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018. 真壁さんによる回想劇~その3

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 「これは・・・」
 巽支部長並びに柏木補佐官が召集した隊員達にある映像を見せた。
 「この映像は東京都内で任務を行っていた別の隊員が録画し保存されていた映像だ」
 映像の内容は生々しく目を覆いたくなる様なモノだったが誰一人体制を崩さずにその映像を静かに見ていた。
 この映像を見た時、わたしは浦島の・・・友人の生存の可能性が低いコトをさとったのだった。
 「この映像はフェイクや合成ではなく、今現在続いている事情である」 
 事情・・・?どういうコトだと耳を傾けた。
 「東京を中心に多くの人員を派遣し情報規制を施し外部に漏れないようにと務めてきたがそれも無駄に終わってしまった」
 巽支部長は言葉に詰まり唇を噛み俯いていると柏木補佐官が続きを話した。
 「東京の本部から最後に指令が出されたが、それを諸君等が継続するか否かは自らで決めてもらいたい」

 (二人は何を言っているんだ?最後とは?)

 何やら涙ぐんでいた巽支部長がこの場に召集した全ての隊員に向け言葉を発した。

 「新宿区支部はこれより"解散"し支部を閉鎖、締めるコトとなった。」

 「・・・」

 はぁーーーっ??!
 解散?閉鎖?!どういうコトだ!!!
 
 「諸君等は各自の責任で行動してもらいたい、だか自衛隊隊員であるコトも忘れないで欲しい」

 なっ、え?はぁ?ちょっと待て!
 
 「諸君等の生存を祈っている!」
 巽支部長と柏木補佐官がビシッと敬礼のポーズをした。
 「解散っ!!」

 「「「解散っ!!!」」」
 
 その言葉を合図に隊員達は蜘蛛の子の様に皆散っていった。状況が良く呑み込めずにいると巽支部長、柏木補佐官が私の元まで歩いて来た。
 「これはどういうコトですか?!」
 「すまない、説明している時間は無い。事後報告という形になるが後は君の部下から聞いてくれ」
 
 「隊長、行きましょう!」
 後の方で副隊長の五十嵐隊員の声がしたが、まだ頭の中が混乱していて支部長と補佐官二人に積め寄った。
 「訳が分かりません!説明して下さい!!」
 支部長は私の手に、あるモノを無理矢理握らせた。それは、USBのメモリーだった。
 「我々からは何も言えない!口外を禁止されている」
 上からの指示なんだと支部長は私に伝えた。
 「これは?」
 渡されたUSBについて聞くと中身は先程の映像のデータだった。
 「それは君が持っていてくれ、いつか役にたつだろう」

 「君達が最後だ!急げ!!」
 柏木補佐官が促すと建物から、けたたましい音が鳴り響く。その音に一瞬ビクッと身体が動いた。

 ヴヴーーーヴヴーーーヴヴーーー・・・

 (これはサイレン!?)

 『コレヨリ屋内デ作業サレテイル方ハ、タダチニ避難ヲシテ下サイ・・・』
 機械で造られた音声と共にサイレンが鳴り続け避難を余儀なくされた。部下に連れられ用意してあった軍用の車両に向かった。向かう途中一度だけ後ろを振り返ると巽支部長と柏木補佐官が背中を向け走る私達に敬礼のポーズを送る姿が見えた。
 車両に乗り込むと待機していた隊員がエンジンを掛けて待っていた。
 「出発!!」
 車両が発進した。
 
 「待て、どういうコトだ?」
 部下達に説明を求めた。
 すると女性隊員の桃山がパソコンの画面を見せた。ネットに繋いだニュース速報だった。
 画面に大きく"緊急速報"と書かれていた。スーツ姿ではなく防災服を着用した政府の要人達が撮し出されていた。
 カメラのフラッシュと多くの報道人や記者達の前でマイクに向かって話し始めたのは我が国の総理大臣だった。
 首相は報道人や記者達に囲まれながら答えた。
 「これは、どういうコトですか?!」
 「医療現場からの報告は本当なんですか?!」
 「これからの対応はどのようにするんですか?!」
 
 
 「この報告又はラジオ等でお聞きの皆様にお伝えします」
 
 某医療現場に運び込まれた多数の患者による暴徒化によって重軽傷者が出たという報告が先程届きました。
 押さえ込もうとした他の医療従事者達も怪我をおったとの知らせがありました。暴徒と化した患者は一時的に拘束し、現在は治療をせず屋内に監禁し監視化に置くという措置がしかれました。
 原因究明と自衛隊による医療支援要請を出した・・・という内容が話された。
 「ぼ、暴徒?」
 どういうコトなのか頭の中で整理が追い付かない。
 「少し前から都心の医療現場では患者が急に暴れ出すという現象がおきたようです」
 桃山隊員が説明をした。
 「支援要請を受け参加した自衛隊隊員も患者の拘束を行ったのてすが・・・その際に、感染した隊員も患者と同じく暴れ出したそうです」
 「じ、自衛隊隊員も・・・?」
 はい、と小さく頷く桃山隊員に五十嵐副隊長が捕捉を付けたた。
 「先程見た映像と同じコトがあちこちの医療現場でおきたようです。」
 「じゃあ、一ヶ月前の赴任先変更はこの為だったのか?」
 そうだと思いますと桃山隊員が答えた。
 「それと隊長・・・巽支部長から、浦島隊は一週間前から報告が途絶え音信不通になり上層部は・・・じゅ・・・殉職という扱いで処理されたそうです」
 
 「殉職・・・浦島が・・・」
 望み薄だと思っていたが、いざ聞くといたたまれない思いだ。
 「副隊長、どちらに向かいましょう?」
 ハンドルを握り運転していた浅田隊員が聞いてきた。後ろを並走して走る車両を運転していた天草隊員からも小型無線機で応答を待っていた。
 車を一旦止めて辺りを見渡した。
 車道を走る自動車の中には信号を無視して猛スピードで走り抜ける危険なドライバーが目に写った。数キロ離れたお店からは荷物を抱え車ひ購入した商品を積み込む人達の姿も見えた。
 町の方では少しずつだが変化を感じる。
 首相のニュース速報には戸締まりをして屋内に留まるようにと放送が流れた。長期で屋内に留まる事を選んだ人達がこぞって食料等の必要な物資を求めているんだろう。

 私は浅田隊員に指示を出した。
 「高速は避けて、できるだけ下道を走ってくれ」
 「分かりました」

 「それと救助を必要としている人がいたら救出活動をしていこう」


 巽支部長や柏木補佐官の姿が脳裏に写った。
 彼らは最後まで自衛隊として生きる事をを選んだのだろう。

 私は部下達と共に人助けを行いながら転々と拠点となる場所を移しては安全な場所を求めて移動した。移動の際には感染したと思われる一般人に遭遇しながらも移動を続けた。
 都心から離れ移動を続けていると人気の多い場所を避けるようになった。少しでも感染した人達から逃れるために人気の少ない地方の方を目指した。
 
 「隊長、前方にトンネルです」
 先行して安全を確認した。
 トンネルを通過した後は足止めと安全を考え爆破した。
 暫く走ると暗闇から何かが車両の前に出て来た。暗闇に光る小さな二つの光・・・。

 「ガウガウガウっ!!」

 「な、何だ?」

 「ガウガウっ!!」
 鳴き声からして犬のようだが、野犬か?

 「浅田、前方を照らせ」
 「はい!」

 「コロ助、もう~何処に行ってたんだよ。心配して・・・」

 ビカっ!!!

 「イヤァァァーーーっ!!!」

 これが私達と田中樹と名乗る青年との出会った経緯です。
 
 
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