたい」
二人が必死にお願いするも、雪乃フルエレは迷いに迷った。迷うというよりも正直に言えば参加するつもりは全く無かった。
「ではこれではどうだろうか? 聖少女さまが聖魔神騎を召喚さえして下さればこちらが用意した魔導士が操縦して進軍する、それじゃ駄目だろうか?」
有未レナードが調子の良い提案をした。
『じゃあ貴方達は結局魔ローダーの力が欲しいだけなのね? 何が聖少女さまよっ!』
スナコは腕を組んで頬を膨らませた。
「今のレナード公の言葉は忘れて下さい。あたしからもお詫びします」
セレネは深々と頭を下げた。
「ちょっと頭を上げて。貴方が謝る事無いじゃない!」
「でもあたしからもお願いします。決して聖魔神騎の力が欲しいだけじゃない、聖少女の貴方が先陣に立つ事によって各国バラバラな軍が同盟軍として心を一つにして進軍出来るのです。貴方にはその力があります! その力があるのに使わずして安穏に暮らしていて良いのでしょうか??」
これは台詞でもありセレネの本心でもあった。セレネは政治や軍事が好きだったが、人前に立つ事が苦手という事より以前に、残念だが彼女自身よりも本当にフルエレの方が多くの人々を引き寄せる大いなる力があり、先陣は彼女の方が適任と見込んでいたのだった。
『ちょっとしつこいわねっ! 何なのこの胸の低い子は!』
「るっさいな、胸が低いのは関係ねーだろコラー」
スナコのアドリブであった。これで客席でちょい笑いが発生。
「分かったわ……貴方がそこまで仰るなら、この私で良ければ聖魔神騎に乗って先陣に立ちます。でもこれが最後よ、旧ニナルティナを倒したのちは自由に生きます。それでも良いスナコちゃん?」
『フルエレがそれで良いなら、私も付いて行くよ!』
「おおっ!」
『こうして雪乃フルエレ女王とスナコちゃんは旧ニナルティナを打倒する決意を固めたので御座います。そしてこの有志軍の中、有美レナード公と同じく参軍していた将来フィアンセとなる運命の人為嘉アルベルト様と出逢いを果たしていたので御座います』
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