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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
喫茶猫呼再開記念大祝賀会 上 メランの……
しおりを挟む―新ニナルティナ、喫茶猫呼が入る冒険者ギルドビル……の裏。
「メランあの……何なのでしょうか、こんな所に呼び出して……喫茶猫呼再開記念大祝賀会も、常に会話の中心である大人気者の私が居なければ何も回りません」
喫茶猫呼は少し前から営業再開していたのだが、戦争終結から一か月を過ぎて雪乃フルエレの状態がようやく見た目上は普通に戻って来た為に、フルエレを勇気付ける為にも猫呼が知人達を呼びパーティーを開いているのだった。しかし開始早々メランが砂緒をビルの裏に呼び出し、そうなのにモジモジしてなかなか何も言い出さないのだった。
「ハハ~~ン、セレネがまだ学校から帰宅していないのを良い事に……メランも割と肉欲が強い方なのですねえ、ハイハイこれですか? ん~~~~~~」
砂緒はもじもじするメランの両肩に手を置くと、目を閉じ口をタコさんの様に尖らせた。以前セレネにも同じ事をしたが……
「違いますっ!! 離して下さい気持ち悪い!!」
ドバシッ!!
メランは護身術の講習会か? というくらい光の速さで思い切り強く砂緒の両手を叩き払い落した。
「あうっ何するですか? 気持ち悪いとは天邪鬼も過ぎますぞ」
「逆です! 今日は以前の間違いを訂正したくて……取り消したくて来ました!!」
ポカーンとした砂緒は一瞬メランが何を言いたいのか理解出来なかった。
「あの、つまり? と、言いますと?」
「あのね……メドース・リガリァ攻略戦が始まる前にね、あたかも私が砂緒さんの事好きみたいな事ほのめかしたじゃない? アレね取り消したいの……ホラ、総攻撃が始まる前で気が立っていたと言うか、変なテンションなってて私どうかしてたみたい……普段の生活に平時に戻ってみて毎日砂緒さん見てると、アレ私なんでこんな変なポンコツが好きになってたんだろ? おかしいなって気がして来て、それで冷静に考えてみて告白したの取り消したいの……ゴメンなさい!! でもでも砂緒さんとは以前みたいに友達として接したいです! 私砂緒さんとセレネさんかフルエレさんの仲を応援しますから!!」
しかし砂緒はまだまだポカーンとしていた。
「……で? さぁキスしましょう」
「人の言ってる事ちゃんと聞けやーーーだからもう好きじゃないんだって」
メランはラチがあかなくて言葉がセレネみたいになった。
「え、急展開過ぎて……私これからセレネの目を盗んで貴方と浮気しまくる計画立ててたのですが」
「気持ち悪過ぎるわ、とにかく告白は取り消しますね」
「じゃあ、最後のお別れにキスしましょうか?」
なおも砂緒は口を尖らせた。
「いい加減話聞け?」
嫌悪感を露わにするメランを見てとうとう砂緒は状況を理解した。
「……分かりました。今まで通り友達付き合いはしてくれるのですね?? じゃあこれからはメランに事あるごとにキツイ依頼をしまくり、喫茶猫呼のメニューは通常料金の倍を受け取り、さらに今やってる祝賀会の手伝いもしてもらいます」
「最悪なヤツだな」
「も、もういいですっ! 今日はキス出来ると思ったのにっ!!」
ダダッと砂緒は走り出した。メランは走り去る砂緒の横顔の目にキラッと涙が光るのが見えた。
「あ、あれ悪い事しちゃったかな……心が痛むな」
砂緒は本気で少しショックだった……メランは告白を取り消した告白が少し性急だったかなと反省した。
店内、祝賀会会場。今喫茶猫呼には主人公砂緒と同盟女王で店員の雪乃フルエレと、ゲストのメランとオーナーの猫呼と幽霊店員兎幸とボディーガードで闇の冒険者ギルド員のシャルとライラとバイト店員のイライザと兄で軍人のニィルと国主の有未レナード公と自称美人秘書のメガネとコックのイェラと芹沢老人ら信頼のおける数名の常連客が居た。さらに隠れる様にジェンナとカレンと奴隷のフゥーも居た。
「猫呼ちゃんや、七華嬢ちゃんの顔が見えんのじゃが……七華ちゃんはどうしたのかのう?」
芹沢老人が大好きな七華がなかなか見つからない事にしびれを切らし店内をキョロキョロ見回しながら言った。しかし仲間の常連客が芹沢老人の手を掴んで静かに首を振った。その顔には緊張感があった。
「おじいさん余計な事を一言でも言うと出禁くらうよ」
「出禁ならまだ良いよ、下手すると命失うよここは」
常連客達はこの店が只ならぬ人間が出入りする危ない場所であると薄々気付いていたが、女神の様なフルエレやイェラに会いたくて命を削る思いで通っていた。そうで無くとも嫌われたくないという想いも強かったが、芹沢老人はどうしても七華に会いたくて思わず聞いてしまった。
「お客さ~ん、この店は店員のプライバシーに関わる様な質問は」
怖れていた通り、ライラが背中の鎌に手を掛けながら恐ろしい顔で近寄って来た。
「ヒッ言わんこっちゃ無い、くわばらくわばら」
「客にいきなり鎌を振ろうとする店って何だよ!?」
「爺さんとにかく謝れっ」
仲間の常連客達が必死に老人を守ろうとしたが、そこに猫呼がササッとやって来た。
「ライラ止めなさい! 平和になったのにいきなり血を見てどうするの!」
「も、申し訳ありません猫呼さま……」
メイド服のライラは展開し掛けた鎌を背中に戻してシュンとして離れて行った。
「芹沢さんごめんねえ、七華ちゃんは此処で働いてるのが親バレして連れて帰されちゃった!」
「なんと……!?」
芹沢老人はうっすら目に涙を貯めながら天井を仰ぎ見たのだった。
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