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III プレ女王国連合の成立

それぞれの道

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 セレネは蛇輪を無造作に地上戦が行われている方向に歩き出させた。

『ちょっとまさか敵兵達を切り刻んだり、踏みまくったりする気じゃないだろうな?』
『待って下さい、それなら私も混ぜて下さい!』

 歩み出した蛇輪を片腕を失ったままのル・ツーが慌てて追いかけた。

『勘違いするな、そんな事する訳無いだろう! 蛇輪の操縦は頼むぞ』

 そう言いながらセレネはイェラの手を取った。イェラは少し赤面した。

『? な、なんだ急に』
『はいはい、イェラお姉さま飛びますよ!』

 バシャッ
 そう言うとハッチを開け、セレネよりも高身長なイェラをお姫様抱っこにして操縦席から飛び降りた。

「ぎゃーーー!!」

 セレネは叫ぶイェラにお構いなしに装甲の各所を足場にしてピョンピョンと飛び降りて行く。

「よ~し、いっくぞ~~~!!」

 セレネはイェラを地上に置くと、剣を抜き敵兵に向けて駆け抜けて行った。

「はああーうりゃあああああ!!」

 片手で剣、片手で得意な氷魔法を放ちながら、ずばずば大量の敵兵を斬っては吹き飛ばして行くセレネ。

「見て下さい、セレネさんってあんな化け物なんですよ、怖くないですか?」
「ハハハ、ああいう強い所が好きなのです。それでは往年の硬い化け物砂緒さんも行きますか。メラン兎幸あとは頼みます!」

 等と言いながらハッチを開けて飛び降りて行った。

「ウヒョーーーッ!! ゴーレム兵共死ねえええ!!」

 砂緒はそのまま全身を硬化させると、味方の地上兵に食い込んでいて兎幸が魔ローンで排除出来ない位置にいるゴーレム兵達をガンガン殴り飛ばして行った。

「確かに似た物同士ね……」
「よし、メランさん我らは北側の山の麓にゴーレム発生源の魔法陣が無いか潰して廻ろう!」

 Y子も一応司令官の一人らしくてきぱきと命令を出す。

「は~い」
「SRV部隊は目の前の土塁と堀を壊して事前に道を開けろ! 地雷型魔法瓶に気を付けろっ」
「ハッ」

 ココナツヒメとサッワの最後の瞬間移動斬り込みを退けた同盟軍は、休む事無くメド国本国への城攻めに向けて最後の仕上げに入った。


 ―メドース・リガリァ本国本城、中庭。

 ズシャッ!!
 瞬間移動で戻って来たココナツヒメのル・ワンは片足を失い、立っている事が出来ずに着地した瞬間に崩れ落ちた。

「くそっ!!」

 ハッチを失っている操縦席からココナツヒメが転げ出て来る。首を飛ばされ片足片腕を斬り飛ばされ全身に激痛が走っていた。普通の者ならショック死していてもおかしく無い状態だが、自分に回復魔法と麻痺回復を掛けながら戦っていたのだった。

「ココナツヒメさま大丈夫ですか!?」

 比較的無事なサッワが慌ててココナツヒメの肩を支えた。

「お前達……ボロボロだな。地上兵の方はどうか?」

 そこに現れた貴嶋が言葉通り破壊されたル・ワンの機体を見て、なんとも言えない虚しい顔をして二人に言葉を掛けた。既に本人にも諦めにも似た感覚が漂っていた。

「かなり善戦していると思います。けれど我ら魔ローダー隊が撤退した事で恐らく同盟軍は勢いを回復して苦境に陥るのではないかと……」
「そうか、そうであろうな。よし撤退の合図を出させよう。其方らはスピネルからの吉報を待って少し休むがよかろう……」

 貴嶋はくるりと踵を返して去って行った。もはやサッワもココナツヒメもスピネルの事は忘れるくらいに期待は消えていた。もはや首都から停戦命令が出たとして、あの蛇輪を動かす戦闘意欲旺盛な女が止まるとは到底思えなかった。

 ―休憩室。

「ふぅ。やる事無いわあ。クレウは何処に消えたのかしら……」

 ココナツヒメはアンニョイな顔でソファーでだらんとしていた。そこにサッワが思い詰めた様な顔でジェンナの手を引いて現れた。

「ココナツヒメさま、戦闘再開まで少しジェンナをお借りして良いですか? 少し……戦闘の興奮が収まらなくて」

 サッワは顔を赤らめてもじもじした。

「まあっ! サッワちゃんったらこんな非常時にまでエロ少年なのね、サッワちゃんのそういうアバンギャルドな所大好きよ、行ってらっしゃいな」
「はいっ!」

 赤面するジェンナの腕を引っ張ってサッワはそそくさと別室に消えて行った。


「サッワさま消えて行ったシャクシュカ隊Ⅱの仲間達の為にも激しく愛して下さいまし……」

 別室で頬を赤らめながら最後の美女ジェンナが服を脱ぎ始める。

「脱ぐなっ!」
「へ? 着たまま??」
「ちょっと待ってろ……」
「は、はい?」

 戸惑うジェンナを放置してサッワはしばらく消えた。


「ほ、本当に良いのでしょうか? ココナツヒメさまのご許可はあるのでしょうか?」
「良い! ちゃんと許可も取ってあるぞ、さっさとやれ!」
「あ、あのこの方は?」

 サッワは何故か剣と鎧を携えて戻って来たが、メド国の回復魔導士も連れて来ていた。

「目を閉じて。さあ早くやれっ!」

 サッワは持って来た剣を抜こうとして脅した。

「は、はい。それでは……ジェンナ、汝を縛りし魅了の縄を解く!! ていっ!!」

 回復魔導士が目を閉じたジェンナの額に手を置き呪文を唱えると、彼女に掛けられたチャームの魔法を解除した。

「そ、それでは私はっ!」

 回復魔導士はココナツヒメを恐れて走り去って行った。

「ジェンナ……さん、目を開けてごらん?」
「ん……私は……きゃあっ!? いやっ此処はどこ?? 私は何をされたの!? 助けてっ!!」

 目を開けたジェンナは見慣れぬ場所で目が覚めて一瞬半狂乱になった。

「落ち着いて下さい! 貴方を助けに来ました! 僕は味方ですよっ!!」
「味方?? 私はどうなったの??」
「ジェンナさん貴方は魔法剣士として冒険者をしていた時にある人に捕まって魔法を掛けられていました。今から逃げ道を案内します! その鎧と剣は貴方の物です、早く装着して!!」

 ジェンナはまだぼーっとする頭で剣と鎧を見て……すぐにハッとした顔をした。

「そうだわ……私冒険者をしていた時に急に襲われて……早く逃げないと!!」
「こっちです、早く!!」

 サッワは急いで剣と鎧を装着したジェンナを城兵達に見つからない様に出口まで案内した。

「ここまで来れば城外です。今この国は同盟軍に包囲されつつあります。早く出て中立を宣言して下さい!!」
「え、ええ……君は? 坊やは一緒に逃げないの??」

 ジェンナは一緒に脱出しようとしないサッワに戸惑った。

「い、いえ僕はまだ……」
「そ、そう……じゃあね!」

 ジェンナはすぐに走って逃げて行った。

「ジェンナ……」

 と、思ったらジェンナは再び戻って来た。サッワは魅了に掛かる間の彼女と一緒にお風呂に入ったりセクハラしまくった事を思い出されたかと思い、冷や汗が吹き出た。

「坊や、君が私を助けてくれたのね、お礼を忘れてたわ! ありがとうね」

 ジェンナは戻って来てそう言うと、サッワの前髪を掻き分けておでこにちゅっとキスをした。そして再び急いで走り去って行った。

「………………」

 サッワはしばらく彼女が去った方向を見つめ続けた。
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