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III プレ女王国連合の成立

サッワの決意と別離

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「ココナツヒメさまっトリッシュ王国で連続するブラストと魔ローダーらしき大型魔法機械の稼働を確認!! 諜報員との情報を照合してサッワさまの活動と思われます!!」

 魔法レーダー員の美少女がいつもながらに髪を振り乱し、椅子ごと後ろに振り返り報告する。まおう軍北部、ココナツヒメ領の魔法レーダー室には、猛スピードでクレウとの情事を終え、魔ローダール・ワンの瞬間移動(短)の連発による移動で既に戻っていたココナツヒメが腕を組んで仁王立ちで居た。彼女は風呂にも入らずシャワーも浴びず、全身に大量の香水を振りかけて此処に居た。

「ちょっと、来なさい」
「はい?」

 魔法レーダー員の美少女が呼ばれ椅子から立ち上がり、恐る恐る近付く。

「わたくし……変な臭いするかしら?」
「え? い、いえ」

 何の事か分からず、美少女魔法レーダー員は首を傾げた。しかし彼女が気が付いた時には、もうココナツヒメは既に魔ローダー格納庫に走り去って居た。


 ―トリッシュ国に戻る。

「撃て撃て撃て、じゃんじゃん撃て!! いいから全部撃て!!」

 衣図ライグは残った片腕で顔を覆う巨大な魔ローダーに向けて、ありったけの魔戦車の火力と魔導士の攻城用大型魔法を撃ち続ける様命令した。

「ちいっこのままじゃっ!!」

 顔を覆ったまま、巨大な足で魔戦車を踏み潰そうと歩みを始める。
 グギーーーン、ドガーーーン!!
が、顔を覆う残った片腕も攻城用大型魔法の火球が貫くと、あっさりともげ落ちた。

「いやったーーーーー!!」
「痛ッ何で!? おかしいだろ!!」

 サッワが叫ぶのも当然だった。通常魔ローダーは、魔ァンプリファイヤという希少な金属と魔法石を特殊な魔法技術で精製した巨大な魔法機械が機体中心に存在し、それが機体各所の念デンサーに魔力を分配して、そこから強固な物理防御陣と魔法防御陣を全身に展開する事で、同じ魔ローダー以外には無敵に近い防御力を得るのだが、長年放置され風雨に晒され整備もされていないスパーダは動いたは良いが、内部機構は既にガタガタで物理防御も魔法防御も隙だらけになっていた。

「よしっもう一押しだっ此処でこの魔呂を潰すっ!! 経年劣化の程度から見てコイツ一機がよろよろ出て来ただけだっ!! 行けるぞっ!!」

 衣図ライグの発破もあって、さらに雨あられと猛烈な攻撃がサッワの乗るVT25スパーダに降り注ぐ。 
 ドンドンドン!! ドガーンドガーーン!! バンバンバン!!!

「ちっ折角魔ローダーに乗って何も出来ないなんて!?」

 ドボンドボン!! ドバーーーン!! 
遂に巨大な二十五Nメートルの魔ローダースパーダの全身のあちこちに火柱が立ち上がり、足元から崩れ落ちようとする。十階建て相当の高さから崩れ落ちる様な物である、相当な衝撃と恐怖があった。しかしその途中で遂に機体中央の魔ァンプリファイヤが誘爆を起こし、巨大な爆発でサッワはハッチ諸共機体の外に吹き飛ばされた。瞬時に本能的に三角座りの体勢で頭と両脚を巻き込み、くるくると回転して空中を飛ばされた。

(死ぬ……)

 サッワは特に恐怖も無くそんな事をぼーっと考えていた。奇しくもそれはサッワが探し求めるフゥーと同じ末路だった。

「やったーーーー!!!」
「魔戦車で魔呂を倒したっ!」

 あちこちで歓声が上がる。

(ちっ喜びやがって……)

 サッワは素早い動きの中でもスローモーションの様に冷静に考えていた。この後としては地面に激突して即死するか、生き残っても捕まってなぶり殺しになるか、どっちにしろ早いか遅いかの違いで死ぬだけだと思った。

 パシィッッ!!
突然巨大な物に包まれてキャッチされる。サッワの想定したどちらでも無い結果だった。

「へっ?」

 サッワが顔を上げると、慕ってやまないココナツヒメの魔ローダー、ル・ワンの巨大な掌だった。

『サッワちゃん、レヴェルよっ!!』
「う?」

 心の準備も何も無いままに、魔法外部スピーカーの声に導かれるまま、ル・ワンと手を繋いで連れられて来た、もう一機の魔ローダーレヴェルの開いたままのハッチにサッワはひょいと投げ込まれた。瞬間的にサッワはぐりんと回転し、器用にしゅるっと操縦席に座り込むと、一瞬で操縦桿を握りハッチを閉めた。途端にハッチの裏面の魔法スクリーンが点灯し、外部の状況を全て映し出す。

「まず一両!!」

 直後、サッワは無意識でレヴェルを超信地旋回させ、0,5秒後には魔戦車を一両巨大な剣で叩き潰した。
 ドガーーーン!!!
潰された魔戦車が巨大な火柱を上げて爆発炎上した。と、その爆炎でようやく衣図ライグとラフは、目の前で何が起こったのか理解した。

「撤退!! てかちりじりに逃げろっ!!」
「大将なんで!?」

 突然撤退を決めた衣図ライグをラフが驚いて確認し直す。

「砂緒にちょろっと聞いた、半透明はヤバイ敵だってな。見ただろーが? 魔呂がさらに二機増えた。もう逃げるしかねえんだよ!!」
「へ、へい~~~」

 その言葉を聞いて、ラフは痩せた馬をくるりと回転して真東に逃げる。

「それで城壁内に残ってる連中はどうすんですかあ??」
「金は払ってんだ悪いがほっとく。古い仲間じゃ無くて良かったぜ! あばよってな」
「ひでえな~~~」

 実際衣図ライグはリュフミュランに攻め込んで来た旧ニナルティナ兵達が大きな城壁内の惣構えの中で缶詰状態になり結局全滅した事が強く頭の中に残っており、なかなか城内に攻め込まないで居たが、それが今回は正解となり生き延びる事が出来た。
 ズガーーーン!!
直後にサッワのレヴェルの巨大な剣の切っ先が衣図ライグの巨馬の横に落ちる。

「やべえな、俺は目立つ、ラフお前盾になって死ね!!」
「はあ? 俺は逃げさせて頂きやすぜっ」

 とにかく二人はちりじりに別方向に逃げに逃げた。

「サッワちゃん逃げる馬を追っても効率が悪いわ、まずは魔戦車を潰すのよ!」
「はいっココナツヒメさまっ!!」

 くるりと反転すると、残りの魔戦車に襲いかかり二両目を潰し、そして慌てて乗員が緊急ハッチから飛び降りた最後の三両目も破壊した。

「申し訳ありません、ココナツヒメ様は此処で陣取って出て来る敵を全部潰して下さい。城壁内の敵は僕がやりますっ!」
「あらあら、いきなりわたくしに命令するのかしらん? まあよくってよ強引な男は大好きよ」
「も、申し訳ありません、お願いします」

 サッワは今度は来た道順通り、また城壁外を半周して西の門に戻った。もしココナツヒメを城壁内に入れると、興奮して何をしでかすか分からないと考えたのだった。
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