107 / 107
番外編 銀狐、温泉に入る 其の六 ※
しおりを挟む
***
ようやく湯に浸かった二人だったが、晧は白霆の方を見ることが出来なかった。白霆と少し距離を取って、ただ景色を眺めている。
自分自身が信じられなかったのだ。
昨夜と今朝、そして今。
温泉で彼を見た、ただそれだけでこんなにも『白霆が欲しい』と思うなど、思いもしなかった。
自分から白霆を求めるような視線を向けて『竜の聲』でいいようにされて、前戯もなしにいきなり繋がるような目合いをされたというのに。晧の心と身体は充足感に満ちていた。
それが信じられない。
自分の中にこんなにも『力の強い者に従う隷属本能』が強いなど、思ってもみなかった。
「……晧、申し訳ございません。怒って……いらっしゃいますよね」
自分の機嫌を伺う白霆の言葉に、申し訳ない気分になる。すぐに安心させてやりたいと思うのに、戸惑いと葛藤がまだ心の中を占めていた。
だが白霆には素直になっていいのかもしれないと、そう思い始める。これから一生を共にする定められた番なのだから。
「……怒ってるわけじゃねぇよ。ただ……」
「──はい」
「ずっとお前を欲しいと思ってる俺がいて……お前の『竜の聲』も悪くなかったって思ってる自分が、信じられなかっただけだ」
「晧……」
気付けば後ろから抱き竦められて、狐耳に落とされる接吻に晧は身を捩らせた。
「──っ、離してほしい、白竜。じゃないとまた、欲しくなる」
「欲しがって下さい。私も貴方が欲しいです。まだまだ足りない。私達は結ばれたばかりなので当然です。『竜の蜜月』という言葉をご存知でしょう?」
「あ……これ、が……?」
文献で読んだことがあった。
自分の御手付きを得た真竜が、御手付きを愛でる為に巣籠りをする期間があると。
「はい。実は先程、宿の者にしばらくの間、離れに滞在したいとお願いしてきました。あと全ての食事を私が離れに運ぶことも了承して頂きました」
「……っあ……っ! な、んで……?」
胸の漿果に触れられて、晧の身体が跳ねる。
そういえば今朝、遅い朝餉になってしまったが、白霆が運んできたことを思い出した。晧は朝餉が遅れてしまったからだと思っていたのだ。
くすりと白霆が耳元で笑う。
「──だって……こんなに私のことを欲しがっている貴方を、誰にも見せたくないんです。いまは……私のことだけを考えて下さい。欲しがって、晧」
「あ……白竜……っ!」
再び後蕾に宛がわれる雄蕊に、尾骶がつんと痛んで快楽が背筋を駆け上がっていく。
湯と共に媚肉の隧道を掻き分けて挿入ってくる、熱茎の愛しさに晧は酔い痴れたのだ。
その後、離れの宿の滞在期間中、晧と白霆は食事と睡眠以外はほぼ目合い続けた。
時折会話もするが常にお互いに触れ合い、その温もりを確かめ合った。
だがこれが竜の蜜月の始まりに過ぎないことを。
晧はまだ知らない。
【番外編 銀狐、温泉に入る 完】
ようやく湯に浸かった二人だったが、晧は白霆の方を見ることが出来なかった。白霆と少し距離を取って、ただ景色を眺めている。
自分自身が信じられなかったのだ。
昨夜と今朝、そして今。
温泉で彼を見た、ただそれだけでこんなにも『白霆が欲しい』と思うなど、思いもしなかった。
自分から白霆を求めるような視線を向けて『竜の聲』でいいようにされて、前戯もなしにいきなり繋がるような目合いをされたというのに。晧の心と身体は充足感に満ちていた。
それが信じられない。
自分の中にこんなにも『力の強い者に従う隷属本能』が強いなど、思ってもみなかった。
「……晧、申し訳ございません。怒って……いらっしゃいますよね」
自分の機嫌を伺う白霆の言葉に、申し訳ない気分になる。すぐに安心させてやりたいと思うのに、戸惑いと葛藤がまだ心の中を占めていた。
だが白霆には素直になっていいのかもしれないと、そう思い始める。これから一生を共にする定められた番なのだから。
「……怒ってるわけじゃねぇよ。ただ……」
「──はい」
「ずっとお前を欲しいと思ってる俺がいて……お前の『竜の聲』も悪くなかったって思ってる自分が、信じられなかっただけだ」
「晧……」
気付けば後ろから抱き竦められて、狐耳に落とされる接吻に晧は身を捩らせた。
「──っ、離してほしい、白竜。じゃないとまた、欲しくなる」
「欲しがって下さい。私も貴方が欲しいです。まだまだ足りない。私達は結ばれたばかりなので当然です。『竜の蜜月』という言葉をご存知でしょう?」
「あ……これ、が……?」
文献で読んだことがあった。
自分の御手付きを得た真竜が、御手付きを愛でる為に巣籠りをする期間があると。
「はい。実は先程、宿の者にしばらくの間、離れに滞在したいとお願いしてきました。あと全ての食事を私が離れに運ぶことも了承して頂きました」
「……っあ……っ! な、んで……?」
胸の漿果に触れられて、晧の身体が跳ねる。
そういえば今朝、遅い朝餉になってしまったが、白霆が運んできたことを思い出した。晧は朝餉が遅れてしまったからだと思っていたのだ。
くすりと白霆が耳元で笑う。
「──だって……こんなに私のことを欲しがっている貴方を、誰にも見せたくないんです。いまは……私のことだけを考えて下さい。欲しがって、晧」
「あ……白竜……っ!」
再び後蕾に宛がわれる雄蕊に、尾骶がつんと痛んで快楽が背筋を駆け上がっていく。
湯と共に媚肉の隧道を掻き分けて挿入ってくる、熱茎の愛しさに晧は酔い痴れたのだ。
その後、離れの宿の滞在期間中、晧と白霆は食事と睡眠以外はほぼ目合い続けた。
時折会話もするが常にお互いに触れ合い、その温もりを確かめ合った。
だがこれが竜の蜜月の始まりに過ぎないことを。
晧はまだ知らない。
【番外編 銀狐、温泉に入る 完】
67
お気に入りに追加
219
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(14件)
あなたにおすすめの小説
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
左遷先は、後宮でした。
猫宮乾
BL
外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

涯(はて)の楽園
栗木 妙
BL
平民の自分が、この身一つで栄達を望むのであれば、軍に入るのが最も手っ取り早い方法だった。ようやく軍の最高峰である近衛騎士団への入団が叶った矢先に左遷させられてしまった俺の、飛ばされた先は、『軍人の墓場』と名高いカンザリア要塞島。そして、そこを治める総督は、男嫌いと有名な、とんでもない色男で―――。
[架空の世界を舞台にした物語。あくまで恋愛が主軸ですが、シリアス&ダークな要素も有。苦手な方はご注意ください。全体を通して一人称で語られますが、章ごとに視点が変わります。]
※同一世界を舞台にした他関連作品もございます。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/index?tag_id=17966
※当作品は別サイトでも公開しております。
(以後、更新ある場合は↓こちら↓にてさせていただきます)
https://novel18.syosetu.com/n5766bg/

【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています
天冨七緒
BL
僕は幼い頃から男の子が好きだった。
気が付いたら女の子より男の子が好き。
だけどなんとなくこの感情は「イケナイ」ことなんだと思って、ひた隠しにした。
そんな僕が勇気を出して高校は男子校を選んだ。
素敵な人は沢山いた。
けど、気持ちは伝えられなかった。
知れば、皆は女の子が好きだったから。
だから、僕は小説の世界に逃げた。
少し遠くの駅の本屋で男の子同士の恋愛の話を買った。
それだけが僕の逃げ場所で救いだった。
小説を読んでいる間は、僕も主人公になれた。
主人公のように好きな人に好きになってもらいたい。
僕の願いはそれだけ…叶わない願いだけど…。
早く家に帰ってゆっくり本が読みたかった。
それだけだったのに、信号が変わると僕は地面に横たわっていた…。
電信柱を折るようにトラックが突っ込んでいた。
…僕は死んだ。
死んだはずだったのに…生きてる…これは死ぬ瞬間に見ている夢なのかな?
格好いい人が目の前にいるの…
えっ?えっ?えっ?
僕達は今…。
純愛…ルート
ハーレムルート
設定を知る者
物語は終盤へ
とあり、かなりの長編となっております。
ゲームの番外編のような物語です、何故なら本編は…
純愛…ルートから一変するハーレムルートすべての謎が解けるのはラスト。
長すぎて面倒という方は最終回で全ての流れが分かるかと…禁じ手ではありますが
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
読むの遅くなって申し訳ありません。
94話まで読みました!
94話めちゃくちゃ良かったです。
皓くんが……になった瞬間がっ。あ、ここはネタバレになるといけないので。
思わずイイネMAXしてしまいました〜✨
続きも読みます〜😘
さくら乃さん✨️
返信遅くなってしまい、申し訳ございません。お読み下さりありがとうございます!
はい、ついに晧が……の場面ですね✨️
怖がってたの一体何だったんだって感じですが、甘々目指してみました✨️
ありがとうございます🙏
お楽しみ頂けましたら嬉しいです!
さくら乃さん✨お読み頂きありがとうございます🙏✨
白霆を可愛いとおっしゃって頂き、嬉しいです✨
色んな意味で必死で健気な彼です✨
この先もとてもかわいい二人を見ることが出来ますので、お楽しみ頂けましたら嬉しいです✨
67話まで読みました♡
やっと……やっとですね!
わぁ。なんかどきどきしちゃいました~( *´艸`)
白霆さんが目覚めたらどうなるのか。
続きも楽しみます✨
麒澄さん良い~~♡
さくら乃さん✨お読み頂きありがとうございます!
どきどきして下さり嬉しいです✨
この辺りは書いていてすごく楽しかったの、覚えております✨
麒澄はいいとこ奪って帰って行った感がありますが、良いって言って貰えて嬉しい✨
どうぞ続きもお楽しみ頂けますように🙏✨