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「っはぁ、はぁ……何が、どうしたって言うんだろう……フィスをあんな風に思うなんて……」
折角、フィスが僕のことをこの上なく大切な存在だと言ってくれたし、嬉しかったはずなのに……まるで、怯えて逃げるような事をしてしまった。いくら幼馴染で親友だからと言って、こんな態度を取っていいわけがない。
早く戻って謝らないと……そう、思うのに、走りすぎたせいか、足が動かない。膝ががくがく震えて、立っているのもやっとだ。
「一体、何がどうしたって言うんだろう……ひとまず、ちょっと休んだ方がいいのかな……」
理由はわからないけれど、もう立っていられないほど疲れているのは確かなので、僕は辿り着いたその場所の壁にもたれかかり、座り込む。
改めて見上げたその場所は石造りで、明り取りの窓があって、円柱型で――
「……ここ、展望室? 僕、いつの間に……」
無意識のうちに展望室まで辿り着いていた自分に軽く呆れながらも、僕はもうそれを振り払う元気もなかったので、大人しく息が整うまで座っていることにした。
小さな明り取りから見上げる空はいつもと変わりなく青く澄んでいて、美しい。まるで、ハイターの瞳の色のようだ。
「ハイター……あれ以来会ってないけれど、やっぱりあんなことしたから、僕、嫌われたのかな」
強引に僕からハイターのキスをしたあの日、思い違いでなければハイターから舌を挿し込むようなキスを返された気がする。とろけるように甘くて熱い、だけど、どこか懐かしささえ感じるキスをしたはずだ。
だけどあれはやはり何かの気の迷いか何かで、ハイターが僕のことを好きなのでは、と思っていたのは、僕の思い過ごしのような気がしてくる。
「でも、思い過ごしもあり得なくはないよな……ハイターは学院の中でも有名な優等生なんだから。きっと、僕みたいなやつじゃなくても、相手にされたがっている生徒はいっぱいいるはずだもの」
自分に言い聞かせるように声に出して呟いては見るものの、心のどこかで納得しきれていない自分もいる。そんなわけがない、あのキスを、僕はよく知っている。そう主張している何かが僕の中にある気がする。その根拠が何なのか、まったくわからないのに。
「……なんだろう、すごく、モヤモヤする……この世界は、僕が創ったんじゃなくて、現実であるはずなのに」
この世界は僕の妄想でできていない。そう、悟ったはずなのに、その世界でフィスのような相棒のような存在と、共に生きていけたらしあわせだろうとまで考えが至ったのに、心のどこかが、それは間違いでは? と、訴えかけてくる。しかも、体は拒絶するような反応までしたのだ。
何が違うんだろう。やはりこの世界は、僕の妄想でできている世界だと言うのだろうか? フィスに好意を向けられたことが嬉しいと思うはずなのに、手放しで喜んで安堵できない。それどころか、彼からの好意を気味が悪いとさえ感じてしまう。
「わからない……僕は、どうしたらいいんだろう?」
フィスの気持ちをどうしても受け入れられず、それよりもハイターとキスしたことの方が、ずっと嬉しい気持ちが強い。あれきり会えなくて、嫌われているかもしれないのに……触れ合ったあの感触を思い出すとホッと安堵するのだ。
「……会いたいよ、ハイター……いま、すぐに……」
この世界が僕の望み通りならば、すぐにでも彼に会いたい。会って、この世界が本物なのかを、彼のぬくもりで確かめたい。そんなことを考えてしまう。
何を、僕は信じたらいいんだろう。途方に暮れ、膝を抱えうずくまっていると、遠く誰かが石段を登ってくる足音がする。
どうせまたボスたちだろうか……そう思いながら顔をあげると、段々と見覚えのある美しい銀髪、そして青い空のような瞳が見えてくる。
「……ハイター!」
その人物の名を呟くように呼ぶと、彼は素っ気なささえ感じるきれいな顔をやわらかくにほころばせ、駆け寄って来た。
折角、フィスが僕のことをこの上なく大切な存在だと言ってくれたし、嬉しかったはずなのに……まるで、怯えて逃げるような事をしてしまった。いくら幼馴染で親友だからと言って、こんな態度を取っていいわけがない。
早く戻って謝らないと……そう、思うのに、走りすぎたせいか、足が動かない。膝ががくがく震えて、立っているのもやっとだ。
「一体、何がどうしたって言うんだろう……ひとまず、ちょっと休んだ方がいいのかな……」
理由はわからないけれど、もう立っていられないほど疲れているのは確かなので、僕は辿り着いたその場所の壁にもたれかかり、座り込む。
改めて見上げたその場所は石造りで、明り取りの窓があって、円柱型で――
「……ここ、展望室? 僕、いつの間に……」
無意識のうちに展望室まで辿り着いていた自分に軽く呆れながらも、僕はもうそれを振り払う元気もなかったので、大人しく息が整うまで座っていることにした。
小さな明り取りから見上げる空はいつもと変わりなく青く澄んでいて、美しい。まるで、ハイターの瞳の色のようだ。
「ハイター……あれ以来会ってないけれど、やっぱりあんなことしたから、僕、嫌われたのかな」
強引に僕からハイターのキスをしたあの日、思い違いでなければハイターから舌を挿し込むようなキスを返された気がする。とろけるように甘くて熱い、だけど、どこか懐かしささえ感じるキスをしたはずだ。
だけどあれはやはり何かの気の迷いか何かで、ハイターが僕のことを好きなのでは、と思っていたのは、僕の思い過ごしのような気がしてくる。
「でも、思い過ごしもあり得なくはないよな……ハイターは学院の中でも有名な優等生なんだから。きっと、僕みたいなやつじゃなくても、相手にされたがっている生徒はいっぱいいるはずだもの」
自分に言い聞かせるように声に出して呟いては見るものの、心のどこかで納得しきれていない自分もいる。そんなわけがない、あのキスを、僕はよく知っている。そう主張している何かが僕の中にある気がする。その根拠が何なのか、まったくわからないのに。
「……なんだろう、すごく、モヤモヤする……この世界は、僕が創ったんじゃなくて、現実であるはずなのに」
この世界は僕の妄想でできていない。そう、悟ったはずなのに、その世界でフィスのような相棒のような存在と、共に生きていけたらしあわせだろうとまで考えが至ったのに、心のどこかが、それは間違いでは? と、訴えかけてくる。しかも、体は拒絶するような反応までしたのだ。
何が違うんだろう。やはりこの世界は、僕の妄想でできている世界だと言うのだろうか? フィスに好意を向けられたことが嬉しいと思うはずなのに、手放しで喜んで安堵できない。それどころか、彼からの好意を気味が悪いとさえ感じてしまう。
「わからない……僕は、どうしたらいいんだろう?」
フィスの気持ちをどうしても受け入れられず、それよりもハイターとキスしたことの方が、ずっと嬉しい気持ちが強い。あれきり会えなくて、嫌われているかもしれないのに……触れ合ったあの感触を思い出すとホッと安堵するのだ。
「……会いたいよ、ハイター……いま、すぐに……」
この世界が僕の望み通りならば、すぐにでも彼に会いたい。会って、この世界が本物なのかを、彼のぬくもりで確かめたい。そんなことを考えてしまう。
何を、僕は信じたらいいんだろう。途方に暮れ、膝を抱えうずくまっていると、遠く誰かが石段を登ってくる足音がする。
どうせまたボスたちだろうか……そう思いながら顔をあげると、段々と見覚えのある美しい銀髪、そして青い空のような瞳が見えてくる。
「……ハイター!」
その人物の名を呟くように呼ぶと、彼は素っ気なささえ感じるきれいな顔をやわらかくにほころばせ、駆け寄って来た。
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