てるる綴れ

ファナティック 1

WEBでたいそうな美人と遭遇し、なかよくなった。

俺はバツイチ小梨のアラサー男だが、出会い系ではない。
彼女は本のレビューをしているブロガーさんだ。
顔写真を上げているわけではないのに、どうして
美人と断じることができるのか。

本のチョイスが俺好み。

文体が美しい。

ときどき自分で描いたイラストが美しい。

描いたものは本人に似ているというから、
これは絶対美人に決まっている。

何より、コメ返のセンスがスバラシイ。
当意即妙、ウィットに富んでいてこれに俺は完全に
ヤラれてしまった。
嗚呼、もう好きすぎて、つらい！！


「バカじゃない？
そんなだからヨメ子ちゃんに捨てられるんだよ」

妹に罵倒される。

それは甘受しよう。

確かに俺は夢見がちなところがあると思う。
中高一貫の男子校で楽しく過ごしすぎた弊害の
典型であろうとも思う。
女性は特別なものだという意識から逃れられない。
女性と話せないほどコミュ障なわけではない。
むしろモテるくらいだと自負しているが、
最初のデートはOKで、その後が続かないのだ。
一緒に居ても女性が何を喜ぶのかわからないし、
女性の反応がまったく読めない。

「そんなもん男と一緒でしょうがよ」

妹に吐き捨てられる。

違うんだよな、それが。
妹よ、おまえも女の端くれ、その邪眼で兄を射抜き、
男という哀れな生き物を知り尽くしているだろうけれども、
「男と同じに扱ってくれていいよ？」と、にこやかな
女性ほど、お望み通り同じように扱ってやると、
いつの間にかいなくなってしまうんだ。

何が悪かったのか、わからない。

「そこが敗因だね」

そんな冷ややかな目線を投げかけてくれるな、妹よ。
いつかおまえの喜ぶようなえらい兄貴になりたくて、
奮闘努力を重ねていく所存。


不器用で気の利かない俺ではあるが、
その美人ブロガーさんとは個人的にメールで
やりとりする仲になって、俺は彼女にますます
夢中になった。

とにかく、すさまじくインテリジェンスが香っている。
厭味なくソツなく謙虚であるところが、また素晴らしく、
俺は我が身を恥じる。
こんな明晰な頭脳の前では俺は裸同然。
お互い熱心に長文のメールのやり取りを続けていたが、
賢く美しい彼女に気圧され、だんだん俺は自分が
ゴミのような気分になっていった。