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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

南に向かえ 下 魔戦車を止めろ

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「フルエレちゃんはニナルティナ港湾都市に引っ越ししてから何をしていたのですか?」
「猫呼が開いた新たな喫茶店で店員してるの!」
「ほう、それは良いですね」

 植土ウェドは世情に疎いというか魔法機械以外興味が無いようで、割と近くにいる雪乃フルエレが女王になったとか特に知ら無かった様だ。

「路面念車にも乗りましたよっ!」
「僕もつい最近ようやくライグ村からレナード市に引っ越ししたのですが、目と鼻の先に路面念車の駅があるのにまだ乗っていません……」

 旧ニナルティナ王国が雪乃フルエレ達に滅ぼされた後、東側一部のレナード市が西リュフミュランとして分割され、本来はリュフミュラン王の物になるはずだった物が、衣図いずライグがまんまと占拠して既成事実化されてしまった。それから両者の不和は続いている。元々レナード市は有未うみレナード公の本拠地であった場所だから皮肉な事となっている。

(……アルベルトさん……)

 自ら話題を振っておいて、不意に戦死した為嘉なかアルベルトと路面念車で仲良く宮殿に通った事を思い出し、深く悲しくなった雪乃フルエレだった。

「? フルエレちゃん?」
「昔話中悪いが、聞かせてもらおう。何でこんな所で魔戦車が破壊されている? 理由が知りたい」

 フルエレが悲し気な顔をしたのを感じて、セレネは性格が悪い振りをして話題を断ち切った。

「今フルエレが昔話に花を咲かせていたのです、邪魔をしないで下さい」

 セレネはコケた。

「馬鹿か?」 
「いいの有難う砂緒セレネ。そうね植土さんどうして此処に魔戦車があるのか聞かせて下さい!」
「……これだけの破壊だと修理費は大変お高くなります……」

 あからさまに植土は誤魔化した。

「そんな事は聞いておらんぞ!」
「セレネさん、そうツンケンしないで」
「うるさいわっ」
「……僕と貴方達にとって、とても良いお知らせとは思えません。実は衣図ライグはオゴ砦を本拠地にして日々領土を拡張しており、今夜はショバ代を支払わないトリッシュショッピングモールを魔戦車四両で夜襲しようとしているのです……それは大変な費用が掛かります」

 一瞬一同は植土の言っている事が理解出来なかった。

「ショバ代ってあからさまに山賊やないか」

 砂緒が呆れて言った。

「きっときっと……衣図さんの事だもの深い理由があるのよ」
「どんな理由だ??」
「例えば家族が、リズさんが敵に捕まって脅されてるとか、リズさんが不治の病で沢山のお金がどうしても必要とか……そうでしょう植土さん??」

 フルエレが純粋な目で植土を見た。

「いえ、リズさんもとてもピンピンして元気にしていますし、誰も脅されたり困ったりしていません。純粋に彼の領土欲で動いているだけです」

 フルエレは一瞬目が点になった。

「そ、そう」
「見も蓋も無い話だな。これで衣図ライグの反意がはっきりしたな。で、最初の質問に戻るが何で此処で魔戦車が擱座してるんだよ?」
「それは、本拠のレナード市から魔戦車を追加派遣しようと乗って来た所に、トリッシュショッピングモールの雇った傭兵が隠れていて、魔ァールPG-7で撃たれてしまい無限軌道を破壊されたのです。修理費用はかさみますが命拾いしました」

 トリッシュショッピングモールとは以前サッワ達が守った街とは別に、商人達が支配する商業城塞都市である。

「RPG-7で狙われて生きてたとは、いやあ命拾いしましたなあ」
「殺伐としてるわねえ」

 話に付いて行けない猫呼がようやく口を開いた。

「よし、話は決まったな! 早速その残りの魔戦車三両を破壊しに行くぞ!」
「え~~~今から行くのですか?? もう夕方ですよ」
「今日は流石に強行軍ねえ」
「猫呼先輩なんか後ろに乗ってるだけですよね!?」
「何よその言い方!!」
「喧嘩しないでよ……」

 フルエレは睨み合う猫呼とセレネの間に割って入った。

「仕方がありませんね、セレネの言う通りサクッと魔戦車を潰しに行きましょうか!」
「砂緒……」

 突然砂緒が珍しくセレネの肩を持ったのでセレネは嬉しくて仕方なかった。

「こうやって時々機嫌を取る事も重要なんです」
「ナヌ?」
「口で言っちゃダメ」

 等と言いつつもセレネは機嫌を取ろうとする気があるだけでも嬉しかった……


「砂緒くんの事です、大丈夫だとは思いますが気を付けて下さい!」
「あいあい」
「植土さんも伏兵に気を付けて修理を続けて下さ~い!」

 砂緒達は早速植土から衣図ライグ達魔戦車部隊の集結ポイントを聞き出し魔輪で向かい始め、フルエレは片手で大きく手を振り続けた。

「暗くなるまでに追い付けば良いですが」
「そうだな~魔戦車が見つかり次第頼むぞ砂緒」
「分かってるとは思うけど、殺しちゃダメよ」
「あいあい」

 等と会話している内に、全速力で走る魔輪はすぐに魔戦車三両の影を捉えた。丁度日が傾き掛けを見計らい、夜襲の準備を始めている所だった。

「今動き出した所ですね、フルエレ魔戦車に並走して下さい飛び移ります! セレネは氷魔法で、もし撃って来たら盾を作ってフルエレを守って下さい」
「あいよ」

 言いながら砂緒はサイドカーの上に立った。

「おい~私はどうするのよ?」
「流れ弾に当たるとマズいです。可愛いネコミミさんは減速するので飛び降りて下さい」
「そ、それ本気で言ってるの??」
「本気です。さ、早く」

 猫呼は砂緒の無表情な顔の虚空な瞳を見て冷や汗が流れた。

「鬼ーーッッ!! はぁはぁ、うりゃっ、うぎゃああああああああ」

 減速したセレネの魔輪から猫呼は飛び降りて地面にゴロゴロと転がって行った。

「自分で回復魔法を掛けておいて下さ~~い!」
「大丈夫……よね?」
「滅茶苦茶だなお前」

 地面にうずくまってピクリとも動かない猫呼はどんどん小さくなって行った。
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