魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記(工事中2)

佐藤うわ。

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II メドース・リガリァと北部海峡列国同盟

路面念車に乗って 4 あの時、助けてくれたお姉さんがいたっ!

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 二人して階段を上り魔輪まりんを停める駐輪場に向かった。セレネは赤面が解け、すっかりいつもの調子に戻っていた。

「なあ~お前も一応冒険者ギルドの関係者なんだからさ、普通は事前にこっそりダンジョン攻略とかしておいて、希少なドロップ品とかを用意しておいて、それを何かの拍子にサプラーイズつって渡す方が感動しないか?」

 プレゼントを貰う本人が、どうすれば感動するかの指南を始めた。

「それで……本当に涙をポロポロ流して感動してくれるんですか?」
「いやー唐突過ぎて不気味がって終わりだろうなあー」
「でしょう。ですから最初からセルフチョイス方式でプレゼントしようと思った次第です。その方が嫌悪感もショックも少なくて済み、欲しい物があれば白物家念だろうが、魔車だろうが何でも良いですので……」
「プレゼント上げるのに嫌悪感とショック前提て、切な過ぎるだろ。てかバイト仲間からのプレゼントで、いきなり魔車もらったらそれも変だろ」

 二人は魔輪の前で出発せずに立ち話を始めた。

「確かに……猫呼ねここから小遣いをもらっているので、うなる程金はあるのですが、だからと言っていきなり数百万Nゴールドの物を買い与えるなど、悪質なパパ活みたいですね……」
「パパカ? モンスターか? 金貰ってるのかよ……その金でプレゼント買うとか良い根性してるな」
「パパカはまあ確かにモンスター的な物ですね、では数万円程度のアクセサリーとか年相応な物としましょう。それなら猫呼に貰った金とは無関係に、喫茶店でのバイト代から捻出した程度の支出ですから。私のせめてものキス強要の反省の気持ちと思って下さい……」
「だからそれ言うな。べ、別に気にしてねーって。なる程……数万Nゴールド程度のアクセサリーな……だったらこっから北に向かって、大中州の近くの御天気通りにそんな店がいっぱいあるわ」
「それではそこに連れてってくだされセレネさんよ……」

 行先が決まり、セレネはスカートを押さえ魔輪に跨った。


 セレネが長時間かけて服を選んでいた頃、雪乃フルエレは路面念車・大中州駅で為嘉なかアルベルトと待ち合わせをしていた。冒険者ギルドのビルがある港湾都市中央駅から北に向かい、大中州駅から東に向かうと港湾市庁舎駅、西に向かうと離宮公園駅があった。

「やあ! こんにちは、待ったかい?」

 アルベルトさんが手を挙げて現れた。

「あ、いいえ今来たばかりです、こんにちは、今日はよろしくお願いします!」

 フルエレはペコリと頭を下げた。

「いやいや堅苦しくしないで。一緒に君のアイディアの、市庁舎と離宮どちらが政庁移転先にふさわしいか考えて欲しいんだ」 

 アルベルトさんは手を振った。

「私のアイディアだなんて……みんな考えていた事だと思います……」
「結局会議場を借りる程度じゃ無くて、本格的にハルカ城からこっちに政庁を移転する事になったからね。移転するとなると、市庁舎に間借りしつつ新たな建物を建てるか、前王様の離宮に移転するか、二つに一つだろうね」
「両方を……という手もあると思います。市庁舎に間借りするというのも限界があるでしょうし……」
「でも……豪華な離宮に移転してしまうのもどうかな……とも思う」
「それでも使用せずに放置するのも、それはそれで勿体無い気が……」

 港湾都市にある歴代ニナルティナ王達が遊んだ離宮の城は、今は使用されず放置されたままになっていた。

「お、念車が来た……」
「うわ……すっごい混んでる……あれに乗るの??」

 二両編成の路面念車は身動き取れない程……という訳では無いが、パーソナルスペース等は皆無な程の混雑となっていた。

「でもこれに乗らないとね」
「は、はい……」

 二人は三十センチ程離れて、向かい合って念車に乗っていた。熱い議論を交わした先程とはうって変わって、お互い黙り込んでいた。まだ破壊の跡が生々しい市街を通る、混雑した車内で移転とか政庁とかの会話はしたく無かった。

(うわーなんか気まずい)

 雪乃フルエレは何か話題はないか必死に探した。

「何だか凄く混んでますね。路面念車がこれだけ混んでるなんて……ゆっくり景色を見るなんて雰囲気じゃないですねっ」

 景色が見れたら見れたで、破壊されたビル群等を見てしまう事になるが……

「そうだねーはは」

 ぎこちなく会話をする二人。

「そりゃーね、雪乃フルエレとか言う人が大中州を中心に大暴れしたからだよ! あの人が路面念車をぜーーんぶ壊しちゃって、残っているのはこの二両だけ! それで混んでるのよ、嫌ゃ~ね!」

 突然二人の真横に立っていた、上品なマダ~ムが話し掛けて来た。

「………………」

 黙り込んで俯くフルエレ。

「違いますよ! 路面念車を潰したのは、突然現れた魔竜達と黒い魔ローダーですよ、私目撃しましたから!」

 今度は別のサラリーマン紳士が訂正してくれた。ナイス紳士! とアルベルトさんは思った。

(路面念車をボンレスハムの様に盾に使ったのは本当だし……何も言えないよ)

 フルエレはとにかく違う話題に転換したかった。

「あ、アルベルトさん先程から何回も喉をごくごく鳴らして、凄く喉が渇いているんですね!」
「え!?」

 フルエレは本当に何の気無しに、思った事をぽろっと言ってしまっただけだった。

「あははははは、嫌ゃ~ね! 彼氏さんは可愛い彼女さんとこんな近くに居て、緊張して生唾飲み込んでいるのよ許して上げてお嬢ちゃん、良家の許嫁同士かしら? まあ初々しいわぁ……私までドキドキしちゃいそう、ほほほほほ」

 またもや上品なマダ~ムが凄く余計な事を言ってくれた。

(ええええええええええ!? そ、そうなの!?)

 フルエレから見て遥かに大人の男のアルベルトさんが、そんな事ある訳無いと思っていた。

「違いますよ! 本当に今日は水分を一滴も摂取していなくて、喉が渇いていたんです。えへっえへっごほっ」

 アルベルトさんはあからさまに慌てて、わざとらしく咳払いを始めた。マダムの言った事はあながち間違いでは無かったと思えた……

「あ、じゃ、何か飲んだ方が良いかしら……」

 フルエレはカーッと赤面すると、そっと胸元を押さえて少し俯いた。

「う、うんそうだね……」
(この主婦があ! フルエレ君に変な男と思われたじゃないかっ!!)

 内心激怒しつつ、表面上は何も感じてない様に落ち着いた男を演じた。念車はやがて市庁舎前に到着した。二人は無言のまま念車から吐き出されると、出口に向かった。

「お母さん! お母さん! 今助けてくれたお姉さんが居たの!!」

 人でごった返す駅のホームで、突然小さな女の子が母親に叫んだ。

「ええ、本当なの? いつも言ってる大きなお人形に乗って、助けてくれたお姉さんなのね?」
「うんうん、そうなの! お姉さんにお礼を言いたいの、ちゃんとお父さんとお母さんに会えたよって、言いたいの!!」

 小さな女の子は辺りをキョロキョロ見回すが、既にそのお姉さんの姿は無かった。

「まあまあ、残念ねえ……でもそのお姉さんって、噂の雪乃フルエレさんの事なのかしら……少し怖いわ……」

 小さな女の子、梅狐うめこの手を引いた母親は、内心そのお姉さんとはぐれてしまって、ホッとする気持ちもあった。


 砂緒すなおとセレネは御天気通りという商店街に到着し、駐輪場に魔輪を置くと徒歩で適当なアクセサリーショップを探していた。

「ここの御天気通りはその昔、ある男が年老いた親を背負い、何年も薬を買い求めに通った伝説があるらしい」
「なんと親孝行な……最近はめっきり聞かない良い話ですな」

 等と二人は会話しつつ良い店はないか捜し歩いた。

「あそこ、ちょっと入りたい」

 セレネが恥ずかしそうに言った。

「なるほど、行ってらっしゃい」

 砂緒は笑顔で手を振った。

「お前が来ないと意味ねーだろ」

 二人して店内に入る。

「彼女さんへのプレゼントですかー?」

 笑顔の店員が、映画のピラニア並みに瞬時に食い付いて来た。

「え? いや、ちが、うー」
「はい、そうです!」

 砂緒は即座に答えた。

「い、いや違います、単なるバイト仲間ですから……」
「ご予算は、どのくらいなのぉ?」

 えらい親し気に話し掛けて来た。

「五万Nゴールド程で」
「五万も!? 単なるバイト仲間に五万も!? 凄いわねウフフ」

 売る気が無いんかコイツというくらいに失礼な店員だった。

「出よ、出よ」

 セレネは小声で砂緒の服をぴっぴっと引っ張った。そのまま二人は店を出た。

「将来、本当に好きな相手が出来た時の訓練にって思って、思い切って来たけど無理だわ、ああいう店員さんあたし無理」
「ははー将来への訓練ですかー、なかなかやり手ですなあ、ははははは」

 砂緒は他人事の様に笑った。

「そうですね、それでは私がああいう類の店で、適当に見繕って何か買って参りましょう。それならプレゼントぽく成立するでしょう。で、ジャンルは何が良いですか? 指輪ですかペンダントですか、ブレスレットですか? ピアス? イヤリング? 剣とか盾?? 鎧兜??」
「特殊な店じゃないんだから、剣とか盾は無いだろ……そうだなあ……」
(指輪は誤解されそうだから絶対ダメだな……ペンダントは付けてる事が分かりにくい……ブレスレットはなんかダサイ……ピアスは何か痛そうだなあ……イヤリングかあ?)
「イヤリングで」

 セレネは髪をかき上げて、少し恥ずかしそうに視線を逸らして言った。

「分かりました……デザインの意匠はなるべく髑髏中心が良いですよね?」
「何故髑髏か? てか髑髏のイヤリングあれば買ってみいや」
「いえ、普段のセレネのイメージにマッチングする物をと……」
「お、おいあたしゃ髑髏のイメージかよ」

 と言ってセレネはハッとした。そう言えば普段から病んでる様な黒い服ばかり着てたなと。

「いや、お前が折角買ってくれるなら何でもいーや、好きなの買って下さい」
「ほいほい」

 割と軽い返事をして砂緒は店に消えて行った。
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