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III プレ女王国連合の成立
危機 分解される魔ローダー、追いつめられる魔戦車
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「早くしろ!」
どうして良いか分からず、ぼーっと立ち尽くすフゥーにサッワが発破を掛ける。
「あ、あのどうすれば良いのですか?」
「それくらい自分で考えろバカ!!」
「サッワ様、まだ相手は弱っているとは言え機体は健在、私達が支援しても良いでしょうか?」
「ふん、好きにしろ!」
「はいっ!」
サッワとフゥーのやり取りを見ていたアウララが助けに入った。この場では最強のココナツヒメのル・ワンは何もせずに少し離れた場所でじっと見ているだけだ。
「フゥーちゃん良い? 皆で一斉に切り掛かるから、その時に意図的に隙間を開けるわよ! そうすると必ずそこから逃げ出そうとするから、その時にあたしがコカすから、後ろからザクッと足を切り落としなさい! サッワさまもご協力を!!」
「おおーよ」
「はいっ!」
「いくよっ!」
美魅ィ王女のザンザスとメランのSRVを取り囲むだけで、一瞬動きが止まっていたメドース・リガリァ側の機体が一斉に同時に切り掛かって来た。しかしココナツヒメは相変わらずじっとしているので、それぞれ二対一の構図となっている。
「きゃーーー切り掛かって来た!」
「ちっ弄ぶ様にっ!」
それぞれ片腕を切り落とされた状態で、前後からの攻撃を必死にかわすザンザスとSRV。王女が言う様に本気で同時攻撃をすれば一瞬でカタが付くだろうに、微妙に攻撃の時間をずらし本当に弄ぶ様に攻撃を続けて来る。しかしその動きが微妙にメランと王女から見て、自国内への退路が開けた様に見えた。
「ミミイ、敵さん油断し過ぎて隙が出来始めてない?」
「メランちゃん、いっせーのっで領地に走るわよっ!」
「うんっ!」
「いっーせーのっ!!」
声を合図に王女とメランは敵を無視してダッシュで走り出した。
「作戦通り、フゥーちゃん!!」
「あ、ハイッ!!」
走り出した二機の内一機にアウララの搭乗するレヴェルがスライディングで足を掛けると、掛けられた王女の機体は簡単に転んだ。凄まじい土煙を上げてコケる、プレートアーマーを全高二十五Nメートルに引き延ばした様な魔ローダーの機体。
「キャーーーッ!!」
「ミミイ!?」
「行って!!」
「くっ」
一瞬躊躇したが、メランはここで死にたく無いと思い、よくある貴方を置いて行ける訳無いじゃない的な台詞を言う事も無く逃げ出した。
「しまった!」
「もう少し!!」
メランの目の前には二手に別れて魔戦車を攻撃しまくる敵魔ローダー二機がいる、自国領土が迫った。
「あらあら、味方を置いてっちゃうの?」
と、思ったのも束の間、じっとして動かなかったココナツヒメのル・ワンが瞬間移動(短)でメランの機体の前に現れた。
「ちぃいい!!」
ビシッ!!
ル・ワンは剣を使う事無く、手刀で簡単にメランのSRVから剣をはたき落とすと、腕を掴んでくるりと回し締め上げた。
「貴方は此処であの機体がどうなるのか見ておくのよ、うふふふふふ」
「ひっ」
量産型魔ローダーSRVの体は、伝説のいにしえの魔ローダール・ワンに締め上げられると全く動けなくなった。
「ココナツヒメさま有難う御座います!!」
「いいのよサッワちゃん、恨みを込めて存分にその機体を分解しちゃいなさい!!」
「はい! やれフゥー!!」
「は、はい……」
フゥーのレヴェルはコケて立ち上がろうとして、すぐさまアウララに蹴られてもう一度コケた王女の機体の右太ももをいきなり剣で切り落とした。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーっ」
「ミミイ!!!」
「残りの腕と足も斬れ!!」
「はいっ!!」
「ハッ!」
サッワに命令されて、アウララとヘレナが無造作に残りの腕と左足を切り落とした。これで完全に美魅ィ王女の機体ザンザスはダルマ状態にされてしまった。
「ミミイーーーーーーーーーーーーー!!」
「くふくふふふふ、あはははははは」
「ミミイ!? どうしたの!?」
絶叫するどころか笑い出したミミイにメランが驚く。
「く、い、痛い全身が痛い……よく昔璃凪と戦闘になったら二人一組で敵をめった刺しにしようねなんて言ってたけど……リナは死んじゃって、今度は私がめった刺しにされちゃった……王宮であれ程大事にされて育てられた私がこんな風に死んじゃうのね」
「何を言っているの?」
一瞬メランは王女が恐怖のあまり狂ったと真剣に考えた。
「連中の行動からみて、今度は私のコクピットハッチをこじ開けて必ず私を引っ張り出そうとするわ! その時に派手に自爆するからその時が最後のチャンスよ、必ず自領内まで逃げて……」
「何を言っているの!?」
王女を救いたいという一心では無く、例え走って逃げおおせたとしても、今度はユッマランド領内に敵魔ローダーが侵入して来て同じ結果になるだけだろうと思った。
「よし、全機で機体を抑え付けろ! そらっ!!」
「あああぁミミイッ!?」
ガシャーーーン!!
手足が切り取られ動けない状態のザンザスをアウララとヘレナとフゥーがなおも抑え付け、その状態でサッワがハッチを蹴ると、面白い様にハッチがぽーんと飛んで、遠くの地面に土をえぐって落着する。メランは恐怖のあまり両手で顔を覆った。
「げっ……お、女だ……しかも上玉……」
サッワのレヴェルが覗き込んだ瞬間、操縦席から外を睨み付ける王女と目が合った。
「サッワちゃんどうしちゃうの? そうだ捕まえてサッワちゃんの奴隷にしちゃえば? どんな事をしてもいいのよ、ンフフ」
「そ、そんな事してもいいんですか?」
「当たり前じゃないの、サッワちゃんは牢屋で酷い目に遭ったのよ、今度はその女を牢屋に入れて好き放題いたぶって、やらしい事してもいいのよ……」
「ごくり……」
僚機の各操縦席に魔法秘匿通信で聞こえそうな程大きく唾を飲み込んだ。
「サ、サッワさまやめて……」
「よ、よしやるぞ……この女を捕まえていたぶってやる!!」
フゥーの小さな声も無視して、しゃがみ込むと操縦席に巨大な手を突っ込もうとする。とその直後だった、当の女操縦者美魅ィ王女がトントンと何食わぬ顔で操縦席から出て来て、胸部装甲の上に腕を組んでびしっと背筋を伸ばして仁王立ちした。
「何だコイツ!? 諦めたのか!?」
『メラン、最後のチャンスよ、派手に自爆するから機会を無駄にしないで!』
「……ふざけんな…………わかったわよ……私は生き抜くわっ!」
操縦席から離れている為に少し小さいが、王女から最後の通信が入った。
「よし、直接この女を捕まえてやる!! ひひひ」
サッワは欲望丸出しでハッチを開けると、仁王立ちする女に向けて自分の開いた操縦席を近付けた。
「サッワちゃん駄目よ、油断しないでっ!!」
「ココナツヒメ様大丈夫で」
ズバーーーーーーーーーン!!!
サッワがココナツヒメの声に反応した直後だった、真っ白い閃光に包まれ美魅ィ王女の乗機ザンザスの残された胴体部分が爆発して弾け飛んだ。
「サッワちゃんッ!?」
(ミミイ!? 緩んだ! 今だっっミミイごめんっっ)
メランは泣きながら一瞬緩んだココナツヒメの締め上げから抜け出すと、走り出した。
「あと少し!!」
「だ、大丈夫です!! あのアマアッ!! どこだっ!?」
王女が命を懸けて行った自爆攻撃だが、サッワの機体は瞬間的にハッチを閉じ、サッワに致命傷を与える事は出来なかった。サッワの探す王女は爆風に吹き飛ばされ、遠くの地面に叩き付けられピクリとも動かなくなっていた。
「ほっ良かった。ならば、こっちも逃がさないわよっ!」
やはりル・ワンが瞬間移動(短)で素早くメランのSRVの前に現れると、足を引っかけて簡単に転ばせてしまう。
「んふふふふふ、まだこの機体も残っているわ! こんども女の子なら良いわね」
「ココナツヒメさま、今度は慎重にやりますよっ!」
転がされ、ル・ワンの大パワーで踏みつけられ動かなくされたSRVの操縦席の中で、メランはこれまで味わった事の無い様な恐怖を感じた。眼前で王女の最後を見た以上、なおさらだった。
「ひいいいいいいい、し、死ぬ……い、いやあ、いやああああああああ!!」
メランは泣き叫びながら本能的にハッチを開けて逃げ出そうとしたが、ハッチは外部から押さえられもはやどうする事も出来なくなっていた。
(はぁはぁはぁ……た、たすけてっフルエレさん、砂緒さん助けてっ!!)
メランは心の中で何度も祈ったが、そんなに都合よく二人が現れる訳が無いとも悟っていた。メランの転がる機体に不気味に敵魔ローダー達が接近して来ていた……
惨状は為嘉アルベルトの乗る魔戦車隊からもしっかり見えていた。頼みの綱の魔ローダー隊が事実上二機ともやられたのだ、もはやこの場に留まる意味は全く無くなっていた。
「隊長! 味方魔ローダーがっ魔ローダーがっっ!」
「今は自分達の身を守る事だけを考えろ!! 生きてユッマランドに辿り着け!!」
しかし言いながら、アルベルトも例えユッマランドに後退できたとして、それが一体何になるのか? ただ単にユッマランドまで占領されてしまうだけではと分かっていた。
ドカーーーン!! ズドーーーン!!
その間にも目の前では次々に僚機の魔戦車が潰されて行く。もはやアルベルトにはどうする事も出来なくなっていた。
『不死身のアルベルト殿と呼ばれているそうですな……』
(くそっこんな時に……)
突然アルベルトの脳裏に元重臣ライス氏の嫌味の言葉が浮かぶ。
「……フルエレくん済まない、今回は絶対に撤退しない……」
「隊長どうしましたか?」
突然一人でぶつぶつつぶやき出したアルベルトに駆動担当の魔導士隊員が訪ねる。
「駆動長、装甲長、二人は今すぐ車両から脱出するんだ! 私はここで魔砲を撃ち続ける」
「何を!?」
「隊長!?」
二人の魔導士が当然聞き返す。魔導士が二人も抜ければ魔戦車は極端に移動力も装甲の魔法防御もほとんど無くなり、単なる重い的になる。
「いう事を聞け、命令だ! 徒歩でユッマランド、いやニナルティナまで帰れ!! 行けっ!!」
いつも温厚で声を荒げないアルベルトの怒鳴り声にびくっとする二人の隊員。
「さっさと行け!!」
「はっっ!!」
「隊長どうかご無事で!!」
最後の隊員が虚しい別れの挨拶をすると非常ハッチから転げる様に脱出して行った。
「魔ローダーめ、くらえっ!!」
二人の脱出を確認すると、ちりじりになって逃げまどう魔戦車を踏みまくる悪魔の様な敵魔ローダーに向けて主砲を撃ちまくる。
「お、一両威勢のいいのがいるねえ!」
「逃げずに攻撃してくるじゃないかっ!!」
アシュリーとジャスミンの魔ローダーレヴェルがズンズンとアルベルトの魔戦車に近寄って来る。二人の魔導士が抜けたアルベルトの車両はゆっくりノロノロと後退しながらも猛烈に主魔砲を撃ち続ける。
「フルエレくん……どうか幸せになってくれ!」
アルベルトは覚悟を決めた。
どうして良いか分からず、ぼーっと立ち尽くすフゥーにサッワが発破を掛ける。
「あ、あのどうすれば良いのですか?」
「それくらい自分で考えろバカ!!」
「サッワ様、まだ相手は弱っているとは言え機体は健在、私達が支援しても良いでしょうか?」
「ふん、好きにしろ!」
「はいっ!」
サッワとフゥーのやり取りを見ていたアウララが助けに入った。この場では最強のココナツヒメのル・ワンは何もせずに少し離れた場所でじっと見ているだけだ。
「フゥーちゃん良い? 皆で一斉に切り掛かるから、その時に意図的に隙間を開けるわよ! そうすると必ずそこから逃げ出そうとするから、その時にあたしがコカすから、後ろからザクッと足を切り落としなさい! サッワさまもご協力を!!」
「おおーよ」
「はいっ!」
「いくよっ!」
美魅ィ王女のザンザスとメランのSRVを取り囲むだけで、一瞬動きが止まっていたメドース・リガリァ側の機体が一斉に同時に切り掛かって来た。しかしココナツヒメは相変わらずじっとしているので、それぞれ二対一の構図となっている。
「きゃーーー切り掛かって来た!」
「ちっ弄ぶ様にっ!」
それぞれ片腕を切り落とされた状態で、前後からの攻撃を必死にかわすザンザスとSRV。王女が言う様に本気で同時攻撃をすれば一瞬でカタが付くだろうに、微妙に攻撃の時間をずらし本当に弄ぶ様に攻撃を続けて来る。しかしその動きが微妙にメランと王女から見て、自国内への退路が開けた様に見えた。
「ミミイ、敵さん油断し過ぎて隙が出来始めてない?」
「メランちゃん、いっせーのっで領地に走るわよっ!」
「うんっ!」
「いっーせーのっ!!」
声を合図に王女とメランは敵を無視してダッシュで走り出した。
「作戦通り、フゥーちゃん!!」
「あ、ハイッ!!」
走り出した二機の内一機にアウララの搭乗するレヴェルがスライディングで足を掛けると、掛けられた王女の機体は簡単に転んだ。凄まじい土煙を上げてコケる、プレートアーマーを全高二十五Nメートルに引き延ばした様な魔ローダーの機体。
「キャーーーッ!!」
「ミミイ!?」
「行って!!」
「くっ」
一瞬躊躇したが、メランはここで死にたく無いと思い、よくある貴方を置いて行ける訳無いじゃない的な台詞を言う事も無く逃げ出した。
「しまった!」
「もう少し!!」
メランの目の前には二手に別れて魔戦車を攻撃しまくる敵魔ローダー二機がいる、自国領土が迫った。
「あらあら、味方を置いてっちゃうの?」
と、思ったのも束の間、じっとして動かなかったココナツヒメのル・ワンが瞬間移動(短)でメランの機体の前に現れた。
「ちぃいい!!」
ビシッ!!
ル・ワンは剣を使う事無く、手刀で簡単にメランのSRVから剣をはたき落とすと、腕を掴んでくるりと回し締め上げた。
「貴方は此処であの機体がどうなるのか見ておくのよ、うふふふふふ」
「ひっ」
量産型魔ローダーSRVの体は、伝説のいにしえの魔ローダール・ワンに締め上げられると全く動けなくなった。
「ココナツヒメさま有難う御座います!!」
「いいのよサッワちゃん、恨みを込めて存分にその機体を分解しちゃいなさい!!」
「はい! やれフゥー!!」
「は、はい……」
フゥーのレヴェルはコケて立ち上がろうとして、すぐさまアウララに蹴られてもう一度コケた王女の機体の右太ももをいきなり剣で切り落とした。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーっ」
「ミミイ!!!」
「残りの腕と足も斬れ!!」
「はいっ!!」
「ハッ!」
サッワに命令されて、アウララとヘレナが無造作に残りの腕と左足を切り落とした。これで完全に美魅ィ王女の機体ザンザスはダルマ状態にされてしまった。
「ミミイーーーーーーーーーーーーー!!」
「くふくふふふふ、あはははははは」
「ミミイ!? どうしたの!?」
絶叫するどころか笑い出したミミイにメランが驚く。
「く、い、痛い全身が痛い……よく昔璃凪と戦闘になったら二人一組で敵をめった刺しにしようねなんて言ってたけど……リナは死んじゃって、今度は私がめった刺しにされちゃった……王宮であれ程大事にされて育てられた私がこんな風に死んじゃうのね」
「何を言っているの?」
一瞬メランは王女が恐怖のあまり狂ったと真剣に考えた。
「連中の行動からみて、今度は私のコクピットハッチをこじ開けて必ず私を引っ張り出そうとするわ! その時に派手に自爆するからその時が最後のチャンスよ、必ず自領内まで逃げて……」
「何を言っているの!?」
王女を救いたいという一心では無く、例え走って逃げおおせたとしても、今度はユッマランド領内に敵魔ローダーが侵入して来て同じ結果になるだけだろうと思った。
「よし、全機で機体を抑え付けろ! そらっ!!」
「あああぁミミイッ!?」
ガシャーーーン!!
手足が切り取られ動けない状態のザンザスをアウララとヘレナとフゥーがなおも抑え付け、その状態でサッワがハッチを蹴ると、面白い様にハッチがぽーんと飛んで、遠くの地面に土をえぐって落着する。メランは恐怖のあまり両手で顔を覆った。
「げっ……お、女だ……しかも上玉……」
サッワのレヴェルが覗き込んだ瞬間、操縦席から外を睨み付ける王女と目が合った。
「サッワちゃんどうしちゃうの? そうだ捕まえてサッワちゃんの奴隷にしちゃえば? どんな事をしてもいいのよ、ンフフ」
「そ、そんな事してもいいんですか?」
「当たり前じゃないの、サッワちゃんは牢屋で酷い目に遭ったのよ、今度はその女を牢屋に入れて好き放題いたぶって、やらしい事してもいいのよ……」
「ごくり……」
僚機の各操縦席に魔法秘匿通信で聞こえそうな程大きく唾を飲み込んだ。
「サ、サッワさまやめて……」
「よ、よしやるぞ……この女を捕まえていたぶってやる!!」
フゥーの小さな声も無視して、しゃがみ込むと操縦席に巨大な手を突っ込もうとする。とその直後だった、当の女操縦者美魅ィ王女がトントンと何食わぬ顔で操縦席から出て来て、胸部装甲の上に腕を組んでびしっと背筋を伸ばして仁王立ちした。
「何だコイツ!? 諦めたのか!?」
『メラン、最後のチャンスよ、派手に自爆するから機会を無駄にしないで!』
「……ふざけんな…………わかったわよ……私は生き抜くわっ!」
操縦席から離れている為に少し小さいが、王女から最後の通信が入った。
「よし、直接この女を捕まえてやる!! ひひひ」
サッワは欲望丸出しでハッチを開けると、仁王立ちする女に向けて自分の開いた操縦席を近付けた。
「サッワちゃん駄目よ、油断しないでっ!!」
「ココナツヒメ様大丈夫で」
ズバーーーーーーーーーン!!!
サッワがココナツヒメの声に反応した直後だった、真っ白い閃光に包まれ美魅ィ王女の乗機ザンザスの残された胴体部分が爆発して弾け飛んだ。
「サッワちゃんッ!?」
(ミミイ!? 緩んだ! 今だっっミミイごめんっっ)
メランは泣きながら一瞬緩んだココナツヒメの締め上げから抜け出すと、走り出した。
「あと少し!!」
「だ、大丈夫です!! あのアマアッ!! どこだっ!?」
王女が命を懸けて行った自爆攻撃だが、サッワの機体は瞬間的にハッチを閉じ、サッワに致命傷を与える事は出来なかった。サッワの探す王女は爆風に吹き飛ばされ、遠くの地面に叩き付けられピクリとも動かなくなっていた。
「ほっ良かった。ならば、こっちも逃がさないわよっ!」
やはりル・ワンが瞬間移動(短)で素早くメランのSRVの前に現れると、足を引っかけて簡単に転ばせてしまう。
「んふふふふふ、まだこの機体も残っているわ! こんども女の子なら良いわね」
「ココナツヒメさま、今度は慎重にやりますよっ!」
転がされ、ル・ワンの大パワーで踏みつけられ動かなくされたSRVの操縦席の中で、メランはこれまで味わった事の無い様な恐怖を感じた。眼前で王女の最後を見た以上、なおさらだった。
「ひいいいいいいい、し、死ぬ……い、いやあ、いやああああああああ!!」
メランは泣き叫びながら本能的にハッチを開けて逃げ出そうとしたが、ハッチは外部から押さえられもはやどうする事も出来なくなっていた。
(はぁはぁはぁ……た、たすけてっフルエレさん、砂緒さん助けてっ!!)
メランは心の中で何度も祈ったが、そんなに都合よく二人が現れる訳が無いとも悟っていた。メランの転がる機体に不気味に敵魔ローダー達が接近して来ていた……
惨状は為嘉アルベルトの乗る魔戦車隊からもしっかり見えていた。頼みの綱の魔ローダー隊が事実上二機ともやられたのだ、もはやこの場に留まる意味は全く無くなっていた。
「隊長! 味方魔ローダーがっ魔ローダーがっっ!」
「今は自分達の身を守る事だけを考えろ!! 生きてユッマランドに辿り着け!!」
しかし言いながら、アルベルトも例えユッマランドに後退できたとして、それが一体何になるのか? ただ単にユッマランドまで占領されてしまうだけではと分かっていた。
ドカーーーン!! ズドーーーン!!
その間にも目の前では次々に僚機の魔戦車が潰されて行く。もはやアルベルトにはどうする事も出来なくなっていた。
『不死身のアルベルト殿と呼ばれているそうですな……』
(くそっこんな時に……)
突然アルベルトの脳裏に元重臣ライス氏の嫌味の言葉が浮かぶ。
「……フルエレくん済まない、今回は絶対に撤退しない……」
「隊長どうしましたか?」
突然一人でぶつぶつつぶやき出したアルベルトに駆動担当の魔導士隊員が訪ねる。
「駆動長、装甲長、二人は今すぐ車両から脱出するんだ! 私はここで魔砲を撃ち続ける」
「何を!?」
「隊長!?」
二人の魔導士が当然聞き返す。魔導士が二人も抜ければ魔戦車は極端に移動力も装甲の魔法防御もほとんど無くなり、単なる重い的になる。
「いう事を聞け、命令だ! 徒歩でユッマランド、いやニナルティナまで帰れ!! 行けっ!!」
いつも温厚で声を荒げないアルベルトの怒鳴り声にびくっとする二人の隊員。
「さっさと行け!!」
「はっっ!!」
「隊長どうかご無事で!!」
最後の隊員が虚しい別れの挨拶をすると非常ハッチから転げる様に脱出して行った。
「魔ローダーめ、くらえっ!!」
二人の脱出を確認すると、ちりじりになって逃げまどう魔戦車を踏みまくる悪魔の様な敵魔ローダーに向けて主砲を撃ちまくる。
「お、一両威勢のいいのがいるねえ!」
「逃げずに攻撃してくるじゃないかっ!!」
アシュリーとジャスミンの魔ローダーレヴェルがズンズンとアルベルトの魔戦車に近寄って来る。二人の魔導士が抜けたアルベルトの車両はゆっくりノロノロと後退しながらも猛烈に主魔砲を撃ち続ける。
「フルエレくん……どうか幸せになってくれ!」
アルベルトは覚悟を決めた。
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