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III プレ女王国連合の成立
前世の前世
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「ふい~~~早速顔をバシャバシャ洗って出直しましょうかねえ」
等といちいち自分の行動を口で説明する砂緒だった。言う通り部屋に戻るとバストイレの横にある洗面所に向かおうとした。
「ん?」
洗面所に向かおうとする砂緒の視線の端に何か人影が見えた。
「ナニヤツッ! 動くな!!」
砂緒は剣の柄を握ると自室のソファー等が並ぶ部屋の中を慎重に覗いた。
「ギョッ」
そのままゆっくりと部屋に入って行くとソファーに髪の長いセレネらしい清楚な女性の人影が……その瞬間に砂緒は光の速さで土下座した。
「すいませんすいません、つい出来心で、本心じゃ無かったんです!! 付き合い、部下と上司のお付き合いと言いますか、いや、変な意味合いでは無いですよ?」
砂緒は床に額をこすり付けながら土下座しつつ言い訳を続けた。砂緒の小さな脳みそ内では、イェラとの浮気がバレてしまい、烈火の如く怒ったセレネが蛇輪で飛んで帰って来たという構図が浮かんでいたからだった。最もセレネとは最近自然とフィアンセ同士という事になっているが、実際には深い関係でも何でも無いので、浮気に該当するかは分からないが。
「……少し会わない内にどれだけ卑屈になっているの!? どうしたらそこまで人格が変貌してしまうのかしらね……まあ最も以前の貴方は……」
話し始める女性の声がセレネとは少し違う気がして、砂緒は土下座の顔を上げた。
「あーー、お久しぶりですね~~エレガの女神様ではないですかっ!」
「うふふお久しぶりですわ~~」
はっきり見るとソファーに座っていたのは、砂緒を転生させてくれた女神であった。今回もきっちりとエレベーターガールのコスチューム姿の女神に、あたかも道ですれ違った友人の如くに気軽に挨拶をし合った。
「そう言えば、どうしてセレネが死に掛けた時に助けてくれなかったんですか、プンスカ!!」
砂緒は立ち上がるといきなり女神に抗議を始めた。
「女神ってそういうカスタマーサポート的な、お助けシステムじゃないわよ? 私も忙しいのですよ。それに貴方自身が見事解決したではないですか」
女神はソファーに座ったまま落ち着いて話した。
「そういう問題では無いのですよ、生き返らせ方が恥ずかしかったんですって。今でも思い出すと鳥肌が立ちます。嗚呼、恥ずかしい恥ずかしい……」
砂緒は両肩を自分で抱くと、目を閉じて赤面した。
「でもそれでセレネさんと相思相愛になれたんだし良かったんじゃなくて?」
「セレネとは出会った直後からお互い恋に落ちたのですよ?」
「どんな記憶力してるの?」
そう言うと、女神は無言で片手を突き出した。
「お金?」
「お茶かコーヒーを出して」
「それは貴方がハープを出した能力で出せば良いじゃないですか」
「駄目なの、この現実世界ではそういう事しちゃ駄目なの」
という訳で砂緒はいつも常備している、何の拘りも無い粉末のインスタントレギュラーコーヒーを女神に入れてあげた。
「まあ美味しいわ! 粉のコーヒーとは思えない」
「一応プロですから」
しばらく女神はコーヒーを飲み続けた。
「あの、女神って他人の部屋のソファーでコーヒーを飲んだりする物なのですか? 何しに来たのでしょう……私これでも引く手あまたで忙しい身なのですが」
言われてコーヒーカップに口を付けていた女神が何かを思い出した様にビクッとした。
「そうそうそう、大切な事を貴方に伝えなきゃって急いでやって来たの、心して聞いてね」
「はい!」
そう言われて砂緒は素直に即座に床に正座した。
「ほ、本当に素直なのですね、そういう所好きよ」
「はい、勿体ぶらないでどんな面白話があるのですか!? 爆笑間違い茄子ですか?」
「いえ、心して聞いてねって、面白いとか爆笑するって意味じゃ無いのよ」
「いいですから早く早く」
砂緒は正座したまま目を輝かせた。
「貴方の今後に関わる事なの。貴方の前世は覚えているわよね」
「……最近もうすっかり忘れて来てますが、デパート建屋というか鉄筋コンクリでしたなあ、それが?」
「実はその建屋の前世もあるのよ……それが今の貴方にとって問題なの」
砂緒は首を傾げた。
「その前世の前世とは?」
「もっと正確に言えば貴方はある少女の願いを叶える為、自らの意志によって、太古の昔からあの日本とこのセブンリーフを何度も何度も行き交って転生を繰り返して現れては消えているのよ、そしてデパート建屋の前の貴方は、遂に少女の願いを叶える為に最も有利な地位、セブンリーフのある王家の一族の王子として生まれたの」
よく分からないが、砂緒は王子という言葉にときめいた。
「おお、王子、凄いではないですかっ!」
「ええ、前世の前世では貴方は幼い時から利発で神童と言われ、魔法が使えて剣の腕も一流。さらに成長すると超イケメンで女の子にもててもてて即ハーレム化。おまけにユーモアの才能もあり、楽器も弾けて歌も上手くバンドも組んでいたわ」
「何ですかそいつ、殴っていいですか?」
「貴方の前世の前世よ……」
砂緒は正座のまま聞いた。
「それでそれで、その嫌な野郎はどうなったんですか?」
「自分の事よ……その王子は剣と魔法の腕を生かして冒険者としても名を馳せ、数々の伝説を残した後に突然自分の前世からの目的、ある少女の願いを叶えるという遠い記憶を思い出したの。そしてその環境を整える為に政治の世界にも入って行くのだけど、やがて人々の平和の為に生きるという目的にも目覚めてしまって、遂には七葉後川流域の中部小国群を纏め上げ、大王と呼ばれる存在にまでなってしまったの。大王は技術を得る為西の海の向こうの域外の帝国に大量の留学生を送ったりもしたわ。それに貴方達が乗っている魔ローダー日蝕白蛇輪は、その大王が将来現れるであろうある少女の願いの為に、親交のあった当時のリュフミュラン王をだまくらかして巨像に仕込んだ物よ」
「ほほう蛇輪まで? んでなんという名前なんですか」
女神は砂緒のあまりにも他人事の様な態度に多少呆れて来た。
「彼はイケメンだけど砕けてて、王様は気楽な稼業と来たもんだ~と常に冗談を言い続け、時に無責任大王等とも言われながら中部小国群の人々の暮らしの為に戦い続けたの。彼の幼名を等、そう貴方の前世の前世は百年前八十八歳で天寿を全うされて亡くなったメドース・リガリァ最盛期のウェキ玻璃音大王なのよ……」
女神から言われて砂緒は一瞬言葉に詰まった。
「………………ダレ??」
キョトンとした顔をして聞いて来る砂緒を見て、女神はコケた。
「えっと、貴方今このメド国侵攻部隊の司令官なのよね?」
「そうで~~~す」
砂緒が笑顔でぴっと片手を上げた。
「女神なのに疲れるわ。貴方が攻め込むメド国のアンジェ玻璃音女王、その百年前の先祖がウェキ玻璃音大王よ!」
「……と、言いますと?」
まだ砂緒は他人ごとの様な顔で聞いて来る。女神はもしかしてある意味無責任大王と言われた彼の形質を受け継いでいるのでは? という気すらして来ていた。
「分からないの? 貴方が今から司令官として滅ぼすつもりのメドース・リガリァは、貴方の前世の前世で生まれ育ち大きく中興した国。貴方が今倒すべき敵、アンジェ玻璃音女王は、貴方の前世の前世人物の子孫にあたる人間なのよ……その生まれ故郷に引導を渡す、それでもいいの? それを確認しに来たの……」
再び砂緒はしばし黙り込んだ。
「……前世の前世の私の子孫って、難しい言葉で言えばハトコに当たるんですか?」
再び女神はコケた。
「いや、ハトコでもイトコでも無いのよ」
「じゃ、それって今の私からは全くの赤の他人じゃないんですか? 知りませんよそんな奴。記憶すら無いのに……」
女神は確かに砂緒の言う事にも一理あると思った。
等といちいち自分の行動を口で説明する砂緒だった。言う通り部屋に戻るとバストイレの横にある洗面所に向かおうとした。
「ん?」
洗面所に向かおうとする砂緒の視線の端に何か人影が見えた。
「ナニヤツッ! 動くな!!」
砂緒は剣の柄を握ると自室のソファー等が並ぶ部屋の中を慎重に覗いた。
「ギョッ」
そのままゆっくりと部屋に入って行くとソファーに髪の長いセレネらしい清楚な女性の人影が……その瞬間に砂緒は光の速さで土下座した。
「すいませんすいません、つい出来心で、本心じゃ無かったんです!! 付き合い、部下と上司のお付き合いと言いますか、いや、変な意味合いでは無いですよ?」
砂緒は床に額をこすり付けながら土下座しつつ言い訳を続けた。砂緒の小さな脳みそ内では、イェラとの浮気がバレてしまい、烈火の如く怒ったセレネが蛇輪で飛んで帰って来たという構図が浮かんでいたからだった。最もセレネとは最近自然とフィアンセ同士という事になっているが、実際には深い関係でも何でも無いので、浮気に該当するかは分からないが。
「……少し会わない内にどれだけ卑屈になっているの!? どうしたらそこまで人格が変貌してしまうのかしらね……まあ最も以前の貴方は……」
話し始める女性の声がセレネとは少し違う気がして、砂緒は土下座の顔を上げた。
「あーー、お久しぶりですね~~エレガの女神様ではないですかっ!」
「うふふお久しぶりですわ~~」
はっきり見るとソファーに座っていたのは、砂緒を転生させてくれた女神であった。今回もきっちりとエレベーターガールのコスチューム姿の女神に、あたかも道ですれ違った友人の如くに気軽に挨拶をし合った。
「そう言えば、どうしてセレネが死に掛けた時に助けてくれなかったんですか、プンスカ!!」
砂緒は立ち上がるといきなり女神に抗議を始めた。
「女神ってそういうカスタマーサポート的な、お助けシステムじゃないわよ? 私も忙しいのですよ。それに貴方自身が見事解決したではないですか」
女神はソファーに座ったまま落ち着いて話した。
「そういう問題では無いのですよ、生き返らせ方が恥ずかしかったんですって。今でも思い出すと鳥肌が立ちます。嗚呼、恥ずかしい恥ずかしい……」
砂緒は両肩を自分で抱くと、目を閉じて赤面した。
「でもそれでセレネさんと相思相愛になれたんだし良かったんじゃなくて?」
「セレネとは出会った直後からお互い恋に落ちたのですよ?」
「どんな記憶力してるの?」
そう言うと、女神は無言で片手を突き出した。
「お金?」
「お茶かコーヒーを出して」
「それは貴方がハープを出した能力で出せば良いじゃないですか」
「駄目なの、この現実世界ではそういう事しちゃ駄目なの」
という訳で砂緒はいつも常備している、何の拘りも無い粉末のインスタントレギュラーコーヒーを女神に入れてあげた。
「まあ美味しいわ! 粉のコーヒーとは思えない」
「一応プロですから」
しばらく女神はコーヒーを飲み続けた。
「あの、女神って他人の部屋のソファーでコーヒーを飲んだりする物なのですか? 何しに来たのでしょう……私これでも引く手あまたで忙しい身なのですが」
言われてコーヒーカップに口を付けていた女神が何かを思い出した様にビクッとした。
「そうそうそう、大切な事を貴方に伝えなきゃって急いでやって来たの、心して聞いてね」
「はい!」
そう言われて砂緒は素直に即座に床に正座した。
「ほ、本当に素直なのですね、そういう所好きよ」
「はい、勿体ぶらないでどんな面白話があるのですか!? 爆笑間違い茄子ですか?」
「いえ、心して聞いてねって、面白いとか爆笑するって意味じゃ無いのよ」
「いいですから早く早く」
砂緒は正座したまま目を輝かせた。
「貴方の今後に関わる事なの。貴方の前世は覚えているわよね」
「……最近もうすっかり忘れて来てますが、デパート建屋というか鉄筋コンクリでしたなあ、それが?」
「実はその建屋の前世もあるのよ……それが今の貴方にとって問題なの」
砂緒は首を傾げた。
「その前世の前世とは?」
「もっと正確に言えば貴方はある少女の願いを叶える為、自らの意志によって、太古の昔からあの日本とこのセブンリーフを何度も何度も行き交って転生を繰り返して現れては消えているのよ、そしてデパート建屋の前の貴方は、遂に少女の願いを叶える為に最も有利な地位、セブンリーフのある王家の一族の王子として生まれたの」
よく分からないが、砂緒は王子という言葉にときめいた。
「おお、王子、凄いではないですかっ!」
「ええ、前世の前世では貴方は幼い時から利発で神童と言われ、魔法が使えて剣の腕も一流。さらに成長すると超イケメンで女の子にもててもてて即ハーレム化。おまけにユーモアの才能もあり、楽器も弾けて歌も上手くバンドも組んでいたわ」
「何ですかそいつ、殴っていいですか?」
「貴方の前世の前世よ……」
砂緒は正座のまま聞いた。
「それでそれで、その嫌な野郎はどうなったんですか?」
「自分の事よ……その王子は剣と魔法の腕を生かして冒険者としても名を馳せ、数々の伝説を残した後に突然自分の前世からの目的、ある少女の願いを叶えるという遠い記憶を思い出したの。そしてその環境を整える為に政治の世界にも入って行くのだけど、やがて人々の平和の為に生きるという目的にも目覚めてしまって、遂には七葉後川流域の中部小国群を纏め上げ、大王と呼ばれる存在にまでなってしまったの。大王は技術を得る為西の海の向こうの域外の帝国に大量の留学生を送ったりもしたわ。それに貴方達が乗っている魔ローダー日蝕白蛇輪は、その大王が将来現れるであろうある少女の願いの為に、親交のあった当時のリュフミュラン王をだまくらかして巨像に仕込んだ物よ」
「ほほう蛇輪まで? んでなんという名前なんですか」
女神は砂緒のあまりにも他人事の様な態度に多少呆れて来た。
「彼はイケメンだけど砕けてて、王様は気楽な稼業と来たもんだ~と常に冗談を言い続け、時に無責任大王等とも言われながら中部小国群の人々の暮らしの為に戦い続けたの。彼の幼名を等、そう貴方の前世の前世は百年前八十八歳で天寿を全うされて亡くなったメドース・リガリァ最盛期のウェキ玻璃音大王なのよ……」
女神から言われて砂緒は一瞬言葉に詰まった。
「………………ダレ??」
キョトンとした顔をして聞いて来る砂緒を見て、女神はコケた。
「えっと、貴方今このメド国侵攻部隊の司令官なのよね?」
「そうで~~~す」
砂緒が笑顔でぴっと片手を上げた。
「女神なのに疲れるわ。貴方が攻め込むメド国のアンジェ玻璃音女王、その百年前の先祖がウェキ玻璃音大王よ!」
「……と、言いますと?」
まだ砂緒は他人ごとの様な顔で聞いて来る。女神はもしかしてある意味無責任大王と言われた彼の形質を受け継いでいるのでは? という気すらして来ていた。
「分からないの? 貴方が今から司令官として滅ぼすつもりのメドース・リガリァは、貴方の前世の前世で生まれ育ち大きく中興した国。貴方が今倒すべき敵、アンジェ玻璃音女王は、貴方の前世の前世人物の子孫にあたる人間なのよ……その生まれ故郷に引導を渡す、それでもいいの? それを確認しに来たの……」
再び砂緒はしばし黙り込んだ。
「……前世の前世の私の子孫って、難しい言葉で言えばハトコに当たるんですか?」
再び女神はコケた。
「いや、ハトコでもイトコでも無いのよ」
「じゃ、それって今の私からは全くの赤の他人じゃないんですか? 知りませんよそんな奴。記憶すら無いのに……」
女神は確かに砂緒の言う事にも一理あると思った。
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