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III プレ女王国連合の成立

夜襲! オゴ砦奪取作戦

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「心配した!」
「全然大丈夫でしたよ」

 朗報を持って正門を出て来たボロボロの服の砂緒を魔ローダー蛇輪の巨大な手で掬い上げると、胸の操縦席に放り込んだセレネは思わず抱き着いた。

「城は無血開城する事となりました! すぐさま部隊を入城させて下さい。あとくれぐれも乱暴狼藉が無い様にお願いします」
「ああっ凄いな砂緒! いきなり大手柄じゃない、総司令官のあたしも鼻高々だよ」

 セレネは抱き着いたまま猫の様に頭をすりすりした。

「そうだ! フルエレに珍しい人物がいたと教えてあげなくては、きっと大笑いするはずですよ」
「………………」

 砂緒に抱き着いたままのセレネは感動の再会だと思っていたのに、いきなり雪乃フルエレの名前が出て来て笑顔が消え無表情になって無言で目を細めて離れた。


 砂緒の報告に従ってセレネが各部隊に命令し、速やかに入城が行われた。先程侍女が亡くなった戦場跡に作られた指令本部はすぐさま引き払われこのロミーヌ城に移転する事となった。続々と大小色々な物資を運ぶ兵士達が粛々と入場して行く。

「皆もしんどい所だろうが、私はこのまま北のオゴ砦を一気に奪取したいと思う。反対意見の者はいるか?」

 新しく接収し指令本部となったロミーヌ城のいち宮殿の建物で地図を前に再びセレネが総司令官の厳しい顔に戻って皆に意見を求めた。

「もはや夜、何故にその様に急ぐのですか? 性急に落とすという事は今度は力技で落とすという事ですか?」

 軍人から質問が上がった。

「そうだ、ロミーヌ城と違ってオゴ砦は交通の要衝ではあるが、大人口の都市では無い、敵の増援が来る前に、ロミーヌの様に世論を気にせずに一気に落とす」
「分かりました。特に反対意見はありません」

 聞いた軍人が納得して座る。

「それで今回の夜襲は魔戦車部隊と魔ローダーを中心とした魔法機械化部隊による急襲としたい。メランさんは疲れは無いだろうか?」
「大丈夫です……ただ、戦闘に集中したいので移動の最中だけは美魅ィ王女に操縦をお願いしたいですが、よろしいでしょうか?」
「私は大歓迎です!!」

 役目が無くてしょんぼりしているミミイ王女をメランが気遣って言ってみた。

「それで構わないが、美魅ィ王女はくれぐれも作戦外の勝手な行動に走らない様に!」
「……ははっ」

 美魅ィ王女は深々と頭を下げると、直後にメランに向かってにこっと笑った。メランは謎の笑顔に背中がぞくっとした。

「あのセレネさま、もう一つ良いでしょうか?」
「なにかな?」
「あの……戦場に放置されている巨大な棒が刺さったままの敵の魔ローダー……」
「鉾です」

 間髪入れずに砂緒が独り言の様に突っ込みを入れる。

「あれを修理して使用する事は出来ないでしょうか? 王女さまの国の技術者を派遣して見てもらいたいのです。今は一機でも魔ローダーが必要なはずです」
「おおっメランさんはいちいち良い事を言われる。私も同じ事を考えていた、是非そうしよう」

 セレネが即座に同意した。

「どうしたんですかメラン、貴方はおきゃんな冒険者ギルドのアイドル的魔導士少女だったはず、今はメキメキと軍人さんぽくなって頭角を現してきましたねえ」

 横に座っていた砂緒が正直な感想を述べた。

「敵に押さえつけられて殺されそうになって……凄く怖かったのよ、もうあんな目に遭いたくない。だから出来る限りの事をするだけ」
「ほほう」

 話すメランをミミイ王女もじっと見ていた。


 少しの休憩を挟んで、夕方に即座に再出撃となった。魔戦車部隊と魔ローダー二機が先行して出撃し、後から騎兵や一般兵や魔導士が遅れて急いで付いて行く変則的な出撃となった。歩兵達がオゴに辿り着いた時には既に魔ローダーが砦を占拠している事になっているという、多少行き当たりばったりな作戦になっていたが、勝利に沸く同盟軍の中で特に反対意見は出なかった。

「メランちゃん嬉しいわ……貴方が私の事配慮してくれて……」
「いや単純に休憩したいってのもあったし」

 メランはミミイ王女の座る操縦席の後ろにただのパイプ椅子を設置して急場の複座にして座っている。その後ろには兎幸うさこが立ってモニターを眺めていた。

「でも今この狭い操縦席の中、可愛い女の子でギッチギチよね……なんか興奮しない?」
「え?」

 メランは王女の声色が妙な感じになって来たと思った。

「う、兎幸ちゃんは疲れない? もう少ししたら椅子代わるね」
「うんっ」
「兎幸ちゃんって魔法自動人形なんですってね……でも本物みたいなしなやかな柔らかい身体してる……どんなのか興味あるなぁ」

 言いながら美魅ィ王女は後ろにスーっと手を伸ばし兎幸のテニスウエアのプリーツスカートみたいな白いミニスカに包まれたむちむちの太ももを触ろうとした。

「ちょっと何してんの??」

 慌ててメランが手を払いのける。

「あっもしかしてちょっと嫉妬してる??」
「普通にセクハラでしょ! 貴方……もし王女じゃ無かったら、絶対あの子ちょっとヘンって言われてるわよ……気を付けた方がいいわ」 
「エッ!?」

 メランは、ミミイ王女のこうした行動がもし性別が男なら、地位を利用して誰かれ構わず周囲の女性に手を付けるバカ殿さまの様に見えて内心嫌悪していたが、そこまでハッキリ言うのは可哀そうなので止めておいた。


「セレネさんや、今度は砦を滅茶滅茶に壊す訳なのですか?」
「いやいや滅茶苦茶に壊す訳じゃない、なんと言ってもすぐにあたし達も使う訳だし」
「なる程……ではある程度壊したら私を砦に置いて下さい。一人で司令官の首を取って来ましょう。それで戦闘が早く集結するはずですから」
「そうだな、そうしてもらえると有難いが、気を付けてな」
「はいはい、大丈夫ですよ~~~」
「……軽いな。じゃ、今回も行ってらっしゃいのアレする?」
「えっこんな所で?」
「だからそれはもう良いって! キスする??」
「いや、いいですいいです。二連続ですると酔ってしまう」
「何だよそれ!」
『セレネさん、でいいのかな。もうすぐ砦ですよ!』
『あ、そうだな済まない……』
(やばっ通信切るの忘れてた……)

 カーーーーン!!
いきなり砦の影から巨大な剣が振り下ろされ、瞬時に反応したセレネが恐ろしい速さで剣で弾き返した。

「ちっ闇討ち失敗!! そんな簡単にはやらせてくれんかっ!!」

 夜陰に紛れ砦の影から出て来たのは、スピネルの乗る魔ローダー・デスペラード・サイドワインダーカスタムⅡだった。

『セレネさん大丈夫ですか!? 敵魔ローダーです!!』
『ああっ大丈夫だっ! そちらこそ気を付けろ!!』
「あいつっ! 前に戦った事ある、ふざけた戦いして余裕見せて帰った奴!! 許せないっ!!」
「ちょっとミミイ、冷静になってよ!」

 心配していた事が現実になった。スピネルのデスペラードを前にしてミミイ王女がまたしても激昂した……

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