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II メドース・リガリァと北部海峡列国同盟

北部海峡列国同盟締結 10 話聞いても無駄! 魔ローダー特殊スキル回復(弱)!!

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 ドドーーン ドンドン ドーーーン
アルベルトらが乗った二両の魔戦車が、大量のゴーレムに対して攻撃している。攻撃が数発当たると脆く崩れ落ちる弱いゴーレムだが、倒しても倒しても新たなゴーレムが湧いて出て来る。

「だめだ……これだけ数が多いと、皆を引き連れて強行突破するのは無理だ……とても南の港までは行けそうにない」

 アルベルトが言う様に、小島の神殿及び円形劇場は島の北側に位置し、南の港は丁度真反対に位置していた。海岸線をぐるっと半周して行くか、島中央の山を越えて行くかだが、どちらのルートにもおびただしい数のゴーレムがひしめいていた。積極的に攻撃して来るというよりも各国要人が逃げれなくする為の様に感じた。

「アルベルトさん引き返しませんか? こうなると結局砂緒達が乗った魔ローダーが勝ってくれないと遅かれ早かれ全滅しちゃいます、だとしたら無理してゴーレムに突入しても意味が無いと思うの」

 フルエレが魔戦車の砲塔から上半身を出したアルベルトに相談した。

「……そうだね、まだ引き返す分にはそれ程ゴーレムが湧いていない。うん魔戦車が先頭に立って攻撃しながら進むので、各自魔法防御や物理防御を展開して固まって進んでくれたまえ」
「はい! 私も便利な防御腕輪があるので、それ張って行きます!」

 一団にはフルエレやイェラ等のフルエレ一味と、ウェカ王子や美魅ィみみいなどの各国要人の他にも、偶然舞台の上や周辺に居て逃げそびれた、侍女達や準備係の者など数十名程の人間が居た。それらの人々が魔戦車を先頭に、次にフルエレの張る大型防御シールドに守られながら、固まって元居た同盟締結の舞台に戻って行った。


「しまった! どうしたらいいんや……あれだけダメージ受けてたら、乗ってる司会っ娘も結構な痛みを感じてるはずや……これ以上攻撃受けたらやばいかもしれへん……」

 スピネルが乗るデスペラード改が胴体に足を掛け、セレネが乗るルネッサの操縦席があるバイタルパートに剣を突き立てている。その状態で瑠璃ィの蛇輪は固まっていた。

「いいですわね! それでは早速メッキ野郎を一方的に攻撃しましょうかしら!!」

 ココナツヒメの乗るル・ワンはゆっくりと歩き、剣を振り上げ蛇輪に攻撃を加える。当然蛇輪はひょいっと避けた。

「何をしているのですか? 誰が避けて良いと言いましたか? スピネル、片腕でも切り落としなさい!!」
「はい」

 ココナツヒメが命令すると、スピネルのデスペラード改は寝転んで動かないままのルネッサの片腕を、あっさりとザックリと切り落とした。

「セレネーーーーーー!!」

 砂緒は無造作に片腕が切り落とされたルネッサを見て心が痛んだ。そして激しく怒りが湧いた。

「あの様な、ならず者と交渉する事自体が無意味です。連中は言う事を聞こうが聞くまいが結局は私らを皆殺しにするつもりです。だとすればする事は一つ。砂緒殿はどう思いますか?」
「クレウと同じ意見なのは凄く嫌ですが、私も同じ考えです。瑠璃ィを奮起させ、一刻も早く敵を倒す為にも我々が攻撃を再開しましょう。セレネそれまで無事で居て下さい!!」
「……ですね、では私は力の限り魔法ナイフを投げ続けますよ! では!!」

 クレウが言うと、腕を振りかぶり指先から光る魔法ナイフ投擲を再開し始めた。魔法ナイフはどの方向から投げても曲線を描き、クレウが一度認識したターゲットに吸い込まれる様に、必ず命中した。
 パパン パーーンパーーン!!
突然再開される、ル・ワンの顔への鬱陶しい連続爆発攻撃。それを見て蛇輪操縦席の瑠璃ィは、ハッとした。

「そうやな、どうせここでじっとしててもいつか司会っ娘がなぶり殺しにされるだけや、それやったらこっちから先に仕掛けて、一刻も早く助けたるのが道理やな! 分かったで透明ブラザーズ!」
「なんですのまたこの鬱陶しい爆発が!? これはどこから放出されているのですかっ!? ……こちらが脅している事が理解出来ないくらいおバカさんの集まりですの?? いいですわっ、まずはその倒れてるオレンジ色を解体しておしまいなさい!!」
「はっ」

 ココナツヒメに言われると、スピネルは全く心が籠っていない返事をして、無造作に今度は機体を屈ませてルネッサの首を切り落とした。ゴロンと魔ローダーサイズの巨大な首が地面に転がる。

「セレネーーーーーーーッ!! くっそーーーーーコイツ、肩をぶち抜いてやる!!」

 砂緒は精神集中させて、拳に全重量を込め始めた。キィーーーンと輝きだす拳。

「あかん、先にあのグレーのヤツをぶち倒したる!!」

 瑠璃ィは言うと走り出し、デスペラード改を倒そうと剣を振り上げるが、その真後ろにル・ワンが瞬間移動して現れ、斬りかかろうとする。
 ガシイイイン!!

「見えたっ!」

 瑠璃ィはココナツヒメの動きのパターンが段々と読めて来て、後ろに現れ斬り裂こうとして来たルワンの剣を心眼で受け止めた。

「ちっもうそろそろ瞬間移動(単)の制限回数がヤバイですわね……」

 ココナツヒメが、瞬間移動(単)の制限回数のアラームが画面表示されたのを見て、ここ一番の時以外は瞬間移動しないという心のブレーキが働き始めた。ココナツヒメのル・ワンと瑠璃ィの蛇輪はここに来て、再び真面目に剣での戦いを再開した。

「む、ココナツヒメ殿が剣での戦いを……ではそれがしは目の前のこ奴に止めを刺すのみ! 情け無用! 許されよ!!」

 デスペラードは剣を振り上げ、寝転んでピクリとも動かないルネッサの胴体の中心めがけ、剣を突き立てようとした。
 プシューーーッ!!
その時突然ルネッサの身体各所から煙幕が放出される。以前ル・ツーが使った手だった。
 バシャッ!!
突然操縦席のハッチが強制的に開く音がして、中から黒い影が飛び出す。いつぞやの黒猫みたいに逃げる瞬間を見計らっていたセレネが、最後の力を振り絞り飛び出したのだった。

「お覚悟!!」
「トルネード!!」

 いつぞやの砂緒とフルエレと違い、飛び出した生身のセレネに対して、易々と魔ローダーの巨大な剣を振り回して止めを刺そうとするスピネル。セレネは凄まじい運動神経で体を捻り、魔法を放出して姿勢制御して逃げまくる。
 ズシャツ!!
姿勢制御の為に放出した魔法が強すぎたのか、地面に自ら叩き付けられてしまうセレネ。

「あうっ……うう……」
 
 地面に横たわり、着地時に挫いた足を引き摺りながら逃げるセレネ。

「セレネッ!! くそっ見えない……どうすれば良いのですか!?」

 煙幕で何が起こっているか全く見えない砂緒は、精神集中が出来ないくらい、セレネの安否が気がかりだった。

「見えた……美しい少女か……致し方ない、御命頂戴いたす!!」

 スピネルは早くココナツヒメに加勢する為に、さっさとこの娘に止めを刺そうとズリズリ動くセレネに、魔ローダーの巨大な剣を振り下ろそうとした。
 ズシンズシンズシン……ズシャズシャズシャ……ガシャガシャガシャガシャガシャ……

「む? 何だ??」

 スピネルが煙幕の中、不審な音が接近するのに気付いて動きを止めた瞬間だった。

「どおおおおおおおうううううううえええええいいいいいいん!!!」

 バキャッ!!
突然黒い塊が、高速で突っ込んで来て、スピネルの魔ローダーの背中からドロップキックを決めた。

「があああああああ!?」
「ヒィーーーーー!!」

 大声を上げるセレネの上を飛び越えて、スピネルのデスペラード改がぶっ飛んで行く。
 ズシャッ!!
デスペラード改は顔から地面に激突して、恥ずかしいポーズのまま再び動かなくなった。

「黒い稲妻Ⅱ、メラン見参!!」

 黒い魔ローダー、ル・ツーの修理が終わった直後から海の中を泳ぎ、島に上陸して走って来た魔導士少女メランの改名した魔ローダー・黒い稲妻Ⅱだった。

「セレネさん大丈夫ですか? じっとしててね! 魔ローダースキル回復(弱)!!」

 メランの乗る黒い稲妻Ⅱが、倒れて動かないセレネを巨大な掌で包み込むと、掌が真っ白く光った。
 シュバッ!! キラキラキラ……
セレネの身体も白く光り、白いキラキラ粒子がくるくる回転しながら落ちていく。

「あ、あれ……怪我が、疲労が消えた!?」

 セレネが立ち上がり、自分の掌をくるくる回転させ、回復に驚く。

「次はニ十分後ですから! 気を付けてね!!」
「こら、手の内を晒すな!! あ、ありがとうございます……」

 まだまだ混乱しているのか、ちぐはぐな事を言い放つセレネ。しかしメランが言う様に身体の方は確実に回復していた。

「なんやなんや?? 味方なんやな?? 回復出来るんか??」

 カキーーーン! カキン、カキーーーン!!
ココナツヒメのル・ワンと激しい剣の戦いを繰り広げながら、瑠璃ィは思わぬ増援に喜んだ。その間もココナツヒメは数度瞬間移動を使用したが、その度に瑠璃ィは寸でで体をかわし、致命傷を防いでいた。

「セレネさまーーーーっ!! ご無事ですか!?」

 倒しても倒しても沸いて出て来るゴーレム掃討を切り上げ、青いSRVが神殿の円形劇場にやって来た。

「お、もう一機味方がやって来たんか? これで実質三対一やんか! ええでええで、今度はこっちが半透明をなぶり殺しにする番やな!!」

 瑠璃ィの蛇輪と、メランの黒い稲妻Ⅱそして一般兵のSRVは、じりじりと距離を詰めココナツヒメのル・ワンを取り囲んだ。その時だった。
 グキーーーーン!!!
突然ル・ワンの肩がグキッと下に沈み込み、ル・ワンが足をふら付かせる。

「ぎゃーーーーーーーーーーっ!!!」
 
 思わず自らの肩を押さえ、大声で叫ぶココナツヒメ。

「へ? なんや??」
「何なの??」
「?」

 魔ローダーに乗る人々も、見ていた人々も全員が「 ? 」だった。それもその筈、恐らくメランが割って入った事でセレネが助かったと推測した砂緒が精神集中を再開し、全身全霊を込めた硬化した拳でココナツヒメのル・ワンの肩を思い切り叩き潰した結果だった。

「よし、スケベ野郎、透明化を解け!!」
「はあ?」
「早くっ!!」
「ちっ、どうぞ」

 クレウが指を動かすと、砂緒の透明化が解けた。そのままズシャッと地面に落ちる砂緒。すぐさま再び大急ぎで拳を硬化させると、今度はル・ワンの親指の辺りを思い切り潰した。

「ぎゃーーーーーーーー!!」

 今度は片足を上げてピョンピョン飛び跳ねるル・ワン。

「なんかセコイけど効くでしょう。おおおーーーいい!! 瑠璃ィ、乗せて下さい!!」

 地面で手を振る砂緒を、蛇輪の魔法カメラが捉え、魔法モニター上にパシャッとピックアップする。

「お、彼氏さんが激しく手を振ってる??」

 瑠璃ィの蛇輪が走り出すと、ソフトボールのアンダースロウの様なフォームで素早く砂緒を拾い上げ、操縦席に戻した。

「おっかえり~~~彼氏さん! もう一人の透明さんはどこに?」
「知らん。奴なら踏んでも良いです。よーし思い切り戦いますよ!! 変形です!!」
「変形やて?」

 瑠璃ィは戸惑った。
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