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*11 “親友”の想いを賭けにつぎ込んだ末に

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 フィスから銀貨を借りた翌日、早速僕はそれを手に展望室へ向かう。
 案の定、そこには先日のぼろ負けのせいで、かなり不機嫌そうに僕をにらんでくるボスと、その取巻きの生徒が数名いた。

「んだよ。シュテルン様を味方につけて勝ち逃げしたんじゃねえのか?」
「まさか。僕がそんないかさまをしていないって証明に来たんだよ」

 僕の言葉にボスは片眉をあげてこちらを見て、「ほう? じゃあ、今日も一戦やるか?」とカードの束を差し出してくる。
 望むところだと言うように僕は頷き、そうしてまたポーカーに興じ始めた。
 結果として、今日はハイターは現れず、6ゲームやったうちの4勝をし、銀貨1枚増え、ボスはまたもや渋い顔をする羽目となった。
 2敗したことで「あいつとグルでもいかさまでもない、ってのはまあ、認めてやらんでもないな」と、渋々ボスに言われ、僕は新たな銀貨を受け取る。
 それから寮に戻り、いつものように過ごし、その日の終わりにまたフィスを訪ねた。

「ええ? またお金を貸してって言うの? 昨日のだって返してもらっていないのに?」
「倍にして返そうと思ってたんだけど、大負けしちゃって……銅貨でいいから貸してよ、フィス。今度こそちゃんと返すから」

 ね? と、畳みかけるように首を傾げて拝むように両手を合わせて頼み込むと、フィスはむっと唇を尖らせつつも、溜め息をつきながら黙って懐からまたコインケースを出してくれた。そして、またしても銀貨を一枚。

「倍にして返さなくていいから、ちゃんと返してよ、リヒト」
「ありがと、親友」

 微笑みかけられながら、僕は内心後ろめたさを感じずにはいられなかった。嘘をつき、親友だと言いながら幼馴染の彼から金を巻き上げる。その行為が彼の好意に付け入っている悪行であることは明らかで、フィスの言動が僕に都合よく流れていくことに胸が痛む。
 そうまでして、僕が確かめたいもの。それが、この世界が現実なのか、妄想であるか、というその在り方なのだ。

(でもこれで僕が嫌われたなら、僕にとってみれば都合が悪いということ、つまり、ここは現実、ということの証明になる……はず)

 そう、自分に言い聞かせながら、僕は結局その後も2回ほどフィスから借金をし、そのままにしていた。つまり、まったく返さなかったのだ。
 その間僕がポーカーで負けることはほとんどなく、これもまた、僕にとって世界が都合よく動いていることにもなる気がしていた。

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