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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
第一幕 Shall We 舞踊? 中 お姉さまだ…………
しおりを挟む紅蓮と美柑は地下道でまだまだ迷っていた。
「どこに行ったら地上に戻れるんだろう?」
「でも下手に目立つ所に出ちゃってもヤバイよ」
「なんだか大きな声が聞こえるからもう会議が始まってしまってるんじゃ……」
「あ、なんかここ開きそう?」
カチャッ
天井の扉を開けると光が漏れた。恐る恐る梯子を伝い上がってみる紅蓮。
「うげっ、ヤバイ舞台と観客席の丁度間に出るよ」
「もう仕方ないわ、一旦出ましょう!」
二人が慎重に地下から上がると、そこは舞台の最前列、王族達が座る貴賓席との間の窪みのスペースであった。そこには照明が当たらず目立たないでいられる場所だった。
「此処いいね、ここに陣取ろうよ!」
「貴方紅蓮正気なの?」
「見つかったら見つかったで、どうせ僕たちに敵う連中なんてほぼ居ないしいいじゃない!」
「あいあい」
美柑は呆れたが、作業着の二人はスタッフの振りをして舞台前面真下に座り込んだ。しかし意外にも周囲に上手く溶け込んで誰にも不審がられずつまみ出される事は無かった。
「えー皆さま諸準備に時間が取られ大変長らくお待たせしました。司会は再び体調不良から戻りましたセレネ・ユティトレッドです。大変失礼を致しました」
「なんや司会っ娘、前にも増して死んだ目になってるで……」
「なんだか怖いわ」
瑠璃ィとメアは暗く沈み込むセレネの声を気に掛けた。
「今後の予定について申します。この後すぐに新女王候補紹介特別プログラム~セレブレート・出逢い・セブンリーフ~が開演します」
「開演て何や?」
「演奏会でしょうか、楽しみですね~~」
「お前らお気楽だナー」
「なお、この演目に関してはタイトルから演出等全て謎の美少女スナコ候補による発案であり、わたくしは一切のタッチをしておりません」
「え、そんな事言う必要あるんか?」
「権利関係が大変なんですよ」
「権利てなんだよ。メア難しい事言うナー」
「そしてその後小休止を挟み、投票となり即日開票集計と新女王の決定となります。なお一回の投票で五十票以上の候補者がいなかった場合、上位二名による決選投票となります」
「ワクワクだな、遂に瑠璃ィが新女王になる瞬間だナ!」
「いくらア〇なウェカ王子でも、それ本気ちゃうやんなあ?」
「親しい仲でもア〇って言っちゃダメ」
「なお、このプログラムには雪乃フルエレ女王陛下もご出演されます。オペラグラス等の使用は不敬に当たり、固く禁止させて頂きます。破られた方を発見次第、本国に軍を差し向けます」
セレネは無表情で淡々と言っているのでむしろ恐怖感があった。所持していた者達は一斉に慌てて係員に渡していく。
「ヤバイ、瑠璃ィオペラグラスとか持って無いだろうナッ!!」
「ウチ目ェが良いから、肉眼でもある程度よー見えるで」
「瑠璃ィさんはもう既に女王陛下のお顔見てますしね……」
「ハハッなんとも大袈裟だね」
「私達特等席だねっ!」
久しぶりにフェレットも出して二人はくつろぎ出した。ちなみに紅蓮が討伐予定のまおう抱悶は丁度彼らから見えない角度の貴賓席に移動していた。
ヴーーー
開演のブザーが鳴った。
『これより候補者紹介特別プログラム~セレブレート・出逢い・セブンリーフ~を開演致します。なおナレーションは私、イェラが務めさせて頂きます』
「え、ダレや?」
「シッ」
イェラは一般には無名だった。
ガガガ……
魔法動力により大きな緞帳が上がって行く。その舞台上には見事に再現されたリュフミュラン南の森が在った。
「おおっ素晴らしい」
「シッ」
『差し込む光は僅か、昼なお暗いリュフミュランの森の中、一人の美少女が彷徨い歩いております』
「嗚呼っ天下万民の幸せを願い、止まぬ争いを憂いて修行の旅には出たけれど……なかなか行商が上手く行かない……何故賞味期限切れのポーションが売れないのであろう、わたくしには商才が無いのだろうかっ」
(修行の身で賞味期限切れのポーション売っちゃダメ。本当のフルエレさん最初天下万民の事なんかこれっぽっちも考えて無かったぞ!)
復活したセレネが好き勝手に突っ込み出した。しかし舞台上では歩みを始めた雪乃フルエレにスポットライトが照射され、ふわふわの金色の長い髪に、雪の様な真っ白い肌、それに純白の白い質素なドレス姿が、森の中に現れた妖精か天使の様に浮かび出した。
「……まあっなんて神々しいの」
「ご尊顔こそはっきり見えないけれど、きっと天使の様な美少女だわ」
奥方たちがため息をついた。
『候補者No.1、雪乃フルエレ女王陛下』
間髪入れず機械的なイェラのナレーションが入る。
(え、これどういうシステム!?)
セレネの疑問を他所に舞台袖でスナコこと砂緒の目が光った。
「成功だっ! これでフルエレの物語が各王族達に正確に伝わるぞ!!」
舞台上では雪乃フルエレが旅番組に出演した大物女優の様に虚空を見つめ手を掲げて森を散策していた。
「…………お姉さまだ……雪乃フルエレの正体は、夜宵お姉さまだったんだ……」
「え?」
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