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I ニナルティナ王国とリュフミュラン国
ゴーレムさんに出会った!! 1 逃げる少女b
しおりを挟むこの男達の中ではとても『よいところ』をぶち切られる様な、突然の第三者の声に少女も含めて全員が声の方向に振り向くと、少女と同じ歳くらいのひょろっとした全裸の少年が居た。男達にはそっちの気が無かった為に良い所をぶち切られた挙句、男の裸を見せられて顔が不快で歪む。
「ご歓談のところ申し訳ない。ここはどんな世界で私はどんな姿をしていますか?」
「へ?」
一瞬男達は何を言っているのか理解出来ず固まったが、直後に腹を抱えて笑い出した。
「な、なんだコイツ、頭がイカレてやがる! ここはワンダーランドかよ、いくら何でもこりゃリュフミュラン軍の者じゃねえな」
二番目の子分格の男が頭の横で指先をくるくる回しながら、大笑いして途切れ途切れに言った。この軍服3人組はニナルティナ王国軍の軍人でリュフミュラン国に侵攻中だが、少年と少女二人には与り知らぬ所だった。
「ご歓談じゃないです! 助けて下さい襲われてるんです!」
「おいおい、あんな奴に助け求めるか普通よお」
少女が哀願するように助けを求めて叫ぶが、腕を掴む大男は笑いながら玩具を振り回す様にぶら下げる少女を軽々と振った。
「……」
全裸の少年は状況がよく理解出来ないという感じで、キョロキョロ周囲を見渡すと唐突にシュッと中年サラリーマンの様に手刀を切った。
「では私はこの辺で失敬」
石と鉄筋の塊、無機質の今人間に生まれたばかりの元デパートとしては、最大限過去見た事がある中の人達の行動を自然にトレースしたつもりの物だった。
「ちょっと待って下さい! 助けて」
少女が絶叫するも全裸の少年はくるりと踵を返すと、すたすたと何の余韻も無く立ち去っていく。
「あれは……本物だな。ほっとけ、こんな上物が一人でうろついている偶然もありゃ、あんなのも居合わせる偶然、二つの偶然が同時に起こったって事だ」
ガラの悪い不良軍人の癖に、妙なまとめをして綺麗に収めようとする。
「よし仕切り直しだ、その前にこの袋はなんかやっぱり邪魔だな取っとけ」
変に腰を折られて調子が狂ったのか、これまで大男は無視して来た背中の麻袋が気になりだして、強引にむしり取ると無造作に放り投げた。
「返して! 返して下さい、大切な商品なんです!」
(……商品?)
スタスタと歩き去っていた全裸の少年の耳がピクッと反応する。
「ははははは、こんなもんが商品だって? 今時こんなガラクタ売れる訳ねーだろ!」
大男は少女を掴んだまま、地面に散らばった普及品のポーションや聖水らしき瓶を、鉄板入りの軍靴でバキバキと簡単に踏みつぶしていく。
「待てい」
再び全員が振り向くと先程の全裸の少年が戻っていた。少年になったばかりの元デパートは、当然ただの容れ物だから実際に働いていたのは中の人達だが、その中の人達が時折味わった態度の悪い客、商品の盗難やアクシデントなどが走馬灯の様にフラッシュバックして来て、我が事の様に怒りが沸き上がって来ていた。
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