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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

危険な出会いと誘い 上

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 ―ザ・イ・オサ新城、セブンリーフ北部中部新同盟女王選定会議会場。
 遂に選定会議当日となった。フルエレ一味は前日から前乗りして新城に宿泊し、早朝から続々と会場入りする現役王族、かつて王族だったが合併されて消滅した旧王族など、百票の投票権を持つ有力者達の全員到来を待った。

「セレネさんセレネさん、会いたかったですよ!」
「おお生きてたか、昨日会えなくてすまなんだな」
「そんな事より聞いて下さい、何故か魅力あふるるこの私を皆が邪険にするのです、不思議だと思いませんか!?」

 ヤレヤレという感じでセレネは泣き付く砂緒の頭をぽんぽん撫ぜた。

「不思議だよな、魅力あり過ぎで高貴過ぎるお前に接近するのは畏れ多いとか多分皆が委縮してしまうのかもしれないな」
「ですよね~~~」

 セレネは本気とも冗談ともつかない表情で言った。

「あれは……本気なの? それとも冗談なの??」
「さ、さあ……二人にしか分からん世界だな」

 渋い顔をして聞く猫呼にイェラが興味無さげに答えた。

「お嬢さん済まねえな、投票権無くて……」

 有未うみレナードがイェラに笑顔で言ったが、イェラは無視をした。

「フルエレさんはどうした?」

 一旦砂緒を放置したセレネが訊いて来る。

「ユッマランド王や大アリリァ乃シャル王みたいに一部のフルエレに直接会える王様の挨拶を受けているわ……精神状態が大丈夫かしら凄く心配よ」

 猫呼の顔が曇った。

「何かあったのか?」
「い、いや」
「椅子の後ろにシャルとライラが隠れているから何かあっても二人がなんとかしてくれるだろ……多分。レナード、お前はこんな所でブラブラしてないで、早くフルエレのサポートに行け!」
「は、はい! お嬢さんのお願いなら何でも聞きますよ!」

 イェラに言われた有未レナードは大袈裟に敬礼して走って行った。


 ―仮設雪乃フルエレ女王謁見会場。今日限りの任期とされているが、挨拶の足は絶える事が無く、フルエレは疲れを感じていた。

「次の方、どうぞ」
「フルエレ大丈夫かよ?」
「シッシャル黙ってて! 最後のお仕事よがんばるわ」

 フルエレは薬指の結婚指輪を見た。

「御次の方、海と山とに挟まれた小さき王国王様名代、コーディエ殿!」

(しんどい時にややこしいのが来た)

 雪乃フルエレは額に手を当てた。小さい謁見室に入って来たコーディエは一旦は跪いてから部屋内を見た。

「良かった誰もいないようだね、夜宵やよい姫気分はどうだい?」
「…………どなたの事ですか? 私は雪乃フルエレですが」
「そ、そんな事言わないで下さい。私の中では遠征中の出来事が昨日の事の様に忘れられないです。あの時は気持ちが溢れすぎて手段を間違えました。もう一度二人でじっくり話……」

 フルエレはさっと手を差しだして眉間にしわを寄せて目を閉じ、首を横に振った。

「私は日々変化しています。私にとって七葉後川攻略戦の時の出来事も、もう何年も昔の出来事の様に思えてしまいます。なんだかもう無邪気な私ではいられないの」

 そう言いながら悲し気な目をして結婚指輪を見た。

「そ、それは夜宵姫、どういう事なんだ? 誰から!?」

 コーディエは堪らずフルエレに接近しようとする。

「近寄らないで! もう本当にそんな気分じゃ無いの。もし不用意に近づけば椅子の後ろに隠れる暗殺者が貴方をタダじゃ置かないわよ」

 直後にシャルとライラがひょいっと顔を出す。

「ニーちゃん俺、そこそこ強いんだぜ。この女もな」
「人が居たのか!? 早く言ってくれたまえ。では私は今は引き下がろう。でも夜宵姫、覚えておいて下さい、この世で私が一番貴方の事を想っている事を」
「そう? ありがとうじゃあ」

 フルエレは冷たい顔をして手を振った。瞬間的に彼女の頭の中にアルベルトの笑顔と砂緒の無表情な顔が浮かんでいた。


 ―外の広場。

「ウェカ王子、どうやった!? 噂の雪乃フルエレ女王、どんな御方やった??」

 特にマスクなどで顔を隠したりしていない瑠璃ィるりぃキャナリーが満面の笑顔でウェカ王子に聞いた。隣ではセクシーなメイドさんのメアがニコニコしながら歩いている。

「うーーん、かなりお疲れというか悩みがあるというか、どんよりしてたナ~~」
「そ、それは心配ですね」
「そんなんどうでもいいんや! ウェカ王子が前から言ってたフルエレ女王が衣世いよちゃんのお姉さんじゃないかって説はどうなんや!?」

 せっかちな瑠璃ィがイライラしながら核心を突いた。

「う、うん多分それで間違い無いよ……今回気絶させられずにはっきり見て確信した」
「気絶やって!? どうしたんやろうなあハハハ」
「そうですね、気絶しちゃう病気ですかアハハ」
「もういいよ、僕の事を心配してくれていつも二人が何かしてるのは気付いてる」
「お、王子……」

 メアは王子が首都攻略戦時以降、急激に成長して大人になった事を感じていた。嬉しくもあり寂しい部分もあった。

「でもしばらくその事は聞かないつもりだよ、なんだか女王はお疲れなようだしね」
「そ、そうなんですね……」

 三人はそのまましばらく広場を歩いた。


「猫呼さま、あそこに居るのはウェカ王子殿下では御座いませんか?」

 フゥーが広場の三人に指をさした。

「あ、あら本当、やだわっ」

 途端に猫呼ねここが少し赤面した。

「私がお呼び致しましょう!!」
「こ、こらっ余計な事をっ!」

 フゥーは少し悪戯っぽく振り向いて笑うと、たたっと走ってなにやらウェカ王子一行に話し掛けた。遠くでフゥーに話し掛けられたウェカ王子も、少し恥ずかしそうに猫呼をチラチラと見てこちらにゆっくりと歩み始め、猫呼は可愛い表情を作りささっと軽く身支度をしてみた。

(ウェカ王子さまが此処に……き、緊張するー)

 フゥーが遠くに見守る中で、猫呼クラウディアとウェカ王子一行は合流した。

「君、もしかしてクラウディア人なのかい?」

 ウェカ王子一行を遠巻きに見守るフゥーの後ろから声が掛けられた。

「貴方達は??」

 振り返ると白いマスクを付けた怪しい紳士に、猫呼同様頭に猫耳を付け眼鏡を掛けた優しそうな青年が立っていた。あんな騒動にも関わらず堂々とやって来ていた貴城乃たかぎのシューネと猫弐矢ねこにゃだった。

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