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第二部 嗣子は鵬雛に憂う
第308話 白き世界の幽囚 其の十 ★
しおりを挟むやがて竜紅人が竜尾を優雅に拗らせる。動きに合わせて色の濃淡を変える蒼色の鱗に目を奪われていると、まるで香彩を褒めているかのように、竜尾が香彩の頬を擽った。そして『香彩』の頬も愛しいのだとばかりに擽る姿を見て、香彩の中にすとんと感情が落ちてくる。
ああ、竜紅人はこんな蜘蛛ような魔妖の姿をしたもう一人の自分も、ちゃんと想ってくれているのだと。
──『心の魔妖』は『本質』が俺に対する罪悪感で生み出した、俺への想いそのものだ。
──俺が愛さないとでも思ったか?
竜紅人はそう言葉にしたというのに。
彼を信じなかったわけではなかった。
ただ実感を伴っただけだ。
蜘蛛のような姿をしているもうひとりの自分ですら竜紅人は接吻を贈り、若茎を愛で、いまこうして自分と共に、熱い彼の剛直で悦びと執着を与えられている。
自分だけを見つめて全身を熱く昂らせて、ぶつかってくるその姿と激しさに、どうしようもなく酔い痴れて、切なくも温かい気持ちが溢れて堪らない。
こんな自分でも、貴方は求めてくれるのだと。
その猛然とした想いが、香彩の心を救い上げる。
「……りゅう……っ! りゅ……こ、と……っ」
甘く蕩けたような声で彼の名前を呼びながら、香彩は心の内から湧き出てくる感情のままに、胎内に在る熱く滾るものを、きゅうと噛み締めた。
血管の浮いた幹も、捏ね回してくる亀頭のかたちも、竜紅人のすべてを味わうように、香彩の内襞は彼を咥え込んで離さない。
胎内でも敏感な膨らみを熱い剛直が擦り上げる。『香彩』が感じている悦楽も伝わってきて、ひときわ艶やかな声を香彩は上げた。
「だめっ、だめっそこ……っ、ひぁ……!」
執拗にその膨らみを突き上げられる二重の法悦に、香彩は身体を仰け反らせる。
おかしくなりそうだと思った。
やがて先程まで二人で口淫をしていた竜尾の先端が、二本の若茎をくるりと絡め取り、律動に合わせて扱く。特に敏感な濃紅の亀頭を舐めるように擦られて、香彩の瞳からは情欲の涙が溢れた。
「ひあ……っ、ああっ!」
奥をがつがつと突かれて香彩は我を忘れて叫んだ。この胎内に触れてない場所などないと言わんばかりの激しい蹂躙に、香彩の身体は怯え逃げようとする。
だがそれを許す竜紅人ではなかった。
離れるなと彼が腰を掴んで引き寄せる。指が肌に食い込む、そのちりっとした痛みすらも、今の香彩には過ぎた快楽だった。
「りゅう……っりゅう……っ!」
若茎と後蕾を同時に責められて、香彩が頭を振りながら、竜紅人の名前を呼ぶ。
「……かさい、一緒にっ……!」
「──……っ、ぁ、ああぁっっ!」
竜尾に巻かれて扱かれていた二本の若茎が吐精する。同時にふたりの香彩を責めていた竜紅人の二本の剛直も、香彩達の胎内に熱を放った。
「……ぁ……ぁ、んっ……」
強い快楽で意識が遠くなる中、心の魔妖の『香彩』の手が、香彩の頬をするりと撫でた。
竜紅人に与えられた法悦に蕩ける表情を隠すことなく、愛しそうに香彩に口付ける。
きっと自分もこんな表情をしているのだろう。
艶やかで、そして幸せそうで。
やがて舌を絡ませてくる『香彩』に、香彩が応えたその時だった。
目を見張った。
『香彩』の身体が少しずつ透け始めたのだ。
『香彩』は笑っていた。
とても、とても幸せそうに。
香彩も自分の分身のような存在に笑いかけようとした。
だが真竜の長い射精が、冷めていない先程の強烈な快楽の上に、より濃密な悦楽を連れてくる。
再度絶頂に導かれ達する身体に、艶声を上げる間もなく、香彩の意識は遠のいていった。
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