406 / 588
Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
思わぬ再会とニアミス 上
しおりを挟む「ささっ、フゥーの白馬にのった騎士砂緒さまがお迎えに上がりましたぞっ! これまで関係の薄かった二人に遂にカラミが始まる瞬間です!」
言いながら砂緒はベンチに座るフゥーの細い腕を掴んだ。
「離して下さいっ! 私別にいじめられてません! 絡みも始まりません!!」
フゥーは力任せに砂緒の手を振り解いた。
「アハハハ、面白いね! これじゃあ白馬の騎士さまも形無しだねえ」
「なんだと!?」
マスクから露出している口元に手を当てて笑う貴城乃シューネを砂緒は睨んだ。
「おうおうお前、よーーー来たなあ? あの騒動の後にノコノコやって来るってどんな強心臓野郎だよ?」
今度は砂緒を押し退け、怖い顔をしたセレネがシューネを睨んだ。
「アッハハハ、今度は夫婦漫才を見せてくれるのかい? 本当にお似合いだねえ」
シューネは二人を見比べてなおも笑った。
「ふ、ふふふふ、夫婦!? ち、ちちち、違うわっ 夫婦じゃねーわ」
(お似合いってもーっ)
言いながらセレネは頬に手を当てて激しく赤面した。
「セレネさんセレネさん、喜んでる場合じゃありませんよ、バカにされてますよっ!」
「喜んでねーわっ」
でも明らかにセレネの顔は喜んでいる。
「冗談はさておき、あの騒動って何の騒動かな? 私はずっと七華姫と猫弐矢殿と共にリュフミュラン周辺を観光していたからねえ」
マスクのシューネは白々しく首を傾げた。
「何を言っている貴様? タカラ山新城を乗っ取ったではないかっ!」
今度は砂緒がセレネをぐぐいっと押し退け前に出た。その時本当に偶然砂緒の手がセレネの低い胸に当たっていた。びくっと胸を隠すセレネ。
「やめろよ……」
「すいません、偶然です……はぁ? 知らないだと? セレネさんは誤魔化せても私の目は誤魔化せんぞ!」
「君……女装してたよね? それにいいのかい? 私一人で重要なタカラ山新城を乗っ取ったなんて事が知られたら、それこそ新同盟の恥だと思うよ!」
「何!?」
確かにシューネの言う通りだった。人的被害も施設の損害も無かった為に、公式な同盟の記録には記されてない出来事となっていた。
「それよりも今偶然を装ってこの子の胸を触ったよね!? そっちの方が気になるよふふ」
「ち、違う、触ってなどいない! 偶然当たっただけだっ」
横でセレネはさらに激しくカーッと赤面した。
「お前の所為でグダグダになったろ~が、どうすんだよ!?」
「いや、本当に偶然の偶然なんです! いくら私でもこんな白昼に乳揉んだりしませんよ……」
「あの……私そろそろ猫呼さまの所に帰りたいのですが」
「変な邪魔が入ったねえ」
フゥーは砂緒達とシューネの争いの間で戸惑った。
「シューネ、もうそろそろフゥーちゃんを解放してあげなさい! 命令よ」
「七華!?」
煮詰まった所で七華リュフミュラン王女が仲裁に入った。その後ろには恥ずかしそうに妹のリコシェ五華も控えていた。
「七華さん……お久しぶりです」
「わたくしが父王に連れ帰されて以来ね。フゥーちゃん元気そうでよかったですわ」
言いながら七華はフゥーの腕を掴んで立たせた。フゥーも特に嫌がる事無く七華に従ったのだった。
「またお前かよ。いい加減にせんと王女と言えども許さんからな」
「あら、どうなさるおつもり? こちらも父王が黙っておりませんわ」
「リュフミュランがなんぼのもんじゃい!」
「セレネさんそれは失言ですよ。取り消した方が」
「お前はどっちの味方だっ!」
今度は砂緒とセレネが言い合いを始めた途端、シューネはすくっと立った。
「じゃ、僕は退散するとしよう。昼食後の新同盟女王選定会議で会おうじゃないかっ! ははは。それとフゥーくん、さっきの話考えて置いてくれたまえ!」
シューネは額の上でぴっと指を振り格好つけて去って行った。
「なんだありゃ、最悪な奴だな。さっきの話ってなんだよフゥー」
「いえ、特に何も」
フゥーは目を伏せた。
「行ってしまいましたか」
「砂緒さま、ご機嫌麗しゅう御座います!」
リコシェ五華はスカートの両端を持ち挨拶をした。
「おおっリコシェ五華殿、会いたかったですぞ。いつも君の事を考えておりました」
「そ、そんな、恥ずかしいですわ」
五華は激しく赤面して両手で顔を隠した。
「いい加減な事言うなよ! こいつの発言八割嘘だからな」
「あらまあ、大人しい表に出るのが苦手なリコシェが付いて来ると言うかと思えばそういう事ですの? 砂緒さま罪作りですわぁ」
「い、いやですわお姉さま」
「つまり私は姉の七華、妹のリコシェ五華、双方から取りあいの状態なのですなあ」
「わたくしは二人同時に愛されても構いませんのに」
「おーー豪勢だな!」
セレネがぷくっと膨れて腕を組んだ。
(やばい……たった三人で私の制御能力を越えています……)
砂緒はハーレムのヌシ気取りの癖に自分を慕う三人の美少女に囲まれてどうして良いか分からず途方に暮れた……
「猫呼ちゃんは可愛くて好きなんだけど、何故か緊張して上手く話せないし喉がカラカラになっちゃうよ」
ウェカ王子は遠巻きに抱き合う猫弐矢と猫呼兄妹を見て、顔を扇ぎながら呟いた。
「ヘェー私はお似合いだなあって眺めておりましたけど」
「あれ、メア何か怒っているのカー??」
「いーーーえーー別に?」
等と言いつつもウェカ王子の視線が自分に向いてくれて少し嬉しいメアだった。
「わたっ痛い!?」
「あっどうもすいません」
「あはは、良いぞ良いぞ、苦しゅうない!!」
メアに気を取られたウェカ王子がお掃除係らしき若者とぶつかった。すぐに清掃係は帽子を目深に被った顔を深々と下げて、そそくさと退散して行った。
「どうしたんだい、美柑。でもあれだけ自信タップリに入場させてくれるっていうからVIP扱いかと思いきや清掃係とはね……」
「う、ううん! 何でも無いの……」
「そう?」
貴城乃シューネの手引きで清掃係に変装し新同盟女王選定会議に紛れ込んだ紅蓮アルフォードとパートナーの美柑だった。
(い、今の……絶対ラ・マッロカンプのウェカ王子だ!! 生きてたんだっ)
美柑の心臓はドキドキと激しく動悸を打った。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる