3 / 7
第三話
しおりを挟む
「とにかくさ、関わらない方がいいって」
教室へと戻る帰り道、廊下を要と倉田並んで歩いていた。
「詳しく知らないんだけど、そんなに昔からいろいろと噂があるわけ?」
しつこいくらいに忠告してくる倉田に向かって要は尋ねた。あまりに倉田が心配してくるので逆に要としては興味を引かれてしまった感じだ。
そういう噂がいろいろあるという話は知っていたのだけど、要はどうにも蔭口というか悪口のような気がして積極的に黒神の話を聞いたことがなかったのだ。
「さっきも言ったけど、俺、小学校の時からずっと一緒なんだよ。クラスは同じだったり違ったりしたわけだけど、そんな奴はうちの学校結構いるはずだぜ。先輩や後輩の中にも知っているっていうやつは多いと思う。でだ、小学校の時から始まったんだけど、今もあれだけきれいな感じだろ。小学校の時もそうでさ。それでちょっといじめられてたことがあったんだよ。といってもガキの頃のことだから陰湿なやつじゃなくて、ちょっとしたケンカの延長みたいな感じだったり仲間外れみたいな感じだったんだけど」
「今とあんまり変わらないような気もするけど?」
「そういうなよ。今は怖くて近寄れないって感じなわけだから。で、話を戻すけど、最初はクラスのリーダー格の女の子が交通事故にあったわけよ」
「それが黒神のせいってなったわけ?」
要の問いに倉田は首を横に振って否定した。
「いや、普通に事故だと思われてたさ。でもさ、その後彼女に意地悪をしたりした子たちが続けて何人か怪我をしたり、病気になったりしたのが続いたわけよ」
「……」
「である日、誰かが言ったわけだ。礼美ちゃんが呪いをかけているんじゃないのって」
「だけどさ」
反論しようとする要を倉田は手で制した。
「わかるだろ、今ならそんなバカなって俺たちは言えるさ。でもよ、ガキの頃なんて呪いとか魔法とかすぐに信じちゃうものだろ。あっという間に噂は広まって、あっという間に一人ぼっちさ」
「ふーん」
「まあ今の要みたいなやつも何人かいたけどね」
不満そうな表情を浮かべる要をみて倉田は続けた。
「でもなぜかみんな怪我をして、離れて言っちゃうわけさ。しかも先生なんかの中にも被害者が出てくるともうダメだったね。というわけで、中学生になるころには完全に悪魔がついているとかいう話が定着してしまって、誰も近寄らなくなっていたかな。その頃からかな、いつもなんとなくほほ笑んでいるような気がする」
といって倉田は肩をすくめて両手を広げてみせた。
「なるほどね。悪魔つきに呪いってわけね。本人も認めちゃっているわけね。なるほどなるほど」
倉田の話を黙って聞いていた要は腕組をしてひとり頷いている。
二人はいつの間にか二年生の教室のある二階に戻ってきていた。昼休みも半分以上過ぎているので、お昼を食べ終わった生徒が教室にも廊下にも思い思いのグループを作っていて学校はいつも通りの喧騒であふれていた。
もうすぐ自分たちの教室というところで要は立ち止った。
「どうしたんだ?」
腕組をして何やら考えこんでいる要に倉田は振り返って尋ねた。
「いやね、俺としては黒神がかわいそうだからとか、なんていうのかな、正義感とかそう言ったわけで話しかけたわけじゃないんだけ……まあ、いろいろ話を聞いてみて、わかったぜ」
「なにがわかったって?」
「おれさ、黒神のやつがどうにもムカつくんだわ」
きっぱりとした口調で要は言った。逆に倉田の方は要の言葉を聞いて、意味がわからないというような表情を浮かべた。
倉田としては要の答えは斜め上を言っているように思えたようだ。
そんな倉田の様子に気づくこともなく、要は一人納得したとばかりにすっきりとした顔で、今来た廊下を戻り始めた。
「お、おい、どこに行くんだよ?」
慌てて呼びとめる倉田に向かって、
「屋上!」
と叫び返すと、要は走り始めた。
「ちょっと話をつけてくるわ」
「いや待てって、やめとけって」
要に続いて走り始めた倉田は階段で追いつき要の背中に声をかける。
「もし呪われたらおまえんちの寺でお払いしてくれ!」
「無理、うちは寺だけどオヤジも俺も霊感ないから」
階段を一段ぬかしでかけ登っていく要に坊主頭の倉田は律義に答えるのだった。
教室へと戻る帰り道、廊下を要と倉田並んで歩いていた。
「詳しく知らないんだけど、そんなに昔からいろいろと噂があるわけ?」
しつこいくらいに忠告してくる倉田に向かって要は尋ねた。あまりに倉田が心配してくるので逆に要としては興味を引かれてしまった感じだ。
そういう噂がいろいろあるという話は知っていたのだけど、要はどうにも蔭口というか悪口のような気がして積極的に黒神の話を聞いたことがなかったのだ。
「さっきも言ったけど、俺、小学校の時からずっと一緒なんだよ。クラスは同じだったり違ったりしたわけだけど、そんな奴はうちの学校結構いるはずだぜ。先輩や後輩の中にも知っているっていうやつは多いと思う。でだ、小学校の時から始まったんだけど、今もあれだけきれいな感じだろ。小学校の時もそうでさ。それでちょっといじめられてたことがあったんだよ。といってもガキの頃のことだから陰湿なやつじゃなくて、ちょっとしたケンカの延長みたいな感じだったり仲間外れみたいな感じだったんだけど」
「今とあんまり変わらないような気もするけど?」
「そういうなよ。今は怖くて近寄れないって感じなわけだから。で、話を戻すけど、最初はクラスのリーダー格の女の子が交通事故にあったわけよ」
「それが黒神のせいってなったわけ?」
要の問いに倉田は首を横に振って否定した。
「いや、普通に事故だと思われてたさ。でもさ、その後彼女に意地悪をしたりした子たちが続けて何人か怪我をしたり、病気になったりしたのが続いたわけよ」
「……」
「である日、誰かが言ったわけだ。礼美ちゃんが呪いをかけているんじゃないのって」
「だけどさ」
反論しようとする要を倉田は手で制した。
「わかるだろ、今ならそんなバカなって俺たちは言えるさ。でもよ、ガキの頃なんて呪いとか魔法とかすぐに信じちゃうものだろ。あっという間に噂は広まって、あっという間に一人ぼっちさ」
「ふーん」
「まあ今の要みたいなやつも何人かいたけどね」
不満そうな表情を浮かべる要をみて倉田は続けた。
「でもなぜかみんな怪我をして、離れて言っちゃうわけさ。しかも先生なんかの中にも被害者が出てくるともうダメだったね。というわけで、中学生になるころには完全に悪魔がついているとかいう話が定着してしまって、誰も近寄らなくなっていたかな。その頃からかな、いつもなんとなくほほ笑んでいるような気がする」
といって倉田は肩をすくめて両手を広げてみせた。
「なるほどね。悪魔つきに呪いってわけね。本人も認めちゃっているわけね。なるほどなるほど」
倉田の話を黙って聞いていた要は腕組をしてひとり頷いている。
二人はいつの間にか二年生の教室のある二階に戻ってきていた。昼休みも半分以上過ぎているので、お昼を食べ終わった生徒が教室にも廊下にも思い思いのグループを作っていて学校はいつも通りの喧騒であふれていた。
もうすぐ自分たちの教室というところで要は立ち止った。
「どうしたんだ?」
腕組をして何やら考えこんでいる要に倉田は振り返って尋ねた。
「いやね、俺としては黒神がかわいそうだからとか、なんていうのかな、正義感とかそう言ったわけで話しかけたわけじゃないんだけ……まあ、いろいろ話を聞いてみて、わかったぜ」
「なにがわかったって?」
「おれさ、黒神のやつがどうにもムカつくんだわ」
きっぱりとした口調で要は言った。逆に倉田の方は要の言葉を聞いて、意味がわからないというような表情を浮かべた。
倉田としては要の答えは斜め上を言っているように思えたようだ。
そんな倉田の様子に気づくこともなく、要は一人納得したとばかりにすっきりとした顔で、今来た廊下を戻り始めた。
「お、おい、どこに行くんだよ?」
慌てて呼びとめる倉田に向かって、
「屋上!」
と叫び返すと、要は走り始めた。
「ちょっと話をつけてくるわ」
「いや待てって、やめとけって」
要に続いて走り始めた倉田は階段で追いつき要の背中に声をかける。
「もし呪われたらおまえんちの寺でお払いしてくれ!」
「無理、うちは寺だけどオヤジも俺も霊感ないから」
階段を一段ぬかしでかけ登っていく要に坊主頭の倉田は律義に答えるのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる