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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

第一幕 Shall We 舞踊? 下 月の下でダンス①

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 実は紅蓮は美柑みかの呟きを聞いて、ようやく舞台上の雪乃フルエレをまじまじと真剣に見てみた。

(お姉さま……? 美柑のお姉さんの夜宵さん? あれ……この子、姫乃姉上に不気味なくらいにそっくりだ。 え、なんだかややこしいな。いやそれだけじゃ無い、この子パピヨンちゃんか? タカラ山新城でシューネに捕まってた女の子達の中に居たパピヨンちゃんでしょ、美柑が探し求めるお姉さんにもう既に会っていたなんて)

 色々な事が頭の中をグルグル巡っていて、ふと美柑を見るとガタガタと震えていた。

「どうしたの? 探していたお姉さんやっと見つかって良かったじゃん! 後でご挨拶しようよ」
(姉上とそっくりな事はややこしいから黙っていよう……)

「ダ、ダメよ絶対駄目。夜宵やよいお姉さまが雪乃フルエレ女王なら、只でさえ怖いと噂の女王なのよ会うのが怖い会える訳無い。すっごく嫌われてるもん」
「美柑?」
 
 いつも明るい美柑が両手で頭を抱え、少し錯乱するくらいに慌てふためいてるのを見て、紅蓮はとても心配した。

「いや……そんな事無いよ噂は噂だよ、凄く可愛くて優しそうな天使みたいな人だよ! 君の旅の終着駅じゃないか?」

 紅蓮は自分で言って、少し寂しい言葉が出たと思った。

「裏表があるの! お姉さまは本当は恐ろしい人なの。凄く冷たい目で睨まれたの。ごめんなさい私が悪いの全部私が悪いの!!」

 紅蓮は絵に描いた様な美柑のトラウマにどうして良いか分からなくて途方に暮れた。

「私帰る! い、いや……此処には居れない帰る!」

 美柑はひとしきり頭を抱えてから首を振ると、今度は突然四つん這いで舞台前から逃げ始めた。

「あっこら、美柑待つんだ!!」

 紅蓮は美柑の足首を掴んで止める訳にも行かず、彼女の後を追い掛けた。二人はそのまま会場の外に飛び出し、もう戻って来る事は無かった……


 そんな事が眼前で起こっているとは露知らず、舞台は進行して行く。

「嗚呼っ、一体何処まで進んでしまったのであろう……早く森を抜けねば」

 年齢にそぐわない砂緒の書いたセリフを言う雪乃フルエレ女王は、深い森の中で迷い焦りの色を見せる迫真の演技をしていた。

「へへーーへへ、へへーーへへーー。かわい子ちゃん見っけ~~~」

 ガサガサッと木々を掻き分け、突然怪しい男が現れた。友情出演のじっちゃんことジークフリードだった。

「何奴!?」

 フルエレは役に入り込み、今度は冷や汗を掻き驚きと恐怖の表情かおをした。

「へへ~~へ。俺は旧ニナルティナ軍の人狩り部隊、後家殺しのジークフリードさまなんだぜぇ?」
(い、嫌だあ減刑と交換条件とは言え、こんな変態みたいな役嫌だああ! 第一俺、こんな事言ってない……なんだよ人狩り部隊て)

 本当はニナルティナと言うべき台詞だが、有未うみレナードによる、なんか新ニナのイメージ悪くなりそう、というクレームにより不自然な旧ニナルティナ自称となった。

「下郎め! 貴様が悪名高い旧ニナルティナの人狩り部隊か、さらった人間をなんとする??」
「くくく知れた事よ、西の海を越えた域外の帝国に奴隷として売り払うのさっ!」

 ジークフリードは舌を出しながら悪びれる事無く言った。

「何たる悪辣な! 許さぬぞ旧ニナルティナめっ」
『この時から雪乃フルエレ女王陛下と旧ニナルティナの因縁が始まったので御座います』

 間髪入れずにイェラの真面目ナレーションが入る。

(イェラお姉さま、職務に忠実だな……素敵だっ!)

「へーーへっへっへっ許さないって一体どうするのかな?」

 ジークフリードは迫真の演技で舌なめずりしながら雪乃フルエレににじり寄る。
 ドンッ!
本当に恐怖から後ずさりする様にして、フルエレが遂に背中に巨木が当たり逃げれなくなる。

「くっっしまった……なんという事でしょう、逃げ場が……無い!」

 多少説明台詞が多かった。しかし王族達は固唾を飲んで見守る。

「へへへもう逃げれないぜ兎ちゃん!!」
「きゃあっ」

 ジークフリードは多少自分の恨みも籠って、フルエレの華奢な腕を両手で持ち上げると、木に叩き付けた。万歳の姿で木に押し付けられたフルエレの身体は、砂緒と最初に出会った頃よりもさらに女らしく成長していて、木に押さえ付けられるだけで妙なエロティックさがあった。

「へへこりゃ上物を発見してしまったわい。どう料理してくれようぞ?」
「は、離せっこの下郎がっ!」

 しかし役とは関係なく、既にジークフリードはフルエレの魔性の魅力に取り憑かれていた。

(お、おいこの男大丈夫かよ? なんか危ない目をしてるぞ??)

「ちょ、ちょっと此処でこの薄布一枚の下がどうなっているか調べておこう……」

 等と言いながらジークフリードは白いドレスに手を掛けようとした。

「い、いやああああああああ」

 ごくり。
 王族達の席のあちこちから、唾を飲み込む大きな音が聞こえた。

「貴方?」
「い、いや、ごほん、心配だね女王陛下」

 会場のあちこちの席で気まずい微妙な空気が流れる。

(いやここまでエロくする必要無くね? 見ててこっちが気まずいわ!!)

『ひとーーーつ、人の世の生き血をすすり、ふたーーーつ、不埒な悪行三昧』

 とホワイトボードに書いて一人の少女が木々の間から現れた。
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