魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記(工事中2)

佐藤うわ。

文字の大きさ
上 下
337 / 588
III プレ女王国連合の成立

エピローグ Ⅱ ふたりの旅立ち

しおりを挟む

「アンジェ……誰も……そんな終わりにさせるかあああああああああっっ!!!」

 紅蓮がひときわ大きな声で叫ぶと、逆向きに地面に突き立てた剣から、黄金の粒子が大量に流れ込み、巨大な円形に線が走って光ると、噴出する地下水のしぶきの様にあちこちから光が漏れ出して来た。

「アンジェッ出ろっっ!!」

 ゴバアッッ!!!
 地面のあちこちから噴出していた光がさらに大きくなり、やがて巨大な間欠泉の様に天に向かって黄金色の光の粒子と共に地面の岩や土や砂が吹き飛んで行く。

「きゃーーーっ何よ!?」
「何だ、これは……」

 美柑も謎の部隊の兵士達も顔を覆って巨大な噴出から身を守った。
 パァンッッ!!
 最後に紅蓮がセブンリーフに来てから冒険者として取得していた大切なエイチファイアーブレードの刀身が目に見えない大きさの欠片となって弾け飛んだ。

「危ないっ」

 美柑が叫んだが、紅蓮の剣は柄から下が完全に消失して、一連の動きは止まっていた。

「ふぅふぅ……」

 紅蓮は相当疲れたのか、そのまま膝を折ったまま動けなかった。

「見て、ほらっ紅蓮見てっ! 大きな穴の底に、アンジェが! ついでに貴嶋さんもっ」

 美柑が大声で指差す方を見ると、クレーターの底の中心には土と砂まみれとなってはいたが、確かに貴嶋と、彼に覆い被さって守る様に横たわるアンジェ玻璃音女王の姿が確認出来た。

「おおっ見ろ、女王陛下がっ!」
「貴嶋様もご一緒だぞ!!」

 よろよろと紅蓮は立ち上がった。そしてそのまま走り出すと、出来たクレーターの底に向かって滑り始めた。
 ズザザザザザ……

「美柑、みんな回復魔法が使える者は全力で掛けて!! 早く」
「うん、皆も急いで!!」
「ハイ!!」
「お、おい?」

 戸惑う者も居たが、多くの兵士達が一斉に紅蓮に続いてクレーターの底に滑り降りて行った。美柑と多くの兵士達が泣いていた。





 もはや早朝となり、海岸線の向こうに朝日がはっきりと昇っていた。馬には貴嶋とその後ろにはアンジェ玻璃音女王が乗っていた。そしてその前後には先程の謎の部隊、メドース・リガリァの最後の生き残り兵達が護衛していた。彼らはとにかく休む事無く西に急ぎ進み続け、既にソーナ・サガ市を越え、アリリァ湾に差し掛かっていた。

「ここまで来ればよもや追手も来ますまい。我らはこれよりアリリァ海を臨む湾を西に進み、まだ人知れない奥地に隠れ里を開き、そこで静かに暮らしましょう……」
「そ、そうなんだ……」

 貴嶋が護衛を買って出ていた紅蓮と美柑に、もはやこれ以上は迷惑は掛けられぬという思いから暗に別れを切り出した。

「美柑、紅蓮、最強の貴方達が守ってくれた以上、此処まで何の不安もありませんでした。そして貴方達と一緒にした冒険の想い出はいつまでも私の宝物です……有難う……」

 アンジェ玻璃音は馬上から深々と頭を下げた。それを見て貴嶋も同じ様に頭を下げた。

「ううん、ついて来たかったから来ただけ! 私も貴方達と出会えて楽しかったよっ私も絶対忘れないから! あフェレットも荷物運びお疲れさんね」
「あいあい……」

 強行軍に付き合わされたフェレットも渋々笑顔で応えた。

「アンジェ行ってしまうんだね、しかも貴嶋サンと!」
「うふふふ、そうなのです。知らぬ内にこんな事になりましたわ」
「紅蓮残念でしたっ意外だけど応援するわっ」

 アンジェは貴嶋の背中にもたれ掛かった。

「済まぬな少年」
「たはは」

 紅蓮と貴嶋とアンジェは笑い合った。
 
「そうですな、では子は……何人儲けましょうや? 五人ですかな十人ですかな、働き手が必要となるのです、そこら辺りは覚悟してもらいますぞ!」

 突然貴嶋が振り返ってガラにも無い事を言い出してアンジェは困惑して赤面した。

「な、何を突然言うのですか、皆の前ではしたない!!!」
「いえ、地下迷宮での仕返しで御座います」
「じゅ十人って貴嶋さん……」
「?」
「もうっ!!」

 激しく赤面して貴嶋の背中を押したアンジェを、兵達がハハハと声を上げて笑った。皆緊張から解放されて本当に爽やかな笑顔だった。

「もう本当にこれで紅蓮殿や美柑殿、そしてメドース・リガリァのSa・gaの地ともお別れですな。そしてそれと共にメドース・リガリァの地にはどんな国があり、誰が居てどんな王が居たのか、アンジェ玻璃音女王の事もかつてのウェキ玻璃音大王の栄光の事も、やがて全て土と砂に埋もれ掻き消され皆の記憶からも歴史からも忘れ去られてしまうのでしょうな、全ては儂の不明笑って下され……」

 貴嶋が頭を掻きながら自嘲気味に言った。

「いいえ違いますよ貴方、一人で生き残っても悲しいだけと言いましたが、貴方や此処にいる皆と生きていれば、そこが新たな私達のメドース・リガリァなのです。決して恥じないで下さい」

「そうだね、うん」
「そうですね、これでお別れだね」

 アンジェの話を聞いて、紅蓮と美柑が同時に頷き、そして笑顔で手を振った。二人は西に向かって進みゆく一団に向けてずっと手を振り続けた。


「行ってしまったね、あの人達は決して良い事ばかりして来た訳じゃないけど、これからは静かに幸せに生きて欲しい、ダメかな?」
「良いと思うよっ! じゃあ私達も行こっ!」
「何処に? 一度雪乃フルエレ女王に会いに行く?」
「うっ」

 紅蓮の言葉に美柑は笑顔が消えた。そして同時に長い間留守にしている海と山とに挟まれた小さき王国の父王と母上の事も思い出していた。もちろん探し求める姉、夜宵の行方についても忘れた事は無かった。

 そして貴嶋の言葉通り、北部海峡列国同盟の地と七葉後川流域の中部小国群をセブンリーフ史上初めて統一化した雪乃フルエレの女王国連合の登場と相前後して、メドース・リガリァ王国と等ウェキ玻璃音大王の存在は歴史から完全に消されてゆく事となり、メド国の地はカヌッソヌ市が併合し治める事となった……


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...