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III プレ女王国連合の成立

砂緒の叫び……

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 砂緒は血相を変えてル・ツーの剣を振り上げた。

『ル・ツーも同盟軍も止まれ!! 地上兵指揮官の女を捕らえたぞっ! 少し浅黒い長い髪を横に結んだ女だっ!』
「は、離せっ!」

 パララは片手で掴んだイェラを高く掲げた。

「げっイェラ、何てこった!」
「あ~~~イェラが~」

 必死に戦っていた衣図ライグとラフが頭を抱える。しかしその間もメド国側の攻撃は続いたので、戦闘が止まったのは一瞬だけだった。すぐに皆自分達が生き残る為に必死の戦いを繰り広げた。それは同盟軍魔呂隊SRV達も同じ事だった……
 カキーーン、ガキーーーン

「何故、何故誰も止まらないんですかっ!?」

 砂緒はヒステリックに叫んだ。同盟軍はその名の通り各国の共同軍であり、イェラなど事実上雪乃フルエレ女王とのコネで地上兵総指揮官になっているだけで、実際には各国各部隊の指揮官がバラバラに指揮しているだけであった。だからイェラが握り潰されようが殺されようが、動きを止める者は砂緒以外にはいなかった……

『何なんだい? なんて人望の無い王族の司令官なんだっ!』
「む、無念……」(王族じゃ無いしな)

 イェラはもがきながら眉間にシワを寄せた。

『パララ、よくやったよ! 動きを止めたル・ツーの首だけでも落としちゃいな!』
『はい! ル・ツーよ剣を捨てろ!!』

(私を投げつけてもらって救出する? いやレヴェルの腕を素早く斬り落とす? 体当たり!? どうすればっ……ああっイェラッ) 

「兎幸、魔ローンの盾をゆっくりアイツの背中側に……」

『動くな! 剣を捨てろ、浮遊盾をしまえ、それにハッチも開けるな! おかしな動きを一Nミリでもしたら即この女を握りつぶす!!』
「ぐっくそっ……うっ」

 パララはぎりぎりとイェラを握る魔ローダーの手に力を込めた。
 ガランッ
 砂緒は慌てて剣を捨てる。

「砂緒?」
「く、くそっ兎幸言う通りに魔ローンを消して! 早くっ!!」

 魔ローンの盾は異次元にしゅっと消えた……

(こ、このままだとイェラは死ぬ……どうすればっ!?)

(最後まで聞け! だがある日大王が少しの間だけ留守をしていた時に、大王の治世の反対派によって王女も娘も惨殺されてしまったらしい……)

 突然砂緒の脳裏に以前セレネから聞かされた、ウェキ玻璃音大王妻子の無残な最期という話が思い出された。普段砂緒は他人の命がどうなろうと知った事では無いが、一度でも好きになって家族の様に思ってしまった女性に対しては、前世の前世の影響からか普通の人以上に失われる恐怖心を尋常じゃ無いくらいに持っていた。砂緒は途端にどうして良いか分からなくなり、頭を抱えて叫び出した。

「うわあああああああああ、イェラーーーーーッ!?」
「す、砂緒さん!? 砂緒さんがそんなんなったら私もどうして良いか」

 普段異常に冷静な砂緒が頭を抱えて叫び出した事で、メランも兎幸もどうして良いか分からなくなった。

『よし、そこにしゃがめっ首を落とす!!』

 パララに命令されて夢遊病者の様にゆっくりとル・ツーの膝を折り、地面に両手を着いた。

「砂緒さん代わって下さい! もう私が動かしますっ」
「駄目だっイェラが握り潰されてしまう!!」

 メランが操縦席から砂緒をどかそうとするが、砂緒は必死に椅子にしがみ付いて動こうとしなかった。

「砂緒さん、あんな連中私達を殺した後でイェラさんも殺してしまうんですよ! 普段の砂緒さんだったら眉一つ動かさずに自分を優先するでしょっ!?」
「イェラは特別なんです!」
「私の命はどうでもいいの??」

 ドンドン!! ドーンドンドン!!
言い合いしている最中に、魔戦車隊がル・ツーの危機にイェラを握るレヴェルを砲撃し始めた。

「何て事をする!? イェラに当たるじゃないかっ」

 砂緒は魔戦車の砲撃からパララのレヴェルを守った。ル・ツーの肩に魔砲撃弾がばんばん当たって弾ける。

『あはは、なんだよ、味方から我らを守ってくれるのかい?』
「あ、愛情が激し過ぎて怖いわっ! 私の事などどうでも良い、コイツを切れっ! 斬れ――!!」

 イェラは四つん這いで魔砲撃から自分を守ろうとするル・ツーの砂緒に向かって叫んだ。

『無理ですっそんな事出来ません……』
「馬鹿かっ良いから切れ!」

『跳ね返し野郎が乗っているのかい? パララ良い機会だよ、もう二人共同時にやっちまいなっ!』
『じゃあお前ら二人共仲良く同時に死ね! 殺されて行った仲間達の恨みだ!!』

 パララのレヴェルは四つん這いのままのル・ツーの背中に片足を乗せ、さらにイェラを握る片腕を空に掲げ、剣をル・ツーの首元に狙いを定めて振り上げた。

「砂緒さん!? もう駄目です!! イェラさんは諦めて!!!」
「………………」 

 メランが必死になって砂緒の肩を揺するが、思考停止した砂緒は頭を抱えたまま何も出来なくなった。

「もういいっ兎幸ちゃん、魔ローンの盾で私らだけでも守って!!」
「う、うん」

『よーし、死ねっ!!』
「ぐ、ぐぎぎ、動け砂緒!!」

 より一層力を込められたイェラが苦しみながら砂緒に向かって叫んだ。

『や、やめろーーーーーーー!!!』

 ブチッ……ぼとっ……

『ぎゃーーーーーーー!!』

 突然パララが片腕に激しい痛みを感じて叫び声を上げた。気付くとイェラを掴んでいたはずの手首が無くなっている。
 ドスッと地面に剣が突き刺さり、掌の中には何も無くなっている斬られた魔呂の手首が落ちていた。

「?」
「え、どうしたの!?」

『何をやっている砂緒、情けな過ぎるぞっ!』
『イェラ大丈夫!?』

 いつの間にか現れ上空高くから魔法剣を惜しげも無く投擲してイェラの掴まれた手首を切り落とし、すぐさま又鳥型に変形し直して落ちるイェラを掴んで飛んだセレネとY子の蛇輪だった。

『セレネッY子殿ッ!!』
「あ~~~~~良かった。これで勝ったわ」

 砂緒は正気を取り戻して叫び、メランは胸を撫で下ろした。

『ちっメッキ野郎~~~!!』

 ココナツヒメは憎々し気に叫んだ。

『ああっやっぱりセレネさんは強くて頑丈でなかなか死ななさそうな所が大好きですっ!』
『あたしゃカブトムシか何かかい?』

 蛇輪は一旦遠くの地面に着地すると、すぐさまハッチを開けた。

「イェラお姉さま、とにかく乗って下さい!」
「うるさいセレネ、私はもう一度戦う!!」
「もううるっさい、いいから乗れっ!!」
「なっ」

 セレネは巨大な蛇輪の手でイェラを無理やり掴むと、開いたハッチから自分の操縦席に彼女を放り投げた。
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