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act22 ドラマーのヨーコ先輩
しおりを挟むアルディオは客室らしき部屋に押し込められると、震える吐息を吐いた。魔王の姿は非常に恐ろしく、今になって、情けなく身体が震えてくる。
これから自分はどうなるのだろうか。きっと拷問のような目に合わされて、あの恐ろしい魔王に食われて死ぬのだろう。
アルディオはその場にしゃがみこみ、小さく蹲って、震える自分の身体をぎゅっと抱きしめた。
アルディオは人間の国の王族として生まれた。母は8番目の側室で、元は平民だったのだが、お忍びで城下に遊びに出かけた父王に見初められ、側室の1人となった。平民の側室に、他の側室からの当たりは強く、その息子であるアルディオも異母兄弟からキツく当たられて育った。
父王は母を側室にしたが、アルディオが生まれた後くらいから、アルディオの母に興味を無くし、別の側室に入れあげるようになった。母は心を病み、幼いアルディオに頻繁に手を上げ、罵った。『お前が生まれたせいで陛下の心が離れた』と。
アルディオは、母を筆頭に、生まれてはいけなかった存在だと言われて育った。
王位継承権は一応あるが、一番下の方で、アルディオはいてもいなくても構わない、そんな存在だった。
アルディオは沢山の人に疎まれながらも、なんとか自力で生活していけるようにと、必死で勉学に励んだ。その甲斐あって、文官として王城で働いていたのだが、周囲は末席とはいえ王族であるアルディオを遠巻きにした。
アルディオはずっと孤独だった。何度も死のうと思った。だが、死んだら己に負けたことになると思い、どれだけ苦しくても耐えてきた。
数週間前。
父王が魔族の国に生贄を捧げて、人間の国に攻めてこないようにすると言い出した。未婚の側室の子供達が男女含めて全員集められ、籤引を行った。
アルディオは見事にハズレを引き、生贄になることが決まった。己の不運に絶望したくなる。魔王はとても恐ろしい存在だと聞く。生贄になったら、どんな目に合わされるか分かったものではない。逃げたいが、逃げられない。
アルディオは逃げ出さないようにと、その場で利き足である右足の腱を切られた。
魔族の国に輸送されている間から、ずっと腰布しか身に着けることが許されず、裸同然の状態で、アルディオは魔国へと生贄として捧げられた。
初めて見る魔族は、人間に近い姿の者もいたが、人間とはかけ離れた姿の者の方が圧倒的に多く、魔王にいたっては、完全に化物だった。身体は、アルディオの三倍近く大きく、地獄の底から響くような低過ぎる声は恐怖の感情しか呼び起こさない。
完全に意地だけで魔王からの問いに受け答えしたが、今になって、怖くて怖くて堪らず、身体の震えがずっと止まらない。
連れてこられた部屋には、大きなベッドがあった。よくて肉便器扱いになるのだろう。悪ければ、あの鋭い牙が生えていた大きな口で食い殺されるのだろう。
アルディオはのろのろと立ち上がり、右足を引き摺りながら、ベッドに移動して腰掛け、自分の何が悪かったのだろうと考え始めた。
仕事は自分なりに頑張っていた筈だ。末席とはいえ、一応王族なので、言動にも気をつけていたつもりである。
だが、アルディオには誰も近寄ってこない。やはり、生まれてきたのが間違いだってのだろう。結婚もできずに、アルディオはもうすぐ40を迎える。逆に考えると、よくもまぁここまで生にしがみついてきたなと、自分に呆れてしまう。
いっそ死んでしまいたい。これ以上、苦しい思いをしたくない。
生贄の自分が勝手に死んだら、魔王は怒るのだろうか。怒って人間の国に攻め込まれたら困る。王族の連中はどうでもいいが、犠牲になるのは、なんの罪もない善良な民草達だ。
アルディオとて、一応王族の端くれである。民があるから国がある。民なき国など、単なるハリボテだ。民を守ることが王族としての勤めである。アルディオが犠牲になれば、多分すぐには人間の国に魔族達が攻めてくることはないだろう。そう信じたい。
今まで、アルディオにはなんの価値も無かった。だが、アルディオが犠牲になって救われる生命が一つでもあるのなら、アルディオの存在も意味があるものになる。そうなって欲しい。
アルディオが生きた証が欲しい。自己満足のもので構わない。生まれてきてはいけなかった自分でも、誰かの為にできることがあると思いたい。たとえ、それがどれだけ苦しい思いをするとしても。
アルディオはのろのろと腰布一枚の姿で布団の中に潜り込んだ。
人間の国を出てから、殆どまともな食事をしていない。酷く空腹だが、食事が運ばれてくる様子はない。薄汚れて垢まみれの身体も洗いたいが、生贄の分際でそんな贅沢は許されないだろう。
できれば苦しまずに死にたい。
アルディオは目を閉じて、朝起きたら自分が死んでいることを祈りながら眠りに落ちた。
------
マオたんはひとしきり泣くと、スッキリしたので夕食を食べることにした。
ミディアムレアなドラゴンステーキを食べながら、ふと思った。
生贄のおっさんに食べさせられるものが魔族の国にあるのか。
人間の国と魔族の国では環境や植生が全然違うし、それぞれの身体のつくりも全然違う。
マオたんは行儀悪くテーブルに肘をついて、切り分けたステーキをフォークに刺してふりふりしながら、側に控えている爺やに声をかけた。
「爺や。人間が食べられるものって、此処にもあるのか?」
「さて。あまり多くはありませんが、一応ございます。我々の普通の食事では魔素が強過ぎて、脆弱な人間では食べただけで死にますが、魔素がとても少ない葉物や獣も一応ありますから、それらを調理すればよろしいかと」
「なるほど。空気中の魔素の濃度も多分人間の国より濃いよな。うーん。どうしよう」
「魔王陛下はあの生贄を生かしておくおつもりでしょうか」
「えー。一応?なんか死なせるのもなー。籤引で生贄って、ちょっと気の毒だし」
「では、エロエロなさいませ」
「何故そこでエロエロが出てくるんだ。爺や」
「エロエロして、魔王陛下の魔力を体液を介して生贄の身体に取り込ませ、生贄を魔族に変えてしまうのです。それが一番手っ取り早いかと。魔素が少ない食べ物は本当に少なく、また、空気中の魔素も、脆弱な人間には毒となりましょう」
「マジか……いや、流石に気の毒だけど、うんこ出す穴にちんこ突っ込むのはちょっと……」
「口で精液を飲ませればよろしいのでは?口ならば性差はございませんよ」
「それだ!よぉし!爺や!ご飯食べ終わってら生贄のおっさんのところに行ってくるわ」
「かしこまりました。存分にエロエロしてきてくださいませ」
「男相手に勃起する自信ないから、エロ本持っていっていいかな」
「よろしいかと。爺やのオススメは魔王陛下最新作の『リザードマンの2本ちんこでアヘ顔ダブルピース!犯される女騎士の絶頂潮吹き祭り!』でございます」
「おー!!流石爺や!目の付け所がいいね!」
「大変エモうございました」
「だろだろー!頑張って描いた甲斐があるぜー!くっ殺し女騎士の連続潮吹き絶頂とか夢があるよなぁ……生贄はプライド高い巨乳の女騎士がよかったなぁ。次の生贄に期待しよ」
マオたんは今生でもエロエロ同人誌をこっそり描いていた。読者は爺や1人だが、爺やとは趣味が合うし、いつもものすごく丁寧に読んで感想を伝えてくれるので、大変楽しくエロエロ同人誌を描くことができている。
マオたんは食事をしながら、爺やと次に描くエロエロ同人誌の話で盛り上がった。
これから自分はどうなるのだろうか。きっと拷問のような目に合わされて、あの恐ろしい魔王に食われて死ぬのだろう。
アルディオはその場にしゃがみこみ、小さく蹲って、震える自分の身体をぎゅっと抱きしめた。
アルディオは人間の国の王族として生まれた。母は8番目の側室で、元は平民だったのだが、お忍びで城下に遊びに出かけた父王に見初められ、側室の1人となった。平民の側室に、他の側室からの当たりは強く、その息子であるアルディオも異母兄弟からキツく当たられて育った。
父王は母を側室にしたが、アルディオが生まれた後くらいから、アルディオの母に興味を無くし、別の側室に入れあげるようになった。母は心を病み、幼いアルディオに頻繁に手を上げ、罵った。『お前が生まれたせいで陛下の心が離れた』と。
アルディオは、母を筆頭に、生まれてはいけなかった存在だと言われて育った。
王位継承権は一応あるが、一番下の方で、アルディオはいてもいなくても構わない、そんな存在だった。
アルディオは沢山の人に疎まれながらも、なんとか自力で生活していけるようにと、必死で勉学に励んだ。その甲斐あって、文官として王城で働いていたのだが、周囲は末席とはいえ王族であるアルディオを遠巻きにした。
アルディオはずっと孤独だった。何度も死のうと思った。だが、死んだら己に負けたことになると思い、どれだけ苦しくても耐えてきた。
数週間前。
父王が魔族の国に生贄を捧げて、人間の国に攻めてこないようにすると言い出した。未婚の側室の子供達が男女含めて全員集められ、籤引を行った。
アルディオは見事にハズレを引き、生贄になることが決まった。己の不運に絶望したくなる。魔王はとても恐ろしい存在だと聞く。生贄になったら、どんな目に合わされるか分かったものではない。逃げたいが、逃げられない。
アルディオは逃げ出さないようにと、その場で利き足である右足の腱を切られた。
魔族の国に輸送されている間から、ずっと腰布しか身に着けることが許されず、裸同然の状態で、アルディオは魔国へと生贄として捧げられた。
初めて見る魔族は、人間に近い姿の者もいたが、人間とはかけ離れた姿の者の方が圧倒的に多く、魔王にいたっては、完全に化物だった。身体は、アルディオの三倍近く大きく、地獄の底から響くような低過ぎる声は恐怖の感情しか呼び起こさない。
完全に意地だけで魔王からの問いに受け答えしたが、今になって、怖くて怖くて堪らず、身体の震えがずっと止まらない。
連れてこられた部屋には、大きなベッドがあった。よくて肉便器扱いになるのだろう。悪ければ、あの鋭い牙が生えていた大きな口で食い殺されるのだろう。
アルディオはのろのろと立ち上がり、右足を引き摺りながら、ベッドに移動して腰掛け、自分の何が悪かったのだろうと考え始めた。
仕事は自分なりに頑張っていた筈だ。末席とはいえ、一応王族なので、言動にも気をつけていたつもりである。
だが、アルディオには誰も近寄ってこない。やはり、生まれてきたのが間違いだってのだろう。結婚もできずに、アルディオはもうすぐ40を迎える。逆に考えると、よくもまぁここまで生にしがみついてきたなと、自分に呆れてしまう。
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アルディオとて、一応王族の端くれである。民があるから国がある。民なき国など、単なるハリボテだ。民を守ることが王族としての勤めである。アルディオが犠牲になれば、多分すぐには人間の国に魔族達が攻めてくることはないだろう。そう信じたい。
今まで、アルディオにはなんの価値も無かった。だが、アルディオが犠牲になって救われる生命が一つでもあるのなら、アルディオの存在も意味があるものになる。そうなって欲しい。
アルディオが生きた証が欲しい。自己満足のもので構わない。生まれてきてはいけなかった自分でも、誰かの為にできることがあると思いたい。たとえ、それがどれだけ苦しい思いをするとしても。
アルディオはのろのろと腰布一枚の姿で布団の中に潜り込んだ。
人間の国を出てから、殆どまともな食事をしていない。酷く空腹だが、食事が運ばれてくる様子はない。薄汚れて垢まみれの身体も洗いたいが、生贄の分際でそんな贅沢は許されないだろう。
できれば苦しまずに死にたい。
アルディオは目を閉じて、朝起きたら自分が死んでいることを祈りながら眠りに落ちた。
------
マオたんはひとしきり泣くと、スッキリしたので夕食を食べることにした。
ミディアムレアなドラゴンステーキを食べながら、ふと思った。
生贄のおっさんに食べさせられるものが魔族の国にあるのか。
人間の国と魔族の国では環境や植生が全然違うし、それぞれの身体のつくりも全然違う。
マオたんは行儀悪くテーブルに肘をついて、切り分けたステーキをフォークに刺してふりふりしながら、側に控えている爺やに声をかけた。
「爺や。人間が食べられるものって、此処にもあるのか?」
「さて。あまり多くはありませんが、一応ございます。我々の普通の食事では魔素が強過ぎて、脆弱な人間では食べただけで死にますが、魔素がとても少ない葉物や獣も一応ありますから、それらを調理すればよろしいかと」
「なるほど。空気中の魔素の濃度も多分人間の国より濃いよな。うーん。どうしよう」
「魔王陛下はあの生贄を生かしておくおつもりでしょうか」
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「おー!!流石爺や!目の付け所がいいね!」
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