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第一部 嫉妬と情愛の狭間
第192話 成人の儀 其の五十八★ ──体勢──
しおりを挟む香彩が肩の牙痕に気を取られている内に、朱雀の光玉が『四神の眠り袋』に納まる。
それでも胎内をじわじわと灼かれるような、快楽はずっと続いたままだ。
「……あと一体だ……かさい」
欲に掠れた官能的な低い声が耳朶を擽る。だがどこか違和感のようなものを感じて、香彩は紫雨を見ようとした。
だが。
「……ひぁ…!」
竜紅人の剛直が後蕾から、一気にずるりと抜けていく感覚が酷く気持ち良くて、香彩は短く嬌声を上げる。
抜けるのを見計らっていたのか。
未だに衰えを知らない熱楔を結腸の蜜壺に穿ったまま紫雨は、横向きになっていた香彩の体勢を変えた。
「……ぁ……」
ぞくりとしたものが背筋を駆け上げる。
粟立つそれは、悦楽とはまた違った物だ。
何故気付かなかったのだろう。
尾骶、右臀、左臀ときて、最後に描く場所は下腹だと。
紫雨が正面から、香彩を見下ろす体勢になるのだと。
(……だめだ……っ、この体勢は……っ!)
心の芯が冷え、悦楽の織火がだんだんと消えていくのを、香彩はどこか遠いところで感じていた。
(……この体勢は、僕が……一度…)
ふるりと震える香彩の白い上半身を、紫雨の逞しい両腕が絡め取るように抱き締めると、少し身体を浮き上がらせた。
香彩の身体と褥との間に出来た隙間に、竜紅人が入り込む。紫雨が香彩を下ろせば、香彩は背中に身体全体に、竜紅人の体温を感じるような、下敷きにするような、そんな体勢になった。
「……っ!」
竜紅人の熱い体温が、まるで香彩にも移ったかのように、香彩の快楽の織火もまた、じわじわと感覚を取り戻す。
堪らないとばかりに乱れた息をつけば、くつりと竜紅人が喉奥で笑いながら、再びその剛直を後蕾に宛がった。
「……ん、あぁぁっ……!」
抜けていった時と同様に、一気に奥まで挿入ってきたそれに、香彩は甘い艶声を上げる。
同時に背後から伸びてきた竜紅人の両手が、香彩の両膝に触れた。そして限界まで足を開かされて、固定でもするように竜紅人が足を絡ませながら香彩の足を抑え付ける。
「あ……っ、は…」
絡む足の淫靡さと、大きく足を広げて香彩の秘すべき処を、全て紫雨に曝け出すような体勢に、香彩は堪らず頭を振った。
そんな香彩の様子に構うことなく竜紅人は、背後から香彩の腋の下に両腕を通し、羽交い締めによく似た体勢をとる。ただ違うのは、竜紅人のその長い指が、しっかりと香彩の指に絡んでいたことだ。
身動きの取れない体勢にされたというのに、絡む足、指の隙間に感じる竜紅人の指の感触、その体温に翻弄される。
(……ああ、そうか……竜紅人は)
知っている。
紫雨が正面から見下ろす、この体勢が駄目な理由を。
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