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III プレ女王国連合の成立
アターーック!! 砂緒のほにゃっくNo.1
しおりを挟む―少し昔のラ・マッロカンプ王国……
「るんるんる~~ん。依世ちゃんは何処かな~~~? むふふ」
今より輪を掛けてさらにバカだったウェカ王子が朝から依世を探して歩いていた……
「およっ依世ちゃんはっけん!! 一緒に幼稚園に行こうよ~~~何処行くのかな??」
何か巨大な花束を持った美幼女依世が一人ですたすたと涼しい顔をして歩いている。ウェカ王子は当然の様に後を付けた……
「どこまで行くんだよぉ」
「……軍人さん花束を貰って下さい!!」
人気の無い町角で突然依世は、偶然ラ・マッロカンプ王国に視察に来ていた中部小国群某国の軍人を見つけると、迷う事無くすたすたと近付いて行き、いきなり巨大な花束をプレゼントした。
(あっ、い、いよちゃんが、他の男に物を……ダレ?)
「おや、お嬢ちゃん、この花束は誰からのプレゼントな……」
軍人さんは笑顔で身を屈めて大変可愛い幼女からのプレゼントを受け取った。
ドシュッ!!!
次の瞬間、花束をもらった軍人は胸に大穴を開けられていた。その向こうには何かの強力な魔法を撃って、掌から煙を出している無表情の依世が居た。
「お姉さまやりました……ふふったあいもない……あっ」
「あっ依世ちゃん……」
軍人を殺害した直後の依世とウェカ王子は目が合った。
「……みたわね……」
両目がビカッと異様に光り輝く依世がずんずんとウェカ王子ににじり寄って来る。
「ひっ依世ちゃん……何故? やめて……依世ちゃん……」
ウェカ王子は腰を抜かしながら後ずさりした……
「う~~~ん、う~~~~ん、依世ちゃん止めて、許して……う~~~ん依世ちゃんやめて」
気絶させられたウェカ王子は寝かせられた簡易ベッドで冷や汗を流して苦しんでいた。
「ど、どうしたんや王子!? 何をうなされてるんやっ!! 早う起きやっ!!」
パンパンパンパンパン!!!
今度は瑠璃ィが目にも止まらぬ速さで頬をビンタしまくる。
「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ、やめろっっ!! 殺す気かっ!!!」
「は~~~目覚めたんか、うなされてたで心配したわ~~~」
「うなされても死なんが、瑠璃ィのビンタで死ぬ可能性があるわっ!!」
「瑠璃ィさんあんまり気絶させたり起こしたりやり過ぎると脳が……」
首をぶんぶん振ってウェカ王子がようやく目を覚ました。
「悪夢を見てた様だ……で、何用だ??」
「大変なんや、ウチらが放ったフード軍団が魔ローダーの駆動音をキャッチした。ここから南の方の斜面や」
「さっき言ってた奴だな……」
「介入するんですか、王子?」
ウェカ王子はしばし考えた。
「いや、今の所介入は止めよう。けど同盟軍に決定的な被害が出そうなら助けに入るのもありかな。取り敢えず魔呂操縦者は全員魔呂に騎乗、ボクもジェイドに乗るぞっ! 地上兵は巻き込まれん様に北に退避だ! メア、お前も怪我しない様に気を付けろよっ!!」
「えっ……お、王子がまともな事を……」
「何を突然泣いている!?」
「王子がまともな事を……」
「普通に失礼な奴だな」
―地上、トリッシュ王国領土寸前。
『砂緒殿、そろそろ前回砲撃のあった地点に入りますぞ!』
「兎幸、魔ローン二機上空待機!!」
「あいっ!!!」
巨大な魔ローダー六機が一列に並ぶ単縦陣で超長距離攻撃のエリアに突入した。
「これよりスリガオ海峡に単縦陣で突入する!!」
『えっ? スリ?? 何??』
『メラン、いちいち砂緒の言う事相手にしてちゃダメだ』
砂緒の発言はル・ツーの魔法マイクが拾い、全機の魔法通信で流れていた。
『サッワちゃん、遂に敵が動き出した。今射程内に入ったわっ。補給は済んだの??』
『はい! 今丁度魔砲弾十二発補給したばかりです!! 行けます』
サッワの超長距離魔砲ライフルの魔砲弾は、金属カートリッジ自体が物理的に巨大で単純に工業製品として整形するのに大変なのと、さらにはそこに魔導士が魔法力を込める事に長時間かかり、極めて貴重な砲弾であった。さらにそこにサッワの魔法剣を応用した能力が加わり、初めて超長距離砲撃が可能となっていた。
『それが変なの、連中一列に並んで進んでるの、まるで最前列を犠牲にする動きみたいなのよ』
『バカにしやがって! そんなのが攻略法のつもりかっ!! なら十二発全弾当ててやるよっ!』
そう言うとサッワは前回と同じ様にプローンの姿勢で魔法スコープを覗いた。
『サッワちゃん、連中綺麗に前回と同じルートで進んでいるわ』
『前回の誤差修正のままで行けると思います』
ココナツヒメはなるべく多くの敵を撃破する為に射程内になるべく多くの敵が入るまで待った。
『うん、サッワちゃんいいわよ、エリア内に多くの敵が入ったわっ! 撃って!!』
『はい、初弾撃ちます!! 当てますっ!!』
ドシュッッ!!
サッワは躊躇無く初弾を撃った。
ヒューーーーーーーーンン
遥か彼方、トリッシュ国の向こうの山から飛来する魔砲弾を兎幸の二機の魔ローンが感知した。実際には普通の人間の感覚ではヒューーーン等と牧歌的に聞こえる訳も無いのだが、兎幸の魔法機械の頭脳はその様に感知出来ていた。
『砂緒来た!! 弾道探知成功!!』
「よし、兎幸、遠慮無く私の身体を射線上にぶつけて下さい!!」
『あいあい』
異様に軽い返事だった。
「兎幸、頑張って!! ファイッッ」
「うん……来た!!」
ビューーーーーン!!!
サッワの超長距離魔砲弾が凄まじい高速で飛んで来た瞬間、兎幸はル・ツーの腕をくいっと上げ、遠慮無く掌に握った砂緒の身体を予測される射線上に合わせた。
「うっっっらああああああああああああああああああ!!!!!!!」
ガギイイイイイイイイイイイイイイインン!!!
鬼の形相の砂緒が自らの腕の先を最大限硬化させ、さらに雷を帯びさせると、ヒットする寸前に思い切り拳を叩き付けた。
ギューーーーーン!! ドガーーーーーーン!!!!!
ル・ツーに直撃するはずだった魔砲弾は、砂緒にぶち当たると嘘の様に鋭角を描いて近場の地面にヒットして炸裂した。
「ぎゃーーーーーー!!」
「落ち着け、地面で爆発しただけだっ!!」
「作戦は成功だぞっ!!」
「おおおおおおユッマランド王万歳っ!!」
兵士達が砂緒が弾き返したとは知らず、何かよく分からない方法で跳ね返すと聞かされていたので、取り敢えず王様の功績だと褒め称えた。
「王様何もしてないよー」
兎幸が呟いた。
「そういう物よ」
『サッワちゃん……信じられない……跳ね返された……』
『空飛ぶ盾ですか!?』
『違うの……ル・ツーが拳で跳ね返したの……』
少し離れた場所で観測するココナツヒメにはその様に見えた。
『バカなっっ!! まぐれでしょう、もう一発行きます!! 当たれっ!!』
ドンッッ!!!
巨大な魔砲ライフルから二発目が発射された。
ヒューーーーーーーーーン!!
『砂緒、二発目来た!!』
「バッチコーーーイ!!!」
兎幸は二発目も正確に弾道を計測して把握すると再び中腰で両手を構えた。
「アターーーーーーーーーーック!!!」
再び砂緒は思い切り腕を振り上げると、猛烈な速さで迫り来る魔砲弾を片手で叩き付けた。
バチーーーーーーン!!! ギューーーーーーン!! ドガーーーーーーン!!!
弾かれた魔砲弾は、今度は偶然ココナツヒメの至近まで飛んで来て足元で炸裂する。
「デタラメだわ……」
Y子は眼前で繰り広げられる砂緒の荒業にあっけに取られた。
「!? 危ないわねっっ何なの、一体何が起こっているの!?」
ココナツヒメは足元のクレーターを見て愕然とした。
『……サッワちゃん、二発目も弾かれたわ……』
『え、まさか!? そんなはずが』
ココナツヒメはその間もじりじりと前進するムカデの様な長い行列をしばし見つめた。
『サッワちゃん、方位と着弾点は同じで、曲射出来るかしら? 一番先頭のル・ツーが怪しいわ。ル・ツーを飛び越えて直接ザコ魔呂か多数の兵員を撃てばいいのよ!!』
『ええ、実は僕もココナツヒメ様と全く同じ事を考えていました!! 曲射行きます!!』
『頑張って!!』
サッワはバイポッドを調整すると、今よりさらに大きく曲射で撃ち上げる体勢に入った。
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