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III プレ女王国連合の成立

か、ギラギラする日。 上

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 セレネと砂緒の参戦により、同盟軍東側本隊はメドース・リガリァ軍の突撃による混乱を収拾し始め、もともと同盟軍よりも数的には少なかったメド国軍地上兵を挟撃する側に転じて来ていた。

「セレネ、お前のお陰で攻勢に転じて来たぞ。新たなゴーレム兵の投入も止まった様だ」

 馬に跨ったイェラが混戦を観戦しながら小休止しているセレネに話し掛けた。

「イェラお姉さまその馬は? 敵の??」
「いや、親切な味方の騎馬兵が譲ってくれた」
「男?」
「男だ」
「美貌だ」

 何だかんだ言ってグラマーで美人なイェラは優遇されているとセレネは思った。

「ゴーレム兵はあらかた倒しました……でも私の心は悲鳴を上げていましたよ」

 今度は砂緒がやって来て目頭を押さえた。

「なんで?」
「私最初フルエレからゴーレムに誤解されていたんです」
「へェーんで、実際は何なん?」
「はあそれが、私の正体はトウウェキ玻璃音大王らしいです」

 これは我々が住む世界に換算すると、自分の前世はナポレオンだとか言い出すかなり恥ずかしい発言に等しい。

「あはははは、お前がそういうタイプの冗談言うとはな……あーーーあっ」

 しかし突然セレネが少し赤面した。

「どうしたんですか?」
「我がユティトレッドのセレン・ディピティー王女の嫁入りの事知ってたんか? それで前世からあたしと結ばれる運命だって? 今度は手の込んだロマンティックな事言い出したな」

 等と言いながらもセレネはムフフと笑いが止まらない様子だった。 

「敵が撤退して行くぞ! どうするセレネさんとやらよっ!」

 今度は衣図ライグが馬で駆けて来た。

「もはや少数の兵を追い掛けて伏兵等にあってもつまらん。どうせ総攻撃は迫っている、放っておけ」
「……へ~いへいへい」

 衣図ライグは少し不満顔をして去って行った。

「セレネさんセレネさん、相手は一応年上の男の人ですよ、もう少し言葉遣いを……誤解されますよ」
「いいだろ別に。私はユティトレッドの王女で同盟軍の総司令官だぞ!」
「は、はぁ」

 砂緒は自分にだけ女の子ぽくデレてくれるのは良いが、セレネの高飛車だと誤解され易い態度がいつかセレネ自身に跳ね返って来ないかと心配した。


 ―再びメドース・リガリァ、城壁裏門。

「あらあ、放流しちゃったのねえ、もったいないわぁ……」
「うわあああああ!?」

 ジェンナを逃がした直後、声がして思わず振り返るとココナツヒメが頬に手を当て、主婦の立ち話スタイルで他人事の様に呟いていた。

「どうしたのぉ?」
「す、すすすすいません、ココナツヒメ様、どの様な罰もお受けします!」

 サッワは必死に頭を下げまくった。

「どうしたの? 何故謝っているの?」
「え、だってジェンナをみすみす逃がしてしまって……」

 サッワはココナツヒメの意外な反応に戸惑った。

「あらあ、シャクシュカ隊は全てサッワちゃんの為に集めた部隊よ、そのサッワちゃんが放流したいなら、それはもう私は知らないわ。それに彼女のレヴェルも壊れちゃったしねえ、いいんじゃないの?」

 ジェンナ達美女を洗脳して連れ去った当事者のココナツヒメだが、他人事の様に言い放った。しかしサッワは弁護出来ないレベルの極悪人のココナツヒメの中に微細な優しさが残っていて少しホッとした。もちろん死んで行ったシャクシュカ隊の美女達が救われる訳では無いが……

「所で何か御用でしょうか?」

 サッワはココナツヒメの機嫌が悪化しない内に話題を返還した。

「そうそう朗報よ! 西側の同盟軍部隊共がカヌッソヌ市に入ったみたいだわぁ」

 ココナツヒメは綺麗な両手を揃えて微笑んだ。

「あ、あのそれの何が朗報なのでしょうか?」
「ああそうね、カヌッソヌ市が独立する前からね、地下空間にまおう軍の魔導士の魔力を三十年分程貯め込んだ超強力地雷型魔法瓶を埋めて置いたのよ! これで今夜、連中が寝静まった頃にドカンってさせりゃ、奴ら一網打尽よ、んふふふ」

 ココナツヒメはさも楽しい事でも話す様に美しい口に手を添えてくすくす笑い続けた。しかしサッワは冷や汗が止まらなかった。

(カヌッソヌ市って今ジェンナが向かった方角なんじゃ? ココナさまは分って言っているのかな? それとも僕を惑わして試している?? にしてもジェンナはカヌッソヌ市で休養を取る可能性が高い……なんとかしなきゃ、折角助けたばかりのに……)

「サッワちゃんどうしたのーん? まあいいわぁ、わたしちょっとクレウのヤツを探してくるから」

 ココナツヒメはスーッと消えて行った。


 ―再び砂緒の同盟軍東側本隊。

「セレネさん行っちゃいましたね、寂しいですか?」
「いいえ、セレネとはなんだか腐れ縁がありそうです。どんな時でも結局は何故か引力の様に引か合ってしまうのですよ、フフ」
「まあっ私の前で言うなんて酷いですよっ!」

 メランはぷくっと頬を膨らませた。

「さあさあ最後の仕上げですよっ!急いで進軍してメドース・リガリァ城壁でセレネとY子殿に合流しましょう!」
「は~~い!」
「あいあい」

 砂緒の号令で再び東側本隊が進軍を始めた。瞬間移動を得意とする半透明は破壊し、超長距離爆撃の猛威を振るった魔砲ライフルもセレネの蛇輪が抱えて行った。もはや進軍を邪魔する者は存在しないと確信して凄まじいスピードで進んで行く。

「砂緒さん、メド国城壁を捉えました!」

 メランが魔法モニターにメド国城壁の姿を確認して、遂に最終段階に入った事を皆が確信した。

「しかし、ここに来るまでに抵抗らしい抵抗もありませんでしたねえ……」
「そうですね、何か罠や仕掛けがあるかもしれませんね」
「そうだ、一つ私を投げてみてくれませんか? 罠があるなら私が事前に掛かって解除しておきましょう」
「へっそれはさすがに……いくら頑丈な砂緒さんと言えども」

 メランは戸惑った。

「お願いしますよ、大丈夫ですから!!」
「そ、そうですか?」

 しかし砂緒の決心は硬く、仕方なくメランはル・ツーでボールの様に砂緒を大きく振り被って投げた。

「ドリャッ!!」

 ビュンッ!!
 投げられた砂緒はかなりの距離を飛んでからバウンドして地上に着地した。

「ウヒョーーーッ一番乗りですよーーーっ!!」

 砂緒は子供の様に両手を広げると、スタタタッと軽やかに駆け出した。

『砂緒さん気を付けて!! 兎幸さん敵に動きが無いか警戒して!!』
「あいあい」

 スタタタタタ…… 

「ハハハ、心配し過ぎですよ! 何も無いようですって!! あっ?」

 カチッ
 言った直後、砂緒は何かを踏んだ。
 カッッ!!!
 ドドドドドドドド、ドーーーーーンドーーーーーーン!! ドンドンドンドン!!! ドガーーーーン!! ドォーーーーーーーーーーーン!!! ドドオオオオオオオオオオンンンン!! ドドドドドドドオオオオオオオ!!!!!!!

「キャーーーーーー!?」
「すなおーーーーっ!?」

 凄まじい閃光の後、砂緒の居た辺りからとんでもない轟音と地響きがしばらく止む事無く続き、大地を揺さぶる様な凄まじい爆発が巻き起こった。その後にもくもくと立ち上る巨大な黒雲。

「砂緒がお星さまになってしまったーーーーっ!?」
「す、砂緒さん!? 嫌ーーーッ!! こ、こんな事ならおっぱいくらい触らせてあげたらよかった……」

 メランは号泣しながら大穴が開いた地面を見つめた……
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