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III プレ女王国連合の成立

砂緒ミサイル橋を落とす

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「んふふふふふふふ、んふふのふ~~~~~~」

 空を飛ぶ、巨大な鳥型に変形中の魔ローダー蛇輪の操縦席で、セレネは上機嫌で鼻歌を歌い続けていた。

「セレネさん上機嫌ですね、凄く怖いです」

 蛇輪は複座型で普通は上下の、変形中は前後の操縦席に別れて乗る物だが、最近の砂緒とセレネは二人きりでも仲良く一つの操縦席に乗る事が多くなっていた。

「怖い言うな」
「いやーーセレネさんと言うと普段殺人鬼の様な恐ろしい目付きで睨んで来るイメージがありまして」
「どんなイメージだよ」

 等と砂緒が余計な事を言っても相席でにこにこしながら操縦していた。

「何かいい事あったんでしょうか~~? 聞きたく無いけど聞いてみます」
「聞きたくないのかよ!」
「いややっぱり教えて下さい」
「じゃーあ教えなーいふふ」

 こんなイチャイチャした会話、もし誰かが聞いたら凄くムカ付くだろう……

「教えて下さ―い」
「はいはい、じゃあ前みたいに好き好き連呼してよ」
「はぁ~~本当にセレネは欲しがりさんですねえ、はいはい好き好き好き(以下略)好き。ふぅ百回程連呼してみましたどうでしょう? いい加減何で機嫌が良いか教えて下さい」
「うふふ、教えなーい」
「グーで殴って良いですか?」

 しびれを切らした砂緒が本気で殴ろうとする。

「女の子殴っちゃダメ。そうだなあ、例えば目の前にフルエレさんが居たとして、今みたいにあたしに好き好き連呼してくれる??」

 セレネは不敵な笑みを浮かべて言った。

「………………所で橋を壊すそうですが、何処の橋を落とすのです?」
「あからさま過ぎる誤魔化しっぷりだな!」
「そうですかー?」
「まあ良い。落とす橋はタカラ山監視砦以西全て、数としては十基程になるなあ」

 セレネは事も無げに言った。

「マジですか!? タカラ山以西の橋を全て落とす……そりゃもう地元民の皆さまが大迷惑ではないですか……本気ですかそれ」
「やるよ。戦いを早く終わらせる為だ」
「でも……皆さまの大切な生活インフラをそんなにこにこ笑いながら大破壊したらセレネさん恨まれませんか? 私の大切なセレネさんがゴミムシの様に言われるのは悲しいです」
「ゴミムシ気に入ったか? てか急に常識的な事言い出したなあ。悪評か? あたしは別に全然気にしないぞ。それにあたしには砂緒が居てくれるからな……砂緒が分かってくれるだけで良いよ」

 狭い座席に相乗りするセレネが砂緒の手に手を重ねた。

「まあ元々魔導学園でぼっちなセレネには悪評無効ですか。ふぅーーーでもそんな風に依存されても負担です……」
「負担言うな失礼な奴だな」
「最近は昔みたいに足蹴にしながらキモイキモイ言ってくれないし……」
「キモイキモイ言われたいのかよ、じゃあキモイキモイ、どうだ?」
「手抜きですね、せめて百回くらいお願いします」
「百回はしんどいわ」
「今私好き好き百回言いましたが」


 等と無駄口を叩いている内に最初の攻撃ポイントに到達した。七葉後川河口付近にある最西の橋だった。

「よしセレネ一尉急降下しつつ、鉾ミサイルで橋を攻撃する!!」
「はい機長! 急降下しますっ!!」

 以前と違ってノリノリなセレネは、急降下しつつ人型に変形し撃破した敵機から引き抜いて来た鉾を構える。

「セレネ一尉、警告放送!!」
「はいっ!!」
『これから五分後にこの橋を破壊します。通行者や地元民の方は速やかに付近から退避して下さい』

 警告放送と言っているが、魔法外部スピーカーでセレネがアドリブで言っているだけだ。

「きゃーーーーーっ何魔ローダーよ!?」
「同盟軍の物か??」
「橋を落とすだって!? 早く逃げろ!!」

 橋の上や周辺では地元民や通行者がてんやわんやの大騒ぎとなった。
 
「本当にやっちゃうんですか?」
「やっちゃうんです!! いっくぞ~~~~おりゃっっ!!!」
「あーーーやってしまったーー」

 橋から人々が大慌てで退去した瞬間、躊躇無くセレネは鉾を投げ落とした。
 ドカーーーン!!!
石積みで出来た大きな橋に鉾が突き刺さるが、橋が崩壊する等という事は無く、ただ突き刺さって道路を寸断し、ビィーーーンと衝撃で揺れるのみであった。

「……ぜんぜんイメージと違いますね……普通にちょこっと切れただけですが」
「よし、機長プランBで行きます! 砂緒ミサイル投下!!」
「なんと、機長をミサイルとして投下するとは非情な……仕方あるまい、セレネ一尉後は頼む」
「ハッ貴方と戦えて光栄でしたっ!!」

 セレネは敬礼して涙を流した。

「砂緒ミサイル投下!!」

 しかし巨大な掌でハッチから出た砂緒をむんずと掴むと、躊躇無く投げ捨てた。
 ガーーーン!!
もう落下中から硬化しつつ、着地の瞬間に橋上の道路に渾身の力を集中し白く輝く拳を叩き付けた。
 ガラガラガラガラ……
鉾が刺さった衝撃で打撃を受けていた橋は、砂緒の攻撃で止めを刺されガラガラと崩れ落ちた。

「うっしまった……」

 崩落する橋に巻き込まれ、重量が最大限重くなっている砂緒も一緒に残骸と共に川に吸い込まれて行く。さらにはその上に支えを失った巨大な鉾が倒れこんでカオス的状況になって、砂緒の姿は水面から全く見えなくなった。

「きゃーーーーー砂緒っヤバイ!!」

 セレネが慌てて川に蛇輪を突入させるが、砂緒がどこに居るか分からない。以前黒猫仮面が砂緒の唯一の弱点は水であると探り当てたが、その事は広まっておらず砂緒自身もすっかり忘れ去っていた。

(もがが……やばいですね……沈んで行く一方……息が)

 ガラにも無く冷静さを失った砂緒は硬化を解く事を忘れどんどん川底に沈み込んで行く。その周囲を崩れた橋の石積みが一緒に水没して行く。

(もう……意識が……)

 と、そこに蛇輪の巨大な掌が砂緒を金魚すくいの様にひょいと拾い上げると、そのまま水上に助け上げた。

「もう! 心配するだろ!! 一緒に沈んで行ってどうするの」

 またもや何かあった時の名物、セレネが泣きながら砂緒に抱き着いた。

「貴方がミサイル投下と言ったのでは無いですか……」
「そ、そりゃそうだが……まさか一緒に沈んで行くとは……」
「とは言え、やり方を変えないと駄目ですねえ。橋の端っこから地味に拳で崩落させるとかで行きましょう。多少時間が掛かるが仕方が無いです」
「そうだな、あたしは反対側から鉾で崩しに掛かるよ。とにかく迅速に全てやらないと敵に感付かれる」
「ですね」

 砂緒とセレネは服がびちょびちょに塗れた事も構わず、次の橋に向かって飛んで行った。
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