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III プレ女王国連合の成立

増殖する謎の集団

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(ヒィッッし、城に攻め込む!? 若君をどうにかせんと?? ヒィイイイイイヤバイ、やば過ぎる瑠璃ィさんの正体!! 彼女は火付盗賊だった!?)

 メアは軽く浮気現場を押さえる程度のつもりだったが、思いがけず瑠璃ィが押し込み強盗団の女首領だと完全に勘違いした……

(そ、そう言えば瑠璃ィさん魔ローダーに軽々乗れたり、同盟のセレネとか言う人と同じくらい強かったり、なんか変な事が多すぎて……全てが繋がったわ!! 最初は行き倒れの演技で王子と偶然出会った体で城になんなく入り込み、王子の信頼を得てから仲間を手引きして城を乗っ取るつもりだったのね……でもまさかっ洗脳が上手く行かない場合は王子の命すら!?)

 もはや名探偵気取りのメアには次々と最悪の想定が浮かんだ……
 バキッッ
しかしあせったメアはうっかり足元にあった、非常によく乾燥して高い音が鳴る小枝を偶然踏んでしまう!!

「ナニヤツッ!!」

 窓に近い位置にいたフードを被った屈強な男がすぐに立ち上がり、窓を開けようとする。

(ヒィイイイイイイイイイイイイイ)

 メアは腰を抜かして動けなくなった……そのままなんとかズリズリと窓の死角に隠れる。

「……ネコちゃんやろー、漁村に猫ちゃんは付き物なんやで? もういいわ窓を閉めときや」
「は、はあ? 猫ちゃんが小枝を踏むでしょうか? あのバキッという音は恐らく十代半ばから二十代前半くらいのセクシーなタイプの若い女性が踏んだ音と想像しました」
(ヒッッあたっ当たってる!?)

 フードの男は恐ろしい洞察力の持ち主だった!

「あんた、そこまで分かるんか? 逆になんか気持ち悪いで、セクシーなタイプに踏まれたいんちゃうんか?」

 小屋内の他の男達がどっと笑い、フードの男は頬を真っ赤に染めた。

「ち、違います……」
「にゃ~~~~~にゃああ~~~~~~~」

 その時、あからさまに人間の娘が真似をした様にしか聞こえない猫の鳴き声が響いた。

「ほ、ほらっ! 完全に……」
「いや完全に猫ちゃんやで。この話はこれで終わりや」
(ホッ……上手く誤魔化せた……急いで帰らなきゃ……)

 セクシーなメイドのメアは四つん這いでゆっくりとその場を離れた。瑠璃ィは冷や汗を流しながら、ちらっと窓の向こうを見た。


 ―ラ・マッロカンプ王国カラス城、その日の夜。

「お、王子、折り入ってお話しが……」

 メアは必死の形相で左右をキョロキョロしながら王子に話し掛けた。

「おいおいメアどうした? 異常に左右をキョロキョロして……変な物でも食べたか?」
「しっ静かにお願いします……瑠璃ィさんについて、どうしても王子のお耳に入れたき事がっ」
「ん~~~瑠璃ィがどうした? 瑠璃ィならほら、お前のすぐ後ろに」
(え?)

 メアが振り返ると不気味な笑顔をした瑠璃ィが立っていた。

「ヒッッる、瑠璃ィさんご機嫌うる、麗しゅう」
「メアちゃ~~~ん一体何の話してるんや~~~~ウチも混ぜで欲しいわ~~~隠し事は無しやで~~~」

 そう言って瑠璃ィは大きな体でメアに抱き着いた。

「ヒッな、ななななな何でもありませんっ!!」

 メアは逃げた。

「何だメアのヤツ? それにしても、ああ~~~困ったなあ、本当に困った困った……」
「王子何が困ったんや??」
「それがなあ、ボクのジェイドとお前のホーネットは良いのだけど、追加配備で来るSRVとか言う魔ローダーの操縦者は自前で調達しろだと。しかもなるべく早く集めろって、そんなの無理だよっ! ユティトレッドの連中、ちょっと魔ローダーが作れるからって偉そうに!!」

 ウェカ王子は父王の真似をして困った顔を作った。瑠璃ィもこの所ウェカ王子が以前よりも政治や軍事に興味を示し出した事に変化を感じていた。

「なんやなんや、魔ローダー操縦者が欲しいんかいな、それやったらウチぎょうさん知ってるでっ」
「本当かっ瑠璃ィ、そいつらを是非連れてこいっ!!」


 ―数日後。

「ほらっ連れてきたでっ!!」

 瑠璃ィは城に怪し過ぎるフードを被った屈強な男を三名連れて来た。

「おおおおおお、強そうじゃないかっ!! よし、SRVが来たら早速こいつらを乗せてみよう!!」
(ヒィイイイイイイイイイイッッ、お、王子駄目ですッこ、こここ殺されますよ!?)

 その様子を見ていてメアは腰を抜かした。


 それからのメアは気苦労の連続だった……

「こうなったら、伝書鳩で王子に危機を伝えるわよ……」

 メアは急いで鳩小屋に向かった。

「あれメアちゃん何しに来たん? 伝書鳩やったらもう一羽もおらへんで、知らんけど」
「ヒッ」

 何故か満面の笑顔で鳩小屋の前に座る瑠璃ィを見て、メアは急いで部屋に戻った。

「仕方ないわ矢文で伝えるしか!!」

 ギリギリ
 メアは必死の想いでウェカ王子の部屋に向けて矢文を撃とうと弓を引いた。
 シュパッッッ

「やったっ!!」

 撃たれた矢はヒュルヒュルと王子の部屋の窓に向かって綺麗な弧を描いて飛んで行く。
 パシッッ

「おっと危ない!! メアちゃん窓ガラス割る気いか? 弓矢の練習は広い所でしいーや。知らんけど」
「ヒッッ」

 何故か偶然通りかかった瑠璃ィが恐ろしい脚力でジャンプして、ぱしっと矢を掴み取った。

「狼煙」

 ジューーー~~!!
 やはり偶然通りかかった瑠璃ィに水を掛けられる。

「最新の魔法モールス信号」

 既に何者かが斧で魔法モールス信号機を破壊。

「手紙」

 ポストに入れた途端に何者かが仕込んだ白ヤギさんに手紙をムシャムシャと食べられてしまう。

「こ、こうなったら強制的にでも二人きりになるしかないわね……」

 ガチャリッ
 深夜、メアはスケスケのネグリジェを着て勝手に王子の部屋に入って行く。

「ね、ねえ~~んウェカ王子ィ~~ん、一緒にお・風・呂入りませんかぁ?」
「ん~~何だこんな夜更けに?」
「シッ瑠璃ィさんが起きちゃうでしょう」
「ね、一緒にお・ふ・ろ入りましょうウフフフ」

 メアは必死にセクシーポーズをして王子を誘った。王子の横ではいつもの様に瑠璃ィがいびきを掻いて寝ている……

「断るっ!」

 必死の作戦も当の王子により断られた。進退窮まったメアは、とぼとぼと部屋を出て行った。


 ―さらに数日後

「どうしたメア? なんか最近元気がないぞ~~悩み事があったら何でも言うんだぞ、友達だろ~~?」

 目の下に見事なクマがあるメアを見てウェカ王子が心配した。

「ホンマやでメアちゃん、何でも言ったらええねんで~~~」

 しかしその横でフードの男三人を従えた瑠璃ィがにっこり笑った。

(あ、あんたのせいだ~~~)

 メアはひと睨みすると部屋を出た。


(トイレにでも入ろう……)

 ガチャッ

「イヤーーーン!!」
「あっすいませんっっ!!」

 メアは見知らぬフードの男が先にトイレに入って居て、目が合うも慌ててドアをパタンと閉めた。

「えっ?」
(あれ……フードの男達は瑠璃ィさんの横にいるはず……)
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