ヰタ・ピクトアリス

女尊とマチズモ 2

女の子の不自由は、男の子の比ではない。

それがどういうことか、
わたくしが取り出しましたのは、
女の子がかけられる言葉のバリエーションを
表にしたもの。
なんかのサイトから拝借したものです。
もちろん英語です。
これはどぎつい言葉で書かれていて、
印刷して生徒たちに配るのは憚られたので、
口頭で説明をしました。


ブス枠の子。

「もっと女らしい恰好をしたら？」

「誰もおまえなんかとつきあわねえよ」

「それでも女か」


モテ女枠の子。

「ケバい」

「なんて恰好？」

「煽情的」


ヲタ枠の子。

「男の気を引こうとする、ニワカか」

「そのTシャツに描かれているバンドのメンバーの
誕生日を全部言ってみろ」

「ダサい」


キャリア・ウーマン。

「ダンナさんはどうするの？」

「子どもより仕事を取るなんて」

「女の幸せは家庭に入ることだ」


専業主婦。

「能ナシの主婦」

「子どもを産むしか芸がないのか」

「無計画」


まあ、ざっとこんなところでしたか。

読み上げてやったら、男子諸君は呆気に取られていました。

もちろん、同じニンゲンが別のことを言っているわけでは
ないでしょうけれども、
「女の子であるというだけで、何をしていても
ディスられるの、わかる？」

ちょっとばかり衝撃だったようです。
そういう素朴な反応が、わたしとしては、
何よりうれしい。

さらに、中絶した女性、シンママの女性に浴びせられる
それぞれの矛盾した言葉の数々。

男子ではここまでいろんなバリエーションで
ディスられることはないはずでしょう？
どう？

みんなすっかり神妙になってしまいました。


わたしの言うことを鵜呑みにして欲しいわけでは
ないのです。
どんなことにおいても、世の中の「常識」というものを疑う視点
を養っていって欲しいのですね。
そのために、彼らの思いを引き出すのに腐心しました。
論破するためではなく、議論をさらに深めるために。


女の子を生きることがことほどかように
茨の道であることを知れば、アクションを起こしてくれる
男子も増えるでしょう。
それは、彼らのDNAに組み込まれたマチズモが正しく
作用すれば、そうせざるを得ないと思うから。

少年マンガの主人公は、何故、弱い立場のひとを
護りたがるのか。

「だって、そういうもんでしょ？」

いや、別に女の子に護ってもらってもいいと
思うよ、と笑ったことですが、
彼らの好んで読むマンガは、確実に「正義の味方」が
出てくるわけで、それに学べばいいだけの話。
語られるのはマンガの悪影響であることが多いけれど、
（実際、女の子が性的対象としてのみ描かれる作品も少なくない）
よい学びもあると思うのですよ。
ということで、いつもいろんな好いマンガを
紹介しておるのですが。


「～だったらアタリマエ」

そんな思い込みをぶち壊してかかった楽しい最後の授業でした。

いつか彼らが、折に触れ、これはせんせいが言うてたやつ？
と立ち止まってくれることがあれば、いいと思う。

己の頭で考え、己で決定する。

そんな大人の男になって欲しいんだよ、わたしはね。


身体を売るお商売のおねぃさんたちも、キミらのお母さんも姉妹も、
同級生もカノジョも奥さんも、せんせいも「みんな同じ女性」なんだよ？

キミらが「女なんて」「女なんか」と言うごとに、せんせいたちは
魂を削られていくのです。

キミらの優しさ、賢さを、わたしだけでなく、
困っているひとのために活かしてあげてね。

せんせいはみんなのことが大好きです。