逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~

結城星乃

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第71話 銀狐、向き合う 其の五

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「……あ……う……」

 
 こうは居たたまれなくなって、白竜から視線を外した。そして彼の手の甲に添えた、自分の手を見つめる。
 確かに白竜から逃げたが、まさか言えないだろう。
 ずっと可愛いと思っていた年下の竜が、見目のいい雄の人形ひとがたになって現れたことに戸惑っただなんて。目が合った瞬間に自分は『食われる側』なのだと、本能的に理解したことにも戸惑っただなんて。
 しかも白竜は自分よりも遥かに体格がいい。アレの大きさはきっと体格に比例する。近い将来に受け入れることになるだろう、アレの大きさに怯えていただなんて。

 
(……言えるわけがない)

 
 とんでもない罪悪感に、晧は眩暈がしそうになる。
 だがそんな晧の思いなど全く知らない白竜の、もう片方の手がぎゅっと、添えた晧の手に被さった。

 
「……気が気ではなかったんです。幼竜の時からずっと大好きで大好きで仕方なかった貴方が、私の知らないところへ行ってしまうのではないかと。いずれちゃんと戻ってくるよと紫君しくんはおっしゃっていましたが、耐えられなかった。だから私は紫君に相談したのです。晧を追い掛けたいと。
「……っ」
「ですが元の姿のままでは、貴方はまた怯えて戸惑って逃げてしまうかもしれない。貴方のあの目を、もう一度向けられるのは耐えられなかった。……紫君に協力して貰って、彼の術力と私の神気を織り交ぜて、私は姿を変えました。ですが胸の紋様が残ってしまっていたので、消すための術をさらにかけて」
「……」 

 
 晧は何も言えず、ただ白竜の手を見ていた。
 心の中で押し潰されそうな罪悪感と、愛しいと思う気持ちのままに、彼の手の甲を軽くきゅっと握る。すると被さった白竜のもう片方の手が応えて、晧の手背を力強く握るのだ。

 
「術の二重掛けは不安定でした。ですので師匠に術を長期間固定し、持続できる薬を処方して貰えるよう頼みました。晧もご存知の通り、師匠に薬を依頼するには代償が必要です。私は師匠と『晧が私に気付くまでは、自分から正体を明かさない』という言の葉の制約を交わしました。師匠からは気付かなかったらどうするんだ、本気で身体の方が保たなくなるぞと警告されましたが……大丈夫だと思っていました」
「……」 
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