魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記(工事中2)

佐藤うわ。

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III プレ女王国連合の成立

そうだっ聖都へ行こう!5 何故……フルエレが此処に?

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 しばらく歩いていると、ひと際装飾の華やかな建物に辿り着く。雰囲気から高貴な女性の住む一室だと直感した。そしてその部屋の入り口には剣を携えた侍女が二人立っている。シューネに化けた砂緒は侍女を電気や拳で攻撃するのは嫌なので、一か八か先程の侍女に使った手が通用するか試す事にした。

「ご苦労様です……あの方は眠られておいでですか?」
「ハッ!! シューネさま!?」
「シューネさまがこんな夜更けにこの屋敷に……遂に……この時が……」

 何故か侍女二人が突然涙ぐみ、装飾の少ないオーソドックスで質素なメイド服で頬を拭く。

「あ、あの?」
「皆まで言わずとも良いのです……姫さまから密かにシューネ様がおいでになると何時でも通せと命令されております。しかし私どもは貴方さまが来る事は無いと思っておりました」

 侍女達は何か深い事情がありげに思い詰めたように言っている。砂緒は神妙な顔をして雰囲気に合わせた。

「そうでしたか……私も遂に決心したのです……このままでは良くないと……」

 砂緒はなんだか良く分からないが、ノリでそれっぽい適当な台詞を言ってみる。

「どうぞ……姫さまはぐっすりお眠りで御座います。どうかお優しくお起こし下さいませ」
「どきどきが……どきどきが止まりません、倒れそうです先輩……」
「こ、これ、余計な事を言うのはおよし」

 何やら侍女が乱れ始めたが、砂緒は軽く頭を動かすと構わず部屋の扉を開けた。侍女は黙って頭を下げ、シューネに化けた砂緒を見送った。一つドアを開けると前室があり、さらに進むとようやく大きな気品のある寝室に辿り着いた。

「大きなベッドが一つ……一体どの様なご婦人が……」

 高貴な女性が一人眠る部屋に忍んで入るという事にどきどきする気持ちを抑えながら、砂緒はそっと歩き前室に置いてあった魔法ランプを、ベッドで寝ている貴人の顔に近付けた。

「え?」

 砂緒はすやすや寝ている女性の顔を見て、魔法ランプを危うく落としかけた。ふざけた気持ちもシューネに化けている事も全て一瞬で忘れ吹き飛ぶ。

「フル……エレ? 何故、フルエレが此処にいるのですか!?」

 魔法ランプ一つだけの暗い部屋、ベッドですやすや寝ている女性は、ぼうっとした明かりに照らされて透き通る肌の白さや、すっと通った鼻梁の整った顔立ち、長いまつ毛に綺麗な眉と、全てが砂緒の脳裏に焼き付いている、愛してやまないフルエレの顔その物にしか見えなかった。

「……フルエレ、起きて下さい、一体どうして此処にいるのですか? さらわれたのですか? 助けに来ましたよ」

 砂緒は騒ぎにならない様に侍女達に聞こえない小さな声で囁きかけ、フルエレの肩をそっと揺らした。

「……ん? 何です……一体……どうしたのですか?」

 女性は寝ぼけ眼でまだ事情が掴めず、侍女か何かだと思っている様子だ。

「フルエレ、早く起きて下さい! 一刻も早くここを脱出しましょう」
「……シューネ? ……シューネ!? どうして貴方が此処にいるのですか!?」

 深夜突然の男性の自室への侵入にようやくどきっとして起き上がり、寝巻姿の自分の身体をシーツと腕で隠す姫乃殿下。

「どうしたのですか!? シューネといえども無礼ですよ、侍女は一体……ああわたしくしが命令していたのでしたね……」

 姫乃は息を整えてなんとか状況を把握しようとする。その時ようやく砂緒は起き上がった女性がフルエレのふわふわの金髪では無く、烏の濡れ羽色の見事な黒髪のストレートだと気付いた。さらには年齢が十五歳程度では無く、二十代前半の大人の女性である事にも気付く。

「……フルエレ? どうしたのですか、色々変わってしまっていますが、メ〇モちゃん的な薬品か魔法で大人にされてしまったのですか? あいえ、でも大人になってしまったとしても私が思い描いていた様な理想の素敵な大人フルエレになっています。決して魅力が落ちた訳ではないですので。いやむしろ……今すぐ抱きしめたいくらいです」

 突然目の前で訳の分からない事を力説するシューネに激しく戸惑う姫乃殿下。

「落ち着きなさいシューネ、貴方は先程から一体何を言っているのですか? フルエレとは誰ですか? わたくしは姫乃ソラーレです。誰と勘違いしているのです?」

 ここでようやく砂緒はあの方と言われる女性の部屋に忍びこんだ事を思い出した。しかしいくら理性で違う女性だと認識しようとしても、顔も声もフルエレその物でどうしても混乱してしまう。

(髪型も違うし本当にフルエレでは無いのか? でも駄目だ……区別が付かない……ここは本当にフルエレとは違う人である場合と本当はフルエレで魔法か何かで洗脳されている場合、両方である可能性で行動しよう……)

「申し訳ありません……少し混乱しておりました。私は貴城乃たかぎのシューネで御座います」
「だからそれは重々知っているわ。こんな夜更けに何用ですか?」
「じ、実は……貴方をこの城からお連れしたく、深夜に忍び込んでしまったのです……」
「……え?」
(やっぱ突然こんな事言ってはだめかー? 気絶させて連れ出すか??)

 姫乃殿下という女性は、はっとしたまま固まってしばらく動かなくなった。

「……それは……遊びや戯れでは無く、本気なのですね? こ、このナノニルヴァの宮から抜け出て街の中に逃げ出すのですね? ふ、二人で……」
「そうです! 正にそうです!! 貴方と手に手を取って城を抜け出すのです。そしてそのままセブンリーフに帰るのですよ!」
「……セブンリーフに帰る?」

 再び姫乃殿下が不審がる。

「は、いえ、セブンリーフの様に人里離れた国に行き、ひっそりと二人で暮らすのです」
「どうして……大人になってからは冷たい態度ばかり、なのに何故突然その様な事を言い出すのです!」

 今度は姫乃殿下は少し恨みのこもった表情になる。

「それは……それは! 人々の目を誤魔化す為、ずっと想いを秘めて過ごして来たのですが、もう耐えられません、貴方への想いが日々大きくなり、もうどうしようも無くなり、遂には今夜来てしまったのです。申し訳ありません……しかしどうしても一緒に来て頂きたい」

 砂緒は役を演じているつもりで、最近ずっとフルエレにないがしろにされていた想いが炸裂して台詞が真に迫った。

「分かりました……ほ、本気なのですね……わたくしもいつかこの様な日が来るのではと内心思っておりました。少し待ちなさい、この姿では外に出れません。密かに用意していた町娘の姿に着替えます。前室に控えなさい」

「………………はい」

 砂緒は焦った。彼女も自分と同じに内心計算づくで、自分を前室に動かした後に非常ベル的な物を鳴らしたり抜け穴で逃げられたりする可能性もある。けれども砂緒はフルエレにそっくりな彼女の目を見て、嘘を付いている風には感じず、言われるままにする事にした。

「決して覗いてはいけませんよ」
(鶴の恩返しですか)

 前室でどきどきしながら待つ砂緒は、どこかで聞いた様な台詞に一瞬笑みが浮かんだ。


「支度が終わりました入りなさい」
「はい」

 砂緒にとっては長い時間待たされ、心配になって来た所にようやくお声が掛かった。

「こんな物です。どうですか? ドレスで無いと見劣りしますか?」

 姫乃は長い髪をまとめ上げ、動きやすい街娘スタイルに変わっていた。しかし砂緒にとってはよりこちらの方がフルエレに近くなりドキリとする。

「やはりフル、いえ姫さまは何を着ても美しい……早く二人きりの世界に行きたいです」
「どうしたのです? 今日のシューネは変、けっして言葉を飾るタイプでは無かったのに」
「い、いえ、そうだ! 早く出ましょう! 早速私が壁を壊して行きますので」
「壁を壊す?? どうしたのですか、宮殿を抜け出る時は、子供の頃の様に秘密の抜け穴から出るのでしょう?」
「そうですそうです! それです!! 抜け道ですよははは」

 砂緒はシューネの演技が限界になって来て冷や汗が流れる。

「貴方……本当にシューネなのですか? シューネはとても誠実な男、軽はずみな事をする人間ではありませんよ」
「………………」

 砂緒は言葉に詰まる。

「ふふ、こんな事をしでかす以上は尋常な気持ちではいられませんね、意地悪な事を言いました」

 等と言いながら姫乃が壁に隠されたボタンを押すと、前室の床の一部が開き隠された階段が現れた。

「魔法ランプを貸しなさい、私が先に行きましょう」

 突如率先して歩み始める姫乃に内心びびりながらも付いて行く砂緒。


 階段を降りると、暗く長い通路が続く。時折設置型の魔法ランプが放置されており、姫乃が接近するだけで大きな魔力に反応して次々点灯して行く。砂緒は巨大な宮殿から街まで途方も無く歩くのかと思った。

「此処でしたね」

 姫乃が突然通路横の壁を押すと、ごごごっと音が鳴り開く。躊躇無く入って行く姫乃を慌てて追いかけて入ると、中には小さい駅があった。

「駅!? これは地下鉄ですか?」
「何を言っているのですか? 子供の頃あれ程乗ったではないですか、放置された工事用のトロッコ魔っ車でしょう」
「そうですそうです、トロッコ列車ですね、いや魔っ車ですね」

 砂緒はまたまた焦った。こういう物は男が動かす物だ、しかし砂緒は魔力が一切無い。どう誤魔化そうかと考えに考えている最中だった。

「ふふ、シューネは私がこれを動かすのが大好きだと覚えていてくれたのですね、私が運転しましょう」

 そう言って姫乃が運転席に座りレバーを握ると、途端に計器や車内のランプが点灯した。

(こういうのが大好きな所までフルエレにそっくりではないですか……本当に別人ですか?)

「え、ええ……姫はいつもこれをきゃっきゃっ言いながら運転していた物ですね」
「うふふ、そうそう! 覚えていたのね」

 ガタッゴトッガタッゴトッ
二人を乗せたトロッコ魔っ車は、暗いトンネル内で前面のライトを照らし街に向けて走って行った。
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