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第二部 嗣子は鵬雛に憂う

第306話 白き世界の幽囚 其の八 ★

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「──っ!」


 香彩かさいはこの時初めて罪悪感が生み出した『心の魔妖』たる自分自身を、正面から見ることとなった。
 顔と身体付きは香彩と全く同じだ。だが異様に長い手足が左右に四本ずつ、計八本の手足が香彩の手と足を拘束している。それは蜘蛛のような姿であり、香彩はこの『心の魔妖』に繋がれた獲物そのものだった。まさに『罪悪感に捉われる』ことを心が体現したのだろう。
 この異形とも云える姿の自分が、深層意識の眠る場所とされる夢床ゆめどのの奥で棲んでいる。
 しかもそれを竜紅人りゅこうとに見られ、知られてしまったのだ。その何ともいえない恥ずかしさと絶望感に、香彩はもう自身を嗤うことしか出来ないでいた。

 こんな自分を見られたくない。
 嫌われたくない。

 そうやって怯えて小さくなる心を、ただひたすら嗤う。
 怯えはやがて背中にまで現れたのか。
 震える香彩を宥めるように、竜紅人がそっと白い背中に触れた。上から下へと、形の良い指先が背骨を伝い落ちて行く。


「──だからさっきも言ったが……今更だな、かさい。お前のことを幾つの時から見てきたと思ってる?」
「でも……っ、あ……」 


 不意に香彩の身体が『心の魔妖』の方へと引き寄せられて、二人の肌が更に密着する。蜜を垂らした若茎同士が擦れ合い、ちゅく、と卑猥な水音を鳴らす。
 更に変えられる体勢に、香彩は羞恥を覚え、顔に朱を走らせた。
 くつり、と竜紅人が吐息混じりに笑う。


「……絶景だな。俺の望むものをよく分かってる」
「──っっ!」


 『香彩』が調整したのだ。
 彼のことを考えて、彼が挿入しやすい高さへと。
 それは竜紅人の為に用意された馳走、と言っても過言ではなかった。
 彼の目の前には、白桃のように瑞々しくまあるいいざらいと、彼を求めてはくはくとひくつき、時折その紅の花片を覗かせる卑猥な後蕾が、ふたつずつあったのだから。
 かさい、と竜紅人の欲に掠れた低い声が、耳元に吹き込まれる。


「お前は『心の魔妖』を俺に見られたくなかったって言ってたけどな、『本質おまえ』も『心の魔妖』も、どちらも俺にとったら、ずっと焦がれ続けてきたお前自身だよ」
「……っ!」


 そんな蜜滴るふたつの後蕾に宛てがわれるのは、二本の熱楔。
 ぬちゃりとした淫靡な音が聞こえてくる。
 蜜をたっぷりと絡ませた楔が、会陰から尾骶へと、後蕾の襞を捲るようにして擦り付けられる音だ。


「『心の魔妖』は『本質おまえ』が俺に対する罪悪感で生み出した、俺への想いそのものだ。俺が愛さないとでも思ったか?」
 


 ──そろそろ自分が誰のものなのか、いい加減思い知れ、かさい。



「……あ」


 一段と低く、より奸濫とした竜紅人の美声が耳元に落とされた刹那。
 その灼熱に、香彩は全身を震わせる。
 竜紅人の剛直は何の躊躇いもなかった。
 『心の魔妖』と『本質』、二つのひくついた後蕾を二本の剛直は、まるで串刺しにでもするかのように、一気に奥まで貫いてきたのだ。


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