上 下
392 / 588
Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

貴城乃シューネ追い出される 中 黒猫仮面Ⅱ世の欲望

しおりを挟む
「え、どゆこと? 猫呼ねここの二番目のお兄様の猫弐矢ねこにゃさんが黒猫仮面スーツを持ち去って着てるのじゃないの? もしかしてスピナさん??」

 それまで緊急事態にも関わらず明るく笑っていた猫呼の顔が一瞬で凍り付いた。この場のみ雪布瑠ユキ・ふること雪乃フルエレ女王の大切な人、為嘉なかアルベルトを魔ローダーで殺害した一番目の兄、猫名ねこなこそがスピナの正体である。そのスピナが再び現れたとすれば彼女にその事実が伝わるかもしれない。自分の兄がアルベルトを殺害した事、そしてそれをひた隠しにしている事がフルエレに知れればもうこれまで通り友達でいられなくなるかもしれない……その恐怖がよぎって言葉が出なくなった。

「くくくくく、この七華くんは僕がもらった、はははははは」

(……七華くん? 僕? 確実に猫弐矢お兄様じゃん……)

「待って! 七華を連れて行かないで!!」
「……貴方猫弐矢お兄様ね?」

 猫呼はおもむろに黒猫仮面にズバリと名前で呼び掛けた。

「ち、ちが、違う。僕は猫弐矢等という男では無い! 黒猫仮面Ⅱ世だっ!」
「黒猫仮面にせい?」

 雪は思わず復唱した。

「貴方……一体今まで何してたの? 食事は??」
「僕は晩餐会とか苦手だからね、シューネに断って一人で部屋で図書室から借りた本を読んでいたよ!」
「やっぱり猫弐矢お兄様じゃない!?」
「はっち、違う! 本など読んでいない。地下室で獣を殴りながら蝋人形を作っていたぜ!!」
「あからさまに嘘っぽいわ」
「では、この辺でさらばだっ!」

 焦った黒猫仮面Ⅱ世は気を失った七華メイドを抱えたままそそくさと走り去ろうとする。

「待って!! じゃあいったい貴方、七華をどうするおつもり?」

 猫呼は力の限り大きな声で呼び止めた。

「……七華をどうするかだって!? ハァハァ……そ、それは七華くんを……我が物にする!!」
「我が物にするってどういう事!?」
「猫呼、詳しく聞かなくとも分かるでしょ?」

 雪は猫呼の肩を掴んだ。

「分からないよ……猫弐矢お兄様はいつもにこにこしてて本を読んでて物静かで、優しくて朴訥で女の子ともあんまり話さない……そんなお兄様がどうしてしまったの!?」
「くっくっくっ優しくて物静かで女の子ともあんまり話さないだって?」

 黒猫仮面Ⅱ世は不気味に笑い出した。

「どうしたのお兄様!?」
「くっくっくっそんなの全て嘘だね。本当は普段いつもいつもエロい事ばかり考えていたよ」
「嫌……嘘よ……そ、そんなハズないわっ! お兄様は永遠の清純派よ!!」

 雪は良く分からない兄妹の会話に固唾を飲んだ。

「ごくり……」
「くっくっ違うな。いつもいつもエロい事を考えていた僕の目の前に遂に理想のエロい女性、七華が現れた……その時に僕はもう欲望を抑える事が出来なくなってしまったんだ……彼女の身体を好き勝手に我が物にしたい、そうそれが僕の本性さっ!!」
「いやあああ……お兄様がそんな訳が無い! きっと何かの間違いよ、きっとその黒猫スーツがそうさせるのね!?」
「まあまあ落ち着きなさいって、男なんてあれでフツーよフツー」

 雪は必死に猫呼の肩を揺するが猫呼も聞く耳を持たない。

「確かにリュフミュラン城で黒猫スーツを発見した時、僕は何かに目覚めてしまった……そして今このスーツを着た瞬間から、僕は欲望のままに生きる事を決意した! もう恥も外聞も無い! 今こそ七華の身体を我が物にするんだ!!」
「いやあああああ、我が物にするって具体的にはどうするの?」
「バカなの? やめなさいって、どうして具体的に聞くのよ?? 大体分かるでしょ!?」
「んーん、全然わかんにゃーい」

 雪はあっけに取られた。しかしこのやり取りで猫弐矢だけじゃなく猫呼も少しおかしくなりかかっている事にようやく気付いた。
 パシパシパシパシパシ
雪は連続ビンタをした。

「あぶぶぶぶぶぶぶ」
「目を覚ましなさい!!」
「ふにゃ? で、具体的にはどんな事をしちゃうの??」
「ハァハァ 教えてやろう、まずはベッドに静かに寝かせ、そしてそして……ハァハァ……服をゲホゲホッ」

 黒猫仮面Ⅱ世は自分の想像でむせて咳き込んだ。雪はさじを投げてたじろぐ。

「お兄様、落ち着いてゆっくり冷静に具体的に言うのよ?」
「そ、そうだね、まずは服を脱がせ……七華の豊かで白い胸を……ごくり」
「いやああああああどうするの? 一体どうするの?」
「何なのこのバカ兄妹、一体目の前で何が起こっているの??」
「は、ハハハハハ、茶番は此処までだ! 私は忙しいのでね、ではっ!!」
「聞いてて恥ずかしいわっ!!」

 バシッ!!

「あう!?」

 いつのまにか戻って来ていたセレネが後頭部に当て身をすると、黒猫仮面Ⅱ世は一瞬で床に崩れ落ちた。
 ドサッ!!

「お兄様!?」
「七華!!」

 慌ててスナコちゃんが七華の身体を支えた。

「ふぉっふぉっふぉっ、そ奴が何者かマスクを剥いでみればどうじゃ?」

 ようやく食事を終えた庭師猫弐矢が立ち上がって提案した。

「そうだな、早速剥いでみっか?」

 ペリペリペリ
 猫呼始め、皆が固唾を飲む中顔を覆う黒猫マスクが剥がされると、やはり中身は眼鏡を外した猫弐矢だった。ポケットには彼の折りたたまれた眼鏡が入っていた。

「と、するとこの庭師はもしや怪〇二十面〇では?」
「誰だよそりゃ」
「ワシは本当にただの庭師じゃ! 怪人じゃないぞ」

 疑いを持たれた庭師が激しく首を振った。

「その人は怪人とかじゃないよ、どっちかが本当の庭師でどっちかがネコニャーさんとか言う人だ。この男が玉座の間の結界装置を暴走させた結果、みんな少しづつおかしくなってるんだ!」

 ドシュッ!!

「にゃうっ!?」

 同じく戻って来た紅蓮の言葉を聞いて何故か突然セレネが猫呼にまで当て身をして気絶させてしまった。
 どしゃっ

「え、なんで?」

 スナコは慌てて猫呼も支えながら驚いてセレネを見た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...