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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
笑うジグラトのセールスマン 上
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「おやっ美しい姫よ大丈夫ですかな?」
「お嬢さん、大丈夫かい?」
貴城乃シューネと猫弐矢が瞬間的に同時に動きしゃがみ込み、こぼれたティーポットを拾おうとする。しかし彼ら二人の動きが完全にシンクロしていた為に、七華の手に触れてしまうというロマンチックなシチュエーションは発生せず、彼ら同士の手が触れ合ってしまうという不気味な状況が発生して思わず睨み合う二人。
「むっ」
「オエッ」
しかし七華は眼前で睨み合う二人を間近でまじまじと見て、さらに二人が砂緒とスピナに瓜二つである事をしっかり確認した。
「あ、あの、その申し訳……」
「自ら給仕を買って出てその体たらく、ちょっと来い!! あっ申し訳ありませんな、すぐに戻ります故」
戸惑う七華の手首を強引に掴み、リュフミュラン王は控室に彼女を連れて行った。こぼれた紅茶は侍女達がサッと片付けた。
「こらっ何をやっておるかっ!!」
「申し訳ありません……」
七華はこの父王には頭が上がらなかった。
「……分かっておるとは思うが、あのお客人が硬くなる化け物にそっくりな事は絶対に口に出すな。あんな者と顔が似ておると知れれば気分を害されるからな、それともう一方の御方のネコミミも突っ込むなよ、地方の特殊な風習なのであろう、分かったな!」
王はスピナの事は眼中に無かった。そして王は振り向きざまに指を差して応接の間に戻って行った。
「申し訳ありません、行き届かない娘でしてな、しかももう数年で二十歳なのに嫁の貰い手もまだ決まっておりません、お恥ずかしい限りですワハハ」
「そ、そんな話しないで下さい……」
赤面し、もはや何も言えなくなり小さくなるだけの七華だった。
「いえ、こんなお美しい姫は東の地にもなかなかおられません。私は一瞬で心奪われました」
「お、おお? 本当ですかな」
「怖がらなくて良いよ、シューネ様はあんな陰険な顔をしているけど、ごく一部にまともな部分も残っていそうだからね」
「ま、まあっ」
七華は華々しい外交デビューを果たすつもりだったが、自分の事を話題にされまくってどうして良いか戸惑うばかりだった。
「ははは、ではシューネ様の第二夫人にでもして頂こうかな?」
「第二夫人等と……是非最初から独身の私と真面目にお付き合いして頂きたいくらいです」
「やめて下さいお父様、御迷惑ですよ……」
こんな風に自信ありげにグイグイくるタイプの男は見た事が無く、戸惑う七華だった……
「女性を外交の道具かの様に……ウンザリするね、早く帰りたいよ」
美形とは言え男のネコミミ姿で真面目な事を言われても……七華は今度は笑いを堪えるのに必死だった。
「もう良い、賑やかしのお前の役割は終わりじゃ下がっておれ!」
「は、はい……」
父王に言われるまますごすごと七華は部屋の隅に下がって行き、置物の様に固まって下を向いた。
(あのネコミミ、猫の子さんの関係者なのでしょうか?)
「所で何故東の地のあなた方が突然リュフミュランを御訪問されて、この様に宝物を沢山進呈して下さるのかな? 普通であれば同盟首都のニナルティナにお行きになるのがセオリーでは?」
王様が料理を食べながら聞いた。
「何故と? そんな事、偉大なリュフミュラン王様に一度お会いしたかったからです! 神聖連邦帝国においてもリュフミュラン王の事はつとに有名で話題になっております! なあ猫弐矢殿?」
「え? まあそーですねえ」
猫弐矢は聞いた事も無かったが、適当に話を合わせた。
「な、なんとそれは本当ですかな!?」
王は目を輝かせた……
「しかし……残念なのは当のセブンリーフでのリュフミュラン王への不当な低評価でしょうな」
「なっなんと……そうなのですわ……」
今度は王様はため息をついた。
「本当に北部海峡列国同盟の女王、雪乃フルエレさまは何を考えておられるのでしょうか? 元はと言えばあの旧ニナルティナを滅ぼす端緒となった戦いは、そもそもはリュフミュランが主導した物。それをユティトレッド魔導王国の計算高い王が横から貴方の功績を掠め取り、遂には同盟を半ば乗っ取る様に勝手に女王を決めたり同盟を自分の意のままに操ろうとしておると、リュフミュラン王をないがしろにし過ぎであると、そう皆が言い合っております!」
「なんと……その様にワシの事を。そうなのです、同盟はワシを蔑ろにして……」
(この男、一体どこまでセブンリーフの事を把握しておるのか?)
感動しきりの王様に比べ、横に控えていた家臣は貴城乃シューネのあまりの事情通ぶりに不審感が募った。猫弐矢はこういうやり取りが嫌いなので一人でもくもくとぱくぱくお菓子を食べ続けた。
「王様、華やかな親善の場で恨み言は恥ずかしい物、話題を変えられては?」
危惧した家臣が小声で王様に耳打ちした。家臣の真意は貴城乃シューネの怪しさを警告したつもりだったがそれは王様には伝わっていなかった。
「ふむ……では未知の東の地では今どの様な政治が行われておるのでしょうか?」
王様は家臣に言われるまま素直に話題を変えた。
「はい、貴方達が東の地と呼ぶ我々の神聖連邦帝国では、古くから王と民が互いに率先して協力し合い巨大なジグラトを建造し、王と民が心をいちにして政治を行っています」
「ほほう? 巨大なジグラトを……」
「ええ、ジグラトを建造する事は民が心を一つにする大イベントにて、皆が喜び勇んで石を運んだり綱を引いたり建造に協力致しまする。もちろん人力で不可能な部分は魔ローダーや魔重機で建造しますが……」
「なんとも神秘的かつエレガントな政治ですな……我が国も是非とも参考にしたい」
リュフミュラン王の言葉を聞いて貴城乃シューネの目が光り、猫弐矢はヤレヤレと頭を抱えた。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
貴城乃シューネと猫弐矢が瞬間的に同時に動きしゃがみ込み、こぼれたティーポットを拾おうとする。しかし彼ら二人の動きが完全にシンクロしていた為に、七華の手に触れてしまうというロマンチックなシチュエーションは発生せず、彼ら同士の手が触れ合ってしまうという不気味な状況が発生して思わず睨み合う二人。
「むっ」
「オエッ」
しかし七華は眼前で睨み合う二人を間近でまじまじと見て、さらに二人が砂緒とスピナに瓜二つである事をしっかり確認した。
「あ、あの、その申し訳……」
「自ら給仕を買って出てその体たらく、ちょっと来い!! あっ申し訳ありませんな、すぐに戻ります故」
戸惑う七華の手首を強引に掴み、リュフミュラン王は控室に彼女を連れて行った。こぼれた紅茶は侍女達がサッと片付けた。
「こらっ何をやっておるかっ!!」
「申し訳ありません……」
七華はこの父王には頭が上がらなかった。
「……分かっておるとは思うが、あのお客人が硬くなる化け物にそっくりな事は絶対に口に出すな。あんな者と顔が似ておると知れれば気分を害されるからな、それともう一方の御方のネコミミも突っ込むなよ、地方の特殊な風習なのであろう、分かったな!」
王はスピナの事は眼中に無かった。そして王は振り向きざまに指を差して応接の間に戻って行った。
「申し訳ありません、行き届かない娘でしてな、しかももう数年で二十歳なのに嫁の貰い手もまだ決まっておりません、お恥ずかしい限りですワハハ」
「そ、そんな話しないで下さい……」
赤面し、もはや何も言えなくなり小さくなるだけの七華だった。
「いえ、こんなお美しい姫は東の地にもなかなかおられません。私は一瞬で心奪われました」
「お、おお? 本当ですかな」
「怖がらなくて良いよ、シューネ様はあんな陰険な顔をしているけど、ごく一部にまともな部分も残っていそうだからね」
「ま、まあっ」
七華は華々しい外交デビューを果たすつもりだったが、自分の事を話題にされまくってどうして良いか戸惑うばかりだった。
「ははは、ではシューネ様の第二夫人にでもして頂こうかな?」
「第二夫人等と……是非最初から独身の私と真面目にお付き合いして頂きたいくらいです」
「やめて下さいお父様、御迷惑ですよ……」
こんな風に自信ありげにグイグイくるタイプの男は見た事が無く、戸惑う七華だった……
「女性を外交の道具かの様に……ウンザリするね、早く帰りたいよ」
美形とは言え男のネコミミ姿で真面目な事を言われても……七華は今度は笑いを堪えるのに必死だった。
「もう良い、賑やかしのお前の役割は終わりじゃ下がっておれ!」
「は、はい……」
父王に言われるまますごすごと七華は部屋の隅に下がって行き、置物の様に固まって下を向いた。
(あのネコミミ、猫の子さんの関係者なのでしょうか?)
「所で何故東の地のあなた方が突然リュフミュランを御訪問されて、この様に宝物を沢山進呈して下さるのかな? 普通であれば同盟首都のニナルティナにお行きになるのがセオリーでは?」
王様が料理を食べながら聞いた。
「何故と? そんな事、偉大なリュフミュラン王様に一度お会いしたかったからです! 神聖連邦帝国においてもリュフミュラン王の事はつとに有名で話題になっております! なあ猫弐矢殿?」
「え? まあそーですねえ」
猫弐矢は聞いた事も無かったが、適当に話を合わせた。
「な、なんとそれは本当ですかな!?」
王は目を輝かせた……
「しかし……残念なのは当のセブンリーフでのリュフミュラン王への不当な低評価でしょうな」
「なっなんと……そうなのですわ……」
今度は王様はため息をついた。
「本当に北部海峡列国同盟の女王、雪乃フルエレさまは何を考えておられるのでしょうか? 元はと言えばあの旧ニナルティナを滅ぼす端緒となった戦いは、そもそもはリュフミュランが主導した物。それをユティトレッド魔導王国の計算高い王が横から貴方の功績を掠め取り、遂には同盟を半ば乗っ取る様に勝手に女王を決めたり同盟を自分の意のままに操ろうとしておると、リュフミュラン王をないがしろにし過ぎであると、そう皆が言い合っております!」
「なんと……その様にワシの事を。そうなのです、同盟はワシを蔑ろにして……」
(この男、一体どこまでセブンリーフの事を把握しておるのか?)
感動しきりの王様に比べ、横に控えていた家臣は貴城乃シューネのあまりの事情通ぶりに不審感が募った。猫弐矢はこういうやり取りが嫌いなので一人でもくもくとぱくぱくお菓子を食べ続けた。
「王様、華やかな親善の場で恨み言は恥ずかしい物、話題を変えられては?」
危惧した家臣が小声で王様に耳打ちした。家臣の真意は貴城乃シューネの怪しさを警告したつもりだったがそれは王様には伝わっていなかった。
「ふむ……では未知の東の地では今どの様な政治が行われておるのでしょうか?」
王様は家臣に言われるまま素直に話題を変えた。
「はい、貴方達が東の地と呼ぶ我々の神聖連邦帝国では、古くから王と民が互いに率先して協力し合い巨大なジグラトを建造し、王と民が心をいちにして政治を行っています」
「ほほう? 巨大なジグラトを……」
「ええ、ジグラトを建造する事は民が心を一つにする大イベントにて、皆が喜び勇んで石を運んだり綱を引いたり建造に協力致しまする。もちろん人力で不可能な部分は魔ローダーや魔重機で建造しますが……」
「なんとも神秘的かつエレガントな政治ですな……我が国も是非とも参考にしたい」
リュフミュラン王の言葉を聞いて貴城乃シューネの目が光り、猫弐矢はヤレヤレと頭を抱えた。
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