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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

危険な出会いと誘い 中

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「や、やあ、猫呼ちゃん、お、お元気だったかなっ!?」
「うぇ、ウェカ王子さまこそ、ご機嫌麗しゅう……」

 ビッキーンという擬音が聞こえて来そうな程に挨拶を交わす猫呼とウェカ王子はガチガチに緊張していた。本来の性格的にはウェカ王子も猫呼もセレネやフルエレと違い、お気楽過ぎるくらに気楽な性格で、誰とでも直ぐに打ち解けて話せるタイプなのに、下手に出会いの場面が危機に陥ったお姫様を助ける王子という、これ以上無いくらいに美化された状況下だった為、お互い本性を出すタイミングを失っていた。それ以上に両者とも嫌われたくないという気持ちも大きく、緊張しまくる再会となった。

「……そ、それで猫呼ちゃんは好きな食べ物は?」
「わ、わたわたしは、私の好きな食べ物!?」
(何が受けるの!? スイーツ、それとも庶民派的に煮干しとかカツブシとか??)
「あ、ゴメン、好きな食べ物とか聞くのダサいかな!? アハハッ」
(ハッ私が長考している所為でウェカ王子に恥をかかせてしまったっ急げ何かあるだろ)
「はい、私が好きな食べ物はウーパールーパーの素揚げです!」
「え?」

「なぁーメアちゃん二人共初々しいなあ、見てて赤面してしまうわー」
「そ、そうですね」

 にこにこして二人を見守る瑠璃ィに対して、メアの顔は曇っていた。まだウェカ王子が衣世ちゃん王子と言われ皆から馬鹿にされていた頃、王子の理解者はメア唯一人で彼女も本気でこの頼りない王子を助け玉の輿に入ると信じ切っていた。しかし瑠璃ィが現れ外の世界を知り王子が成長した今、漁村出身の村娘メアは自分自身が王子に遠く及ばない身分違いの存在だという事を強く思い知らされていた。

「メアちゃん……気ィー落とさん時やーまだまだチャンスはあるでー」
「瑠璃ィさん……」

 メアは少し笑顔で瑠璃ィを見た。


 ―フゥーを呼び止めた猫弐矢に戻る。

「君、もしかしてクラウディア人なのかい?」
「貴方達は??」

「僕は猫弐矢、クラウディア元王国から来た外交使節さ」
「同じく神聖連邦帝国から来た貴城乃シューネだ」

 二人共年下のフゥーに仰々しくお辞儀をして、フゥーは戸惑った。

「ど、どうも。私は……遠い先祖がクラウディア人らしくて、猫呼さまにネコミミを頂いたばかりで」

 フゥーもペコリと頭を下げる。

「えっ猫呼が居るのかい!?」
「はい、あそこにいらっしゃいますよ」

 指をさすと猫弐矢がビクッとして振り向いた。

「ああっ本当だっ……誰かと話してるな」

 その時、シューネはウェカ王子の横に侍る瑠璃ィキャナリーに気付いてしまった。

(うっ瑠璃ィさまっ? 何故此処にいらっしゃる?? 若君のサポートはどうなった?? まあ良い後で私が行う緊急動議の時に御本人がいる方が面白いか……)

「それよりも君はクラウディア人なのに何故奴隷の首輪をしているのかい?」
 
 猫弐矢は身を屈め優しい声で心配顔で聞いて来た。フゥーはハッとして少し赤面する。

「わ、私は元同盟の敵対国のメドース・リガリァの戦士、国が滅びた時一緒に運命を共にするべき所を猫呼さまやフルエレさまに命を救われたのです。誰も恨んではおりません」
「そうなのかい? でももう首輪は外すべきだね。後で妹の猫呼に言っておくよ、こんな事は良くない」

(えっこの方が猫呼さまのお兄様……)

 フゥーは一瞬心ときめいた猫弐矢が猫呼の兄と知って、言い知れない羨ましさを感じた。自分にも家族が居て、こんな優しい兄も居れば人生が変わっていたかもしれないと……

(この子の目……一見大人しい従順な奴隷を装っているが、何か内に秘めた蒼い炎を感じる)

 貴城乃シューネはフゥーの一瞬の表情の変化を面白く見ていた。

「で、でも猫呼さまは奴隷の私をこんな晴れの場に出して頂き、それに美しいドレスまで頂いて」
「ふふっ奴隷にも気配り出来る賢い子だって自分をアピールする為かも知れないよ?」

 白い仮面を付けるシューネが意地の悪い言い方をした。

「変な事を言うな! 猫呼は裏表の無い子なんだ。本気でこの子を大切にしてるハズさ」
「それはそれは失礼しましたなハハ」

「本当です! 猫呼さまは誰からも人気があって嘘や嫌味の無い御性格の方ですから」

 それはフゥー自身が感じる本当の事だった。

「有難う……兄として誇らしいよ」

 そう言いながら猫弐矢はフゥーの頭を優しく撫ぜた。

「にゃっ」

 クラウディア人の遠い遺伝子が覚醒したのか、ぼうっと赤面して思わず猫声が出る。

(私もこんなお兄様が欲しい……)

 そんな事を考えた直後。

「お兄様ーーーっ!! 猫弐矢お兄様~~~っ!!」

 猫呼を持て余したウェカ王子が、同じ猫耳を付ける猫弐矢を発見して指をさし、それを見て猫呼が走って来た。

「猫呼っ! 猫呼じゃないかっ会いたかったぞ! アハハハッ」

 小さい猫呼はジャンプして兄に抱き着き、二人は回転して抱き合った。二人の中でタカラ山の出来事は夢だったという事になり、今回が公的な絵になる再会という事になった。

「お兄様っ猫名お兄様がっ……酷い事を……ううっ会いたかったです」

 猫呼は涙ぐんだ。

「シッその事は外では言っちゃだめだ、今度二人でじっくり話そう。でも今は再会を喜ぼうよ!」
「はいっお兄様」

 二人はひと目もはばからず長く抱き合い、その様子をフゥーは何故か冷めた目で眺め続けた。

「おやおや一瞬で取られてしまったね? 面白く無いかい?」

 シューネが近寄る瑠璃ィを眺めつつ、フゥーに小声で話し掛ける。

「何ですかさっきから貴方? 私本当は気が強いんですよ」
「ふふっ僕もそういう子の方が好みなんだ。どうだね、兄妹の感動の再会が嫌なら二人で少し話さないか?」

 シューネは少し離れたベンチを指をさした。

「変な事するなら人を呼びますよ?」
「ははっこれだけ警備兵だらけで完全に二人きりになんてなれないさ。あくまであの二人から少し遠ざかるだけ」

 確かにセレネが厳重過ぎるくらいに各所に警備兵を配置して常に目を光らせている。フゥーは園内なら安全と思い、少しシューネと話す事にした。
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