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III プレ女王国連合の成立
セレネと旅 9 海と山とに挟まれた小さき王国へ…… 5 セレネが危ない! 走って来た強い味方?
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「こんな事ならセレネに言われた通り、最初から全力で雷で瞬殺すれば良かった」
とにかく砂緒は敵陣が近くにある事を願い、周囲の死体の山の中から主を失い、一頭でふらふら歩いている馬を見つけ出し跨った。
「くそっどちらに向かえば良いのでしょうか?? 早くしなければ、セレネッ」
焦燥する中、砂緒が久しぶりに馬の手綱を握り、どちらに向かおうか、屋上有料双眼鏡の能力を使って周囲を見渡した。敵勢力は散り散りに逃走して、完全に見失ってしまっていた。
ガシャンガシャンガシャン……
砂緒が珍しく冷静さを失い、馬上でしばし呆然とした時だった。聞き覚えのある、魔ローダーのプレートアーマーをそのまま巨大化した、独特な鎧のこすれ合うカシャカシャと歩く音が響いて来る。
「遅いではないですかフルエレ! セレネが大変な事に……いや、フルエレはいない……」
思わず癖でフルエレの名前を叫んだが、よく考えなくとも雪乃フルエレはこの旅に同伴していない。だから一体誰が魔力を供給して動かしているのか、不明な魔ローダー蛇輪が歩いて来た事になる。
「い、一体誰が??」
砂緒が考える間に、巨大な歩幅で一気に目の前に確かに蛇輪が現れた。
バシャッ
突然複座の上部ハッチが開くと、中から質素だが気品を漂わせるドレスを纏った、小さき王国のお后さまが顔を覗かせる。
「あらあら、まあまあまあ、砂緒さん大丈夫なの?? セレネさんは何処??」
「お、お后さまぁーーーーーーーー??? どういう事ですか? 何で動かしているんですか? お身体にお触りはありませんか?」
どうやらセレネは降りた後にハッチは閉じたが、不用心に誰も動かせる者は居ないと、始動鍵となる宝石は装着したままだった様だ。
「私は大丈夫よ! 動かしているのは私ではないの!!」
バシャッ!!
お后さまの言葉に合わせる様に、いつも砂緒が乗り込む下のハッチが開く。
「誰じゃこ奴は!! 目付きの悪いガキじゃのう!!」
「お前こそ貴様こそ誰なのですか?? なんでこんな幼女が??」
砂緒が見ると、黒いミニスカの可愛いコスチュームを着た、十歳前後のとても可愛い女の子だった。おまけに猫呼の様な熊の耳まで装着していた。
「この子は最近夜になると時々遊びに来る、抱悶ちゃんと言う不健康な子なのよ、可愛いでしょう!」
「だモンちゃん? なんですかそれは」
「今夜もお城にたまたま遊びに来てくれて、その時偶然いっぱい敵が忍び込んで来て、抱悶ちゃんが全て瞬殺してくれたのよ! 助かったわぁ」
「おばちゃんにお菓子をもらいに来てたのじゃ! いつもは見んあからさまに怪しいヤツらがおったからのう、瞬殺してやったのじゃ、ハハハハハハハハ」
抱悶という子供は腰に両手を当てて勝ち誇る様に大笑いした。
「もうそんな事はどうでも良いです! セレネがさらわれたんです! そこは私の席です、早く乗せなさい!!」
「何おう? 儂の席を奪うつもりか?」
いきなり抱悶と険悪になり睨み合う砂緒。
「お願い抱悶ちゃん、砂緒さんは大切なお友達なのよ、言われた通りにしてあげて!」
「ちっ、しゃーないヤツじゃ、そら乗れ!」
抱悶は操縦席に戻ると、むんずと巨大な手で砂緒を掴み、自分の座る操縦席に投げ入れた。
「そこは私の席です、どきなさい、早くっ!」
「はあ? お前はやっぱり気に入らん、やっぱり殺すのじゃ!!」
「お願い聞いてあげて!」
「仕方ない、ではお前が椅子に座れ、儂が人間椅子としてお前の上に座るのじゃ!」
「良いでしょう、早くして下さい」
砂緒が操縦席に座ると、その膝の上に抱悶がちょこんと座りこんだ。
「行きます! とにかくセレネが連れ込まれる様な前線の陣地が無いか、調べながら走ります! 抱悶とやらも夜目が効くなら、あちこちしらみ潰しに探しなさい!」
「はあ? めんどくさいヤツじゃのう」
「抱悶ちゃん、後でお菓子いっぱいあげるから、協力してあげて」
「おばちゃんがおって良かったのう! おぬし、本当なら既に何回も死んでおるのじゃ!」
「………………」
砂緒はいつもの様に無用な事を言う余裕は無かった。とにかく必死で走りながらセレネの行方を捜した。
「敵とはメドース・リガリァの事かのう? そう言えばココナのヤツが最近肩入れしておったヤツじゃ! ま、儂には関係ないがの、ハハハハハハハ」
抱悶が砂緒に正体がばれる重大な事を言ったが、必死過ぎる砂緒は一切聞いて無かった。
(セレネ、セレネ、どうか無事で……襲われたり殺されたりしてないですよね……)
―メドース・リガリァ軍の陣地。海と山とに挟まれた小さき王国から十数Nキロ離れた、魔法陣で隠蔽された侵攻軍の前線本陣。逃げ帰った兵達でごった返し、陣の中は大混乱のてんやわんやの大騒ぎになっていた。
「結界が消えたから、赤子の手を捻る様に楽な仕事だと聞いていたのに!」
「あの銀色が出て来るなんて聞いてないぞ!」
「貴嶋さまは硬い敵には手を出すな、引いて良いと仰っている、即ここを引き払うべきだ!」
「ここの魔法カモフラージュとて何時見破られるかわからんぞ!!」
生き残った者達はとにかく安全に撤退する事を考え激論していた。と、そうした大騒ぎの者達をテントの入り口をめくってチラッと眺め、そのまままた入り口の布を閉じて中に戻った者が居た。
「んーーんーーーーんーーーーーーー」
テントの中央には、猿轡に親指や手首足首等、自力で力を込めて動かす事が困難な部位を徹底的に物理的に拘束して、さらには魔法のリストレインまで掛けて動けなくしたセレネが転がっていた。
「……なんと美しい……こんな美しい娘を見た事が無い……」
「それになんと均整のとれた肢体なのだろう……」
「見ろ、真っ白な肌、それに艶やかな髪、これは神の御業だな……」
三名の普段は真面目な男達が居たが、死と隣り合わせの緊張の中で、セレネという極上の美しい娘を偶然手に入れた今、皆完全に理性が飛んでいた。
「ここも何時あの化け物に見つかるかもしれん。本国に無事に帰るのは困難だろう……」
「どうせなら……ここでこの娘をじっくり……」
「俺もそれがいい……」
「んーんーーーーー、んん-ーーー!!」
(砂緒助けて!!)
三人が舌なめずりをしながらセレネを見た。セレネはスピード重視であり、かつ敵の攻撃になど当たる訳も無いという自負があったので、鎧等は着用せずにただ厚手の生地の服を重ね着している程度だった。その上着に手を掛けられて、次々脱がされて行くセレネ。セレネの目に涙が溢れた。構わず腕を抜かれ脱がされて行くセレネ。時に拘束に引っ掛からない様に短剣を使い服を切り裂かれ、上着は全て脱がされ下着代わりのタンクトップ一枚にされてしまう。汗で纏わり着いた薄いタンクトップが、セレネの若々しく美しい尖った胸の形をほぼ露わにしていた。
「手が震える……大きくは無いが、美しい形をした胸だ」
「だ、だめだ……興奮し過ぎて来た……」
横向きに寝転がされ、強調された白い胸の谷間や、ほっそりとした二の腕を見て、男達は興奮の余り勿体ぶる。
「では、短剣で一気に最後の一枚を切り裂くぞ?」
「おお、やれよ」
ガシャガシャガシャガシャガシャ、バリバリバリバリ!!
突然口で例えられない様な複雑で大きな騒音が鳴り響くと、あちこちから男達の混乱と恐怖で、ぎゃーぎゃーと騒ぎ叫ぶ声が上がる。
「へ?」
セレネの衣服に短剣を差し込んでいる男達が物音に気付いて上を見た直後、テントの屋根が突風で吹かれる様にすっ飛んで行く。
「なんだ!?」
「うわーーーー!!」
「銀色だ!!」
いつぞやの瑠璃ィの魔ローダーの様に、上から巨大な蛇輪の顔が覗き込む。クレウの透明魔法を一瞬で見抜いた抱悶の能力で、陣地のカモフラージュはあっさりと見破られた。案外近くに存在した事もあり、ぎりぎり間に合った形になった。抱悶は拘束され半裸になっているセレネを見てはしゃいで笑ったが、砂緒は無言でハッチを開けて飛び降りる。
「おおおおおお、これは良い場面じゃ! はははははは」
「んーーーーー!!!」(蛇輪! 砂緒!!)
ズシャッ!!
静かだが、憤怒の形相の砂緒は無言で硬化すると、やはり無言で剣を握り始めた三人の男を一瞬で殴り殺した。正しくは体に大穴が開いていた。
「熊子、セレネの拘束魔法を解きなさい!」
「誰が熊子じゃ!」
砂緒はセレネに向かうと、次々に中程度の怪力で物理的な拘束リングを引きちぎる。同時に抱悶も操縦席から手を掲げ、素直に拘束魔法を解いてくれた。心配そうにお后さまも下を覗く。
「セレネさん大丈夫なのね? 間に合ったのね!?」
「砂緒!」
「セレネッ!!」
二人はしばし無言で抱き合った。
「一瞬も目を離すな! 怖かったんだぞ!」
(いや、貴方がびゅーーーって走って行ったのですが……)
「ええ、もう離しませんから」
そう言っても、しばらくして砂緒はセレネの身体を離すと、上着を脱いでセレネに渡す。
「あ、ありがと」
「あ、あの……セレネ、その、揉まれました?」
「馬鹿ッ、言い方考えろよ……ギリセーフだったよ……砂緒専用のつもり?」
上着を羽織ったセレネが胸の前で腕を組んで隠す。
「そういう訳ではありません」
砂緒は珍しく赤面した。
「おおおおおーーーい、なんなんじゃ! いちゃいちゃしおってムカツク二人じゃ! 早うせい!」
「あの子は誰?」
セレネは操縦席で騒ぐ抱悶を見上げて聞いた。
「ああ、あれは臨時の魔ローダーの魔力供給源ですが、もう用済みですから気にしないで」
「気になるわ!」
「早う戻れ人間椅子!」
「え?」
セレネは砂緒と抱悶を交互に見比べる。
「お前……あの子に変な事してないだろうな? マジで洒落にならんからな、コレもんだぞ」
セレネは両手首を合わせて手錠のポーズをした。しかしその所為で胸元のガードが緩み、短剣で切り裂かれかけて、胸元がざっくり開いた様子が丸見えになってしまう。砂緒も男達の様に、セレネの神秘的な美しさに一瞬目を奪われてハッとした。
「馬鹿! 何見てるんだよ」
「すいません……」
すぐに視線を逸らした。二人は蛇輪に乗り込むと、再び大混乱で逃げ出す敵兵を呆然と眺めた。
とにかく砂緒は敵陣が近くにある事を願い、周囲の死体の山の中から主を失い、一頭でふらふら歩いている馬を見つけ出し跨った。
「くそっどちらに向かえば良いのでしょうか?? 早くしなければ、セレネッ」
焦燥する中、砂緒が久しぶりに馬の手綱を握り、どちらに向かおうか、屋上有料双眼鏡の能力を使って周囲を見渡した。敵勢力は散り散りに逃走して、完全に見失ってしまっていた。
ガシャンガシャンガシャン……
砂緒が珍しく冷静さを失い、馬上でしばし呆然とした時だった。聞き覚えのある、魔ローダーのプレートアーマーをそのまま巨大化した、独特な鎧のこすれ合うカシャカシャと歩く音が響いて来る。
「遅いではないですかフルエレ! セレネが大変な事に……いや、フルエレはいない……」
思わず癖でフルエレの名前を叫んだが、よく考えなくとも雪乃フルエレはこの旅に同伴していない。だから一体誰が魔力を供給して動かしているのか、不明な魔ローダー蛇輪が歩いて来た事になる。
「い、一体誰が??」
砂緒が考える間に、巨大な歩幅で一気に目の前に確かに蛇輪が現れた。
バシャッ
突然複座の上部ハッチが開くと、中から質素だが気品を漂わせるドレスを纏った、小さき王国のお后さまが顔を覗かせる。
「あらあら、まあまあまあ、砂緒さん大丈夫なの?? セレネさんは何処??」
「お、お后さまぁーーーーーーーー??? どういう事ですか? 何で動かしているんですか? お身体にお触りはありませんか?」
どうやらセレネは降りた後にハッチは閉じたが、不用心に誰も動かせる者は居ないと、始動鍵となる宝石は装着したままだった様だ。
「私は大丈夫よ! 動かしているのは私ではないの!!」
バシャッ!!
お后さまの言葉に合わせる様に、いつも砂緒が乗り込む下のハッチが開く。
「誰じゃこ奴は!! 目付きの悪いガキじゃのう!!」
「お前こそ貴様こそ誰なのですか?? なんでこんな幼女が??」
砂緒が見ると、黒いミニスカの可愛いコスチュームを着た、十歳前後のとても可愛い女の子だった。おまけに猫呼の様な熊の耳まで装着していた。
「この子は最近夜になると時々遊びに来る、抱悶ちゃんと言う不健康な子なのよ、可愛いでしょう!」
「だモンちゃん? なんですかそれは」
「今夜もお城にたまたま遊びに来てくれて、その時偶然いっぱい敵が忍び込んで来て、抱悶ちゃんが全て瞬殺してくれたのよ! 助かったわぁ」
「おばちゃんにお菓子をもらいに来てたのじゃ! いつもは見んあからさまに怪しいヤツらがおったからのう、瞬殺してやったのじゃ、ハハハハハハハハ」
抱悶という子供は腰に両手を当てて勝ち誇る様に大笑いした。
「もうそんな事はどうでも良いです! セレネがさらわれたんです! そこは私の席です、早く乗せなさい!!」
「何おう? 儂の席を奪うつもりか?」
いきなり抱悶と険悪になり睨み合う砂緒。
「お願い抱悶ちゃん、砂緒さんは大切なお友達なのよ、言われた通りにしてあげて!」
「ちっ、しゃーないヤツじゃ、そら乗れ!」
抱悶は操縦席に戻ると、むんずと巨大な手で砂緒を掴み、自分の座る操縦席に投げ入れた。
「そこは私の席です、どきなさい、早くっ!」
「はあ? お前はやっぱり気に入らん、やっぱり殺すのじゃ!!」
「お願い聞いてあげて!」
「仕方ない、ではお前が椅子に座れ、儂が人間椅子としてお前の上に座るのじゃ!」
「良いでしょう、早くして下さい」
砂緒が操縦席に座ると、その膝の上に抱悶がちょこんと座りこんだ。
「行きます! とにかくセレネが連れ込まれる様な前線の陣地が無いか、調べながら走ります! 抱悶とやらも夜目が効くなら、あちこちしらみ潰しに探しなさい!」
「はあ? めんどくさいヤツじゃのう」
「抱悶ちゃん、後でお菓子いっぱいあげるから、協力してあげて」
「おばちゃんがおって良かったのう! おぬし、本当なら既に何回も死んでおるのじゃ!」
「………………」
砂緒はいつもの様に無用な事を言う余裕は無かった。とにかく必死で走りながらセレネの行方を捜した。
「敵とはメドース・リガリァの事かのう? そう言えばココナのヤツが最近肩入れしておったヤツじゃ! ま、儂には関係ないがの、ハハハハハハハ」
抱悶が砂緒に正体がばれる重大な事を言ったが、必死過ぎる砂緒は一切聞いて無かった。
(セレネ、セレネ、どうか無事で……襲われたり殺されたりしてないですよね……)
―メドース・リガリァ軍の陣地。海と山とに挟まれた小さき王国から十数Nキロ離れた、魔法陣で隠蔽された侵攻軍の前線本陣。逃げ帰った兵達でごった返し、陣の中は大混乱のてんやわんやの大騒ぎになっていた。
「結界が消えたから、赤子の手を捻る様に楽な仕事だと聞いていたのに!」
「あの銀色が出て来るなんて聞いてないぞ!」
「貴嶋さまは硬い敵には手を出すな、引いて良いと仰っている、即ここを引き払うべきだ!」
「ここの魔法カモフラージュとて何時見破られるかわからんぞ!!」
生き残った者達はとにかく安全に撤退する事を考え激論していた。と、そうした大騒ぎの者達をテントの入り口をめくってチラッと眺め、そのまままた入り口の布を閉じて中に戻った者が居た。
「んーーんーーーーんーーーーーーー」
テントの中央には、猿轡に親指や手首足首等、自力で力を込めて動かす事が困難な部位を徹底的に物理的に拘束して、さらには魔法のリストレインまで掛けて動けなくしたセレネが転がっていた。
「……なんと美しい……こんな美しい娘を見た事が無い……」
「それになんと均整のとれた肢体なのだろう……」
「見ろ、真っ白な肌、それに艶やかな髪、これは神の御業だな……」
三名の普段は真面目な男達が居たが、死と隣り合わせの緊張の中で、セレネという極上の美しい娘を偶然手に入れた今、皆完全に理性が飛んでいた。
「ここも何時あの化け物に見つかるかもしれん。本国に無事に帰るのは困難だろう……」
「どうせなら……ここでこの娘をじっくり……」
「俺もそれがいい……」
「んーんーーーーー、んん-ーーー!!」
(砂緒助けて!!)
三人が舌なめずりをしながらセレネを見た。セレネはスピード重視であり、かつ敵の攻撃になど当たる訳も無いという自負があったので、鎧等は着用せずにただ厚手の生地の服を重ね着している程度だった。その上着に手を掛けられて、次々脱がされて行くセレネ。セレネの目に涙が溢れた。構わず腕を抜かれ脱がされて行くセレネ。時に拘束に引っ掛からない様に短剣を使い服を切り裂かれ、上着は全て脱がされ下着代わりのタンクトップ一枚にされてしまう。汗で纏わり着いた薄いタンクトップが、セレネの若々しく美しい尖った胸の形をほぼ露わにしていた。
「手が震える……大きくは無いが、美しい形をした胸だ」
「だ、だめだ……興奮し過ぎて来た……」
横向きに寝転がされ、強調された白い胸の谷間や、ほっそりとした二の腕を見て、男達は興奮の余り勿体ぶる。
「では、短剣で一気に最後の一枚を切り裂くぞ?」
「おお、やれよ」
ガシャガシャガシャガシャガシャ、バリバリバリバリ!!
突然口で例えられない様な複雑で大きな騒音が鳴り響くと、あちこちから男達の混乱と恐怖で、ぎゃーぎゃーと騒ぎ叫ぶ声が上がる。
「へ?」
セレネの衣服に短剣を差し込んでいる男達が物音に気付いて上を見た直後、テントの屋根が突風で吹かれる様にすっ飛んで行く。
「なんだ!?」
「うわーーーー!!」
「銀色だ!!」
いつぞやの瑠璃ィの魔ローダーの様に、上から巨大な蛇輪の顔が覗き込む。クレウの透明魔法を一瞬で見抜いた抱悶の能力で、陣地のカモフラージュはあっさりと見破られた。案外近くに存在した事もあり、ぎりぎり間に合った形になった。抱悶は拘束され半裸になっているセレネを見てはしゃいで笑ったが、砂緒は無言でハッチを開けて飛び降りる。
「おおおおおお、これは良い場面じゃ! はははははは」
「んーーーーー!!!」(蛇輪! 砂緒!!)
ズシャッ!!
静かだが、憤怒の形相の砂緒は無言で硬化すると、やはり無言で剣を握り始めた三人の男を一瞬で殴り殺した。正しくは体に大穴が開いていた。
「熊子、セレネの拘束魔法を解きなさい!」
「誰が熊子じゃ!」
砂緒はセレネに向かうと、次々に中程度の怪力で物理的な拘束リングを引きちぎる。同時に抱悶も操縦席から手を掲げ、素直に拘束魔法を解いてくれた。心配そうにお后さまも下を覗く。
「セレネさん大丈夫なのね? 間に合ったのね!?」
「砂緒!」
「セレネッ!!」
二人はしばし無言で抱き合った。
「一瞬も目を離すな! 怖かったんだぞ!」
(いや、貴方がびゅーーーって走って行ったのですが……)
「ええ、もう離しませんから」
そう言っても、しばらくして砂緒はセレネの身体を離すと、上着を脱いでセレネに渡す。
「あ、ありがと」
「あ、あの……セレネ、その、揉まれました?」
「馬鹿ッ、言い方考えろよ……ギリセーフだったよ……砂緒専用のつもり?」
上着を羽織ったセレネが胸の前で腕を組んで隠す。
「そういう訳ではありません」
砂緒は珍しく赤面した。
「おおおおおーーーい、なんなんじゃ! いちゃいちゃしおってムカツク二人じゃ! 早うせい!」
「あの子は誰?」
セレネは操縦席で騒ぐ抱悶を見上げて聞いた。
「ああ、あれは臨時の魔ローダーの魔力供給源ですが、もう用済みですから気にしないで」
「気になるわ!」
「早う戻れ人間椅子!」
「え?」
セレネは砂緒と抱悶を交互に見比べる。
「お前……あの子に変な事してないだろうな? マジで洒落にならんからな、コレもんだぞ」
セレネは両手首を合わせて手錠のポーズをした。しかしその所為で胸元のガードが緩み、短剣で切り裂かれかけて、胸元がざっくり開いた様子が丸見えになってしまう。砂緒も男達の様に、セレネの神秘的な美しさに一瞬目を奪われてハッとした。
「馬鹿! 何見てるんだよ」
「すいません……」
すぐに視線を逸らした。二人は蛇輪に乗り込むと、再び大混乱で逃げ出す敵兵を呆然と眺めた。
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