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III プレ女王国連合の成立

メド国の軍議、同盟軍の脅威……

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 ―メドース・リガリァ。

 まおう軍の牢から出所し、サッワを救出したココナツヒメはその後、まおう抱悶の監視の目を潜り自分の息がかかったまおう軍の家臣達に働き掛け、大量の魔ローダーを抱悶に無断でちょろまかして奪って来た。今度こそ抱悶に見つかれば処刑も免れない危険な行為だった。何故ココナツヒメをここまでさせるのか、もはや彼女自身にも良く分からなくなっていた。


「サッワちゃん! 新しいシュクシュカ隊パート2よ、必死の想いでまた美女ばかり集めたのよ! サッワちゃんの思い通りに使ってね!!」

「はろ~~~んサッワさま~~~ん」

「ヨ・ロ・シ・ク」


 ココナツヒメが指差す先には妖艶な美女が何人も居た。それを見てサッワはにっこりと笑った。


「ココナツヒメさま今メド国は危急存亡の秋、魔呂と操縦者を融通して下さって本当にありがとう御座います! この美女達は貴嶋様の指示に従って必ず有効に使わさせて頂きますよ」


 サッワは落ち着いた様子で深々と頭を下げた。


「……サッワちゃん?」


 ココナツヒメはサッワの以前との違いに戸惑った。


「彼女達は……魅了を?」

「ええっもちろんよっ! それ以前の彼女達もねっ! ああぁ、でもフゥーちゃんだけは魅了が掛からなかったのよねえ、凄く残念だわぁ……」

「そ、そうですか」

(フゥー……)


 サッワはシュクシュカ隊パート2のお姉さん達に少し手を振ると、直ぐにココナツヒメに向き直した。


「ココナツヒメ様、今日は魔呂を下さっただけでは無くて、正式に軍議にお出になるのですね? もうすぐ始まります」

「ええ、一緒に行きましょうね、ウフフ」


 二人は手に手を取って軍議が開かれる広間に向かった。その後ろにはクレウが数メートル離れて付いて行く。



 そしてメドース・リガリァの軍議が始まった。本来なら負け戦続きでどんよりとした空気のはずだが、ココナツヒメが復帰し、あまつさえ十二機もの魔ローダーレヴェルを持参したとあって、メド国の独裁者貴嶋は少し機嫌が良かった。


「おお、よくぞお越しくださったココナ殿。今回から正式にオブザーバーとして軍議に参加して下さるよし、とても有難く思うぞ。忌憚なく意見を言ってもらいたい」


 上機嫌な貴嶋の様子を見て、家臣の一人が続けた。


「豪商のココナ殿、十二機もの魔ローダーとおびただしい数のゴーレム兵を頂きかたじけなく思う。しかし十二機もの魔ローダーを得た今、我がメドース・リガリァはかつての威勢を取り戻し、再び中部小国群に、七葉後川以南にも勢力を回復する事が出来そうですなっ! まことに目出度い!!」


 重臣は一人でパチパチと手を叩いたが、続く者は居なかった。それ程楽観的な状況では無い事は誰もが知っていた。


「貴嶋さま、我が手の者共が商売の合間に仕入れた憎き同盟軍の状況を報告してもよろしいでしょうか?」


 今日はアンジェ玻璃音女王陛下がヴェールの向こうでご臨席遊ばす為、フォーマルなスーツで出席したココナツヒメがいつもより控え目な口調で言った。


「おお、お頼み申す」


 貴嶋の許可により、クレウがゆらりとココナツヒメの後ろから出て来て報告する。


「斥候の者にて失礼致す。では現況をお伝え申す。まず各国の魔ローダーの状況から。ユティトレッド魔導王国と新ニナルティナの工業地帯が共同でフル稼働し、各国にSRVという量産型魔呂を急ピッチで配布しております」

「うむ、してその数は?」


 貴嶋が質問した。


「はい……まずタカラ山監視砦の本陣に十機。海と山とに挟まれた小さき王国が指揮するミャマ地域軍に十機。さらにユッマランド軍に五機。そしてイ・オサなる新城に集結する新ニナルティナ軍に五機、リュフミュラン軍に三機、そしてラ・マッロカンプ軍に三機。また肝心のユティトレッド魔導王国軍ですが、完成直後の機体や工場で生産中の機体等を合わせると、推測で三十機程と思われます。そして同盟の旗機、雪乃フルエレ女王が搭乗する日蝕白蛇輪と副将機ル・ツーと鹵獲されたレヴェルを合計して、推定最低でも四十機から六十機程にはなろうかと思われます」

「………………何っ?」


 貴嶋の笑顔が消え、議場の誰も一言も何も話す事は無くシーンと静まり返った。


「続けてもよろしいでしょうか?」


 メド国に関しては特に思い入れの無いクレウは淡々と事務的に話を進めた。


「うむ、続けるが良い」

「では……それと騎士剣士や魔導士の通常地上戦力ですが、新ニナルティナ七千、ユティトレッド三千、ユッマランド一万、リュフミュラン三千、ラ・マッロカンプ二千、ミャマ地域・海と山と国七千程度と見積もり、合計三万を超える大軍になろうかと。さらに魔戦車百両以上。ざっとこの程度になります」


 さらに会場は静かになった。


「………………スピネルよ、して我が国の現有戦力は?」

「はい、先程ココナ殿より贈られた通り、魔ローダーレヴェルが十二機とそれがしのデスペラード改Ⅲとココナ殿の機体で合計十四機。さらに同様に先程言われたゴーレム兵が合計三千程。そして通常の地上兵力が一万。魔戦車が三十両程となります」

「うむ、スピネルよ、其方が救ってくれた地上兵の存在、多いに助かっておるぞ」

「はっお褒め頂き、有難き幸せ」


 しかし貴嶋は一旦深く物想いに耽ると再び重い口を開いた。


「にしても、恐るべきはユティトレッドと新ニナルティナの生産力よ、まさか短期間でそれ程の軍備を揃えるとはな」

「今までいがみ合っていた二大強国のニナルティナとユティトレッドが協力した事が痛いですな。本当に想像以上の生産力です」


 貴嶋の言葉に家臣が続けた。


「さてさて、如何様に我が国はすれば良いか……」


 貴嶋は言わなかったが、皆の頭の中に降伏の二文字がはっきりと浮かんでいた。
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