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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
貴城乃シューネ、リュフミュランへ行く 下 七華と出会う……
しおりを挟む次の日。港から黄金色の魔ローダー金輪が部下の操縦者の手によって船に積み込まれた。
「何ですか、シューネ様魔呂を持って行かれるのですか? 威嚇になりませんか」
「ご安心を、私の桃伝説と現在絶賛テスト中の新型機、GSX-R25四機はちゃんとクラウディアに置いていきますから。どんな暴動があろうと簡単に抑止してみせましょう、ホホホ」
夜叛モズが不気味に笑った。
「猫弐矢さま……」
「ご安心を、クラウディアで暴動など起きませんから。僕が言っているのは友好親善に行くのに魔ローダーは余計では? と言ってるのです」
そこにやって来たばかりの貴城乃シューネが口を開いた。
「そうだ、猫弐矢殿はそうでなくては張り合いが無いな。安心したまえ、この魔呂を武力の脅しに使うつもりは全く無い。今回の親善ではリュフミュランにコンテナ何個とかの金銀財宝を贈る事になっているから、魔呂でも無いと運べないんだ。まあ出来ればタカラ山監視砦という所にも視察に行ってみたいが」
シューネはまだタカラ山監視砦が新城に建て替えられた事を知らない。
「……そんな所魔ローダーで行ける訳無いでしょう! 大騒ぎになって砂、いや兎に角なるべく見せない様に努めて下さい」
「ああ、西の地の先輩である君の忠告は心して置こう。ではそろそろ参ろうか?」
「ええ」
貴城乃シューネの言葉を聞いて、心配げに見ていた伽耶に向かった。
「猫弐矢さまお気を付けて……」
「僕は君の方こそ心配だよ、あの変態鳥男の事とか……それに君は良く山に花や虫や鉱石を調べに行ったりするけど、最近山奥や森で謎の新種のモンスターを見たとか言う噂も絶えない。暗闇の中で赤酸漿の様にビカビカ光る眼を見たという者もいるらしいよ」
伽耶クリソベリルはキョトンとした。
「あはは、猫弐矢さんって本当にメルヘンなんですね! そんなのただの噂に決まっていますよ~暗闇を怖がる人間の習性が見せる幻ですからっ!」
「結構ドライなんだね、僕はこの噂はガチだと思っているよ、カガチだけにね!」
「………………うん? はい」
伽耶はひと目会った時から猫弐矢の事が好きなのだが、やはり時々この人は変わっているなと思った。
「じゃあ、本当に行くよ」
「は、はい……さっきからずっと手を握りっぱなしですっ少し痛い」
「ああ、これは、じゃあ」
二人は赤面しながら手を振って別れ、やがて大型船に乗って出航して行った。
「七華さま、本当に給仕などされるのですか?」
「だからすると言っているでしょう、しつこいですわねっ」
七華は新ニナルティナの喫茶猫呼でのいかがわしいバイト内容が親バレし、父王から首に縄を掛けられて連れ戻されていた。すぐに解雇していた侍女達が再び召集されたが、七華にとっては再び退屈で憂鬱な毎日の繰り返しに戻ってしまっていた。
(……喫茶猫呼で胸にチョコレートを挟んだり、街が急に襲撃されてさっきまで乗っていた路面念車が蹴飛ばされたり、わたくしの事を無言で慕いまくる不器用な男に再会したり、ニナルティナの日々は短くも刺激的でしたわ……嗚呼またあの様な興奮を味わいたい、ここから脱出してもう一度浮揚する為にも、この外交の場で華々しくデビューするのですわっ!)
七華は事前に家臣達から聞いた、謎の東の地からやってくると通告されていた神聖連邦帝国の使者達に、侍女達を押しのけて王女自ら紅茶を振舞うと、厳しく偏見に満ちた父王に頼み込みなんとか許可を取り付けていたのだった。
クラウディア出航から二日後、猫弐矢と貴城乃シューネを乗せた大型船は、砂緒と雪乃フルエレがまだ初々しかった頃、二人で魔輪でデートした砂浜近くの東の港に到着していた。
「黄金色の魔ローダーですかな、こんな程度では驚きませんが、い、一体何を?」
見るからにビビっている家臣が、着いたばかりの大型船からいきなり魔呂が出て来て何事かと問いただした。
「これは申し訳無い。リュフミュランの王様に人力では運びきれない程の宝物を献上しようと魔呂の力を利用する事に……」
貴城乃シューネはクラウディアとはうって変わって借りて来た猫の様に低姿勢で応えた。そのシューネを猫弐矢は白い目で見ていた。
「なんと! このコンテナの数々の全てが献上品とな?? それは凄い、王様もお喜びになろう」
そして整備された歓迎式典会場に二人は案内された。
「おおっ其方らが神聖連邦帝国から参られた御使者ですかな!? 遠路はるばるご苦労であるな」
リュフミュラン王は努めて決して威厳を失わない様に振舞った。
「神聖連邦帝国の聖帝陛下の臣、貴城乃シューネに御座います。そしてこの者は連邦を構成する国の一つ、クラウディアの代表、猫弐矢で御座います」
「お見知りおきを」
シューネは要は神聖連邦は複数の国を配下に持つ巨大な国であると誇示する為に猫弐矢を連れて来たのだった。
「そ、そうであるか!? それは凄い威勢ですな……」
「これこれ、早く偉大なリュフミュラン王へ献上する品をこれへ!」
パンパンとシューネが手を鳴らすと、配下の者達が荷台に乗せた大量の金銀財宝を運んで来た。
「おおお、凄い!?」
「これは今回王様にお贈りした品物のごく一部、コンテナにはさらに大量の宝物をお持ちしました。つまらない物ですがどうぞお収め下さい」
シューネが深々と頭を下げたので、猫弐矢も嫌々と頭を下げたのだった。
「な、なんとこれが一部とな!? こ、これ、何をしておる? 自分で下女を押しのけ給仕をするなどと言いながら、遅いぞ!」
リュフミュランは紅茶を自ら振舞うと言った七華を呼んだ。
「お、おは、お初に御目に掛かります。第一王女の七華リュフミュランと申しま……」
ガチャッ
豪華なドレス姿で楚々と近寄って、伏目がちに紅茶を注ごうとした七華が一瞬客人二人の顔を見て、いきなり紅茶の入ったポットを床に滑り落とした。琥珀色の液体が大理石の床にどぼどぼと広がって行く。
(え、眼鏡を掛けたスピナに、青年に急成長した砂緒さま!? どういう事ですの)
七華は二人の男の顔を見て混乱して固まった……
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