蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する

結城星乃

文字の大きさ
上 下
192 / 409
第一部 嫉妬と情愛の狭間

第192話 成人の儀 其の五十八★      ──体勢──

しおりを挟む
 

 香彩かさいが肩の牙痕に気を取られている内に、朱雀の光玉が『四神の眠り袋』に納まる。
 それでも胎内をじわじわと灼かれるような、快楽はずっと続いたままだ。


「……あと一体だ……かさい」


 欲に掠れた官能的な低い声が耳朶を擽る。だがどこか違和感のようなものを感じて、香彩かさい紫雨むらさめを見ようとした。
 だが。


「……ひぁ…!」


 竜紅人りゅこうとの剛直が後蕾から、一気にずるりと抜けていく感覚が酷く気持ち良くて、香彩かさいは短く嬌声を上げる。
 抜けるのを見計らっていたのか。
 未だに衰えを知らない熱楔を結腸の蜜壺に穿ったまま紫雨むらさめは、横向きになっていた香彩かさいの体勢を変えた。


「……ぁ……」


 ぞくりとしたものが背筋を駆け上げる。
 粟立つそれは、悦楽とはまた違った物だ。
 何故気付かなかったのだろう。
  尾骶、右臀、左臀ときて、最後に描く場所は下腹だと。
 紫雨むらさめが正面から、香彩かさいを見下ろす体勢になるのだと。


(……だめだ……っ、この体勢は……っ!)


 心の芯が冷え、悦楽の織火がだんだんと消えていくのを、香彩かさいはどこか遠いところで感じていた。


(……この体勢は、僕が……一度…) 


 ふるりと震える香彩かさいの白い上半身を、紫雨むらさめの逞しい両腕が絡め取るように抱き締めると、少し身体を浮き上がらせた。
 香彩かさいの身体と褥との間に出来た隙間に、竜紅人りゅこうとが入り込む。紫雨むらさめ香彩かさいを下ろせば、香彩かさいは背中に身体全体に、竜紅人りゅこうとの体温を感じるような、下敷きにするような、そんな体勢になった。


「……っ!」


 竜紅人りゅこうとの熱い体温が、まるで香彩かさいにも移ったかのように、香彩かさいの快楽の織火もまた、じわじわと感覚を取り戻す。
 堪らないとばかりに乱れた息をつけば、くつりと竜紅人りゅこうとが喉奥で笑いながら、再びその剛直を後蕾に宛がった。


「……ん、あぁぁっ……!」


 抜けていった時と同様に、一気に奥まで挿入はいってきたそれに、香彩かさいは甘い艶声を上げる。
 同時に背後から伸びてきた竜紅人りゅこうとの両手が、香彩かさいの両膝に触れた。そして限界まで足を開かされて、固定でもするように竜紅人りゅこうとが足を絡ませながら香彩かさいの足を抑え付ける。


「あ……っ、は…」


 絡む足の淫靡さと、大きく足を広げて香彩かさいの秘すべき処を、全て紫雨むらさめに曝け出すような体勢に、香彩かさいは堪らずかぶりを振った。
 そんな香彩かさいの様子に構うことなく竜紅人りゅこうとは、背後から香彩かさいの腋の下に両腕を通し、羽交い締めによく似た体勢をとる。ただ違うのは、竜紅人りゅこうとのその長い指が、しっかりと香彩かさいの指に絡んでいたことだ。
 身動きの取れない体勢にされたというのに、絡む足、指の隙間に感じる竜紅人りゅこうとの指の感触、その体温に翻弄される。


(……ああ、そうか……竜紅人りゅこうとは)


 知っている。

 紫雨むらさめが正面から見下ろす、この体勢が駄目な理由を。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ふたりの距離

春夏
BL
【完結しました】 予備校で出会った2人が7年の時を経て両想いになるまでのお話です。全9話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...