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III プレ女王国連合の成立

セレネと旅 4 初めてのお泊りで……

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 すぐさま二人はユッマランド王城に招待された。大きな城の中に案内される。

「セレネ様、以前から気になっていたのですが、その銀髪の目付きの悪い者は何者なのですか?」

 美魅ィ王女は目を細めとても嫌悪感丸出しの顔で、砂緒に聞こえない様に、小声でセレネに尋ねた。

「ああ、この者は以前はフルエレさ、同盟女王の使用人で、今は私が借りている従者だ」
「あの様な目付きの悪い不審者で無くとも、セレネ王女様なら他にいくらでも美形の者をお付けになられるのに……どうして」

 セレネは突然立ち止まって険しい顔になって睨んだ。

「私の従者にケチをつけるのか? それは私のセンスがおかしいという事だろうか?」

 突然セレネにキレられて大慌てになる美魅ィ王女。

「い、いえ決してその様な事は!! も、申し訳ありません……」

 一旦セレネにシュンとして謝った後、すぐに美魅ィ王女は今度は険しい顔で砂緒を睨んだ。完全に逆恨みでとばっちりである。


 城内を軽く案内された後、ユッマランド王に謁見し一通りの挨拶をすると、美魅ィ王女はセレネのみを晩餐会に招待した。セレネは砂緒を使用人で従者と言ってしまった以上、今更呼べとは言えなかった。セレネはこうした晩餐会の様な改まった場が大嫌いな上に、砂緒を一人残した事で非常に心が痛み、全く楽しめる様な気持ちでは無かった。

「セレネ様、どうされたのですか? 余り食が進まれていない様な……何かお気に召されない事があったのでしたら、すぐに改めます……申し訳ありません」
「い、いえいえ! そんな事は全く無いのです。私はもともと無作法者で、こうした改まった席では失敗ばかり、武芸や魔法の修行の方が向いている人間なのです……」

 セレネはこれも王女の闘いだと思い、眼鏡の無いまま必死にエレガントな王女の役割を演じた。

「そんな! セレネ様はひと目お見掛けした時から、とても素敵な憧れの王女様ですわ……私いつもぽーっとして見つめてしまいますの……」

 美魅ィ王女はセレネの目を見つめて瞳をキラキラさせて潤ませる。

(うっ……この感じは……)

 実はこうした感じはユティトレッド魔導学園という女子高で慣れっこになっていたし、以前はセレネ自身にもそうした傾向があったのだが、今では信じられないくらいに気持ちは砂緒に向いていた。

「所で……私は同盟女王の就任も見届けて、今天下はどの様な情勢か視察する為に、一旦南に向けて飛びキィーナール島国まで行ってから、Uターンして北に飛び、最後に無人地帯にある飛び地に調査に行ってから帰ろうと思っているのだが、何か周辺に有益な情報等はありますかな?」

 セレネは空気と話題を換える為に意図的に硬い表情と声で言った。

「そ、そうですね……ここらへんで言えば、少し南東に進めばユーイン温泉という秘湯があるんですのよ」
「ほほう?」
「ええ、小さな池があり、運が良ければ早朝に霧の中に金色のドラゴンが出現する……という伝説があるんです」
「ほうほう? そこに何か伝説の武器が!?」
「い、いえ、その竜を見てから一緒に混浴温泉に入ると必ず結ばれるという伝説が……」

 美魅ィ王女は頬を激しく赤らめた。璃凪はまた始まったと、じとっとした目で見た。

(だ、だめだ……この王女いつからこんなに劣化した!?)

「温泉は今は結構です……どうですか、謎のまおう軍関連で言えば何か情報をお持ちですか?」
「そうですわね……直接的にまおう軍では無いのですが、我々が位置するセブンリーフ中部小国群の一番南西の端っこ、まおう軍のテリトリーとの境界に位置する所に存在する無名の小国、『海と山とに挟まれた小さき王国』という国があるのですが、そこは昔から謎が多く、中部小国群にもあまり交わらず、かと言って魔王軍にも攻められる事も無く、謎の独立を保っているのです。セレネ様は飛行する魔ローダーをお持ちなのですから、一度そこを調査されてみれば如何でしょうか??」

 あまり期待していなかったが、突然有意義な情報が飛び出た。

「お、おおお、それは面白い話です。海と山とに挟まれた小さき王国ですか? 是非とも行ってみたいものです」

 セレネはこの話を俄然砂緒にしてあげたくなった。

「王女よ済まない、この沢山の料理、夜中に空腹になった時に食べたい、是非容器に包んでくれる様に料理人に頼んで頂けまいか?」
「はっ!?」

 裕福な美魅ィ王女は一瞬何を言っているのか理解に苦しんだ。璃凪はくすっと笑った。


 晩餐会が終わり、もう夜という事でセレネは今日はお城の豪華な部屋に宿泊させてもらう事になった。もちろん砂緒の部屋は用意されておらず、蛇輪が運んできたキャンピングカー的なコンテナで仮眠する事になっていた。
 ギギギィイ……
夜遅く、セレネの部屋のドアが静かに開けられる。すっとつま先が忍び込む。

「早く入れ、気付かれるぞ」
「はい」

 セレネが璃凪に頼み、密かに砂緒を呼び込んだのだ。セレネでは無く、璃凪から声を掛けて来たのだ。なんと侍女の璃凪は砂緒に少し好感を持っていた。蓼食う虫も好き好きという物か。

「ありがとう恩に着る」
「いいえ、お休みなさいませ、うふ」

 璃凪は謎の笑みを浮かべると一礼をして出て行く。


「ほら食べろ、お城の晩餐会の豪華料理だぞ、凄いだろう。お前に食べさせたかったんだ!」

 セレネはお城の料理人が入れてくれた、豪華料理の入ったシール容器を次々開ける。

「おお、これは凄い!? セレネは晩餐会が苦手な上に、恥ずかしいでしょうに、こんな事まで用意してくれて、嬉しいです」
「べ、別にお前の為だけにやった訳じゃねーよ、明日の分もあるからな、考えて食べろよ」
「いただきまーす!!」

 砂緒は実に嬉しそうにぱくぱく食べた。セレネは手を組んでじっと砂緒が食べる場面を見守り続けた。

「美味しいか?」
「美味しいです」

 セレネはにこっと笑って、なにか新婚さんの様な雰囲気がして照れてしまった。

「どうしたんですか?」

 砂緒がふと聞いた。

「……今夜、この部屋泊って行くんでしょ」

 セレネがぼそっと言った。

「い、いえ……今夜はコンテナに帰ろうと思ってます……」

 砂緒がフォークを咥えたまま答えた。

「な、なんでだよ、折角豪華な部屋があるんだから、お前も寝て行けばいいじゃん。あたしはもうシャワーも浴びたよ」

 見るとセレネはいつもの乱暴な顔では無くて、激しく赤面して視線を斜めに逸らしていた。

「……え、え、じゃあ私は新聞紙でも敷いて床に寝ます」
「なんでだ? お前も……ベッドで寝ればいいじゃん」

 サイズは大きいが、ベッドは部屋に一つしか無い。砂緒はしばし無言でベッドで見た。

「い、いえやっぱり今日はコンテナに帰ります……」
「なんでだ! やっぱり……あたしなんて可愛くないし、乱暴だし、胸も無いし……嫌いなのか。これでも勇気出して言ってるんだぞ」

 セレネは突然鬱っぽい表情になって、そのまま激しく俯く。

「そんな訳ないでしょ! 最初に珈琲買いに行った時にはっきり言った様に、私セレネの事が好きですし、何もかもセレネは私の理想の女性その物です。乱暴なのも大好きです。もっと殴って欲しいです」
「……だったら何でだよ」

 砂緒が褒めちぎってもセレネには響かない。

「上手く言えないのですが、なんだか今セレネとそんな感じになるのは違うな~~という気がして」
「なんだよソレ」
「セレネとは何と言うか、もっと大切に関係を育んで行きたいといいましょうか」
「いらん、そんなんいらん」

 何だか男女で言う事が逆転して来た……

「もう良い、こっち来い」

 セレネは軽く震える手で砂緒の手首を掴むと、食べてる最中の砂緒を無理やりベッドに引きずって行く。

「ちょと、食事中なんです……」
「知るかっ来いっ」

 セレネは砂緒をベッドまで連れて来ると、どさっと真ん中に寝かせた。

「嫌ッ! やめて下さいっ、だめですよこんなの!?」
「うるさいわっ!! お前あのエロ王女と易々とやってただろがっ!」
「あれは全然違うんですよ、セレネとは違うんです!!」
「分かるかっ! もういいっ脱げっとりあえず脱げ!!」

 セレネは砂緒の衣服に手を掛けた。
 ギギギィイイ
あからさまにドアが少し開く音がする。

「じ~~~~~~~」
「!?」
「??」

 セレネと砂緒が同時にドアを見ると、璃凪がドアの隙間からじっと見ていた……

「どうぞ、お続け下さい。決して王女には報告しませんから、ウフフフフ」
「怖い怖い、何よこの侍女……」
「じゃ、私はコンテナに戻りますんで!!」
「あっ!?」

 セレネの一瞬の油断の隙を突き、砂緒がびゅっと走って逃げて行った。

「何でだよ……」

 セレネは俯いてぼそっと呟いた。

「あらあら、セレネ様逃げられちゃいましたわね」
(お前の所為だろーが)

 パタン。
セレネが睨むと璃凪は一礼してドアを閉めて行った。


「……私は本当にセレネの事が好きなんです、信じて下さい」

 蛇輪が抱えるコンテナの簡易ベッドで、砂緒はぶつぶつ言いながら寝転んでいた。
 コンコン。

「セレネ?」

 砂緒は起き上がってドアを開けた。

「今晩は。入ってもよろしいかしら?」

 ドアの前に立っていたのは、清楚な侍女の服装とは違い、胸元がざっくり開いたセクシーな下着の様な衣装に着替えた璃凪だった。

「なんでしょう……?」
「主人が大変失礼をしまして、私砂緒様にもおもてなしをしなければと思いまして……とりあえず入ってよろしいでしょうか?」
「……どうぞ」

 易々と入れてしまう砂緒。

「王女にもセレネ様にも誰にも言いませんわ、どうぞ私でよろしければお楽しみ下さい」
「ごくり……」

 帰って下さい! と言わなければいけないと砂緒は思った。

「……ぜ、絶対に言いません?」
「言いませんとも」

 薄布の下は、ほぼ裸の侍女は砂緒に抱き着いた。

「あっ、もっとお優しくしてくださいまし……」

 砂緒は強引に璃凪をベッドに押し倒すと、むさぼる様に抱き締めた。
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