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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
タカラ座の怪人 上
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カンカン照りの太陽の下、スナコちゃんをサイドカーに乗せ妖しいパピヨンマスクを装着したおきゃんな町娘の雪布瑠ちゃんが運転する魔輪が停止すると、続けてセレネが後ろに猫呼クラウディアを乗せた魔輪も停車した。ちなみに雪布瑠こと雪乃フルエレの衣装自体はいつものフワフワとした白いドレスである。いつも彼女はそんな格好で魔輪に跨っていた……
「……見て、あんな所に見た事も無い古ぼけたお城があるわよ……」
『やだ、怖い……きっと数百年は放置されてるって感じね』
スナコちゃんと雪布瑠の会話を聞いたセレネの顔色がしょっぱなから激しく曇る。
「見た目だけで既にカオス状態の二人の癖に……あれタカラ山新城だよな? 最近新築されたんですがーっ? 数百年て何だよ!?」
しかしスナコちゃんも雪布瑠も完全に無視して全く意に介していない。
「も、もうかなりの夜更けだよ……こんな深い森の中でどうするのよ、ううっぐすっ」
『泣かないで猫呼、きっとなんとかなるからっ』
「励ましてるとこ悪いが、今思い切り昼だし此処まで開けた荒野通って来たよな!? 深い森の中って何だよ??」
「ううっ足が痛い!! もう歩けないよ、夜更けだし真っ暗……道も分からないどうしよう」
突然猫呼が地面に寝転がって足を押さえた。
「当たり屋かアンタ? 足痛いってずっと魔輪に乗ってたんだよな。しかも時間設定ミスのまま強引に行くのな?」
「仕方ないわね……四人であの廃城に泊まりましょう……」
「何故無視する?」
セレネを無視して三人の会話はどんどん進む。
『ええっあんな不気味な廃城に泊まるの? 何が出るか分からないよ』
「あそこ目的で来たんだよな?」
「見て……門番も誰も居ないわ……やっぱり無人の廃城なのね」
猫呼が指差す様に、本来いるはずの番兵や警備兵が一人も居ない。
「それはそれで変だよな。凄く納得行かないけど同意するしかない」
「でもどうしよう、イツツツツ足が痛くてこんな高い石段登れないよ……」
また突然猫呼が当たり屋の様に寝転んで足を押さえながら顔をしかめた。
「突然だな? 確実に石段登るのめんどくさいだけだろ??」
「でももうこんな真夜中に宿なんて探せない、仕方ないわ私が魔輪で石段のヘリを登ってあげるわ」
「う、うん」
「石段のヘリって!? 絶対良い子は真似しちゃダメな奴だ!」
「安心して! コケて壊れても良い様にセレネの魔輪で登るから! 猫呼後ろに乗ってしっかり腰を掴むのよ!」
雪は大事に自らの魔輪を茂みに隠すと、セレネからガッと強引に魔輪を奪う。
「やばい子やん雪ちゃんって」
「乗ったわ……雪」
猫呼は足が痛いはずなのにピョンと後ろに飛び乗るとぎゅっと雪のか細い腰を掴んだ。
「痛みは消えたんか?」
「さあ~~行くわよ~~~~~うりゃあーーーーーうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ」
雪と猫呼が乗る魔輪は際限なく続く石段のヘリを器用に上り出した。
「ひっくり返るひっくり返る!! ぎゃぎゃはははははははは……」
雪の操る魔輪は叫び声を上げる猫呼を乗せたまま、ぐんぐんと急角度の石段のへりを登って行った。
「あの二人あたしを突っ込み死にさせる気なんか? しかし雪ちゃんドレスでヤバいオフロード踏破能力だな……」
『私達も行きましょセレネちゃん!』
スナコちゃんはスッと手を差しだした。
「セレネちゃん言うな。でも仕方ないなタカラ山新城を取り戻すのが目的だからなあ……行くか」
等と言いながら少し赤面したセレネはスナコちゃんの手をそっと握って仲良く手を繋いで石段を登った。
最上段までコケる事無く既に魔輪で到達していた雪布瑠と猫呼クラウディアは城の門前で待っていた。
「遅いーーどれだけかかるつもり?」
「ブーブーー」
雪も猫呼もセレネとスナコちゃんを見るなり口を尖らせて文句を言った。
「てめえら魔輪で登っておいて鬼か? あたしも本気出したら一瞬だよ」
セレネはスナコちゃんに合わせてゆっくりと登っていた。
「でも見て、城の中門に来てもやっぱり誰もいないわ……不気味ね」
「それはまあ事実だな。腹立つけど」
『見て、古ぼけた門に無数の薔薇が絡まってて凄く綺麗よ』
「そうね……誰が世話しているのかしら」
セレネがまた我慢出来ないという顔になった。
「お前ら幻覚見てるんか? 薔薇なんて一本も無いぞ?」
「痛いっ! トゲが刺さった」
猫呼が自分の指先を吸った。
『まあっ気を付けて……』
「存在しないバラのトゲが刺さるとか怖過ぎるだろ」
セレネを軽く無視したスナコちゃんが一人で門を潜り城の大きなドアの前に立つ。
『仕方ないわね……多分誰もいないと思うけど一応断って入ってみましょう……』
コンコン
「そうね、誰もいませんかー? 一夜の宿をお借りしますよー?」
礼儀正しくノックをしてからドアを開けた雪が、ホワイトボードのスナコちゃんの代わりに大声を張り上げた。城の中は昼にも関わらず不気味に薄暗く、人の生活感がある気はしなかった。
「やだ怖い……やはり無人の城なのね?」
「無人なら無人で本当に怖いよな。沢山いるはずのタカラ山新城の兵達はどこ行ったんだよ」
セレネもキョロキョロ見回しながら入って行く。
コツーーンコツーーーンコツーーーン
その時、薄暗い館の奥から近付く足音が響いた。
「きゃあ誰なの!?」
猫呼が思わずスナコちゃんに抱き着く。
『みんな警戒して!!』
「も、もう出ましょう!!」
「いや出る訳には行かんだろ。あたしらの城だぞ」
雪を押しのけ、セレネが先頭に立って剣を構えた。
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