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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

思わぬ再会とニアミス 上

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「ささっ、フゥーの白馬にのった騎士砂緒さまがお迎えに上がりましたぞっ! これまで関係の薄かった二人に遂にカラミが始まる瞬間です!」

 言いながら砂緒はベンチに座るフゥーの細い腕を掴んだ。

「離して下さいっ! 私別にいじめられてません! 絡みも始まりません!!」

 フゥーは力任せに砂緒の手を振り解いた。

「アハハハ、面白いね! これじゃあ白馬の騎士さまも形無しだねえ」
「なんだと!?」

 マスクから露出している口元に手を当てて笑う貴城乃シューネを砂緒は睨んだ。

「おうおうお前、よーーー来たなあ? あの騒動の後にノコノコやって来るってどんな強心臓野郎だよ?」

 今度は砂緒を押し退け、怖い顔をしたセレネがシューネを睨んだ。

「アッハハハ、今度は夫婦漫才を見せてくれるのかい? 本当にお似合いだねえ」

 シューネは二人を見比べてなおも笑った。

「ふ、ふふふふ、夫婦!? ち、ちちち、違うわっ 夫婦じゃねーわ」
(お似合いってもーっ)

 言いながらセレネは頬に手を当てて激しく赤面した。

「セレネさんセレネさん、喜んでる場合じゃありませんよ、バカにされてますよっ!」
「喜んでねーわっ」

 でも明らかにセレネの顔は喜んでいる。

「冗談はさておき、あの騒動って何の騒動かな? 私はずっと七華姫と猫弐矢殿と共にリュフミュラン周辺を観光していたからねえ」

 マスクのシューネは白々しく首を傾げた。

「何を言っている貴様? タカラ山新城を乗っ取ったではないかっ!」

 今度は砂緒がセレネをぐぐいっと押し退け前に出た。その時本当に偶然砂緒の手がセレネの低い胸に当たっていた。びくっと胸を隠すセレネ。

「やめろよ……」
「すいません、偶然です……はぁ? 知らないだと? セレネさんは誤魔化せても私の目は誤魔化せんぞ!」
「君……女装してたよね? それにいいのかい? 私一人で重要なタカラ山新城を乗っ取ったなんて事が知られたら、それこそ新同盟の恥だと思うよ!」
「何!?」

 確かにシューネの言う通りだった。人的被害も施設の損害も無かった為に、公式な同盟の記録には記されてない出来事となっていた。

「それよりも今偶然を装ってこの子の胸を触ったよね!? そっちの方が気になるよふふ」
「ち、違う、触ってなどいない! 偶然当たっただけだっ」

 横でセレネはさらに激しくカーッと赤面した。

「お前の所為でグダグダになったろ~が、どうすんだよ!?」
「いや、本当に偶然の偶然なんです! いくら私でもこんな白昼に乳揉んだりしませんよ……」

「あの……私そろそろ猫呼さまの所に帰りたいのですが」
「変な邪魔が入ったねえ」

 フゥーは砂緒達とシューネの争いの間で戸惑った。

「シューネ、もうそろそろフゥーちゃんを解放してあげなさい! 命令よ」
「七華!?」

 煮詰まった所で七華しちかリュフミュラン王女が仲裁に入った。その後ろには恥ずかしそうに妹のリコシェ五華いつかも控えていた。

「七華さん……お久しぶりです」
「わたくしが父王に連れ帰されて以来ね。フゥーちゃん元気そうでよかったですわ」

 言いながら七華はフゥーの腕を掴んで立たせた。フゥーも特に嫌がる事無く七華に従ったのだった。

「またお前かよ。いい加減にせんと王女と言えども許さんからな」
「あら、どうなさるおつもり? こちらも父王が黙っておりませんわ」
「リュフミュランがなんぼのもんじゃい!」
「セレネさんそれは失言ですよ。取り消した方が」
「お前はどっちの味方だっ!」

 今度は砂緒とセレネが言い合いを始めた途端、シューネはすくっと立った。

「じゃ、僕は退散するとしよう。昼食後の新同盟女王選定会議で会おうじゃないかっ! ははは。それとフゥーくん、さっきの話考えて置いてくれたまえ!」

 シューネは額の上でぴっと指を振り格好つけて去って行った。

「なんだありゃ、最悪な奴だな。さっきの話ってなんだよフゥー」
「いえ、特に何も」

 フゥーは目を伏せた。

「行ってしまいましたか」
「砂緒さま、ご機嫌麗しゅう御座います!」

 リコシェ五華はスカートの両端を持ち挨拶をした。

「おおっリコシェ五華殿、会いたかったですぞ。いつも君の事を考えておりました」
「そ、そんな、恥ずかしいですわ」

 五華は激しく赤面して両手で顔を隠した。

「いい加減な事言うなよ! こいつの発言八割嘘だからな」

「あらまあ、大人しい表に出るのが苦手なリコシェが付いて来ると言うかと思えばそういう事ですの? 砂緒さま罪作りですわぁ」
「い、いやですわお姉さま」
「つまり私は姉の七華、妹のリコシェ五華、双方から取りあいの状態なのですなあ」
「わたくしは二人同時に愛されても構いませんのに」
「おーー豪勢だな!」

 セレネがぷくっと膨れて腕を組んだ。

(やばい……たった三人で私の制御能力を越えています……)

 砂緒はハーレムのヌシ気取りの癖に自分を慕う三人の美少女に囲まれてどうして良いか分からず途方に暮れた……


「猫呼ちゃんは可愛くて好きなんだけど、何故か緊張して上手く話せないし喉がカラカラになっちゃうよ」

 ウェカ王子は遠巻きに抱き合う猫弐矢と猫呼兄妹を見て、顔を扇ぎながら呟いた。

「ヘェー私はお似合いだなあって眺めておりましたけど」
「あれ、メア何か怒っているのカー??」
「いーーーえーー別に?」

 等と言いつつもウェカ王子の視線が自分に向いてくれて少し嬉しいメアだった。

「わたっ痛い!?」
「あっどうもすいません」
「あはは、良いぞ良いぞ、苦しゅうない!!」

 メアに気を取られたウェカ王子がお掃除係らしき若者とぶつかった。すぐに清掃係は帽子を目深に被った顔を深々と下げて、そそくさと退散して行った。


「どうしたんだい、美柑みか。でもあれだけ自信タップリに入場させてくれるっていうからVIP扱いかと思いきや清掃係とはね……」
「う、ううん! 何でも無いの……」
「そう?」

 貴城乃シューネの手引きで清掃係に変装し新同盟女王選定会議に紛れ込んだ紅蓮アルフォードとパートナーの美柑だった。

(い、今の……絶対ラ・マッロカンプのウェカ王子だ!! 生きてたんだっ)

 美柑の心臓はドキドキと激しく動悸を打った。
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