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III プレ女王国連合の成立
そうだっ聖都へ行こう!10 冥界への入り口洞窟、クラウディアに別れ
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その後仮眠を終えた一行は旧都に入る事無く飛び立ち、高度を上げて来た行程と全く同じ、泡海を北上し陸地の北側を西に辿ってクラウディアまで戻って来た。
「ちょっと良いかなセレネちゃん、神殿建設予定地に降りる前に行って欲しい所があるんだ」
下の操縦席の後ろに立つ猫弐矢が突然言い出した。振り返る伽耶。
「う、兄者何でしょうか? またヌの話では無いですよね……」
「はわわ、砂緒それを言うなよ! いや言わないでよ」
また猫弐矢兄さんが変な事にならないか心配になった砂緒とセレネが上の操縦席で慌てる。兎幸は立ったまま無機質な表情でお菓子をポリポリ食べ続けていた。
「あはは心配しないで! 観光名所があるから見せてあげたいんだ」
「まあ、それはどんな場所なのでしょうか?」
伽耶が目を輝かせて喜ぶ。
「着いてからのお楽しみ!」
「素直に期待して良いのでしょうか……」
「う、猫弐矢さんはちょっと変な所があるしな、いやあるからね……」
「あの……さっきからセレネ何か雰囲気が変ですけど、どうしたのでしょう?」
「いやちょっと、お淑やかにしようかなと思って」
「……どうしたんですかセレネ、熱でもあるんですか?」
座席の後ろに立ったままの砂緒が真顔で心配してセレネの額を触る。
「熱なんか無いよ。いやだってお前、いや砂緒……お淑やかなお嬢様タイプが好きなんでしょ?」
「え……別にそういう訳では……何か見ました?」
「いやー砂緒こそ何か言う事ない?」
「い、いえー?」
「あはは」
「うふふ」
「もうすぐだ、西の北側の岸壁に降りてみて!」
「あっはいはい、あそこらへんかなあ」
砂緒と二人で謎の笑い合いをしていたセレネは、慌ててクラウディア西の北側の岸壁に降り立った。鳥型のまま蛇輪の操縦席から皆が降りて来る。
「ここに何があるのかなーっ?」
兎幸がお菓子を食べながら歩く。
「兄者殺風景な場所ですぞ、此処に観光地があるのですか?」
確かに砂緒が言う通り、蛇輪を着地させたのも一歩間違えば水没しそうな危うい場所だった。
「あはは、ここだよここ、此処に冥界への入り口と呼ばれている場所があるんだ」
「え、め冥界への入り口ですか!?」
「また変な場所を……」
「冥界ッ冥界ッ!!」
兎幸が異常興奮して飛び跳ねる。
「ほら此処! 斜めに歪んでいる洞窟の入り口があるだろう、これを奥に進むと冥界への入り口に繋がっているらしい……」
猫弐矢が指差した先に洞窟はあった。
「よし、早速入ってみましょう!」
砂緒がずんずん猫弐矢が指差した洞窟に入って行こうとする。
「待って! 今の話聞いた? 冥界に繋がってるって話でしょーがっ入っちゃダメでしょ」
セレネが慌てて砂緒の腕を掴む。
「冥界とかってどうなってるか気になりませんか? もう見たくて見たくて仕方無いです」
「いや駄目だろ、砂緒死んじゃうよ、やめなって」
「いーきーまーす」
「だーめーだー」
「おお、よく分からない戦いだな! だははは」
兎幸が指をさして笑う。
「ああっ、でも皆あんまりじろじろ見たらだめだよ!」
「え? 連れて来ておいて何ですか?」
「あーーーこの冥界への入り口を夢で見ちゃうと死んじゃうんだよ、怖いよね! あはははは」
猫弐矢があっさりと恐ろしい事を言う。
「何て所に連れて来るんですか!? 砂緒が死んじゃったらどうしてくれるんですかっ」
セレネが猫弐矢に詰め寄る。
「せ、セレネ嬉しいですが、そこまで気にする事は無いです、迷信でしょう……」
「いや、僕は迷信じゃないと信じているよ」
猫弐矢は真剣な顔で言っている。
「余計駄目でしょっ!」
「だから僕たちは古くから此処にお供え物をしてるんだ……」
猫弐矢は洞窟の入り口を眺めた。
「おお、そうだ兄者! 私はゴホウラ貝を大量に持っています。魔法剣作成のお礼を兼ねてそれを全て進呈致しましょう……」
そう言うと砂緒はコンテナの魔輪のボックスから、アイイから貰ったゴホウラ貝の残り半分を持って来た。
「これは……こんな良質な貝を何処で……これだけあれば貝輪が沢山作れるよ、しばらくお供え物には困らない……有難う砂緒くん!!」
猫弐矢は砂緒の腕を掴んでブンブン振る。
「えらい気前が良いな……アイイさんから貰ったゴホウラ貝、売れば結構な値段になったんじゃないの?」
「本当に貰って良いのかい?」
猫弐矢が戸惑う。
「いやいや値段以上の物が手に入ったから良いのですよ」
「ど、どうした砂緒……気持ち悪い事言わないで欲しいよ」
「じゃあ兎幸は画像としてこの穴を記録しとくね!」
「やめなって……」
セレネが兎幸を目隠しする。
「じゃあそろそろ帰ろうかっ!」
「猫弐矢さん一体何を見せたかったんですか?」
伽耶が怪訝な顔をして聞く。
「え? クラウディアには色々な物があるよーって。変かな?」
「い、いえ……」
伽耶はやっぱり猫弐矢も変な人だと思った。
一行はようやく神殿建設予定地に帰って来た。職人達の話では明日魔法剣が完成すると聞き、一行は今晩は仮宮殿で泊まる事になった。
コンコン
砂緒の部屋のドアがノックされる。
「あれ、セレネどうしたんです? 眠れないのですか?」
砂緒の言葉を無視して部屋に入って来る。
「明日、もう帰るんだぞ……」
「うん、そうですねー」
「そうですねーじゃ無いだろう。このまま何も無くて帰って良いの?」
セレネが目を合わせずに、思い詰めた様に問い掛ける。
「何も無いのが一番じゃないですかっ!」
「そういう意味じゃ無くてだな……こ、今晩一緒の部屋で眠る?」
「いやーーーそれは問題があるでしょう、どうせ明日からもまた同じ建物で暮らすのですよ、一緒でしょう」
「一緒じゃない! 帰ったらフルエレさんが居るだろうが……もう宙ぶらりんで過ごすのは辛い」
セレネは砂緒に抱き着いた。
「セレネ……だめですよ……」
「何故?」
「怖いんです……今でさえ大好きなセレネとそんな事になったら……きっと一日中セレネの事で頭がいっぱいになる……そうなるのが怖いんです」
「ど、どうして、それでいいじゃん」
無神経な砂緒の意外な答えにドキドキするセレネ。
「そうなったら、フルエレを守る事に支障をきたします……」
「何だよそれ……そんなのもうどうでもいいじゃん! フルエレさんの事は諦めろよ」
ガチャッ
その時突然、砂緒の部屋のクローゼットから、大きく成長した胸の形もはっきり見えるタンクトップにショートパンツ姿の兎幸が出て来た。
「砂緒ーーー何時まで隠れてればいいんだよ! 早く一緒にお風呂に入ろっ! ……あれセレネも入るの?」
その言葉に一瞬セレネも砂緒も凍り付いた。
「あれ、兎幸錯乱してますね? どうして此処にいるんです?」
「………………おい? これは何か説明してよ」
「一緒にお風呂にはいろーーー!!」
「しーーーっしーーーっ兎幸、空気読んで」
冷や汗の砂緒が必死に首を振る。
「何であたしは何時も拒否られて、兎幸先輩は良いんだよ……」
「馬鹿ですね、兎幸は魔法自動人形ですよ、変な気なんて起きませんよ!!」
「砂緒、さっき魔改造された時に、身体はバイオ材料に置き換えられたって言ったよ? 忘れたのー? だから砂緒見たい見たい言ってたじゃないかっ! バカだなあ」
兎幸がとても悪い情報を伝えてしまう。
「いや、これは本当に違うんですよ、さっきセレネに言った事が事実なんです! 本当にセレネの事を一番大事に思ってるんですってば!」
「……そんなの理解できないよ」
これは本当に素直に砂緒の最低な本心だった。七華に、彼は知らないが死亡した璃凪と、恐ろしい事に一夜をともにした相手と大事にしたい相手とを砂緒は別けて考え、特にセレネには何故か勇気が出なかった。
「……それにただお風呂に入りたいだけの、子供の様な純真な兎幸先輩を騙してそういう事したら犯罪だからな……」
「うっ、そうです、その通りです。反省して寝ますから許して下さい」
砂緒は光の速さで土下座した。兎幸は不思議な顔で砂緒とセレネを交互に見ている。
「兎幸はいいんだよ、前からずっと砂緒もフルエレの事も大好きだよー?」
「もういいっ、勝手にしてよっ」
セレネは半泣きで出て行った。
「あーーあーーー泣かせたっ!」
「兎幸が変なタイミングで出て来るから……」
この期に及んで人のせいにする悪質な砂緒だった。
―次の日。
砂緒達が食事を終え、猫弐矢に呼ばれて出ると、遂に魔ローダーサイズの魔法剣が完成していた。
「どうだね、凄いだろう! これが魔法剣だよ、早速デモンストレーションしてよセレネちゃん!」
「いや……今日は調子悪いからパス」
「え?」
セレネは元気が無く声も小さい。
「あ、セレネはなんか調子悪いみたいですね、すす、すいません兄者」
「そうなのかな? そんなので今日これから飛び立って帰れるのかい?」
猫弐矢と伽耶が心配そうな顔をする。
「はい……大丈夫ですから、出来れば早く帰りたいです」
「本当? 凄く元気無いよ」
「はい、大丈夫です」
(あわ、あわわわわわわ、セレネがリセットされてしまった……)
「そ、それじゃあ名残惜しいが砂緒くんセレネちゃん兎幸ちゃん、お別れだねまた来てね。それと砂緒くん、忘れずに大切な妹を里帰りさせてね!」
「皆さん私を此処まで連れて来て下さって有難う御座います。この御恩は決して忘れません」
伽耶が深々と頭を下げた。
「お、おお兄者、マブのダチの猫呼は必ずお連れしますぞ! それまではしばしお別れでござる。ほ、ほらセレネさんも何か言って。」
「ほい、ではまた」
セレネはぴっと手を上げて直ぐに横を向いた。
「兎幸ここも猫弐矢も気に入ったよ、いつかここで暮らしたいなあ……そうだ兎幸、その猫耳欲しいな!」
「もともとウサ耳ついてるのに、さらに猫耳まで装着したらカオスでしょ」
セレネが冷めた突っ込みをする。
「おお、兎幸ちゃんみたいな可愛い子がクラウディア人になってくれるなら大歓迎だよ! 今度来たら猫耳を進呈するよ!」
「わーーい!!」
兎幸は飛び跳ねた。
「あーーーいーーーなーーーわらしもクラウディア人の証の猫耳が欲しいのーー!!」
調子にのって砂緒まで猫弐矢にお願いする。
「お、砂緒くんみたいなおもしろ可愛い弟が出来るなら大歓迎だよ! 砂緒くんには魔力が無くても動く特注品を開発しておくよ!」
「わーーーーーーい、兄者ありがとう!! あっ」
じとっとした目をして見ているセレネに気付いて砂緒が静かになる。
「そろそろ本当にお別れします。ううっ兄者さらばですっ必ず妹さんを連れて来ますぞ!!」
「うん、また来てねっ! 猫呼の事よろしく頼むよっ」
「ばいばーーい」
砂緒と兎幸は大きく手を振り、セレネは無言で軽く会釈すると、そのまま三人は蛇輪に乗りクラウディアの地から飛び立った。
「ちょっと良いかなセレネちゃん、神殿建設予定地に降りる前に行って欲しい所があるんだ」
下の操縦席の後ろに立つ猫弐矢が突然言い出した。振り返る伽耶。
「う、兄者何でしょうか? またヌの話では無いですよね……」
「はわわ、砂緒それを言うなよ! いや言わないでよ」
また猫弐矢兄さんが変な事にならないか心配になった砂緒とセレネが上の操縦席で慌てる。兎幸は立ったまま無機質な表情でお菓子をポリポリ食べ続けていた。
「あはは心配しないで! 観光名所があるから見せてあげたいんだ」
「まあ、それはどんな場所なのでしょうか?」
伽耶が目を輝かせて喜ぶ。
「着いてからのお楽しみ!」
「素直に期待して良いのでしょうか……」
「う、猫弐矢さんはちょっと変な所があるしな、いやあるからね……」
「あの……さっきからセレネ何か雰囲気が変ですけど、どうしたのでしょう?」
「いやちょっと、お淑やかにしようかなと思って」
「……どうしたんですかセレネ、熱でもあるんですか?」
座席の後ろに立ったままの砂緒が真顔で心配してセレネの額を触る。
「熱なんか無いよ。いやだってお前、いや砂緒……お淑やかなお嬢様タイプが好きなんでしょ?」
「え……別にそういう訳では……何か見ました?」
「いやー砂緒こそ何か言う事ない?」
「い、いえー?」
「あはは」
「うふふ」
「もうすぐだ、西の北側の岸壁に降りてみて!」
「あっはいはい、あそこらへんかなあ」
砂緒と二人で謎の笑い合いをしていたセレネは、慌ててクラウディア西の北側の岸壁に降り立った。鳥型のまま蛇輪の操縦席から皆が降りて来る。
「ここに何があるのかなーっ?」
兎幸がお菓子を食べながら歩く。
「兄者殺風景な場所ですぞ、此処に観光地があるのですか?」
確かに砂緒が言う通り、蛇輪を着地させたのも一歩間違えば水没しそうな危うい場所だった。
「あはは、ここだよここ、此処に冥界への入り口と呼ばれている場所があるんだ」
「え、め冥界への入り口ですか!?」
「また変な場所を……」
「冥界ッ冥界ッ!!」
兎幸が異常興奮して飛び跳ねる。
「ほら此処! 斜めに歪んでいる洞窟の入り口があるだろう、これを奥に進むと冥界への入り口に繋がっているらしい……」
猫弐矢が指差した先に洞窟はあった。
「よし、早速入ってみましょう!」
砂緒がずんずん猫弐矢が指差した洞窟に入って行こうとする。
「待って! 今の話聞いた? 冥界に繋がってるって話でしょーがっ入っちゃダメでしょ」
セレネが慌てて砂緒の腕を掴む。
「冥界とかってどうなってるか気になりませんか? もう見たくて見たくて仕方無いです」
「いや駄目だろ、砂緒死んじゃうよ、やめなって」
「いーきーまーす」
「だーめーだー」
「おお、よく分からない戦いだな! だははは」
兎幸が指をさして笑う。
「ああっ、でも皆あんまりじろじろ見たらだめだよ!」
「え? 連れて来ておいて何ですか?」
「あーーーこの冥界への入り口を夢で見ちゃうと死んじゃうんだよ、怖いよね! あはははは」
猫弐矢があっさりと恐ろしい事を言う。
「何て所に連れて来るんですか!? 砂緒が死んじゃったらどうしてくれるんですかっ」
セレネが猫弐矢に詰め寄る。
「せ、セレネ嬉しいですが、そこまで気にする事は無いです、迷信でしょう……」
「いや、僕は迷信じゃないと信じているよ」
猫弐矢は真剣な顔で言っている。
「余計駄目でしょっ!」
「だから僕たちは古くから此処にお供え物をしてるんだ……」
猫弐矢は洞窟の入り口を眺めた。
「おお、そうだ兄者! 私はゴホウラ貝を大量に持っています。魔法剣作成のお礼を兼ねてそれを全て進呈致しましょう……」
そう言うと砂緒はコンテナの魔輪のボックスから、アイイから貰ったゴホウラ貝の残り半分を持って来た。
「これは……こんな良質な貝を何処で……これだけあれば貝輪が沢山作れるよ、しばらくお供え物には困らない……有難う砂緒くん!!」
猫弐矢は砂緒の腕を掴んでブンブン振る。
「えらい気前が良いな……アイイさんから貰ったゴホウラ貝、売れば結構な値段になったんじゃないの?」
「本当に貰って良いのかい?」
猫弐矢が戸惑う。
「いやいや値段以上の物が手に入ったから良いのですよ」
「ど、どうした砂緒……気持ち悪い事言わないで欲しいよ」
「じゃあ兎幸は画像としてこの穴を記録しとくね!」
「やめなって……」
セレネが兎幸を目隠しする。
「じゃあそろそろ帰ろうかっ!」
「猫弐矢さん一体何を見せたかったんですか?」
伽耶が怪訝な顔をして聞く。
「え? クラウディアには色々な物があるよーって。変かな?」
「い、いえ……」
伽耶はやっぱり猫弐矢も変な人だと思った。
一行はようやく神殿建設予定地に帰って来た。職人達の話では明日魔法剣が完成すると聞き、一行は今晩は仮宮殿で泊まる事になった。
コンコン
砂緒の部屋のドアがノックされる。
「あれ、セレネどうしたんです? 眠れないのですか?」
砂緒の言葉を無視して部屋に入って来る。
「明日、もう帰るんだぞ……」
「うん、そうですねー」
「そうですねーじゃ無いだろう。このまま何も無くて帰って良いの?」
セレネが目を合わせずに、思い詰めた様に問い掛ける。
「何も無いのが一番じゃないですかっ!」
「そういう意味じゃ無くてだな……こ、今晩一緒の部屋で眠る?」
「いやーーーそれは問題があるでしょう、どうせ明日からもまた同じ建物で暮らすのですよ、一緒でしょう」
「一緒じゃない! 帰ったらフルエレさんが居るだろうが……もう宙ぶらりんで過ごすのは辛い」
セレネは砂緒に抱き着いた。
「セレネ……だめですよ……」
「何故?」
「怖いんです……今でさえ大好きなセレネとそんな事になったら……きっと一日中セレネの事で頭がいっぱいになる……そうなるのが怖いんです」
「ど、どうして、それでいいじゃん」
無神経な砂緒の意外な答えにドキドキするセレネ。
「そうなったら、フルエレを守る事に支障をきたします……」
「何だよそれ……そんなのもうどうでもいいじゃん! フルエレさんの事は諦めろよ」
ガチャッ
その時突然、砂緒の部屋のクローゼットから、大きく成長した胸の形もはっきり見えるタンクトップにショートパンツ姿の兎幸が出て来た。
「砂緒ーーー何時まで隠れてればいいんだよ! 早く一緒にお風呂に入ろっ! ……あれセレネも入るの?」
その言葉に一瞬セレネも砂緒も凍り付いた。
「あれ、兎幸錯乱してますね? どうして此処にいるんです?」
「………………おい? これは何か説明してよ」
「一緒にお風呂にはいろーーー!!」
「しーーーっしーーーっ兎幸、空気読んで」
冷や汗の砂緒が必死に首を振る。
「何であたしは何時も拒否られて、兎幸先輩は良いんだよ……」
「馬鹿ですね、兎幸は魔法自動人形ですよ、変な気なんて起きませんよ!!」
「砂緒、さっき魔改造された時に、身体はバイオ材料に置き換えられたって言ったよ? 忘れたのー? だから砂緒見たい見たい言ってたじゃないかっ! バカだなあ」
兎幸がとても悪い情報を伝えてしまう。
「いや、これは本当に違うんですよ、さっきセレネに言った事が事実なんです! 本当にセレネの事を一番大事に思ってるんですってば!」
「……そんなの理解できないよ」
これは本当に素直に砂緒の最低な本心だった。七華に、彼は知らないが死亡した璃凪と、恐ろしい事に一夜をともにした相手と大事にしたい相手とを砂緒は別けて考え、特にセレネには何故か勇気が出なかった。
「……それにただお風呂に入りたいだけの、子供の様な純真な兎幸先輩を騙してそういう事したら犯罪だからな……」
「うっ、そうです、その通りです。反省して寝ますから許して下さい」
砂緒は光の速さで土下座した。兎幸は不思議な顔で砂緒とセレネを交互に見ている。
「兎幸はいいんだよ、前からずっと砂緒もフルエレの事も大好きだよー?」
「もういいっ、勝手にしてよっ」
セレネは半泣きで出て行った。
「あーーあーーー泣かせたっ!」
「兎幸が変なタイミングで出て来るから……」
この期に及んで人のせいにする悪質な砂緒だった。
―次の日。
砂緒達が食事を終え、猫弐矢に呼ばれて出ると、遂に魔ローダーサイズの魔法剣が完成していた。
「どうだね、凄いだろう! これが魔法剣だよ、早速デモンストレーションしてよセレネちゃん!」
「いや……今日は調子悪いからパス」
「え?」
セレネは元気が無く声も小さい。
「あ、セレネはなんか調子悪いみたいですね、すす、すいません兄者」
「そうなのかな? そんなので今日これから飛び立って帰れるのかい?」
猫弐矢と伽耶が心配そうな顔をする。
「はい……大丈夫ですから、出来れば早く帰りたいです」
「本当? 凄く元気無いよ」
「はい、大丈夫です」
(あわ、あわわわわわわ、セレネがリセットされてしまった……)
「そ、それじゃあ名残惜しいが砂緒くんセレネちゃん兎幸ちゃん、お別れだねまた来てね。それと砂緒くん、忘れずに大切な妹を里帰りさせてね!」
「皆さん私を此処まで連れて来て下さって有難う御座います。この御恩は決して忘れません」
伽耶が深々と頭を下げた。
「お、おお兄者、マブのダチの猫呼は必ずお連れしますぞ! それまではしばしお別れでござる。ほ、ほらセレネさんも何か言って。」
「ほい、ではまた」
セレネはぴっと手を上げて直ぐに横を向いた。
「兎幸ここも猫弐矢も気に入ったよ、いつかここで暮らしたいなあ……そうだ兎幸、その猫耳欲しいな!」
「もともとウサ耳ついてるのに、さらに猫耳まで装着したらカオスでしょ」
セレネが冷めた突っ込みをする。
「おお、兎幸ちゃんみたいな可愛い子がクラウディア人になってくれるなら大歓迎だよ! 今度来たら猫耳を進呈するよ!」
「わーーい!!」
兎幸は飛び跳ねた。
「あーーーいーーーなーーーわらしもクラウディア人の証の猫耳が欲しいのーー!!」
調子にのって砂緒まで猫弐矢にお願いする。
「お、砂緒くんみたいなおもしろ可愛い弟が出来るなら大歓迎だよ! 砂緒くんには魔力が無くても動く特注品を開発しておくよ!」
「わーーーーーーい、兄者ありがとう!! あっ」
じとっとした目をして見ているセレネに気付いて砂緒が静かになる。
「そろそろ本当にお別れします。ううっ兄者さらばですっ必ず妹さんを連れて来ますぞ!!」
「うん、また来てねっ! 猫呼の事よろしく頼むよっ」
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砂緒と兎幸は大きく手を振り、セレネは無言で軽く会釈すると、そのまま三人は蛇輪に乗りクラウディアの地から飛び立った。
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