上 下
217 / 569
III プレ女王国連合の成立

サッワの決意と別離 下 氷の女王への忠誠

しおりを挟む
『メド軍所属、味方だ! お城の兵はどうなった??』
「は、はい、全て市街地に向かって、救援に行っております!!」
『味方を踏まない様に道を先導してよ、僕が救援に乗り込む!!』
「は、はい!! 是非に」

 サッワは全身の魔法ランプの光度を最大にすると、騎馬兵に導かれて市街地の戦場に到着した。市街地侵入の金で雇われたばかりの傭兵は士気が低く、そこに城外で中に突入する予定だった本体の異変が伝わり動揺が始まり、さらにそこにトリッシュの城から駆け付けた救援の正規兵に攻撃され、既に戦闘の大勢は決しつつあった。

「見てっ!! 正規兵の次は今度は魔ローダーが来たよ、きっとサッワくんのスパーダよ!!」

 カレンが立て籠もっていた建物の窓からサッワのレヴェルを見てスパーダと思い込むが、そんな事は彼女にはどっちでも良かった。

「おお、本当に魔呂が来やがった!! 俺達の勝利だぜっ!! サッワって本当に何者なんだよ!!」

 人々の歓声の中、サッワの巨大なレヴェルを後ろ盾にした正規兵が次々に敵兵を討ちとって行く。それはもはや虐殺に近い状況だったが、その外にはココナツヒメのル・ワンが待ち構えており結局逃げ道は無かったのだった。彼らには優しい雪乃フルエレがした様に捕虜となる道は残っていなかった。



「サッワくーーーーんん!!! あははははは、本当に来てくれたっ!!」

 死体がごろごろと転がる戦いの後の市街地でカレンは人目もはばからずサッワに走り寄り抱き着いた。まさにヒロインと救国のヒーローの再会だった。

「カレン無事だったんだね、真っ先に行けなくてごめんね、どうしても魔呂を取らなくちゃと思って」
「ううん、いいの! それで正解よ、私はラン隊長と仲間達がしっかり守ってくれたよっ」

 カレンは襲われかけた事も忘れて満面の笑顔で報告した。

「そっか、隊長さん本当に良い人だったんだね。だったらこれからも任せても安心だね」
「え?」

 満面の笑顔だったカレンの顔が急激に曇った。

「どういう事?」
「僕は……もう行かなくっちゃ……」

 サッワは抱き着くカレンをゆっくり離すと、少しだけ乱れたカレンの前髪をいじって整えそして手を離した。

「どうして……? どこに行くの?? 私、きっとサッワくんはこれからも皆の良い仲間になってくれて、それでそれで凄く活躍して……私とももっとお話しして仲良くしてくれて……友達になって……一緒に……」

 そこら辺まで言ってカレンは涙がポロポロ流れて言葉に詰まっていた。

「今から大事な話をするから良く聞いて。もし同盟軍が迫って来てもメドース・リガリァ本国は此処まで手が回らないかもしれない。その時は皆を説得して同盟に降参して。メド国に忠義を尽くす必要なんて全く無いんだよ」
「え? で、でもそんな事したら皆殺されちゃうよ!」

 サッワは両肩に優しく手を置いた。

「違うんだ。虐殺してたのは僕達なんだ。中部小国群を早く屈服させる為に魔ローダーに乗って一部の国の住民を虐殺したんだ。だから僕たちに忠義を尽くす必要は無いし同盟軍は虐殺なんてしないよ。分かった?」
「………………そんな事もうどうでも良い。私サッワくんと一緒に居たい。だったら私、メド国の兵士になる! サッワくん一緒に連れてって、弾込めでも雑巾掛けでもするからっ!!」

 サッワはカレンの思いがけない言葉に思わず絶句した。

「馬鹿な事言うなっ!! 僕がお前なんか好きになる訳無いだろ……隊長さんや仲間や家族と此処にいるんだっ!」

 サッワは軽くカレンを押して突き放した。

「嘘よ……絶対嘘よ……そんなの嘘。サッワくん、此処に居て、ここに居て一緒に戦おうよ」
「もう、話は終わりだよ。じゃあね……」

 そのままサッワはくるりと背中を向けて、遠くで佇むココナツヒメに向けて歩き出した。その時点でサッワは少し泣きかけていたが必死に堪えた。が、遂に涙がこぼれて出掛けて慌てて腕で拭った。

「バカーーー!!! サッワのバカーーーー!! うっうっ……わーーーーーっっ」

 カレンはその場に崩れ落ちて両手で顔を覆って泣き始めていた。慌てて異変を感じた隊長達がカレンに駆け寄って慰めた。


「あれで……良かったのかしら? 此処に居たかったら居てもいいのよ」
「いいえ、これで良いのです。ココナツヒメ様、お迎えして頂いて有難う御座います」

 ようやくサッワはココナツヒメに深々と頭を下げて礼をした。

「ああっサッワちゃん無事で良かった」
「こ、ココナツヒメさま……僕は僕は……」

 途端にココナツヒメは感情が爆発してシースルードレスの胸元にサッワを抱き寄せた。サッワも涙が枯れる前の顔でひたすらココナツヒメの柔らかい胸に顔を埋めた。その様子を遠巻きに見てカレンは言葉を失った。

(……魔女だわ……サッワくんが魔女にさらわれてしまった)

 程なく二人はそれぞれの魔ローダーに乗り込んで、瞬間移動(短)で姿を消した。


 ―ココナツヒメ領、魔ローダー格納庫。

「ココナツヒメ様、帰った早々なのですが、是非僕にお願いがあります」

 サッワはココナツヒメの前で跪いていた。

「何なの~? サッワちゃん何でも言ってごらんなさいな」
「僕を……正式にココナツヒメ様の、まおう軍の兵士にして下さい」

 サッワは顔だけを上げて真剣な眼差しで訴えた。

「もうメド国やメド国のアンジェ玻璃音女王様の事は良いのかい?」
「はい……追い出されて吹っ切れました。この後は……この命全てココナツヒメ様に捧げて参ります。ココナツヒメ様、僕の女王様になって下さいっ!!」

 ココナツヒメはサッワの真っすぐ過ぎる訴えに全身がゾクゾクした。

「い、いいわ……私の為に一生尽くすのね?」
「はいっ!!」
「ああっ」

 再びココナツヒメはサッワをぎゅっと強く胸で抱き締めた。遠くでクレウがそれを細い目で眺めていた。
 
「では最初の命令を与えます。サッワよ貴方をメドース・リガリァに戦闘員として魔ローダーと共に派遣します! メドース・リガリァとメド国のアンジェ玻璃音女王陛下に、国が滅びる最後の瞬間まで忠誠を尽くしなさい!!」
「ハッッ!! 有難き幸せ!!」

 サッワは別人の様に強くなっていた。

「ココナツヒメ様、メッキ野郎を必ず倒す必殺の武器を思い付きました。是非開発して頂きたいのです」
「いいわよ、うふふ」

 ココナツヒメは妖しい瞳で笑った。






いつもお読み頂きありがとうございます。
なろうで書いている部分まで追い付いてしまいました。
今後も地味に少しづつ更新しますので、是非読んで下さい!!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔女になった少女の物語

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:46

【これはファンタジーで正解ですか?】

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:31

転生者の僕は弟と王子の溺愛執着から逃げられない

BL / 完結 24h.ポイント:156pt お気に入り:548

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:18,813pt お気に入り:11,977

俺は愛を所望する

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:105

処理中です...